エダヒロ・ライブラリーレスター・R・ブラウン

情報更新日:2005年06月08日

世界を巡って

エピソード
 
レスターは元気に日本に到着しました。「どこを回ってきたの?」と聞きましたら、「旅に出たのは先月のことであった......」と笑って、教えてくれました。 4月26日にワシントンを発って、特別シンポジウムに招聘されたテヘランへ。イランはアメリカと外交関係を持っていない国なのですが「安全だったよ。地元のNGOと貯水池などの現地も見にいった」。 それからルーマニアへ。日本では4月に刊行された『エコ・エコノミー』(家の光協会)は、ルーマニアでは1月に大統領が刊行を祝ってくれたそうで、「自分が書いた本なんだけど、2回目の出版記念だったようだ」と笑っていました。今回は大統領と長い会談をしてきたそうです。 そして、イタリア・スペインと、それぞれの言語での『エコ・エコノミー』出版のイベントをこなして、日本へ。日本の後は中国へ行って、それからやっと1ヶ月ぶりにワシントンに帰ることになっています。「まるで世界グルメツアーだね」というと「だれかさんみたいに食いしん坊じゃないから」と。(^^;) イランの様子を教えてもらいました。「おそらく50年前には100万か200万の人口だったんじゃないかと思うが、いまでは2000万人を抱えている国でね、そのなかで、250万台も自動車が走っているんだ」 「お金持ちの人、多いの?」と私。 「少なくともクルマが買える程度の金持ちはそれぐらいいるんだろうね。特にテヘランにはね。それに、石油に補助金を出しているので、ガソリンがとても安い。だからランニングコストはあまりかからないからだろう。 「でもね、そのせいもあって、イランでの石油の消費量がうなぎ上りなんだよ。それに対して、当然のことながら、イランの石油輸出量が減っている。このままでいくと、輸出できなくなってしまうだろう。イランには、石油以外に大きな産業はないので、石油輸出の収入がなくなることは、国にとって本当に大変なことだと思うのだが。 「イランの北東部には平野が広がっていて、農業が盛んなのだが、そこで農業のための灌漑用水を大量に使うようになり、また、都市用水も増大している。そのために、地下水を汲み上げているのだが、そのせいで、この地方では、毎年8メートルも地下水位(どこまで掘れば地下水が出るか)が下がっているそうだ。8メートルだよ! 「ちょうど世界銀行のデータを見ていたんだが、イエメンも同じ状況だ。1700万人の人口だが、国中で年に2メートル地下水位が低下している。首都のサヌアでは、なんと年に6メートルも低下しているそうだ。世銀のレポートでは、このペースでは、2010年には地下水はゼロになってしまう、と警告している。2キロの深さまで井戸を掘っても、もう水がない、という状況らしい。」 「水がなくなったら、本当に命に関わるのに! イランやイエメンの国の人々や、政治家は問題を知っているの? 何か手を打っているの?」と私。 「うん、もちろん、現地の人たちは問題を知っているよ。水が手に入りにくくなっているのだから。政治的指導者も知っている。が、水はとてもセンシティブな問題なので、水の使用量を減らそうとか制限しようとかいう動きは、政治的に難しい。ので何もしていない。ただ問題が悪化していくのを傍観しているだけだ。」 食前酒をいただきながら、こんな話をしていました。そのあとは、ぐっとくだけて、私が「朝2時」の本の話や、活動の話を。 私の様々な活動やこれからやりたいことを、にこにこと聞いていたレスター氏、「そろそろ、人を雇ったほうがいいんじゃない?」とまじめな顔でアドバイスしてくれました。 「最初に必要なのはきっと、リサーチ・スタッフだな。求人票にはこんなふうに書くんだろうな。『専門分野は、科学、できれば環境科学専攻の新卒、または経験者。そして、朝2時に起きられる人!』」 そして「私は応募しないからねー」と大笑いしているレスター氏でした。
 

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