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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sargassum_sp._%28Sargasse%29.jpg
4月12日に、環境省から「2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について」が発表されました。
https://www.env.go.jp/press/press_03046.html
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2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量は、約10億8,500万トン(二酸化炭素(CO2)換算、以下同じ。)で、2021年度比で2.3%(約2,510万トン)の減少、2013年度比では22.9%(約3億2,210万トン)の減少となりました。
過去最低値を記録し、オントラック(2050年ネットゼロに向けた順調な減少傾向)を継続しました。
代替フロン等4ガス(HFCs・PFCs・SF6・NF3)の排出量は約5,170万トンで、2021年比で1.4%の減少となり、2009年以降初めて減少しました。
なお、HFCsについては、フロン排出抑制法への改正によって使用時漏えい対策が導入されたこと等を踏まえて、排出係数(使用時漏えい率)を見直し、2016年以降に適用しました。
今回の国連への報告では、世界で初めて、ブルーカーボン生態系の一つである海草藻場及び海藻藻場における吸収量を合わせて算定し、合計約35万トンの値を報告しました。
今後は塩性湿地・干潟の算定についても検討を進めます。
また、3類型(4種類)の環境配慮型コンクリートによる吸収量(CO2固定量)を同じく世界で初めて算定し、合計約17トンの値を報告しました。
今後はJクレジット化に向けた検討を進めます。
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熱海でブルーカーボンに取り組み、全国規模のブルーカーボンネットワークを主宰する立場として、今回、藻場の吸収量を算定・報告したことは大きな一歩です!
世界ではすでにさまざまなブルーカーボンの取り組みが、さまざまな規模で広がっており、カーボンクレジットにもつながっています。
ブルーカーボンネットワークの内外の取り組み紹介など、ぜひご覧下さい。
https://bluecarbon.jp/initiatives/
さて、The Business of Doing Better"を掲げるウェブサイト「Triple Pundit」に、ユニークな取り組みを紹介する記事がありましたので、編集部の許可を得て、日本語でご紹介します。
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2023年夏、大規模な侵略が起こった。大西洋に巨大な海藻の島が出現し、海岸に漂着したのだ。以前にもマット状になった褐藻がカリブ海の熱帯地域の海岸を覆ったことはあったが、2023年の異常発生は過去最大級であり、その範囲は5,000マイル以上に及んだ。
この褐藻類は、サルガッサム(ホンダワラ属の海藻)だ。自然に塊となって浮遊するマットのようになる。2011年以降、大西洋中央部とカリブ海でこれまでになく頻繁に見られるようになった。かつては、この海藻の名前の源である大西洋中央部のサルガッソ海でしか見られなかったが、今やサルガッサムのマットはどんどん増えて、生態系にダメージを与え、経済に悪影響を及ぼしている。
それでも、進取の気性に富んだ企業は、大量の藻類に果敢に取り組み、靴や紙、飼料、堆肥、炭などの製品に生まれ変わらせている。そうした企業の一つであるSeaweed Generationは、異なるアプローチでこの問題に取り組んでいる。ロボットである。同社の海上装置は、海をきれいにすると同時に炭素を隔離するのだ。
○海藻のせいで窒息しそうな生態系
小さなサルガッサムのマットは、ウミガメや魚、カニ、鳥に餌と安全な場所を提供するため、有益である。また、シイラやアジ科の魚など商用の魚種にとって重要な生育地でもあるし、漂着すると海辺の浸食の抑制にも役立つ。
問題は、サルガッサムが手に負えないほど大きくなった場合だ。大増殖すると日光を遮って、下にある貴重な海草を死なせてしまう。サルガッサムが死んで分解すると、サンゴを窒息させ、水中の酸素を奪い、魚を死なせてしまう。また、ウミガメにとっても、大事な営巣地への行く手を阻まれたり、孵化したばかりの子ガメが沖合へ泳いでいくのが妨げられたりするといった問題となる可能性がある。
さらに悪いことに、最近、大増殖したサルガッサムにはバクテリアに覆われたプラスチック破片が大量に含まれていた。これらのバクテリアはリーキーガット症候群(腸漏れ)を引き起こす遺伝子を有しており、魚や甲殻類、タツノオトシゴに病気をもたらしている。
