ご案内をしましたように、22日に経産省主催の「環境・エネルギー政策に関する国民対話」に参加してきました。
経産大臣のご挨拶のあと、経産省より「環境・エネルギー政策」についての説明があり、その後、私を含めて4人が先に意見を述べさえてもらい、そのあと、会場の方々から挙手での意見・質問、それに対して、数回にわけて、経産省から質問に対して答える、というプロセスでした。
私は「エネルギー基本計画に関するヒヤリング」で発表させてもらっているので、(発表内容、音声ファイルはこちらにあります)
http://daily-ondanka.com/edahiro/2010/20100408_1.html
簡単に以下のような意見を述べました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ありがとうございます。お先に一言申し上げたいと思います。
皆さんももうすでにおっしゃっていることですけれど、エネルギーと環境というのは切っても切れないことなので、これまで「経産省はエネルギーだけよ」と言ってきたのが、しっかり環境も、エネルギーの側面が中心ですけれど、それ以外も含めて取り組むということ、そしてこういう場で国民と直接対話をして、それを進められるというのは、ほんとに素晴らしいなと思います。
たぶん、こういう国民対話の場というのは2つ目的があって、1つは、圧倒的に物事を知っている、情報を知っていらっしゃる政府が、それをしっかり国民に伝えるという場であり、そして一方、暮らしの主体者である私たち国民が、日々どういうことを感じているのか、何に困っているのか、それを素直に聞いていただく、その2つの目的があるんだろうと思っています。
私のほうから3つ、申し上げようと思います。
1つは、先ほどのご説明にもありましたが、「暮らしのCO2が増えている」、家庭部門が増えているということです。常にそういうことを言われるわけです。今回の中でも、「暮らしのCO2半減」という目標を掲げられていると思います。
暮らしのCO2って、ちょっとわかりにくいんですが、これは3つのものを掛け合わせて、暮らしのCO2、家庭部門のCO2が計算されます。
1つは世帯数ですね。そして、1世帯当たりのエネルギー消費量、そのエネルギーをつくるのにどれぐらいCO2が出ているか、というエネルギーのCO2原単位です。
家庭部門のCO2=世帯数×1世帯当たりのエネルギー消費量×エネルギーのCO2原単位
この3つを掛け合わせたものが暮らしのCO2になります。
ですから、「半減」と言うからには、世帯数は、これから日本はどうなるのか。おそらくこれからも増えていくと思います。その中でCO2を半減するとしたら、じゃあ、1世帯当たりのエネルギー消費量をどうするつもりなのか?
私たち国民は、今、電力を選べませんので、最後のところ、つまり「そのエネルギーを使うとどれぐらいCO2が出るのか」という原単位は、私たちはなかなか触れません。それは恐らく産業を通じて、経産省なりがやっていかれることだと思います。
このように3つの要素に分けて、それぞれ、これまでどうだったのか、そしてこれからどうなりそうなのか、それをどうしていくのか。世帯数や1世帯当たりのCO2、エネルギー消費量。国民に家庭のCO2が増えているとだけ言うのではなくて、全体像を伝えて政策を立てていっていただきたいというのが1点目です。
もう1つは、こういう議論のときに必ず、「経済に対するマイナス」という話が出ます。そのときいつも思うんですが、「どういう時間軸で考えるのか」ということです。
「我慢したり頑張ったりして、短期的にはマイナスだけど、でも、それがあるから長期的にプラスだ」ということは、よくありますよね。これはおそらく、企業の方だったら、研究開発をやったら、そこでは利益はすぐに出ないけど、でもそれがあるから長期的に競争優位性を保てるわけで、これはごくごく普通のことだと思います。
なので、「これをやったら経済マイナスだよ」とか、「これだけお金がかかるよ」とか、そういうことはよく言われますけど、それだけではなく、「どういう時間軸で見ていて、それをやっているからこそ、長期的に日本はこうなるんだよ」という、その時間軸に沿った形で出してほしいなと思います。
たとえば今、固定価格買取制度もそうですけど、再生可能エネルギーに投資をする。それは国民の負担でもあるし、もちろん産業界の負担でもありますが、もしそれをやらなかったら、長期的に化石燃料がどんどん上がっていく世界で、私たち、余計にいくら払わなきゃいけないの?ということです。
やることのコストだけではなくて、やらないときのコスト。それも短期的ではなくて、長期的なことを含めて出していただきたい。
