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「バイオエコノミー」という言葉を聞いたことがありますか?
資源の枯渇や環境問題に対して、バイオマス(生物資源)やバイオテクノロジーを大いに活用しながら、合わせて経済成長の実現を目指す経済活動や考え方のことで、2009年に経済協力開発機構(OECD)によって提唱されたものです。
OECDでは、世界のバイオ市場規模は2030年には約1.6兆ドル(約170兆円)に達すると予想しており、EUや米国では具体的な戦略づくりが行われています。
日本でも、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標に、バイオ戦略が作られています(が、具体化という点では欧州などに後れを取っているという指摘も)
https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/index.html
バイオエコノミー市場は、代替肉や培養肉などをはじめとする食品のほか、飼料、医療、プラスチック、スパイダーシルクなどの新素材、エネルギーなど幅広く、技術革新とともに、さらに広がると見込まれています。
https://www.mri.co.jp/knowledge/mreview/201912.html
NEDO「バイオエコノミー領域の最新動向と今後の展望」
https://www.nedo.go.jp/content/100938902.pdf
"The Business of Doing Better"を掲げるウェブサイト「Triple Pundit」から、面白い記事が出ているので、編集部の許可を得て、日本語でご紹介します。
Next Steps for the Bioeconomy: 5 Sustainable and Unusual Materials to Watch in 2023
https://www.triplepundit.com/story/2022/bioeconomy-sustainable-materials-2023/763176
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~
バイオエコノミーへの次の一手:2023年に注目すべき5つのサステナブルかつ珍しい素材
未来のバイオエコノミーは、具体化を始めており、さまざまな方向から姿を現しています。石油化学製品を植物由来の素材に置き換えることは、依然として主要な関心事です。また、研究者は新たなツールや方法論を活用して、より幅広い再生可能な素材を展開し、それらの素材を新たな効率を生み出す方法で使用しようとしています。2023年に注目すべき5つの素材を紹介しましょう。
1. イカからつくられる、リネンのような繊維
スクイテックスは、繊細な見た目のアイボリー色の繊維で、紡ぐことで、麻のより糸のようになります。しかし、麻やリネン、綿、ジュートなどの植物から作られているわけではありません。スクイテックスはイカ、正確には、イカの足の吸盤に埋め込まれた円形の「歯」に含まれるタンパク質から作られているのです。
イカからバイオエコノミーのインスピレーションを得るのは、奇妙に感じるかもしれません。しかし、イカの歯は3億5千万年かけて進化し、耐久性、柔軟性、自己修復性など、生地や織物、カバー素材に非常に適した機能を備えています。
スクイテックスは、ペンシルベニア州立大学のメリク・デミレル教授(バイオミミクリーを活用した持続可能な素材の開発が専門)の研究室で誕生しました。教授のチームは、イカのタンパク質を大腸菌に付着させ、大量に培養したのです。
ペンシルベニア州立大学の説明によると、スクイテックスの繊維は自重の3,000倍を持ち上げることができるほど強度があります。生分解性があり、アクリルやセルロースを足せば、リサイクルも可能です。
スクイテックスは、スタートアップインキュベーターConservation X Labsが主催する「2021 マイクロファイバー・イノベーション・チャレンジ」で最優秀賞を獲得した5つの素材のうちの1つです。
2. 植物から生まれた、革のような肌触りの素材
石油化学製品は、合成スエードや天然皮革の代用品を作る便利な原料としてとして、長い間使用されてきました。バイオエコノミーの非石油資源から高品質の代替レザーを製造することはかなりの難題でしたが、モダン・メドウ社の科学者たちが「暗号解読」に成功したのです! 同社の「バイオアロイ」プロセスは、タンパク質と天然植物由来のポリマーを組み込んでいます。
今年初め、モダン・メドウ社はBio-Alloy技術で製造された最初の素材であるBio-Texを発表しました。モダン・メドウとの提携により、イタリアのリモンタ社はBio-Texを使って、「ビーガン植物由来素材ファミリー 」と称されるBioFabbricaを製造しています。「軽量で優れた色の鮮やかさと性能を実現し、従来のクロムなめし革と比較してGHG排出量を90%以上削減」しています。
