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つながりを読む

「報徳」の精神が支えるエネルギー地産地消

2021年10月21日
「報徳」の精神が支えるエネルギー地産地消

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https://www.flickr.com/photos/bonguri/6445708833

気候変動対策の一丁目一番地は、エネルギー転換ですよね。省エネで必要なエネルギーを減らしつつ、必要なエネルギーは再エネに切り替えていくことです。これを地域で進めながら、エネルギー転換がまちづくりにもつながる!というとっても素敵な取り組みが小田原で進められています。取材させていただき、今月末に英語版を世界に配信する記事をお届けします。


~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

「報徳」の精神が支えるエネルギー地産地消

神奈川県小田原市では、エネルギーの地産地消を進めることを、さまざまな地域課題の解決に結びつけるという、ユニークな取り組みが行われています。いったい、どのような仕組みなのでしょうか。取り組みを進めている湘南電力株式会社の代表取締役副社長、古川剛士さんにお話を伺いました。

○きっかけ

2016年8月、ほうとくエネルギー株式会社、株式会社古川、小田原ガス株式会社、湘南電力株式会社の4社は、自然資源を活用したエネルギーを地産し、地域内で供給できる仕組みを作るために、「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」を結成しました。

ほうとくエネルギー誕生のきっかけとなったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。津波に襲われた福島第一原子力発電所からの送電が止まったことにより、小田原市でも計画停電の実施を余儀なくされました。直線距離でおよそ300キロメートルも離れた場所で自分たちが利用している電力がつくられていることを、身をもって実感したのです。

電力は、暮らしに欠かすことのできないものです。いつ起きるかわからない災害に備え、自分たちが使う電力は自分たちでつくるべきではないか。ほうとくエネルギーは、そんな思いで地元企業38社が出資、市民ファンドからも資金を集めて立ち上げられました。

湘南電力の原社長は、主に都市ガスを販売している小田原ガスの社長、古川副社長は、主にプロパンガスを販売している株式会社古川の代表です。都市ガス会社とプロパンガス会社は、互いに顧客を奪い合うライバル会社です。

そんなふたりがつながりを強めたのは、スポーツ観戦でたまたま席が近かったことがきっかけだったそうです。感動を共有したことから話をするようになり、同じ課題意識、目的意識を持っていることが分かったふたりは、作戦会議を重ねました。最後には周囲の理解も取り付け、手を携えてエネルギー地産地消の取り組みを進めていくことになったのです。

○顧客の共感を呼ぶ「報徳」の精神

湘南電力のミッションは、「エネルギーを通じて、人々の徳を集め、地域のパワーに変える」。19世紀、江戸時代後期に活躍した小田原出身の思想家、二宮尊徳が唱えた報徳思想に通じるこのミッションは、多くの市民の共感を呼びました。報徳とは「徳を以って、徳に報いる」という思想です。それが、どのようにミッションにつながっているのでしょうか。湘南電力が市民に向けて発信しているメッセージをご紹介します。

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私たちが毎日つかっているエネルギーについてすこし考えてみませんか。私たちが住んでいる地域の未来に、ちょっと目を向けてみませんか。

私たち湘南電力は、エネルギー事業を通じて、地域の課題解決に取り組んでいる会社です。たとえば、電気の地産地消。電気を地域でつくり、地域でつかうことで、地域内に経済を循環させること。みなさまにつかっていただいた電気代を通じて地域に貢献する団体や企業を応援すること。電気をつかうこと、暮らすことそのものが、結果として地域貢献になっている。そんな画期的な仕組みづくりをしています。

この地域に縁のある二宮尊徳翁の思想に「徳を以って、徳に報いる」という言葉があります。それは、一人ひとりが持っている力を、社会に役立てようという考え方です。

私たちの使命は、湘南電力の考え方に共感していただいたみなさまの徳を集め、地域の力に変えていくこと。目指しているのは、人と人が互いに支え合い、貢献しあう、持続可能な街の姿。エネルギー事業に留まらず、あらゆる生活インフラのハブとして、地域の隙間を埋めていきます。

つかう電気を自由に選べる時代。電気を選ぶことは、暮し方を考えること。暮らし方を考えることは、地域の未来を考えることでもある、と私たちは思います。一人ひとりの選択が、地域を変える大きな力になる。みなさまの徳を、想いを、私たちに託してください。

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湘南電力では、支払った電気料金の1%が、地域の課題解決に利用される仕組みをつくっています。電力の利用者は、申し込み時に、用意されたプランの中から自分が応援したいものを選びます。応援プランは、地元のプロサッカーチームを応援するプランや、環境活動や防災活動を支援するプラン、障がい者を支援するプランなど、多岐に渡っています。

中でも、小田原市と連携してつくった子ども食堂応援プランは反響が大きく、500件近くの申し込みがありました。一般家庭の場合、電気料金の1%というと年間でおよそ1,000円ですので、500件だと50万円になります。いま、小田原市には子ども食堂が6カ所あるので、その資金を分配し、活用されています。

