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数日前に、坂本龍一さんの訃報が届きました。
2001年4月22日のアースデーの日に、代々木公園のイベントでご一緒したのが最初の出会いでした。私のメールニュースを読んでくださっていると聞いてびっくり! そこからメールのやりとりが始まりました。
そうこうしているうちに、9.11が起こり、坂本さんたちといろいろな世界の情報をやりとりするうちに、「坂本龍一+sustainability for peace」というグループの一員として、12月に『非戦』を出版しました。
「非戦」 坂本龍一+sustainability for peace
作家の宮内勝典さんが寄せられた「非暴力こそが真の勇気 ──『非戦』が生まれるまで」から、この本ができた経緯を紹介させていただきます。
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(前略)
インターネットを通じて、詳しい情報がぞくぞくとやってくるようになった。
ニューヨークの坂本龍一、屋久島の星川淳、環境ジャーナリストの枝廣淳子、さらに世界中に散らばる友人たちが、各国のサイトを読み漁っては、読むに値すると思われるものを、次々にメールで送ってくれる。
効率よく情報を回すために、友人たちの間でMLがつくられることになった。
新聞社の記者たち、経済、環境問題の専門家、平和運動家たちも加わってくれた。そうしてMLの情報は、驚くべき量に膨らんでいった。
たった一人、報復戦争に反対票を投じたバーバラ・リー下院議員のスピーチや、WTCでわが子を失った人びとのメッセージ、各国の作家、思想家、ジャーナリストたちの論考もどんどん集まってきた。
MLメンバーたちの内部で、「もったいない、本にしようか」 という声が、自然に湧き上がってきた。
坂本龍一さんが、幻冬舎に国際電話を入れ、まったく一夜にして緊急出版が決まった。本のタイトルも、すぐに『非戦』と一致した。
プロの翻訳家、同時通訳者である友人たちが、猛烈な勢いで翻訳に取りかかった。翻訳許可や版権を取るため、世界中にメールが飛び交った。目を見張るほどの進行速度だった。
新聞社のメンバーたちは、激務の間を縫いながらインタビューをしたり、調査、情報確認、地図づくりの作業に取りかかった。決して表に立つこともなく、裏方に徹しての作業だった。このようなジャーナリストたちがまだ残っていたのか、と目を疑った。「無償の行為」という言葉も、久しぶりに思いだされた。
ミュージシャンや、アイヌ民族、被曝体験者たちの原稿も次々に集まってきた。印税は、テロの犠牲者や、アフガニスタンの難民たちに寄付されることになっていた。
メールは連日、250通を超えるようになった。378通に達した日もあった。MLをつくって、まだ一か月もたっていなかった。
ぼくも大急ぎで「種・戦争・希望」というエッセイを書いた。そのくらいしか役に立てなかった。
そして、つい先日、校正が終わった。390ページぐらいの厚い本になりそうだ。こんな猛スピードの本づくりは、生まれて初めてだった。
(後略)
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以下は、出版をお知らせする当時の自分のメールニュースからの抜粋です。
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この<sustainability for peace>という、10人ちょっとのグループの母体であり舞台となったMLを設定したのは、10月7日のことでした。宮内さんが書いてらっしゃるように、情報交換の中から、「出版して広く読んでほしいね」という声が出たのが10月16日。それから、どの論考を載せるか、だれに執筆を依頼するかという議論が展開して(MLメール数約200通/日)、10月末に、翻訳や掲載許可の依頼など、本格的な作業がスタートしました(MLメール数300通/日)。
年内に出したい!ということで、11月10日が原稿締切。10日間でほとんどすべての原稿の準備をしたことになります。そして、校正をしながら、細かな詰めを行い、いま、印刷所に回ったところです。これほどの「短期決戦型出版プロジェク
ト」はあまりないので、ギネスブックに載るかも(^^;)。
忙しかったけれど、とてもおもしろいプロジェクトでした(まだ完全には終わっていませんが・・・)。ほとんどお互いに会ったこともないメンバーのグループなのですが、うまく専門を活かした役割分担が自然にできて、励まし合いながら進められたこともよかった。
私は主に海外執筆者を担当しましたが、「思いは通じる!」という体験を何度もしました。私のHPにも載せさせてもらっている手紙や論考もいくつか本に含まれていますが、ネットメディアで流れていた情報がほとんどだったので、本に掲載する許可をもらうために、執筆者を突き止めるのにいちばん苦労しました。
まさに怒濤のような1ヶ月。しかも11月は通訳・講演のハイシーズンでしたから、ほとんどスケジュールに空きがない中での作業・・・ということで、ニュースが犠牲?になったのでした。ご心配をかけた方々、すみませんでした。m(_ _)m
