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日本でもそうですが、世界各地で気候変動による災害が増えています。
米国海洋大気庁(NOAA)は先月、「2023年(9月11日現在)、米国に影響を及ぼし、損害額がそれぞれ10億ドルを超えた気象・気候災害は23件確認されている。洪水2件、暴風雨18件、熱帯低気圧1件、山火事1件、冬の嵐1件で、これらの災害は全体で253人の死者を出し、影響を受けた地域に大きな経済的影響を与えた」というレポートを出しました。
こちらには、被害のようすがプロットされている米国の地図も載っています。
https://www.ncei.noaa.gov/access/billions/
カリフォルニア州、フロリダ州、ルイジアナ州など、災害の影響を受けた州では、保険会社が新規契約の引き受けを中止すると発表しています。気候変動による被害は悪化する一方、保険の対象にならない地域が増えてくることが心配されています。
気候変動に伴って増えてきたもう1つのものは、訴訟です。日本でも企業の株主総会で、温暖化に関する株主提案が増えてきていますが、米国などでは訴訟も増えてきています。幸せ経済社会研究所でもウォッチしており、いくつかの動きをニュースにして発信しています。3件、こちらでも共有します。
~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~
米国オレゴン州マルトノマ郡、大手石油企業などを訴える 2021年の異常気象を巡って
米国、オレゴン州マルトノマ郡は2023年6月22日、2021年のヒートドームで生じた気候災害の損害について、エクソンモービルやシェルなど化石燃料と石炭の生産に関わる大手企業や、コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに対する訴訟を起こしました。
ヒートドームは、高気圧が長い間停滞することで、その下に熱い空気が閉じ込められて生じる現象です。2021年6月25日から同郡は、過去に例をみない猛烈な熱波に襲われました。3日連続で同郡の気温は、摂氏42.2度、44.4度、46.7度に達しました。これは、この地域の平均気温を最大22度上回り、同郡の観測史上最高の気温となりました。この熱波により、69名が死亡したほか、物的損害のために税金と郡の財源からの多大な支出を余儀なくされました。
その後、世界で最も経験豊富で敬意を集めている気候科学者数名が原因を調査しました。研究結果はすべて「この現象は、大気を汚染した化石燃料の排出が原因である。汚染は地球の気温上昇や、地域の干ばつ・土壌の乾燥をもたらした。こうした状況が、太平洋北西部上空に停滞した高気圧と結びついたことで、普段は温暖な気候の地域が、まるで対流式オーブンのような状態に変わった」というものでした。
郡はこの訴訟で、実際の損害として5,000万ドル、将来の損害として15億ドルを求めている他、人々の健康を守るための公的医療サービスとインフラへの推定500億ドルの財源を求めています。
なお、コンサルティング会社のマッキンゼーについては、「石油大手に助言を行っている」という理由と言われています。今後、このような訴訟が増えていきそうです。
(新津 尚子)
関連リンク
この記事について詳しくはこちら(英語)
https://www.multco.us/sustainability/news/multnomah-county-sues-oil-companies-over-2021-heat-dome-disaster
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モンタナ州の気候変動訴訟、若者活動家が米国初の歴史的な勝利を収める
米国モンタナ州の地方裁判所は2023年8月14日、クリーンで健康的な環境を約束し、すべての州民に享受する権利があると定める州憲法に、モンタナ州の法律は違反している、という若者活動家たちの主張を認めました。
モンタナ州の環境政策法は、州当局が環境評価で温室効果ガスの排出や気候変動の影響を考慮することを事実上禁止しており、化石燃料の採掘と燃焼を優遇するような法律になっています。
5~22歳の16人の気候活動家たちは、干ばつ・熱・火災・煙・洪水が大気や水、野生生物、公有地に悪影響を及ぼしている現状を踏まえ、クリーンで健康的な環境と個人の尊厳、法の平等の保護に関わる憲法上の権利を守るよう訴えました。裁判所はその訴えを認め、温室効果ガスの排出を増加させて気候変動に寄与し、若者の権利を侵害している州法は違憲である、と判断したのです。
これは若者が気候変動訴訟で州憲法上の権利をめぐって勝訴した初めての判決になります。原告の代理人を務める非営利団体「私たちの子どもの信頼」の所長兼弁護士ジュリア・オルソン氏は、「欧米で化石燃料の汚染がもたらす森林火災が猛威を振るう中、モンタナ州の判決は、人間起因の気候カオスによる破壊的な影響から地球を救う、という若者世代の取り組みに転換点を作り出すきっかけになる」と語っています。
米国ではユタ州やバージニア州、ハワイ州でも若者活動家による気候変動訴訟が進行中です。
(佐々 とも)
関連リンク
若者活動家対モンタナ州の裁判について詳しくはこちら(英語)
https://static1.squarespace.com/static/571d109b04426270152febe0/t/64da6d67161d05783fbca2f9/1692036457635/08.14.2023+Montana+Climate+Youth+Win.pdf
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英グランサム気候変動・環境研究所は2023年6月、気候変動訴訟の世界動向に関する最新報告書を発表しました。報告書によると、気候変動訴訟は世界で少なくとも2341件(2023年5月31日時点)確認されており、過去1年間にやや減少したものの、2015年のパリ協定以降、増加しています。
最近の傾向として、NGOや個人が訴えを起こす事例が増えています。気候ガバナンスの決定から除外されたり、それに不満だったりするグループが、交渉のテーブルにつくためのツールとして訴訟を利用するなどしているのです。
気候変動訴訟には主に、
○政府に、気候政策を改善するよう要求するもの、
○政府や企業に、気候への考慮と意思決定を結びつけ、有害な政策やプロジェクトを中止するよう求めるもの(新たな化石燃料プロジェクトの開発に抗議する事例が多い)、
○公共団体や国営金融機関、民間銀行、年金基金などに、大量に炭素を排出するプロジェクトや活動への資金提供をやめるよう求めるもの、
○気候変動に寄与したとされる政府や企業などに、現在・過去の金銭的な損失と損害への補償を要求するもの、
○政府や企業に対して、低炭素社会への転換の貢献や気候科学の誤情報に関して的確でない言及や宣伝をする「気候ウォッシング」に抗議するもの、
などです。
暫定あるいは最終的に確定された549件の訴訟のうち、301件(約55%)が原告側に有利な判決でした。気候変動訴訟は今後の対策に大きな変化をもたらすと期待されています。
(佐々 とも)
関連リンク
報告書「気候変動訴訟の世界動向2023年版」はこちら(英語)
https://www.lse.ac.uk/granthaminstitute/publication/global-trends-in-climate-change-litigation-2023-snapshot/
~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~
こうした動向を見るにつけ、本質的で効果的な問題解決に向けて、「バックキャスティング」、「システム思考」、「変化の理論」、「コミュニケーション」、「合意形成」――こうしたスキルや力がますます重要になる!と思っています。私たち自身も、次世代のユースも。
未来創造ユースチーム
https://www.miraisozo-youth.com/accepting-applications
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