伊豆山の今日、みんなの明日 in 熱海市 ウェブサイト
「レジリエンスを高めるさまざまな取り組みを休むことなく続けているまち」の1つが、島根県の離島・海士町です。
その海士町の最近の取り組みを、幸せ研のニュースレターとして世界に発信しました。その日本語版をお届けします。キャンプ採用? マルチワーカー? 面白いですよ~! ぜひお読みください。
伊豆山の土砂災害から1年が経ちました。お亡くなりになられました方々のご冥福をお祈りし、哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
未来創造部では、1年経ったこの時期だからこそ必要なことは何か、どのように支援させていただくことができるかを考えながら、これからも地道に活動を続けていく予定です。
この度、伊豆山にお住まいの方々、伊豆山や熱海を訪れてくれる方々のそれぞれに、参加していただけるような活動をめざし、ご案内や活動報告を掲載するためのウェブサイトを作成しました。ご覧いただければ幸いです。
https://www.mirai-izusan.com/
今月の幸せ研読書会では、『レジリエンス思考 変わりゆく環境と生きる』を課題書に取り上げます。
https://www.ishes.org/news/2022/inws_id003066.html
「はじめに」に、このようにあります。
(引用はじめ)
人類の資源基盤(地球)は、私たちの人口が増え続けているのに対し、縮小の一途をたどっている。それに対して各業界がどう対応しているかというと、この窮状をそもそも生み出した方針と「大差ない」方針を採り続けている。すなわち、もっと管理し、もっと集約化し、もっと効率を高めようという方針である。レジリエンス思考を学べば,今までとは違った見方で周りの世界を理解し、 今までとは違ったやり方で自然資源を管理することができるようになる。効率を高めることがただちに資源問題の解決につながらない理由も分かるし、選択肢を狭めるのではなく広げることのできる、建設的な代替の手法を知ることもできる。
私たちは複雑な世界に生きている。その複雑な世界の一部を管理することに関わりのある人なら誰でも、レジリエンスとその影響について深く理解することで、何らかの便益を享受できるはずである。
(引用終わり)
読みたくなってきたでしょう? 「レジリエンス」は、先の見えない、不安定で不確実な時代を生き抜いていくためのキーワードです。近年、あちこちで語られるようになり、企業研修や教育分野にも取り入れられるなど、見聞きする機会が増えてきましたが、そのエッセンスはまだまだ伝わっていない、と思うのです。だから今回はこの1冊!です。
著者のブライアン・ウォーカー氏は、古くからの仲間の1人で、2004年に私にレジリエンスの大事さを最初に教えてくれた人でもあります。数年前にオーストラリアに出張に行った際には自宅に呼んでくれて、いろいろ話を聞かせてくれました。
ブライアンは研究者ですが、「多くの人に伝えたい」という思いも強く、本書は専門家向けではなく、一般の方々に「レジリエンス思考」の重要性とそのキーポイントをわかってほしい!と書かれたものです。
それでもすんなりと読める本ではないかもしれません。読書会では、自分のこれまでの理解と経験もベースにしながら、本書にある「ジリエンス思考に大事な2つのこと」を中心に、しっかりとお伝えします。自分たちのまわりの事象に当てはめて考えてみることで、さらに学びが深くなることと思います。
レジリエンス思考を学び、議論しながら、一緒にレジリエンスを高める考え方ができるようになっていきましょう! みなさんのご参加をお待ちしております。https://www.ishes.org/news/2022/inws_id003066.html
いくつかの地域のビジョンづくりや地元経済の「漏れ穴ふさぎ」のお手伝いをさせていただいています。それはすべて、そのまちや地域の「レジジエンス」を高めるための取り組みだと考えています。先の読めない、不確実で不安定で不明瞭な時代だからこそ、何があってもしなやかに立ち直れる力=レジリエンスが不可欠だと思うのです。
レジリエンスをつくりだす3つの要素は、次回の読書会で取り上げる書籍にもありますし、自分でも講演などでお話ししていますが、「レジリエンスを高めるさまざまな取り組みを休むことなく続けているまち」の1つが、島根県の離島・海士町です。