電力が自由化され、利用者が電力会社を選べる時代になりました。単に安いからこちらを使ってくれ、では価格競争に陥ってしまい、持続可能ではありません。地域貢献のメニューを幅広く提供して、興味をもったものがあればそこに参画してもらう。その方法が契約している電力会社を変更することであり、結果として電気代が安くなりますよ、ということをアピールして、湘南電力は顧客にアプローチしています。

○再生可能エネルギーの拡大

湘南電力が扱っている電力の規模は、2021年8月時点で49,260キロワット、需要家数は3,755件、増え続けている状況です。顧客が増え、供給する電力量が増えるに従い、再エネ率が低下するという課題が生じます。

その対策として、再エネを利用した発電量を増やそうと導入した仕組みが、「0円ソーラー」です。これは、初期費用無しで、自宅に太陽光発電システムを設置できるサービスです。設置にかかる費用は湘南電力が負担し、発電設備の所有者は、設置後10年間は湘南電力になります。その間、利用者は使用する電力の料金を湘南電力に支払うことになりますが、10年を過ぎると設備は無償で利用者に譲渡されます。

神奈川県からの補助金が出ていることもあり、利用者にとって経済的なメリットがある仕組みになっていますが、湘南電力は、単にお得というだけでなく、地域への貢献を考えてほしい、ということを合わせて伝えています。例えば災害時に停電になっても、昼間であれば自宅で使うには十分すぎる発電量があるので、近所の人に携帯電話の充電用に電気をつかってもらうなど、地域の防災に役立てることができます。それぞれが工夫して、人と人が支えあう街づくりを実現できれば、という思いが、そこには込められています。

電気自動車(EV)の活用についての検討も進められています。小田原の再エネはほとんどが太陽光発電によるものなので、安定して利用するためには蓄電池が欠かせません。通常、自動車は90%以上の時間は使用されていないので、EVを動く蓄電池として利用することで、必要な時に必要な場所に電気を届けることが可能になります。現在、EVを活用した電源系統の安定化について、実証実験を行っています。

再エネを利用することが、暮らしの価値を高めることに直接結びつけられるよう、環境価値の取引にも着手しています。「0円ソーラー」の利用者が自宅で利用した電力に対し、1キロワットあたり1円でクレジット化します。一般家庭の平均的な電力使用量を考えると、月100円程度になります。

地元のお店にも協力してもらって200円を上乗せしてもらい、お店で使える300円相当のクーポンを発行して利用者に届けます。利用者からすると、無料でソーラーパネルを取り付けられる上に、毎月300円のクーポンがもらえるということです。お店にとっては200円の出費になりますが、集客効果が期待できますので、そこで回収するという寸法です。

環境価値を可視化、価値化し、地域を巻き込んで好循環を一体的に創出することで、脱炭素化に向けた行動変容につなげることを目的とした、社会実験も始まりました。地元の飲食店等が自らの活動によるCO2排出量を見える化し、「0円ソーラー」利用者の使用電力をクレジット化したものでオフセットし、対価として当該店舗で利用できるクーポンが提供されます。

○今後の展望

湘南電力の今後について古川さんは、「地域貢献のメニューを増やしたり、電源を増やしたり、ということを継続しながら、『持続可能な地域インフラで、人と人が支え合う街をつくる』というビジョンの実現に向かって、事業を発展させていきます」と、力強く語ってくれました。「将来的には、エネルギーだけでなく、生活に欠かせない水や建築や交通などの領域にも取り組んでいければ」、と夢は広がっていきます。

「事業としてまちづくりを実施できていること、地域貢献できていることに大きな喜びを感じています。いろいろな人が集まって、話をしながら次に実行することを決めているのですが、そのプロセスから得られる学びも大きなものがあります。みなさんが持っている『報徳』の精神が、取り組みに注がれるエネルギーになっていることを、強く感じています」。

古川さんは、自分が感じている喜びについて話しながら、「自分たちが築いた取り組みの礎を、早く次世代に引き渡したい」、との思いも伝えてくれました。湘南電力の取り組みがどのように発展し、次の世代に引き継がれていくのか、今後も目が離せません。

(幸せ経済社会研究所)


~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~


こういう動きがあちこちの地域で始まり、広がっていくといいなあ!と思います。(そう、自分の本拠地である熱海でも!)

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https://www.es-inc.jp/seminar/2021/smn_id011080.html
ご自分のペースでどうぞ! ぜひまちづくりや新規事業、ふだんの買い物にも活かしてください。
 第1回 「地元経済を創りなおすとは? 基本的な考え方を学ぼう」
 第2回 「事業者間のお金の流れを知る ~産業連関表」
 第3回 「生活者のお金の流れを知る ~買い物調査」
 第4回 「地域の中でお金を回すために~産業連関表や買い物調査をどう活用すればよいか」

 

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