昨日のメールニュースに対して、何人かの方から、「国連もやりますなぁ!」「調べてもその記事が見つかりませんが、どこに載っていますか?」等のメールをいただいてしまいました。(^^;
> (ってことを、4月1日じゃない日に書ける日が早く来ますように! ^^;)
と3パラ目に書いたように、エイプリルフールでしたので、「こうだったらいいな!」という私の夢を書かせてもらったのでした。いっしょに夢見てもらえてうれしいですけど、まだ国連はそこまで言っていませんので、、、残念ながら。
さて、3月16日に開催されたシンポジウム「地球温暖化防止、世界と日本」(日本経済新聞社など主催)に参加させていただきました。ブレア前英首相の力強い基調講演も、パネルディスカションでの石原都知事のお話も、とても面白かったです。
当日の自分のメモをご紹介します。自分用のメモなので、網羅的ではなく、また聞き間違いなどもあるかもしれせんが、ご容赦ください。それでもご参考になる部分もあれば、幸いです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
●ブレア前首相の講演
よいニュースがあります。世界の態度が大きく変わってきたということです。3年前、2005年にG8サミットで、温暖化やアフリカのことをアジェンダに取り上げようと私が言ったとき、なかなか賛同を得るのが難しかった、その時代から比べれば大きく変わってきたものです。当時、そのままではG8では難しいというので、プラス5として、13カ国でそのような話をしました。
またEUでは、排出権取引を実際に行っており、2020年までに温室効果ガスを20%削減しよう、そして世界が合意をするなら30%減らそう、という計画を立てています。また、アメリカでも大きく態度が変わりつつあります。産業界もそうですし、政府もそうです。
日本やEU、アメリカといった先進国は、80%以上排出を削減しなくてはいけません。人口一人当たりにすれば、EUや日本は5分の1に、アメリカは10分の1にする必要があるのです。このチャレンジの大きさは相当なものです。単なる調整や手直しですむ話ではなく、まさに革命、変革が必要なのです。
人口は途上国を中心にこれからも増え続けます。60億が90億になっていくでしょう。加えて、途上国では工業化がすさまじい規模で進んでいきます。そのとき、開発の仕方を変えていかないと、排出量はどんどん増えてしまいます。
しかし気候にとって、どの国から、どの地域から排出されているかは関係ありません。排出の全体量が気候を変えていくのです。
われわれの経済成長のあり方も、大きく構造的に変革をしていく必要があります。だからこそ、プラス5でフォーラムを行いました。中国、インド、ブラジルなどと一緒に話し合いをする土俵をつくったのです。
このように、地球規模で枠組みをつくり、合意を形成して進んでいかなくては、問題解決にはなりません。そして、そのときにどのような要素が必要か。これはもうほとんどがはっきりわかっています。これはよいニュースです。
どのような要素が必要かと言うと、まず技術開発に対して、商業的な機会となるようインセンティブをつけていく必要があります。だからこそ、キャップ・アンド・トレードがとても重要なのです。
キャップ(上限)を決め、排出権をトレード(取引)することで、強いマーケットビジネス・インセンティブをつくり出すことができます。排出量を減らそうというだけではなく、技術開発に向けてのインセンティブも大きくなるでしょう。また、CDMの仕組みを、より効果的、透明性の高い仕組みに変えていくことも必要です。
3つ目は、主に先進国から途上国に、大きな規模で技術移転を進める必要があります。
そして4番目に必要なのは、ピークアウトして、それから排出量を減少させるというコンセプトを、みんなにとってより身近なものにしていくということです。2050年では遠すぎます。ですから中間的な目標として、10年後なりの目標を出していく必要があるでしょう。
5番目には、森林消失に取り組むということです。森林は、温暖化の問題の20%を占めていると考えられます。そして、これはこれまで話していたようなものとは別の枠組みで交渉していく必要があります。
6番目に必要なのは、R&Dに対して大きな投資をしていくことです。それによって科学技術を加速していく必要があります。
7番目は、適応が必要だということです。温暖化を緩和していくにしても、ある程度の温暖化の振興は避けられませんから、適応をどう進めるかというのも重要なポイントです。
このような要素が必要だということは明らかになっている。これはよいニュースですが、一方で悪いニュースは、ではこれをどうやって組み合わせてつくっていくのか、ということです。