その海士町の最近の取り組みを、幸せ研のニュースレターとして世界に発信しました。その日本語版をお届けします。
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~
「住民の理解が得られない」「移住に踏み切れない」などの地域の悩みの解決策がここに! ~島根県海士町の取り組み
このニュースレターを読んでいる方の中には、地域で活動をしている方も多いと思います。新たな取り組みが生まれてくると、今度は「近隣の住民の理解が得られない」「手伝ってほしいけれども、年間を通して雇用できるほど仕事がない」、そんな悩みが生じてくるものです。こうした悩みに対しては、島根県海士町の取り組みが参考になるかもしれません。
海士町は本土からフェリーで約3時間、島根半島の沖合約60kmの場所に位置する約2250人が暮らす離島の町です。海士町も、かつては市町村合併の危機に瀕したこともありました。日本政府は1999年から市町村合併を推進し、合併した市町村には、2005年まで手厚い財政支援を行っていました。海士町でも、この頃、周りの島との町村合併する話が持ち上がりました。
でも、それぞれの島には独自の文化があります。「文化が異なる島が合併することは良くないだろう。自分たちの島は自分たちで守り、島の未来を自ら築いていこう」という当時の町長の強い想いもあり、 住民と対話を重ねた結果、海士町は「合併しない」ことを決めました。
合併をしないと財政支援は受けられません。そうすると元々苦しかった財政が、ますます苦しくなります。そこで海士町では「自立・挑戦・交流」というビジョンを掲げて、さまざまな魅力的な取り組みを行ってきました。そして現在では 地方創生のトップランナーとまで呼ばれるようになりました。
海士町がこれまで行ってきた取組みについては、このニュースレターの前身である JFSのニュースレターでも度々紹介していますので、関心のある方はぜひご覧ください。
今月号の幸せ研ニュースレターでは、海士町の最近の取り組みを厳選してお伝えいたします。
○わがとこバスツアー
海士町では、民間・行政を問わず、さまざまな取り組みが生まれています。そうすると小さな町でも、町内で何が行われているのかがよくわからなくなってきます。それは不信感にもつながります。「若い人たちが、なんだかよく分からないことをはじめている」「最近来た移住者が、勝手なことをやっている」といった具合になってしまうのです。
そこで2021年から海士町役場とAMAホールディングスという第3セクターが主体となって始めたのが、わがとこ(地元)で行われている取り組みを住民に紹介するバスツアーです。実際に取り組みを見学して、取り組み内容や想いを聞くことで、不信感の解消につながるだけでなく、応援したいという人も増えるでしょう。このバスツアーは、特に年配のみなさんに好評で、ツアーの当面の予約は集落ごとにある老人会で埋まっているそうです。
年配のみなさんが若者や移住者の取り組みを見学して、それを家族や友人に話すことで、さらに理解の輪が広がっていく、そんな様子が目に浮かびます。
○キャンプ採用
続いて紹介するのは、「職場の採用試験にキャンプを取り入れる」という取り組みです。採用試験と言えば筆記試験や面接が一般的です。でも、短い面接時間だけでは、人柄がよく分からなかったり、「表面的な回答」しか聞けなかったりします。受験する側としても、「緊張して思うように話せなかった」ということも多いでしょう。
そこで海士町役場が2021年からはじめたのが、「キャンプ採用」です。一次試験として役場職員と一緒にキャンプをする、二次試験は面接という流れで行われ、昨年度は町役場の職員10名がこの仕組により採用されました。
2月に行われたキャンプ採用時は、雪が降る、凍えるような状況だったそうです。そんな厳しい状況の中で、役場の職員と一緒にキャンプの設営をし、火を起こし、ご飯を炊き、語り合います。そこでは、その人が持つ人間性を隠すことはできません。率先して動けるかなど、面接ではわからないことも見えてきます。採用者・応募者が本音レベルで知り合うことができるこの採用方法は、他の組織でも応用できそうです。採用前から「チーム」として動くことで、採用後の職場関係もスムーズにスタートすることができるでしょう。
○マルチワーカー
