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いろいろな状況の悪化が進む中でも、あちこちで前向きの取り組みや展開が進んでいます。ぜひいくつかでも知っていただけたらと思います。
ベジタリアンはご存じと思いますが、「クライマタリアン」とは? ペットショップでの犬や猫、ウサギの販売禁止?
えっ?と思うようなニュースから、しみじみほっとするようなニュースまで、今回は幸せ経済社会研究所の内外のニュースから5本をお届けします。
●グローバルリスク報告書:短期的には「生活費の危機」、長期的には環境リスクが深刻に
●ロンドン:車の超低排出ゾーンをロンドン市全域に拡大 2023年8月から実施
●ペットショップでイヌ、ネコ、ウサギの販売を禁止する新法、米国ニューヨーク州で成立
●英国:暖かいところへどうぞ! 「燃料の貧困」対策のコミュニティ活動
●クライマタリアンになって地球と体にやさしい食生活を
●グローバルリスク報告書:短期的には「生活費の危機」、長期的には環境リスクが深刻に
https://www.ishes.org/happy_news/2023/hpy_id003141.html
世界経済フォーラムは2023年1月11日、年次総会の開催に合わせて2023年版『グローバルリスク報告書』を発表しました。
今回の報告書では、産学官民および国際機関の専門家1,200人に、2023年、短期(2年後)、長期(10年後)という3つの時間枠で、5分野(経済、地政学、環境、社会、テクノロジー)の32のグローバルリスクについてたずねた見解をまとめています。
2023年のリスクでは、「エネルギー供給の危機(1位)」「生活費の危機(2位)」「食糧供給の危機(4位)」など社会リスクが上位を占めました。短期では、「生活費の危機」が1位となりましたが、短期的にピークを迎えると見られています。2位は「自然災害と極端な異常気象」で、通貨措置、制裁、貿易規制といった「地経学上の対立」が3位でした。
一方、長期では、「気候変動緩和策の失敗(1位)」「気候変動への適応の失敗(2位)」「自然災害と極端な異常気象(3位)」と環境リスクが上位を占めました。4位の「生物多様性の損失と生態系の崩壊」は今後10年間で最も速く悪化するリスクの一つで、6つの環境リスク全てがトップ10入りしていました。
また、「サイバー犯罪の拡大とサイバーセキュリティの低下」「社会的結束の浸食と二極化」など、9つのリスクが短期・長期両方の上位10位に入っていました。
報告書では、今後10年間は「地政学的・経済的動向によって引き起こされる環境的・社会的危機が特徴となるだろう」と指摘しています。
参考リンク:2023年版『グローバルリスク報告書』はこちら
https://www.weforum.org/reports/global-risks-report-2023/in-full
(たんげ ようこ)
●ロンドン:車の超低排出ゾーンをロンドン市全域に拡大 2023年8月から実施
https://www.ishes.org/happy_news/2023/hpy_id003138.html
英国ロンドン市は、「超低排出ゾーン(ULEZ)」を、2023年8月29日からロンドン全域に広げることを発表しました。この制度により、排出基準を満たしていない車両がロンドン市内を通行すると、1日12.5ポンド(約2,000円 ※2023年2月時点)を支払う義務が課されます。
ロンドン市では、世界初となるULEZ制度が2019年にスタートしました。当初は、ロンドン中心部のみが対象でしたが、2021年にインナーロンドン地区までゾーンが広げられました。この制度のおかげで、ロンドン中心部では約50%の有害な二酸化窒素が削減され、2016年から2020年の間、ロンドンは英国の他地域よりも5倍の速さで汚染物質が減少しています。
それでも、世界保健機関(WHO)のガイダンスによると、大気中の有害物質(粒子)はアウターロンドン(インナーロンドンの外側)の全ての地区で、安全水準を超えています。アウターロンドンには、喘息持ちのロンドン市民の半数以上が暮らしています。新たなULEZは、アウターロンドンも含めたロンドン全域が対象です。
今回のゾーン拡大に伴い1億1000万ポンド規模の「廃車計画」も始まりました。この計画により、低所得者やハンディキャップのあるロンドン市民が、不適合車両を廃車にする場合や、基準を満たすように改造する場合には、現金やバス・トラムの年間パスを受け取ることができます。ロンドン市では、バスのネットワークを充実させる計画も発表しています。
(新津 尚子)
●ペットショップでイヌ、ネコ、ウサギの販売を禁止する新法、米国ニューヨーク州で成立
https://www.ishes.org/happy_news/2023/hpy_id003137.html
「パピーミル(puppy mill)」という言葉を聞いたことがありますか? これは「子犬工場」を意味し、ペットショップで販売するために動物を劣悪な衛生環境で量産する悪徳ブリーダーのことを指します。米国の動物虐待防止協会(ASPCA)は、全米最大のパピーミル市場の一つにニューヨーク州を挙げています。
