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アニマルウェルフェアに関する内外の取り組み

2023年07月08日
アニマルウェルフェアに関する内外の取り組み

Photo by Grant Brookes on Unsplash

https://unsplash.com/photos/EdWAQg9_GVQ

「アニマルウェルフェア」という言葉を見聞きすることが少しずつ増えてきましたね。

アニマルウェルフェアは、「動物たちは生まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、幸福(well-being)な状態でなければならない」という考えを背景として欧米で誕生しました。

「動物福祉」と訳されることもありますが、 最近ではカタカナのまま使われることが多いです。

例えば、日本では、ほとんどの採卵鶏(卵を産むために飼育されている鶏)は、 「バタリーケージ」と呼ばれるおよそB5サイズほど大きさの檻に閉じ込められたまま一生を過ごします。また、豚肉用の子豚を産むための母豚の多くも、妊娠ストールとよばれる檻の中で身動きが取れない状態に置かれています。

アニマルウェルフェアは、こうした近代畜産の現場で、家畜をできるだけ自然に近い形で飼育しよう、という取り組みです。動物たちも意識があり、痛みや苦しみを感じます。家畜の飼育過程の痛みや苦しみを減らすこと。 また、生産効率を最大化しようとする過密飼育では、病気の感染を防ぐために抗生物質などが投与され、人間の健康への影響の心配もあります。

アニマルウェルフェアへの取り組みが進んでいる欧米などでは、バタリーケージや妊娠ストールを禁止している国も増えており、スーパーなどでもより自然に近い形で飼育された卵や肉を選んで買えるようになっています。

このような動きを伝えたい! 日本でも関心や取り組みを広げたい!という思いでブックレットを出版しました。

アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全』 枝廣淳子著 (岩波ブックレット)

メールニュースでも、ときどきアニマルウェルフェアについて取り上げてきました。

○9割の人が知らない「アニマルウェルフェア」~消費者の意識と行動が企業の動物福祉の取り組みを変える
https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2017/libnews_id008868.html

○岩波書店「世界」2017年6月号より 「私たちの食べている卵と肉はどのようにつくられているか―世界からおくれをとる日本」
https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2017/libnews_id009099.html

○アニマルウェルフェアへの日本企業の取り組みは進展しているか?
https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2018/libnews_id009737.html

○温暖化とアニマルウェルフェア
https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2019/libnews_id010040.html

○贈賄してまで埋めたくなかった世界と日本のアニマルウェルフェアのギャップ
https://www.es-inc.jp/library/mailnews/2021/libnews_id011049.html

また、アニマルウェルフェアに取り組む企業・味の素のラウンドテーブルのお手伝いもしてきました。
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/keyword/animal_welfare.html

アニマルウェルフェアに関するグループポリシー
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/policy/animal_welfare_policy.html

動物実験最小化にむけての考え方
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/materiality/animal_protection.html

「動物との共生」のあり方に関するラウンドテーブル
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/materiality/roundtable.html

幸せ研のニュースから、最近の世界の動きをいくつかお届けしましょう。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

ロンドン大学ゴールドスミス校、学内での牛肉の販売を禁止 気候変動対策の一環として
(ロンドン大学ゴールドスミス校より)

2019年8月、英国ロンドン大学のゴールドスミス校は、「9月から始まる新年度より、同校の歴史からビーフバーガーやペットボトル飲料を追い出す」ことを発表しました。同校は、他大学とともに「気候非常事態宣言」を行い、2025年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。今回の決定も、二酸化炭素削減に向けた大きな流れの一つです。

今回発表された内容は以下の通りです。

・2019年9月より、キャンパス内で牛肉製品を販売しない(※牛肉は豚肉や鶏肉に比べても、生産時に排出するCO2量が多い)

・ペットボトル飲料や使い捨てのプラスチックに対してさらに10ペンスの課金を行い、その収益を学生グリーン・イニシアティブ基金に使用する。

・キャンパス内の太陽光パネルを大幅に増やす

・可能になり次第、クリーンエネルギーのみを供給する業者に切り替える

・植林がCO2吸収を助ける見込みのある土地への投資を続ける

・ゴールドスミス校のすべての学生が、どうすれば気候変動についてや、CO2を削減する個人や団体の役割に関する研究をカリキュラムで選択できるかについて再検討する

また、同校は2019年12月1日より、収益の10%以上を化石燃料の採取で得ている企業への投資から手を引くことも発表しました。同校はすでに250万ポンドを、CCLAチャリティ・エシカル投資ファンドに移しています。同ファンドは、化石燃料から収入の多くを得ている企業からの投資撤退を最近決定しました。

(新津 尚子)