自然が豊かな海士町では、仕事も農業や漁業など、自然の恵みを活かしたものが中心です。自然には季節があるため、それぞれの職場では、ある時期はとても忙しく、ある時期は仕事がないというように、季節によって仕事量にばらつきがあります。このことは、一つの産業では、年間を通じて人を雇用することが難しいという状況をつくり出します。雇用がなければ、「海士町に移住したい」と思っている人も、移住することはできません。
こうした状況を受けて、海士町が2012年から始めたのが「マルチワーカー」という仕組みです。これは繁忙期の異なる様々な仕事を組み合わせて、働く場所を変えていく勤務スタイルです。例えば、「冬はスルメイカ漁、春から夏にかけては食品加工業に関わる」あるいは「観光の繁忙期には宿泊施設を手伝う」といった具合に、いくつもの仕事を組み合わせることで、年間を通じて海士町で働くことが可能になります。
この海士町のマルチワーカーの仕組みを追いかけるような形で、日本政府も「特定地域づくり事業協同組合制度」を策定し、2020年6月から施行しています。この制度は、季節などによって異なる事業に従事するマルチワーカーを雇用する事業協同組合に対して、財政的・制度的な支援を行うものです。
国の制度の発足を受け、海士町でも2020年11月に海士町複業協同組合を設立し、新たな体制でマルチワーカーと働き先に対するサポートを行っています。
○海士町未来共創基金
最後に紹介するのは、税金の仕組みを活用して事業を支援する取り組みです。日本には「ふるさと納税」と呼ばれる制度があります。これは、自分の居住地以外の自治体に納税することで、その自治体に寄付をする仕組みです。寄付(納税)した自治体から特産物などの返礼品をもらえることも多く、大変人気がある制度です。
海士町では2021年度から、ふるさと納税で町に入った税金のうちの25%程度を、魅力的で持続可能な島の未来のために不可欠な事業を応援するために使う取り組みを始めました。それを支えているのが、一般社団法人海士町未来投資委員会です。幸せ経済社会研究所所長の枝廣淳子も、理事としてお手伝いをしています。
支援を受けたい事業がある人は、一般社団法人海士町未来投資委員会申請を行います。実際に投資する事業は、島外の審査員も含めた審査会を設けて、審査を行った上で決定します。審査に通った事業に対して、ふるさと納税のお金が投資されます。また、投資を受けた事業については、事業内容の評価を行うほか、活動内容のレポートをウェブ上に公開することで、透明性を担保するようになっています。
2021年度には、海の掃除をしてくれるナマコの保全を行う事業と、海士の海について多くの人に知ってもらうための釣り船などのマリンボート事業を展開する事業が選ばれ、投資を受けて事業活動が進められています。
○未来へ向けて
このようなさまざまな仕掛けを行っている海士町では、次世代のリーダーも育っています。海士町には「立春式」という昔の元服の名残の儀式が残っています。この儀式では、14歳になった子どもたちが将来の夢を語るのですが、ある女の子が、「私の将来の夢は、今の海士町の大人たちです」と話したそうです。
海士町には大学がなく、高校も1校しかないため、中学卒業後や高校卒業後に島を出る若者がほとんどです。こうした若者たちは、学校を卒業したあとも、大阪や東京などで仕事を得て、そこで家庭を築くことが一般的です。これは海士町だけではなく、日本各地で地方の人口が減少していった理由です。
でも海士町では、大人たちの背中を見て育ったやる気のある若者たちが、経験を積んだ上で島に戻ってきて、自分たちの挑戦をはじめています。また、活躍する若者をみて、大人たちも刺激を受けています。こうした「憧れの連鎖」によって、ひとりひとりが生きがいを持ち、挑戦を続けることで、海士町の魅力も高まっています。
海士町のユニークで先進的な取り組みが、皆さんの活動のヒントになることを願っています。
~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~
コロナ禍が少しずつ収まりかけているようで、地域への出張も少しずつ増えそうです。地元・熱海での足元の活動もしっかり進めつつ、少しでもレジリエンスの高い地域が増えていくように、まちづくりのお手伝いをしていきたいと思っています。
さらに、ファシリテーションやアドバイスだけでなく、実際にそれぞれの地域で「地域資源の循環によって気候変動対策にもなる」新たな事業をスタートします! 詳細はまた追ってご紹介したいと思いますので、どうぞお楽しみに!
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