○サルガッサムのもたらすコスト
こうしたサルガッサムの異常発生は、経済にも打撃を与えている。茶色いスライムの山は、呼吸器疾患を引き起こす可能性のある腐った卵のような臭いを発し、観光客を遠ざけている。例えば、2018年にサルガッサムの大発生に見舞われた地域で、バルバドスのホテルは客室の稼働率が低下した。一方で、海藻に覆われていない地域のホテルは稼働率が上昇した。カリブ海諸島では観光業は600億ドル以上を生み出し、多くの国でGDPの半分までを稼ぎ出している。同様に、フロリダ州でも観光業は最大の産業の一つであり、つねに同州のGDPに800億~950億ドルの貢献をし、数百万人の雇用を支えている。
さらに追い打ちをかけるような話だが、サルガッサムを除去するには多額の費用がかかる。2018年、カリブ海全体での除去費用は1億2,000万ドルを超えた。膨大な量の海藻をどう処理するかも悩ましい。ヒ素やその他の重金属が含まれているため、食用や肥料には適さない。しかし、海藻をそのままにしておくと、淡水化プラントや発電所のパイプを詰まらせたり、漁船や装置、漁具を破損させたりする可能性がある。
○海藻の解決策
他社の目には「浮かぶゴミの山」に見えていたが、Seaweed Generationの目にはチャンスに映った。ビーチクリーンや製品開発ではなく、その発生源に集中して取り組んだのだ。
「サルガッサムの問題に対処しようとするならば、沖合で対処しなくちゃならない」と、Seaweed Generationの共同設立者で最高科学責任者のMike Allenが言う。「いったん海辺に流れ着いたら、もう手遅れだ。そして2つ目の大きな問題は、海辺に流れ着くとすぐに腐り始めることだ」
Seaweed Generationはオニイトマキエイにヒントを得て、AlgaRayという海藻回収ロボットを作った。このロボットは、海面をゆっくりと滑るように移動しながら有害な海藻を集め、200メートル潜って海藻を放す。これだけ深いと、海藻の浮力を保つ空気嚢が圧縮されるのえ、サルガッサムは海底に沈んでいく。こうして、このロボットは1時間に4~6回、海の清掃活動を繰り返すのだ。
「炭素の点から見ても素晴らしいところがお気入りなんだ。このロボットは太陽光発電で動いていて、エネルギーのフットプリントはごくわずかだからね。やっているのは、海藻のバイオマスを200メートルほど動かすことだけ。これがエネルギーコストのすべてさ」とAllenは語った。
このロボット操作には、主な利点が2つある。藻類を海面から取り除くことと、炭素を隔離することだ。サルガッサムは光合成のために周囲の海水から炭素を取り込む。海洋は巨大な炭素吸収源であり、大気から排出される二酸化炭素の約31%を吸収している。海藻は放っておいても海底に沈むことがあるが、AlgaRayはこのプロセスの増幅しようとするものだ。
Seaweed Generationの推定によると、1,000メートルより深い水深では、海藻とその炭素の大部分は何百年もそこに留まるはずだ。
実際、深海は炭素にとってブラックホールのようなものだ。深海の炭素貯留量は、海洋表層と陸地、大気の貯留量を合わせたものの17倍にもなるとAllenは述べている。
Seaweed GenerationのAlgaRayの沖合モデル1機だけでも、年に8万トンものサルガッサムを沈めることができるはずだとAllenは言う。これは8,000トン以上の二酸化炭素を除去するのに等しく、13万2,000本以上の苗木を10年間育てるのと同じ効果がある。
○海藻の隔離の課題
Seaweed Generationは素晴らしいスタートを切ったが、前途にはいくつかの障害がある。サルガッサムを除去することで私たち人間にとっての問題を取り除くことはできるが、海底に生物がいないわけではない。しかし、Allenによると、同社はサルガッサムが沈んでいく自然のプロセスを真似て、沈めた海藻を拡散させするつもりだという。
さらに、AlgaRayの活動を補完するロボットが、サルガッサムを除去した海面とそれが沈められた海底をモニタリングし、こうした深海の生態系のレジリエンスを測定している。同社は、サルガッサムの山が海岸に流れ着くのを防いだ後、サンゴ礁やマングローブのような繊細な沿岸生態系の回復について測定する予定だ。
もう一つの大きな課題は、顧客にどうリーチするか、だ。「当社の問題は市場だ」とAllenは言う。「当社は非常に迅速に規模拡大することができるが、最終的に必要なのは、顧客や二酸化炭素除去クレジットを購入しようという人々だ。現在のところ、ボランタリー市場なんだよね」と述べている。
そんな状況でも、Seaweed Generationは計画を進めている。Allenによると「当社はアンティグア政府と協定を結んでおり、間もなく調印する予定だ。アンティグアの排他的経済水域内の500平方キロメートルの範囲で49年間のリース協定だ。水深は4,000メートルを超えるため、沈めるには最適の場所だ。さらに、もっと海岸に近い場所についても、ホテル団体から多くの関心が寄せられている。その場合、サルガッサムをつかまえて、安全に荷揚げできる港に運ぶか、ほかの場所に移すか、あるいは沖合まで運んで沈めることになるだろう」と言う。