関連リンク
この記事の原文はこちら(英語)
https://www.gold.ac.uk/news/carbon-neutral-plan/

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オーストラリア、家禽のアニマルウェルフェアに関する基準・指針を発表

最近「アニマルウェルフェア」という言葉を目にすることが多くなりました。「動物たちは生まれてから死ぬまで、その動物本来の行動をとることができ、幸福(well-being)な状態でなければならない」という考えのもと、世界でアニマルウェルフェアの意識が高まっています。

2022年8月、オーストラリア政府は「家禽のアニマルウェルフェアに関する基準・指針」を発表しました。同国にはこれまで自主的な取り組みを促す規定がありましたが、今回さらに改善され、法的に義務付ける「基準」が盛り込まれています。

オーストラリアでは、大半の採卵鶏が「バタリーケージ」(平均面積430平方センチメートル)と呼ばれる狭い檻の中で卵を産まされ、一生を終えます。今回の改善策では、例えば次のような飼育方法が定められました。

基準
・1ケージに1羽を飼育する場合、面積1000平方センチメートル、高さ55センチメートル以上のケージを使用する。
・この移行は段階的に実施され、2036年にはすべての採卵鶏が新基準のケージで飼育される。

指針(自主的な取り組み)
・人工照明あるいは自然光を、1日に連続して最低8時間ケージに採り入れる。

EUやスイス、ニュージーランドなどでもバタリーケージが全面的に禁止されており、世界中の国や地域でアニマルウェルフェアの法整備や取り組みが着々と進められています。

(佐々 とも)

オーストラリアの「家禽のアニマルウェルフェアに関する基準・指針」はこちら(英語)
https://www.agriculture.gov.au/agriculture-land/animal/welfare/standards-guidelines/poultry

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アニマルウェルフェアへの懸念が上位に:英国の消費者調査結果

英国政府機関の食品基準庁(FSA)は、2022年8月10日、食品に関する消費者調査Food and You2の最新の調査結果を発表しました。

Food and You2は、食の安全性を初めとする食品関連の幅広い項目に関して年2回行われる調査で、今回は、英国、ウェールズ、北アイルランドの成人5796人を対象に2021年10月から2022年1月の間に行われました。

例を挙げると、「食品の安全性やラベリング、サプライチェーンでの信頼性」の項目では、回答者はそれぞれ「購入する食品の安全性(92%)」「食品ラベルの情報の正確さ(86%)」「サプライチェーン(76%)」を信頼していると答えています。

「食に関する懸念」の項目では、自分が食べる食品に関して86%の回答者は「懸念はない」と答えました。ただし、選択肢から懸念している項目を選んでもらった場合には、「食品廃棄(63%)」「食品中の砂糖含有量(59%)」「アニマルウェルフェア(56%)」が上位3位に挙がっています。

さらに懸念の程度を尋ねた質問では、「非常に懸念している」が一番多かったのは「食品生産過程におけるアニマルウェルフェア」で、「ある程度懸念している」を合わせると、回答者の76%が食品生産過程におけるアニマルウェルフェアについて懸念していることがわかりました。

エイミー・マイルズFSA長官は、「本調査は、FSAの核となる『食の安全性における責任』への重要な洞察だけでなく、持続可能性や食の安全性、食生活などでの人々の認識や行為の詳細な現況を提供してくれる」と述べています。

(有光圭子)

この記事の原文を読む(英文)
https://www.food.gov.uk/news-alerts/news/fsa-flagship-survey-reveals-how-we-all-eat-today#revision-log

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ペットショップでイヌ、ネコ、ウサギの販売を禁止する新法、米国ニューヨーク州で成立

「パピーミル(puppy mill)」という言葉を聞いたことがありますか? これは「子犬工場」を意味し、ペットショップで販売するために動物を劣悪な衛生環境で量産する悪徳ブリーダーのことを指します。米国の動物虐待防止協会(ASPCA)は、全米最大のパピーミル市場の一つにニューヨーク州を挙げています。

そのニューヨーク州では2022年12月15日、キャシー・ホークル知事が州内のペットショップでイヌやネコ、ウサギの販売を禁止する法案に署名し、法律が成立しました。新法は2024年12月から施行されます。その狙いは、十分な餌を与えなかったり、適切な医療を受けさせなかったり、社会性を身につける機会を奪ったりするなどの虐待をする、大規模なパピーミルによる動物の売買を防ぐことです。

ペットショップはどうなるのでしょうか。新法では、ペットショップは動物保護施設や救済組織と協力して、保護された動物を里親として引き取りたい人と保護動物が出会えるシェルターの場所を提供し、その費用を請求することができる、と定められました。