そのニューヨーク州では2022年12月15日、キャシー・ホークル知事が州内のペットショップでイヌやネコ、ウサギの販売を禁止する法案に署名し、法律が成立しました。新法は2024年12月から施行されます。その狙いは、十分な餌を与えなかったり、適切な医療を受けさせなかったり、社会性を身につける機会を奪ったりするなどの虐待をする、大規模なパピーミルによる動物の売買を防ぐことです。
ペットショップはどうなるのでしょうか。新法では、ペットショップは動物保護施設や救済組織と協力して、保護された動物を里親として引き取りたい人と保護動物が出会えるシェルターの場所を提供し、その費用を請求することができる、と定められました。
米国では、すでにカリフォルニア州やメリーランド州でペットショップでの販売が禁止されており、今後パピーミルの撲滅に向けた取り組みがさらに進むと期待されます。
(佐々 とも)
この記事について詳しくはこちら(英語)
https://www.governor.ny.gov/news/governor-hochul-signs-legislation-end-puppy-mill-pipeline
●英国:暖かいところへどうぞ! 「燃料の貧困」対策のコミュニティ活動
https://www.ishes.org/happy_news/2023/hpy_id003133.html
燃料価格高騰が世界的な影響を及ぼす中、英国ではこの冬、1,600万以上の人々が、収入から暖房費を差し引くと貧困ラインを下回るなど、いわゆる「燃料の貧困」に陥ると言われています。
そこで、「寒くても暖房が使えず困っている人々に、暖かく安全な場所を、無料で心地よく使ってもらおう」というコミュニティ活動が全英で展開されています。このような場所は、「Warm
Welcome Space」「Warm Welcome Place」(いずれも「暖かく迎える場所」)などと呼ばれています。
これらの場所の情報を登録・集約してマップ上で検索できるサイト「Warm
Welcome」によると、公立図書館、教会、コミュニティセンター、公共施設など、2023年1月中旬時点で約4,000カ所が参加。場所によっては、無料WiFiや充電設備、コワーキングスペースを提供したり、交流イベントを実施するなど、暖を求めてきた人たちが心地よく時間を過ごすためのサービスも提供されています。
2022年10月には、CILIP(図書館情報専門家協会)から、場所を適切に整備・運営するためのガイドラインが発行されました。同ガイドラインでは、「必要な人が気兼ねなく使えるよう、暖かく迎えることが不可欠」と冒頭で強調した上で、整備や運営のために有用な情報や好事例を提供しています。
また、エジンバラ市のように、市内で該当する場所をマップなどで情報提供したり、バーミンガム市のように、生活費支援対策の一環として暖かい場所を無料開放する団体に助成金を提供する自治体もあります。
(たんげ ようこ)
参考リンク
・マップ情報サイト「Warm Welcome」についてはこちら(英語)
https://www.warmwelcome.uk/
・ガイドライン「A WARM WELCOM: SETTING UP A WARM SPACE IN YOUR COMMUNITY」についてはこちら(英語)
https://www.cilip.org.uk/resource/resmgr/cilip/information_professional_and_news/press_releases/2022_10/a_warm_welcome_2022.pdf
●クライマタリアンになって地球と体にやさしい食生活を
https://www.ishes.org/happy_news/2023/hpy_id003129.html
(クライマタリアンより)
生産や輸送などの過程で排出される二酸化炭素量が多い食べ物を選ばない食生活をする人のことを「クライマタリアン(Climatarian)」と言います。クライマタリアンになることは、温室効果ガス削減に加え、体にやさしい食生活を選ぶことです。
温室効果ガス排出量のうち、食品関連の排出量は約1/4を占め、さらにその半分以上が畜産由来のものです。中でもげっぷや糞からメタンが排出されることから、牛や羊など反芻家畜は他の家畜よりも排出量が多いとされています。また、食肉1キログラムあたりの土地使用量が他の肉に比べて非常に多いのも牛や羊の畜産の特徴です。
このため、牛肉や羊肉が気候に及ぼす影響は他の肉の5倍にもなっています。毎日の食事で牛肉と羊肉を避けるだけで、1人年間1トンの排出量削減効果があります。
また、主要な研究によると、牛肉や羊肉などの赤身肉や加工肉の摂取は、大腸がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がんなどのリスクが高くなることが示されています。赤身肉を食べずに肉の摂取量を全体的に減らせば、がんのリスクも下がります。
牛肉などを避ける以外にも、空輸される食品や包装過剰な食品、暖房による温室栽培の野菜などを避ける、生ビールや地元のビールを飲む、などクライマタリアンとしてできることは多くあります。
(たんげ ようこ)
クライマタリアン(Climatarian)について詳しくはこちら(英語)
https://climatarian.com/