6月12日日曜日の午後、総理官邸にて、自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」が開催されました。
これは、菅直人内閣総理大臣への自然エネルギーの普及を要望する声に応えるかたちで開催が決まったもので、元サッカー日本代表監督の岡田武史氏、ミュージシャンの坂本龍一氏、ソフトバンク社長の孫正義氏、ap bank代表理事の小林武史氏、そして私の5人が参加し、政府側からは菅総理のほか福山哲郎官房副長官、田坂広志官房参与が出席されました。
予定の1時間半を大きく上回り、2時間にわたって率直な意見交換をしました。
この懇談会の大きな特徴は、すべて「オープン」だったことです。、インターネットを通じて動画で中継され、ツイッターでコメントや質問を受けつけることにより、関心あるすべての人々とメディアがリアルタイムで参加できるという、画期的な試みでした。
懇談会のようすは現在も政府のインターネットテレビで観られます。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4972.html
当日から昨日まで映像をみた人の数は約12万人に達しているそうです。また、オープン懇談会をベースに、ツイッターやフェイスブック、ブログなどでも、自然エネルギーや政治・民主主義のあり方などについて熱心な議論が展開されているようで、うれしく思っています。
冒頭、菅総理はこのように挨拶されました。
「我が国はエネルギー基本計画を3年おきに決めています。原発事故が起こる前は、2030年までに原子力は53%、自然エネは20%にする計画になっていましたが、今回の事故を受けて、私はエネルギー基本計画を白紙から見直す、と申し上げました。
『2030年までに再生可能エネルギーの割合を20%に』だった計画を『2020年代のできるだけ早い時期に20%達成』とすることを先のG8サミットで発表しました。これは、総理という立場でやらなくてはいけないと思っているのと同時に、この課題には関心があるので、生きている限りしっかり取り組んでいきたいと思っています」。
その後、5人の参加者から5分ずつ、主に自然エネルギーの普及についての提言や意見表明がありました。
五十音順により、トップバッターだった私は、このようなお話をしました。資料はこちらにアップしてあります。
http://t.co/lXzfn7Y
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枝廣です。今日はこのような場に呼んでいただいて、もしくは押し掛けさせていただいて、本当にありがとうございます。
3.11は本当に大きく時代を変えたと思っています。大きな問題意識として、「3.11をきっかけに国民の意識や感情など、世の中は大きく変わっているのに、永田町はそれをわかっていないのではないか」。そのように感じている人も多く、それは被災地支援においても、原発事故の対処においても、今回のテーマである自然エネルギーに関しても共通していると思います。
そういった意味で、本日、国民の代理としてこの場でいろいろお話できることをうれしく思っています。今回ツイッターを用いて生中継しているように、少しでもこのギャップを縮めることを、これからもお手伝いしていけたらと思っています。
エネルギーの話に入りますが、一次エネルギーのうち84%が化石エネルギーに頼っているのがわが国の現状です。ところが、化石エネルギーにこれからも頼り続けるのは極めて難しい状況にあります。それは、このグラフを見ていただくとわかるように、化石燃料を輸入するための金額がどんどんと増えているからです。
23兆円というお金を払っています。しかし外貨を稼ぐ輸出のほうはそれ程伸びていない。ピークオイルが来れば、化石燃料の価格はますます上がりますので、日本がこのまま化石エネルギーを使い続けるのは、経済的にも難しい状況です。
では、原子力はどうなんだということですが、今回3.11があって、当面、日本の中での新設・増設は難しい。原子力発電の寿命というのは、世界の平均は22年くらいのようですが、40年で廃炉と計算しても、この赤い線のように、いずれなくなっていくということがわかっています。