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宮内さんの文章も、今なお強く訴えかけるものの多い一遍です。こちらに当時のメールニュースをアップしましたので、よかったらご一読ください。
まったくフラットなネットワーク型チームでしたが、坂本龍一さんは、原動力として、北極星をつねに指し示すリーダーとして、この怒濤の出版プロジェクトを引っ張ってくれました。大変だったけど、楽しかった思い出です。
そのあとも、私の出版する本の帯を書いて下さったり、一緒にイベントに登壇させていただいたり。富野由悠季監督と、音楽家の坂本龍一氏がこれからの時代に求められる創造性について語る、という『エコ+クリエイティブ』が起こすイノベーション」シンポジウムではコーディネータ役を仰せつかって、どうしようかと思いましたが、これまた楽しい時間でした(^^;
本を出して世に問い始めたばかりの私を、帯や序文まで書いて応援して下さったことも、本当にありがたく思い出します。
『地球のなおし方 限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵』 ドネラ・メドウズ+デニス・メドウズ+枝廣淳子(共著)
帯の言葉(坂本龍一さん)
「これは、ぼくたち人間にとってだけではなく、地球にとって1,2を争うほど大事な本です。」
アル・ゴア著 『不都合な真実』(翻訳 枝廣淳子)
〔推薦のことば〕
「人類の未来のために、なるべくたくさんの人に、手元においてもらい、何度も開いてほしい本です。」 坂本龍一
『私たちにたいせつな生物多様性のはなし』 枝廣 淳子 (著)
推薦の言葉(坂本龍一さん)
「生物多様性という言葉は知っていても、
それが実際自分たちの生活にどう関係あるのか、
うまく思い描けない人が多いんじゃないかな。
この本を読むと、地球上の全てはつながっていることを
実感できるようになるよ。」
環境関連の2冊目となる本は、自分のメールニュースを編集して作ってもらったものでした。坂本さんはこれに温かい序文を寄せて下さいました。なんとありがたいことでしょう。
「地球のセーターって、なあに?―地球環境のいまと、これからの私たち」
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序文
枝廣さんの環境ニュースを読んで誰でもまず圧倒されるのが、その情報量でしょう。「普通の」主婦が、いくら朝2時に起きたとしても、よくもこれだけ多様なテーマを、これだけの深さで扱えるものだと感心してしまう。それだけでなく、その人的交流の幅の広さ、通訳も翻訳もこなし、講演もし、会議にも出席するという、その行動力にも驚嘆。そんな著者をぼくは、ガリガリ勉強してカッカッと素早く歩き、ファッションには全く興味がなくて、男どもを叱咤激励するこわ-いスーパーウーマンじゃないかと想像してましたが、実際にお会いした枝廣さんは意外なことに、人の話をよく聞く、もの静かで才色兼備な女性でした。
この本には、様々な「気づき」へのヒントが散りばめられています。そして気づいたら次にどのように行動すればいいかも。枝廣さんが紹介する多くの事例から浮かび上がってくるのは、人と人との関係、人と他の生物との関係とそれをとりまく自然との関係について、近代を支配してきた思考方法一例えばGNPを豊かさの指標とする、あるいは自然を資源とみなすーではなく、新たな見方、新たな関係を築くことなしには、現在のような自然破壊、生き物破壊の趨勢は止まらないということだと思います。新たな思考は一つではないので、枝廣さんは、観念的、哲学的に一直線に語るのではなく、多くの事例とともに、たくさんの人々の試行を枝廣さん自身が学びながら、人間の関係を再生させることと、環境を再生させることが実は同じ根っこをもつ問題なのだということを、その饒舌な言葉の下で、静かに見つめているような気がします。
実はぼくがこの本で一番印象に残った記事は、No.521(2001.07.25) 「学級崩壊から総合学習へ」でした。これは、ある小学校での学級崩壊の危機から総合学習を通して、子どもたちがお互いに自由に意見を言えるようになり、学級崩壊の危機が救われる過程を紹介したものです。本物の民主主義を「手づくり」で模索する子どもたちと、それをやさしく助ける大人たちがいることに、ぼくはまるで奇跡を見るように感動します。そして、自分たちで問題を考え、議論し、意見を交換し、意見の違いを認め合うという、子どもにできることが、なぜぼくたち大人社会ではなかなか機能しないのか、不思議に感じます。
このように、この本は頭と心で考えることを促します。それをさらに「身体で考える」ことにつなげていくかどうかは、私たち読者が踏み出すほんの小さな一歩にかかっています。
坂本龍一
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坂本さんが一番印象に残ったというNo.521(2001.07.25) 「学級崩壊から総合学習へ」も、こちらにアップしました。よかったら読んでみてください。
天国でも教授として非戦の活動に力を入れていかれるのだろうなあ。
坂本さん、私もこちら側にいる間は、できることをできるだけ頑張ります!
いつかまたお会いする日まで。
心からご冥福をお祈りします。