この過程に、より多くのリサイクル素材や廃棄バイオ素材を取り入れることにも取り組んでいると、モダン・メドウ社とリモンタ社は述べています。
3. タンポポから生まれたサステナブルタイヤ
電気自動車は、世界的なエネルギー転換の重要な要素ですが、それでも廃棄タイヤを生み出し続けています。そして、タイヤそのものに加えて、路上での摩耗や損傷によるマイクロプラスチック汚染も。
自動車の関係者は、解決策を模索してきました。一見明白な選択肢の一つは、天然ゴムの使用量を増やすことです。しかし、少なくとも現在のサプライチェーンでは無理な相談です。
ゴムの木であるHevea brasiliensisは、世界経済における天然ゴムの唯一の供給源です。そのゴムの木は、現在、気候変動や破壊的な病害などの問題により、種全体が脅威にさらされています。代替資源が出現しない限り、天然ゴムの需要は10年以内に供給量を上回ると予想されています。
タンポポが代替資源となるかもしれません。「タンポポゴム」の歴史は、第二次世界大戦でサプライチェーンが寸断された後、1940年代に研究者が新しい供給源を探したことに遡ります。
最近では、アメリカ空軍研究所がグッドイヤー社と共同で、航空機用タイヤへの応用を目的とした新たなタンポポゴムの開発に取り組んでいます。今年に入り、空軍研究所は予算を増額して、グッドイヤーとオハイオ州のファームド・マテリアルズ社とともに、タンポポの一種であるコクサギ(TK)を育てる複数年の研究開発契約を結びました。
TKの根を砕くと、天然ゴムができます。この加工は、米国国防総省が支援する官民のバイオエコノミー・パートナーシップ「BioMADEプログラム」を通じて行われる予定です。グッドイヤーは、このゴムを空軍の仕様を満たしたタイヤに取り入れる予定です。このタイヤが期待される性能を満たせば、グッドイヤーの製品ライン全体への応用が期待されます。
4. 木から再生可能な「鉄」
世界の鉄鋼業界は、脱炭素化のためにグリーン水素、電化、リサイクルに注力してきました。これとは異なる解決策として、高強度な代替素材が登場しました。その一つがセルロースベースの素材のメトルウッドで、「建築用鋼鉄の60%の強度を持ちながら、80%軽く、はるかに安価で、はるかに持続可能」と説明されています。
メトルウッドは、スタートアップ企業インベントウッドの研究室で創り出されました。同社は、メリーランド大学から誕生した企業で、同大学材料科学工学科のハーバート・ラビン特別教授であり、同大学材料イノベーションセンターのディレクターを務めるリャンビン・フーが設立したものです。
メトルウッドは、さまざまな樹木から作ることができます。共通するのは、通常木の細胞を結合しているリグニンという「接着材」を除去する新たなプロセスです。接着材を除去したあとの木材はより高度に圧縮することができ、その結果、非常に高密度でありながら軽量な素材となります。
米国エネルギー省は最近、メトルウッドの普及を広めるための資金として、インベントウッドに2,000万ドルを授与しました。インベントウッド社の研究チームは、鋼鉄製の構造梁、柱、接合部をメトルウッドに置き換えることで、建設業界における温室効果ガスの排出量を30年間で37.2ギガトン削減できると計算しており、これは人間活動による1年間の総排出量にほぼ相当します。
5. ダチョウの骨でコバルトを回収する
材料科学やバイオエコノミーの近年の発展にもかかわらず、研究者たちはバイオベースの代替素材が合成素材よりも優れている可能性に手をつけ始めたばかりです。米国とイランの科学者チームが行った新しい研究は、その可能性を垣間見せてくれます。
ダチョウの廃骨に過酸化水素を添加することで、工業廃水からコバルトなどの価値ある物質を効率的に回収するプロセスを開発したのです。
特に注目されるのは、繊維、皮革、紙、食品、農業、医薬品など、さまざまな主要産業から出るコバルト塩基性染料を含む廃水です。
コバルトはさまざまな使途がありますが、特に電気自動車の製造や太陽・風力エネルギーの生産に欠かせない材料です。現在、メーカーは、紛争問題や人権侵害の影響を受けやすいコバルトのサプライチェーンに依存しています。バイオエコノミーによる廃水回収は、代替の供給源となると同時に、需要増に伴ってコバルトの供給量を増やせるかもしれません。
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タンポポゴムに、木でできた鉄、ダチョウの骨でコバルト回収!
面白いですねー!具体的な先進事例で、少しイメージが広がったでしょうか?
もちろん、新しい技術や製法が新たな環境負荷を生んでいないかをしっかり見ていく必要はありますが、「バイオエコノミー」、これからのキーワードの1つです。ぜひご注目ください!