国連の仕組みがありますが、もちろんその意図はよいものですが、組織が大きいため、迅速な動きがしにくいという問題点があります。ですから私は「G8+5」という枠組みをつくりました。
私たちはみな、義務を負っています。先進国も途上国も同じです。ただしその義務は共通だが差異のある責任に基づいたものです。そういったとき、途上国にとって、どのような義務であれば公正であるといえるのでしょう? 先進国がきちんとやってこそ、つまり、キャップ・アンド・トレードで炭素に価格づけをして進めてこそ、なのです。
また、どうやって多排出型セクターの排出量を削減していくか。これを、国境を超えた形でやっていくかも重要です。ですから、何らかのセクター別の枠組みや取り決めもあり得るでしょう。
最後のポイントですが、このG8サミットは大きなチャンスです。アメリカでも主要排出国会議が開かれますし、国連のプロセスでも、コペンハーゲンでCOP15が行われます。
議論を進め、そして全体的な地球規模での目標をG8サミットで定める必要があります。そして、主要な要素と原理原則に合意をしなくてはなりません。そうしてはじめて、来年の議論に向けての方向性が出てくるのです。
日本はリーダーシップを取れる立場にあります。ダボスでの福田首相の演説もそうでしたし、京都議定書が誕生した土地でもあります。また、科学技術のリーダーであることは、ソーラーやハイブリッドを見ても自明です。
そして世界のなかでも、物事が起こりつつある中心に位置している。これも日本の強みです。アメリカとの強い関係もありますし、東洋に位置しているというのも大きな強みです。
●パネルディスカション(部分的なメモです)
(鴨下環境大臣)
G20では、セクター別の提案についても話し合われました。まずこれは、共通だが差異のある責任に基づいているということ、。そして、主要排出セクターのキャップをつくるための方法論であるという説明を行い、これは理解されました。
また、日・米・英でマルチ基金のイニシアチブを進めています。バリの行動計画を成功させ、コペンハーゲンへつなげていく、そのような役割を果たしています。どこまで経済か、どこまで環境か。この選択を一人ひとりが迫られることになるでしょう。
(石原都知事)
毛沢東の言葉で、「主要矛盾と従属矛盾」という言葉があります。温暖化は極めてやっかいな問題です。しかし、やっかいな問題の裏にはもっと複雑な矛盾がある、という言葉です。
温暖化問題は哲学でもあります。哲学というのは、存在と時間について考えることです。温暖化問題を考えるときには、自分たちや子孫の存在、そして時間についてしっかり考える必要があります。
人間は死ぬと、みんな知っています。しかし、自分が死ぬと本気で信じている人は少ない。つまり温暖化の問題も、みなが大変だと思っていますが、本気で考えている人はどれぐらいいるでしょう。本気で考えていく必要があります。
バリのCOP13はNothingでした。これは次の会議で何かを決めよう、ということを決めたにすぎません。
確かに、技術開発の努力も必要です。しかし、その開発した技術が経済性を持つよう、経済構造をつくっていく必要もあります。
東京はさまざまな施策を進めています。しかし、むなしい気持ちがします。地方でやってうまくいっても、国は沽券にかかわるんでしょう。絶対同じことはやろうとしないからです。
東京では、空気をきれいにするために、車の排ガス規制を厳しくしました。国がこれを全国に広げてくれればいいのですが、そうではないですから、いまでは東京に入れない、公害をまき散らす車は大阪あたりで走っており、大阪の公害を悪化させています。
しかし東京は、それでもやりますよ。開高健が書いた色紙に、ポーランドのビヨングという人の言葉があります。「たとえ明日地球が滅びるとも、君は今日、リンゴの木を植える」。
(日産自動車副社長 山下氏)
車からの二酸化炭素を半減するには、台数が増えていくことを考えると、1台当たりの排出量を90%減らす必要があります。しかし、2010年までに素早く手を打てば、そこまでしなくてもすみます。
2015年までに40%の二酸化炭素を減らそう。この目標を掲げ、トリプル・レイヤーで、「車」「人」「社会環境」の3層に対する働きかけをやっています。車はハイブリッドや電気自動車です。これは主に技術開発によって進めていきます。人の側面はエコドライブ、つまり無駄な加速や急ブレーキを踏まない。このようなことによって20%減らすことができます。
また、都心での自動車に乗っている時間の30%は止まっているといわれていまます。このような渋滞解消など、交通をめぐる社会環境を変えていくことで、20%減らすことができます。
