「ネット・ゼロ」(ゼロカーボン、カーボンニュートラル)を宣言している国はどのくらいあると思いますか?
ゼロトラッカーというサイトによると、現時点で133カ国。加えて、241都市がネットゼロ宣言を出しているそうです。
https://zerotracker.net/
ネットゼロを宣言している国の人口を合計すると、世界人口の80%。世界のGDPの91%、世界の排出量の83%です。宣言が実行されたら、大きく排出量が減って、温暖化の危機も少しは緩和されそうです。
企業も822社がネットゼロ宣言を出しているとのこと。企業にとって、排出量を大きく減らしていくことは喫緊の課題ですが、すぐにゼロすることは難しいため、カーボンクレジットの活用も広がっています。
コンサベーション・インターナショナルとWe Mean Business Coalitionが500人のサステナビリティ・マネージャーを対象に行った最近の調査によると、90%以上のビジネスリーダーが長期的な脱炭素化を「優先課題である」としており、89%は炭素市場が重要な役割を果たすと考えています。
https://www.conservation.org/press-releases/2023/01/12/businesses-are-setting-strong-climate-targets-and-decarbonizing-and-say-carbon-credits-are-key-for-taking-climate-action
回答したビジネスリーダーのうち、3分の1はすでに自主的な(ボランタリー)炭素市場に投資しており、半数以上は将来の選択肢としてカーボンクレジットを検討しているとのこと。
ずさんな管理などによって、実質的に削減・吸収されていないのにクレジットが発行されている(「ファントム・クレジット」などと呼ばれることもあります。ファントムは亡霊・幻影ですね)例などもあるため、カーボンクレジットへの視線は厳しいものになりつつあります。
Guardian紙によると、ある大手プロバイダーが提供する熱帯雨林のカーボンオフセット・クレジットの90%以上が、実際の温室効果ガス削減につながっていない「ファントム・クレジット」である可能性が高いという調査結果も出ています。
https://www.theguardian.com/environment/2023/jan/18/revealed-forest-carbon-offsets-biggest-provider-worthless-verra-aoe
また、しっかり管理・モニタリングされているクレジットだとしても、「企業はクレジットを購入すれば排出を続けられる」ということ自体、本質的な解決策に結びつかないのではないかという議論もあります。
カーボン・クレジットの信憑性を監督・保証するしくみを提供しようという動きも出てきていますが、そもそも、カーボン・クレジットは「移行期」にだけ使えるしくみにしておく必要があるのではないかと考えています。
本質的な問いは、どのように気候危機に取り組むか、どうやって気候危機を解決するか、です。まさに、その点に焦点を当て、世界中で読まれている本があります。ポール・ホーケンの『リジェネレーション 再生 気候危機を今の世代で終わらせる』です。
本書の日本語版に寄せたメッセージをご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
ポール・ホーケンがこの世にいてくれて良かった! この本を書いてくれて本当に良かった! 本書を読んで、心からそう思う。
「本書の目的は、今の世代で気候危機を終わらせることです」。気候危機を終わらせることができるなんて!と思う人もいるかもしれない。あまりにも温暖化の被害状況は悪化し、さまざまなかけ声や目標設定にもかかわらず、温室効果ガス排出量は減るどころか増える一方なのだから。
この気候危機に対し、ポールは「闘う」「何とか減らす」ではなく、「再生」というアプローチをとるのだ。再生とは、創造・構築・修復という、生命がずっと行なってきたことだからこそ、インクルーシヴで効果的な戦略だというのだ。
前書「ドロー・ダウン」と同様、しっかりしたデータに基づいた、これまであまり聞かなかった数々の取り組みに、「なるほど!」とわくわくの連続は間違いない。従来の温暖化対策の中心・「エネルギー」が本書では終わりの方に登場するのだから。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
リジェネレーション日本語版出版の特別サイトもあります。詳細な目次等もみていただけます。
https://regeneration.jp/
そして、2月17日に開催する幸せ研オンライン読書会では、本書を取り上げます。本書の監訳者である江守正多さん(国立環境研究所)も参加してくれます!
一緒に読みながら、温暖化対策に対する考え方を広げ、考えてみませんか。ご参加をお待ちしています。