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7月13日の朝8時過ぎ、NHKラジオ第一放送「三宅民夫のマイあさ!」に電話出演させていただき、熱海の状況などについてお話しさせていただきました。番組のようすをお伝えします。
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――静岡県熱海市の伊豆山地区で起きた大規模な土石流。住宅などおよそ130棟が被害を受け、これまでに10人が亡くなっています。一方、今も17人の行方がわかっておらず、現場では今日も捜索が続けられます。現地のこと、気掛かりです。
災害が起きた時、熱海はどのような状況だったのか。今、被災した人たちにどのような支援が求められているのか。今朝は、熱海にお住まいの環境ジャーナリストで、土石流の後、いち早く災害支援活動を始められた枝廣淳子さんに伺います。おはようございます。
枝廣 おはようございます。
――枝廣さんは、アル・ゴア著『不都合な真実』の翻訳をはじめ、地球環境問題への取り組みを行っています。コロナ渦、去年の9月、熱海に移住しました。枝廣さん、今回の災害が起きた先週の土曜日、熱海の様子はどうだったでしょうか。
枝廣 その前の数日、特に前日、これまで経験したことがなかったような激しい雨が長く続いました。当日の朝11時ぐらいに、「伊豆山で土石流発生」と熱海市から緊急速報が入り、現場はうちから歩いて15分ほどの所なので、心配していました。家の近くの道を消防車・救急車がどんどん走っていくのを見て、大変なことが起こったのかなと思っていたところ、知人からツイッターの画像が回ってきて、土石流の様子を見て言葉を失いました。
――現地の状況は、今どんな様子でしょうか。
枝廣 現地はまだ近付けないので、まだ直接は見られていません。ただ、私の自宅の前が海なのですが、直後からたくさんの木が流れていました。今も帯状に流れてきたものが浮いていると、船で海に出ている人から聞いています。知人の中には、留守中におうちが流されてしまって、避難しながら、それでも地区の人々のために奔走している人もいますし、知り合いが流されてしまったという知人もいます。あと、うちの近くのホテルに数百人の方が避難中です。
――どのようなお気持ちでいらっしゃるか。枝廣さん、どういうふうに感じていらっしゃいますか。
枝廣 温暖化がひどくなるとこういう被害が出るとは思っていましたが、まさか自分が住んでいる地域が"被災地"と呼ばれるようになるとは・・・。知っている方もおられるので、本当に胸が痛いです。
――枝廣さんは、土石流の後、いち早く支援の取り組みを始められたんですね。伊豆山災害支援チーム。具体的にどのような支援をしていらっしゃいますか。
枝廣 まず情報をつながないといけないと思ったので、フェイスブックのグループページを立ち上げました。わかっている範囲で情報を伝えつつ、支援が必要な方と、支援をしていただける方、市役所も含め、情報をつなぐ場をつくって、今、1,100人ぐらい登録していただいています。まずは情報をつないで、現場がどうなっているか、どういう支援が必要か、それを発信しているところです。
――そこのところをぜひ知りたいんですが。被災された方は今どのようなこと、あるいはどのようなものを必要とされているでしょうか。
枝廣 私たちは行政の支援物資のチームなどとも連絡を取り合っているし、避難先のホテルにも定期的に立ち寄って、状況や要望を聞いています。現在のところ、避難されている方々に必要なものはほぼ提供されています。
――今、緊急で必要なものはほぼ提供されているということですか。
枝廣 はい。熱海はホテルも多い場所なので、被災された方もホテルに分かれて滞在されていますし、食事も提供されています。衣類もいろいろ提供されているので、ほぼ必要なものは提供されています。
ただ、やはりこれから必要となってくる支援が出てくると思うんですね。避難先からだんだん地区に戻っていかれるときに、どうやって、暮らしとか生業とか、地区のつながりとかにぎわいを取り戻すのか。そこが一番、支援が必要になってくるところかなと思っています。
――ラジオをお聴きの方の中には、何か自分もできないかと思っていらっしゃる方もいると思います。コロナ渦という難しさはあるんですが、ボランティアなどに関してはどうでしょうか。