化石燃料は高くつくし、原発はこういう状況だしということになると、自然エネルギーしか残りません。これまで自然エネルギーは、贅沢品や趣味のように語られてきましたが、もうそういう時代ではないということです。これから経済界も産業界も一緒になって、いかにこれを早く進めていくか知恵を出し合わないと、エネルギーが足りない時代がやってくるのではないかと思っています。
私のほうで、震災後2回にわたって、国民の意識を調べる調査を行いました。詳しくはウェブを見ていただくとして、震災を受けて、原発事故を受けて、エネルギーに関する考え方が変わったという人が4人に3人おります。
30年後の日本の望ましいエネルギーについても質問しました。震災から3カ月後の最近の調査では、原子力に関してゼロにすべきだといっている人は全体の3割で、ゼロまたは減らすべきだと言っている人は84%にのぼります。
対する自然エネルギーですが、96%が日本は自然エネルギーを増やしていくべきだということを言っています。これが国民の大きな意見であると思います。
また、菅総理より冒頭にお話しいただきました「2020年代の早い時期に自然エネルギーを20%へ」というお話をどう受け止めるかということを同じ調査で聞いたところ、約6割が肯定的な評価をしており、否定的な評価を大きく上回っています。
ということで、国民の意見としてやはり「原発は減らしていく。そして自然エネルギーを増やしていく」ということを望んでいることがわかるのではないかと思います。
そんなに簡単にエネルギー構造を変えられないという声もありますが、日本はこの30年くらいで大きくエネルギー構造を変えてきました。オイルショック以降は官民挙げてシフトしてきた。今回も3.11ショックで官民挙げてシフトすれば、そんなに時間をかけずに変えていけるのではないかと思っています。
世界の状況はどうかと言うと、このグラフが風力発電、そしてこちらが太陽光発電ですが、どちらもぐんぐんと伸びています。世界全体の電源の中で自然エネルギーは26%ですが、しかし2008年から2009年の1年間で新規に設置されたエネルギーを見ると、半分が自然エネルギーとなっており、世界における自然エネルギーの広がりがわかると思います。
これに伴って投資が非常に増えているのですが、残念ながら、それが日本には経済効果として戻ってきていない。日本のシェアは今、どんどんと下がってきています。
一方、日本で自然エネルギーはどれぐらい可能性があるのかということを、よく質問されます。風力発電だけでも、全量買取制度が導入されれば、原発40基分のエネルギーを生み出すことができます。
コストが高いのではないかという話もありますが、実際には、原発は今言われているよりもっとコストがかかりますし、自然エネルギーはどんどんコストが下がってきています。ということで、流れとして原子力・化石燃料と自然エネルギーのコストは、遠からず交差して、自然エネルギーのほうがずっと安くなる。世界のいくつかの国では、すでにそういう状況になっています。
いずれにしても、どのエネルギーにしても、必ずコストがかかるわけなので、どこにコストをかけて、どういう未来をつくり出したいのか。このことを、私たちは考えていく必要があるのだと思います。
短期的な経済効率やコストだけではなく、地域の活性化につながる仕組みも必要です。例えば、デンマークの風車の8割以上は、地元の市民が所有しています。ですからお金が地域に戻る。そういった仕組みを日本でもつくっていくことで、単にエネルギーだけではなくて、地域の活性化も進めていくことができます。
そのために大事なことが2つあると思っています。1つは再生可能エネルギー促進法を早期に成立させていただきたいということです。
もう1つは、今回のように、国民の議論が反映される政治を、もっともっと進めていただきたい。ドイツは脱原発を決めましたが、これも国民との徹底的な議論がバックにあります。今回は、そういったオープンな対話の第1回という位置づけですが、これからいろいろなテーマで、このような国民の議論を起こしながら、国が政治を進めていくことを望んでいます。
以上です。
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5人の意見に対する菅総理のコメント、さらにこちらからの発言、ツイッターで入ってくる質問への総理の答えなど、<つづき>もお楽しみに〜!
※メールニュースの引用・転載は出所を添えて、ご自由にどうぞ(枝廣淳子の環境メールニュース
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