米国では、すでにカリフォルニア州やメリーランド州でペットショップでの販売が禁止されており、今後パピーミルの撲滅に向けた取り組みがさらに進むと期待されます。

(佐々 とも)

この記事について詳しくはこちら(英語)
https://www.governor.ny.gov/news/governor-hochul-signs-legislation-end-puppy-mill-pipeline

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最後に日本の動きから。

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アニマルウェルフェア(AW)認証や評価の動きが加速中! 政府もAW指針策定の方針

このところアニマルウェルフェア(AW)の認証や指針をめぐる動きが活発です。3つの動きを紹介します。

(1)山梨県では、2021年度に全国の自治体で初となる「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を創設しました。この認証には「エフォート〔取組(計画)認証〕」と「アチーブメント〔実績(成果)認証〕」の2つの認証区分があります。

エフォート認証は講習会の受講等により、AWの知識を習得しエフォート基準を満たすとともに、AWの取り組み宣言を提出した農場を認証します。一方、アチーブメント認証は、アチーブメント基準を満たした農場とそこで生産される畜産物などを認証するものです。

やまなしアニマルウェルフェア認証制度について
https://www.pref.yamanashi.jp/chikusan/yamanashiaw.html

(2)乳牛のAW認証を2016年から運用している一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会は、肉牛の評価方法を2022年3月に公開するなど、肉牛の認証に向けて動いています。肉牛は牛体の清潔さなど動物ベースの12 項目、1頭あたりの飼槽幅など施設ベースの13 項目、濃厚飼料給与量など管理ベースの19 項目の計44 項目で評価されます。

肉牛のアニマルウェルフェア評価法
http://animalwelfare.jp/wp-content/uploads/2022/03/hyoukahou_BE_2022.pdf

(3)農林水産省は2022年1月に、第1回「アニマルウェルフェアに関する意見交換会」を実施しました。委員は、生産者、食肉・食鳥処理場関係者、 流通・外食関係者、消費者団体関係者、学識経験者からなり、日本マクドナルドホールディングスやキユーピーからの参加者を含む22名が出席しました。農水省はこの意見交換会で、各畜種ごとのAWの指針を国が策定していく方針であることを明らかにしました。

アニマルウェルフェアに関する意見交換会の開催状況
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare_iken.html

(新津尚子)

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世界トップのアニマルウェルフェア先進国はどこだと思いますか? その国ではどのくらい取り組みが進んでいるのでしょうか?

続編もどうぞお楽しみに!

最後にお知らせを。読書会、自分合宿、翻訳道場、変化の理論などのほか、システム思考の中級編セミナーも開催します!

7月13日(木)18:30~20:30
幸せ研読書会『レジリエントな社会』(著:マーカス・K・ブルネルマイヤー)
https://www.ishes.org/news/2023/inws_id003429.html

7月31日~8月1日
【先着20名限定】国内トップのJブルークレジット(R)認証の町、洋野町で枝廣淳子と学ぶ2日間の旅
https://bluecarbon.jp/news/002100.html

これからの自分の人生、ゆっくりと心の声に耳を傾けながらじっくり考えてみませんか。
7月29日(土)
「ビジョンを描き、レジリエンスを高める」自分合宿 2023夏@熱海orオンライン受講
https://www.es-inc.jp/seminar/2023/smn_id012438.html

9月2日(土)~3日(日)@熱海
変化の担い手のためのスキルアップ講座「システム思考中級編」
システム思考の基礎を身につけた方を対象に、「システム原型」や「12のレバレッジポイント」など、中級のスキルや考え方を学んでいただくセミナーです
https://mirai-sozo.work/topics/012651.html

ChatGPTを活用しての翻訳作業もやってみます! じょうずに使いこなし、人間の翻訳者に求められる力を知りましょう。
9月10日(日) 翻訳道場
https://www.es-inc.jp/seminar/2023/smn_id012640.html

10月28日(土)~29日(日)@熱海
変化の担い手のためのスキルアップ講座「システム思考をベースに変化の理論をつくる」
1日目(10月28日):13:00~17:00
2日目(10月29日):9:00~17:00
https://mirai-sozo.work/topics/012689.html

★おいしく応援!(オンラインショップ)
【熱海・未利用魚便】何が届くかお楽しみ1キロ鮮魚便!
https://mirai-sozo.work/topics/012688.html

★メール講座 
やりたいことを着実に進める力を身につける「自分マネジメント 1カ月ナビゲーター」
https://www.es-inc.jp/seminar/smn_1mnavi.html

★メール講座「英語を話すための30本ノック」アップデート版
https://www.es-inc.jp/seminar/smn_30pon-knock.html

 

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