このように考えれば、かなり減らすことができるのです。このような技術と社会的な施策を進めていく必要があり、日本や中国でいま、実証実験をしています。
(ブレア氏)
なぜ英国で排出量取引が進められ、日本では進まないかという質問ですが、多少、経済の仕組みがイギリスは違う、ということがいえるかもしれません。日本では製造業が重要ですが、イギリスは、よりサービス経済が中心ですから。
しかし、イギリスの産業界は、環境に対しての行動に賛成しています。それは、技術やビジネスチャンスをそこに見いだしているからです。世界はいま、キャップ・アンド・トレードの仕組みに動きつつあります。それにどのようにリンクしていくのか、それを考える必要があるでしょう。
EUでの排出権・排出量取引は、第2期に本当の削減が始まることになります。EUの事業者も、取り残されたくないと思って参加しているのかもしれません。この2、3年のうちに、アメリカでもキャップ・アンド・トレードが始まるでしょう。そういったときには、日本が、世界の動きを念頭に置きつつ動くことが望ましいのではないかと思います。
(石原都知事)
東京は、EUと米国の主要州などで構成する国際炭素取引協定(ICAP)に入るつもりです。それで国を引っ張り込むことができます。2010年から排出量取引を進めるつもりです。
ディーゼル車規制のときにも、周辺を巻き込みました。今回も巻き込みますかという質問ですが、首都圏の知事とは気が合うし、合意は得られると思っています。
自販機が一晩中必要なのか。コンビニも一晩中必要なのか。ネオンサインだって、10時ぐらいに消したらいいんじゃないか。こういったことも首都圏で連携してやっていけると思います。
(鴨下大臣)
セクター別とキャップ・アンド・トレードですが、トレードのやり方はいろいろあるでしょう。そしてキャップが国の産業構造に影響を与えるわけです。日本は、いまなお重厚長大産業が経済の中心です。そういったときキャップは、手かせ・足かせになるとして反対をしているのだと思います。
それは一理あります。しかし、いつまでも日本にとって重厚長大産業が、日本に冨をもたらすのかどうか、それを考えていく必要があります。
ある種のキャップを設けることでイノベーションが進み、新しい産業が生まれ、日本で競争力のあるセクターに育つという可能性だってあります。そうなってくると、既存のセクターとの闘いになるでしょう。しかし、それを乗り越えないと、キャップ・アンド・トレードは日本ではできないのです。
セクター別といったときに、積み上げてキャップがないということが批判されてきましたが、ダボスで首相が発表した国別総量目標というのは、セクターでの積み上げに加えて、キャップ(上限)があるということであり、私は画期的な話ではないかと思っています。そのための制度設計を、自分たちはやっていきたいと思っています。
しかし、キャップ・アンド・トレードをやるからといって、EU型のルールに従う必要はありません。日本なりのルールを提唱して、世界標準をつくっていけばよいと思うのです。
(ブレア氏)
科学者たちによると、2010年にはピークアウトする必要があると言っています。EUの2010年の目標は20%削減です。ほかの地域の削減目標を足しても、2020年にピークアウトというのは無理ではないでしょうか、という質問に対し、確かに難しいです。だからこそ、グローバルな場が必要なのです。
技術は間違いなく開発されると思っています。しかし、わかりやすいシグナルが必要なのです。2020年にピークアウトするのは難しいのは確かです。しかし、地球規模での枠組みができれば、大きな勢いがつき、ビジネスが技術開発を進めていくでしょう。
技術は、多くの場合、すでにあるのです。それをいかに市場へ持っていくか。そして普及するか。これが大事なポイントなのです。もしそのような勢いがつけば、速く進むことができます。
いま、時間がなくなりつつある。2009年末にそのような枠組みをつくって、さあ、進めていこうか、というのでは間に合いません。2020年のピークアウトは難しいのはそのとおりです。しかし、ほかに代替策はないのではないでしょうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ブレア氏の最後のメッセージ、私も同じ思いです。「大きな削減はいかに難しいか」「だからむだだ」という論議にときどき出会いますが、こう答えます。
「難しいのは確かにそうです。でも、難しいと言っていても、何の解決にもなりません。やるべく大きな削減をめざして、やるしかない。ほかに代替案はないのではないでしょうか? 難しいからといって、今やろうとしていることに反対したり、批判・批評するだけではなく、代替案を出してください」。