○海洋の保護
結局のところ、藻類の大量発生は簡単に解決できる問題ではない。藻類は、栄養塩の流出など、網の目のように広範囲に広がる現象につながっているのだ。
「このサルガッサムが増えている原因は、多くの要因が絡み合っているが、どの要因も無くなってはいない」とAllenは言う。「森林伐採が水の急速な流出につながっている。集中的に肥料を使用するから、ミシシッピデルタ、アマゾン川、コンゴ川に栄養素が流出し、それはすべて大西洋にやってくる。海洋はますます多くの二酸化炭素を吸収しているため、さらに多くの二酸化炭素が海洋中に存在するようになっている。そして海洋の温暖化が起こっている......まるで、そういったあらゆる環境変動に対して自然が反応しているようだ」
この問題に真正面から取り組み、ミシシッピ川からオリノコ川までの主要な河川をきれいにすることは、藻類の大量発生を緩和する一助になるだろう。大きな努力が必要だが、これが最も永続的な解決策かもしれない。それまでの間、Seaweed Generationのような企業は、サルガッサムの希望の光を見つけるために最善を尽くしているのだ。
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社会や地域の「問題」を解決しながら、「より大きな問題の解決の手段」にもしちゃう!という一石二鳥の発想と実際の取り組み、素晴らしいですねー!
さて、私のお気に入りのTriplePunditのサイトには面白い記事がいっぱいあるのですが、英語なので、メールニュースなどで紹介したいなあと思ったときには、翻訳チームのメンバーにお願いして日本語にしてもらっています。
15年ほど前から、「200人の翻訳者を育成すれば、1冊の本も1日で訳せる!」と、翻訳者育成のコースや道場を行ってきましたが、朝から夕方までの時間をとるのが難しい人が増えてきたこともあり、さらに集中力を持ってもらってトレーニングしたいこともあって、今回から2時間のセッションで行うことにしました。
最近の翻訳者は、自動翻訳やAIをじょうずに使いこなして、「人間だからこその強み」が創り出せるかが大事になってきました。そんな観点も入れて、この時代だからこそ、必要とされる翻訳者になるにはどうしたらよいかもお話ししたいし、そのためのトレーニングも行いたいと思っています。
事前準備なし、当日の2時間だけですから、気楽に参加いただけると思います。よろしければ、初めての方もぜひどうぞ!
5月31日(金)19:00-21:00「英日翻訳・集中トレーニングセッション」
詳細やお申し込みはこちらをご覧下さい。
https://www.es-inc.jp/seminar/2024/smn_id012958.html
こういったトレーニングを積んでひとり立ちしてくれたメンバーの力も借りながら、これからも世界の情報を伝えていきたいと思います!
あ、もう1つ、お知らせです。
5月14日(火)に開催する幸せ研読書会では、『西洋の哲学・東洋の思想』を取り上げます
https://www.ishes.org/news/2024/inws_id003525.html
私たちの多くは、「東洋的な考え方と西洋的な考え方は違うところがある」と感じていると思います。日々、そういった違いに直面していらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
でも「どう違うんですか?」と聞かれたとき、すっきりと整理して答えられる人はそれほど多くないことでしょう(本書を読む前の私も含めて!)
本書を読むことで(または読書会に参加してエッセンスのレクチャーを得ることで)、「どう違うか」をすっきりと自分なりに答えられるようになります。自分がいろいろな考え方や事象を理解する際の枠組みを得ることができます。
西洋思想と東洋思想のどちらが良い、ということではありません。著者も呼べているように、生態系が多様性をベースに進化していくように、思考や思想も多様性があることで、さらに進化していくでしょう。そのとき、西洋思想と東洋思想は豊かな多様性のベースを提供してくれます。その多様性を理解するために、まず「西洋思想と東洋思想はどこがどう違うの?」を知ることです。
本書の第1章だけでも十分な学びが得られると思います!とくに、自然に対する考え方の違いは、私たちが関心を寄せるサステナビリティの問題に取り組む上でも重要な鍵を握っていると思います。
環境問題だけではありません。世界ではさまざま問題が起きています。西洋と東洋それぞれの哲学、自然観、人生観など、さまざまな考え方を比較して、違いを知り、理解することで、世界的な問題への解へのヒントやきっかけ、補助線が見えてくるのではないかと思います。ぜひみんなで一緒に対話をしながら考えることができたらと思っています。
よろしればぜひ! みなさんのご参加をお待ちしております。
https://www.ishes.org/news/2024/inws_id003525.html