たとえば企業の方は、よくご存じのように、アメリカで自動車の排ガス規制が厳しくなったから、日本の自動車会社は頑張ってイノベーションを進めて、それでアメリカの市場に日本の車が入るようになったわけですよね。
その時の規制に応えてイノベーションしていた時は、そこだけ短期的に見たら、きっとマイナスだったと思います。でも、それをやったから長期的にプラスになっているという、その大きなグランドデザインをぜひ出していただきたいなと思っています。
最後は、こういった国民対話のプロセスそのものについてのお願いです。こういった場が開かれること自体、とても素晴らしいと思うんですが、往々にして、立場からものを言い、立場から非難をし、それに対して政府側は防衛をするか、もしくは知らん顔するかというのが、これまでよくあったパターンではないかと思います。
私たちも、立場からものを言うのをできるだけやめて、「○○すべき」「政府はこうすべき」と人の責任にするのではなくて、「こうしてくれたら、私たち、もっとこうできるのに」と、そういった形で、できるだけ話をしていけたらなと思っています。企業とか国民が動きやすくなるような仕組みをつくるのが政府の役割ですから、「こうやってくれたら、もっとやりやすのに」ということをぜひ、私たちの立場からも言っていきたいなと思っています。
後ろの方はきっと見えなかったと思うんですが、私、ここにいてすごくびっくりしたのは、政府の方、いつもそうなんですが、私たちが意見を言い始めたら、みんなでさーっとメモを取り始められました。みんな一生懸命メモを取られている。
メモを取られるのはもちろんいいことだし、大事だと思うんですが、「聞きました」という証拠のためにこういう対話をするのではなくて、その聞いたことを、じゃあどういうふうに――全部を政策に反映することはもちろんあり得ないと思いますが、どうやって政策のプロセスに入れていくのかということを、やはり考えていただきたい。
私、何度がヒヤリングに呼んでいただいたり、パブリックコメントに参加したりしましたけれど、そこで出した意見って、どこに行っちゃったんだろう?と思うことがよくあります。
「全部を受け入れて、全部を反映してくれ」と言うつもりはありませんが、やはり私たちがいろいろ思って伝えることがあるとしたら、それについて、どのようなプロセスで政策策定に入れていくのかということ--そこもこれから期待しているところです。
以上です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
定員200人ということでしたが、会場はいっぱいでした。多くの方が手を挙げて、質問やコメントをされ、予定終了時刻を40分以上も延長して、手を挙げた方が全員発表して、終了となりました。
産業界の方が多いようすだったので、環境関係のパブコメのように、経団連や産業界の意見が同じ文言で大量に届くような、「立場からの発表」が多くなければよいのだけど、、、と思っていましたが、杞憂だったようで、ほっとしました。NGOの方も市民の方も、企業にお勤めの方も、ご自分の意見や疑問を冷静にきちんと発表され、最初の試みにしてはとても質の高い時間だったのではないかと思いました。
最初の説明も、会場からの意見や質問も、それに対する経産省側の答えも、追加のデータやリンクなどとともに、ウェブサイトにアップするとのこと。こうやって、「聞いておしまい」「その場だけ」ではなく、対話が続いていくことを願っています。
そういえば、経産省の方に、「今回の国民対話の参加者募集はどういうルートでおこなったのですか?」とお聞きしたところ、経産省のウェブサイトにアップされただけ、とのこと。
それでもこんなにたくさん集まるのはさすがだなー、チェックしている人が多いんだなー、と思いましたが、でもそれじゃ、経産省のウェブサイトを時々チェックしている人にしか、対話の機会があることが伝わりませんよね? 経産省のウェブサイトを頻繁に見ている産業界や企業だけではなく、ごく一般の人たちにも来てもらえるように、告知の仕方やチャンネルも、ぜひくふうしてもらいたいなあ。
今回の東京会場を皮切りに、札幌・仙台・名古屋・広島・福岡・高松など、全国で「環境・エネルギー政策に関する国民対話」を開催するとのこと。
こちらに日程と会場、申し込み方法が載っていますので、近くで開催の機会があれば、ぜひ「国民の声」を届けに行ってみて下さい。
http://www.meti.go.jp/press/20100423005/20100423005.pdf
そう、きっと、見ているだけでもけっこう面白いです。ああ、霞ヶ関も少しずつでも変わりつつあるんだなあ!と。