枝廣 発災直後から、全国から、たくさんの方から「ボランティアできます」という声を、私たちもいただいているし、熱海市役所も受けています。ただ、今はまだ現場の安全が確保されていないので、現場に入ることができないんですね。なので、ボランティアも登録していただいて、待っていただいている状況です。
ただ、もう少しすると、泥出しとか、いろいろ人手が必要な支援が出てくるので、そのときまで見守っていただきつつ、連絡があったら動けるように、待っていていただきたいなと思っています。そういった状況も、私たちのフェイスブックのグループページで随時発信していきますので、見ていただけたらと思います。
――伊豆山災害支援チームのページに出ているということですね。
枝廣 はい。
――状況をご覧になっていて、特にこれからこういう支援が求められるなと枝廣さんが感じていらっしゃること、1つ2つ挙げていただけますか。
枝廣 熱海は観光の町ですし、水産業も盛んなので、地域経済に与える影響が大きくなってくると思います。そのあたりの支援の仕組みもいろいろ準備しています。たとえば、寄付金付きで伊豆山の海産物のセットを買っていただいて応援いただくとか。漁師さんたちも、網をやられてしまって、漁業ができなくなっているとも聞いています。そういった支援などもやっていきたいと思っているので、ぜひ皆さんの力を貸してほしいと思います。
もうひとつは、今後、大量に発生した災害ゴミの処理についても考えていく必要があると思っています。海を流れていった木もそうですし、いろいろな災害廃棄物と言われるものが発生しているんですが、それをできるだけいい形で処理していくところも、いろいろ考えていきたいと思っています。
――環境を元に戻していくということも必要なわけですね。
枝廣 そうですね。もうひとつ、今、多分外から見えていないところで、大きくは動けていないんですが、まだ外からの方がボランティアにも入りにくいという中で、地元でいろいろな支え合いが広がっています。それも少しお伝えしたいと思って。
私の知り合いの魚屋さんは、あの地区にあって流されてしまった知り合いの魚屋さんの代わりに、障がい者の施設に海産物を届けようと動いておられます。被災地に障がい者の方が働く場があったんですが、今そこが使えなくなってしまっています。その代わりに、駅前のビルの会議室を提供しようということが決まったり。小さいながら少しずつ、地元では助け合い・支え合いが広がっていますが、大きく、どうやって暮らしを再建するのとか、経済をどうやって支えるのというところは、本当に外の方の力も必要なので、ぜひお手伝いいただきたいと思っています。
――枝廣さんは、異常気象や地球温暖化対策の研究もされていますが、今回の災害を受けて、どんなことを考えていますか。
枝廣 上流の盛り土や、メガソーラーのための森林伐採が原因ではということは、海外でも報道されているようです。実際、山が保水力を失っていた所に大量の雨が降ってしまったので、持ちこたえられなかったというのが現状かなと思っています。
森は「緑のダム」と言われていますが、その保水力を損なっていないか。熱海だけではなくて、日本中の地域で見直しが必要だと思いますし。どうしても、「これまで何も起こっていないから大丈夫」と思いがちなところがあります。でも、これまでとは違う量の雨が降る可能性があるので、ぜひ危険地域を確認したり、避難や救出の手順を地域で確認する必要があると思います。
同時に、熱海だけではなく、日本のあちこちで豪雨の被害が出ている。カナダでは異常な高温が出ている。これらは、「地球温暖化が進んでいるよ」という警鐘のひとつだと思います。なので、少しでも温暖化の進行を止めなくてはという意識と行動を持つこと、それを広げていくこと。これが、熱海の災害を教訓として、次の災害を起こさないために活かしていただける方法ではないかと思っています。
――枝廣淳子さん、ありがとうございました。
枝廣 ありがとうございました。
~~~~~~~~~~~~~番組ここまで~~~~~~~~~~~~~~~
熱海 未来創造部・伊豆山災害支援チームのFacebookグループページ
https://www.facebook.com/groups/539592647069642
番組で、「たとえば、寄付金付きで伊豆山の海産物のセットを買っていただいて応援いただくとか」と話していたプロジェクトが立ち上がりました!
未来創造部のオンラインショップ「海からの贈り物」で、パートナー・宇田水産さんと協力し、「伊豆山の漁業支援セット」(寄付金付き)を販売させていただくことになりました。今回は特別に、災害前に伊豆山漁港で水揚げされた海産物と加工品のセットをご用意させていただきました。熱海で活躍されている水中写真家 水之京子さん撮影のポストカード1枚(熱海 青の洞窟)も同封させてただきます。
寄付金額は3種類(1000円、2500円、7500円)、合計100セット限定となります。商品のご購入額から、仕入れ原価、宅配料金、オンラインショップ販売手数料等の諸経費合計(2,500円)を引いた全額を「熱海未来創造部・伊豆山災害支援チーム基金」への寄付とさせていただきます。
基金は、被災された方々へのきめ細やかなサポートならびに中長期的に地区の暮らしと経済、賑わいを取り戻すための取り組みに活用させていただきます。その使途や活動内容、成果については、年に2回お送りするオンラインレポートでご確認いただくことができます。
宇田水産の宇田社長は、伊豆山で営業中に被災・亡くなられた魚屋さんの分まで力を尽くしたいと奔走されています。私たちはその宇田さんを支えて、少しでも被災地・被災された方々のお役に立てたらと願っています。皆様の温かいご支援をお待ちしております。
ご支援購入はこちらから
https://umikaranookurimono.stores.jp/
スタッフが書いてくれた商品紹介です。
*カタクチイワシのオイルサーディンは解凍後、ぜひ白ワインと一緒に。
*ブリの切り身は、食べやすい大きさで5切れ。塩焼きでも照り焼きでも煮つけでも何でも使える万能さんです。冷凍庫にあれば安心の1パック。
*豆タカベの干物は、とてもかわいいので、魚グリルではなく、オーブントースターで焼くのがおすすめです。バリバリと丸ごと召し上がってください。ビールのお供、お子さまのおやつに最適です。(ちなみに宇田さんは1枚1枚さばいて干物にされています。宇田さんの手にかからなければ未利用で捨てられていたかもしれないお魚さんたちです)
限定100セットでスタートし、FBグループページ「熱海 未来創造部・伊豆山災害支援チーム」でご紹介後、ありがたいことにたくさんの方にご支援・お買い上げいただいています。万一売り切れの場合には、次の支援セットを準備中ですので、少しお待ちいただければありがたいです。
さて、熱海にも「子ども食堂」があります。今回の災害を受け、被災地の子どもたちへの食事の提供もされています。食事だけだったら避難所でもいただけるのですが、いろいろな人とお喋りしたり、ちょっとのんびりしたりほっとしたり、という空間と時間が大事なのだろうなあと思います。子どもだけじゃなく、大人にとっても。
ちょうど今週の読書会で、「だれにとっても大事な空間と時間」の1つとしての子ども食堂を取り上げた本を読みます。
7月21日(水) 18:30~20:30
《オンライン》幸せ経済社会研究所 読書会
『つながり続けるこども食堂』を読む
講師:枝廣淳子l
著者の湯浅誠さんはご存じのように、「年越し派遣村」などでのホームレス支援など、草の根の活動でも内閣府など国政レベルでも、貧困問題にずっと取り組んでおられる方です。湯浅さんの最新刊である本書は、日本各地のこども食堂のようすや関わっている方々の生の声をいきいきと伝えてくれるルポルタージュです。
同時に、日本の社会が「無縁社会」と呼ばれるようになってきた変化や、コロナ禍を経て、ますます重要になってきた「世代を超えた人々の居場所」「孤立する人がいない地域の賑わい」を取り戻す・創りなおす試みがこども食堂の取り組みの中核にあることを説得力のある、わかりやすい形で伝えてくれます。こども食堂は、多くの人がイメージしている「食べられない子」のためにある場所だけではない、ここに日本社会の希望がある、と。
湯浅さんが見てきた・見ている日本社会の現状と構造的な問題、そして、希望とは?
私の左脳も右脳も本書に大きな刺激を受けています! これまで幸せ研が課題だと考えてきたことを整理して伝える術をもらったように思っています。今後を拓く希望の書を読み解きながら、一緒に考え、議論しましょう。
大事なポイントは私が解説しますので、全部読む時間がなかったとしても、安心してご参加いただけます。ぜひいっしょに考えてみませんか。
https://www.ishes.org/news/2021/inws_id002928.html