エダヒロ・ライブラリーレスター・R・ブラウン

情報更新日:2007年07月26日

環境革命

 

レスター・R・ブラウン

エコロジーの原則に従って世界経済を再構築する。このことは史上最大の投資機会を意味する。「環境革命」は、規模について言えば先の農業革命、産業革命にも匹敵するものだ。

農業革命は、狩猟・採集を中心とした遊牧生活から土地を耕す定住生活へと移行することで、食糧経済を再構築するものであった。農業は狩猟や採集を補う手段として始まったのだが、やがてほぼ完全にそれらに取って代わった。耕作・作付けができる状態にするため、農業革命によって草木が一掃された土地は、ついには地球上の陸地の1/10にも達した。地球への影響がほとんどなかった狩猟・採集時代とは異なり、この新しい農業文化は、文字通り地表の姿を一変させていったのだ。

産業革命は――国によっては、まだ初期段階というところもあるが――2世紀にわたって進行中である。産業革命の土台となったのは、薪から化石燃料への移行であり、これにより経済活動の大規模な拡大が始まった。事実、産業革命の際立った特徴は、化石燃料として地下に蓄えられた莫大な太陽エネルギーを利用したことである。農業革命が地球の表面を一変させたのに対し、産業革命は地球の大気を大きく変えつつある。

産業革命がもたらした生産性の向上によって、モノを作るためのすさまじいエネルギーが生み出されていった。また新しい生活スタイルが生み出され、人類史上最大の環境破壊時代も幕を開けた。世界は確実に、経済衰退へと向かう道を歩み始めたのだった。

環境革命は、新しいエネルギー源への移行があって初めて成立するという点で、産業革命に似ている。また、先の2つの革命と同様、環境革命の影響も全世界に及ぶだろう。

一方、3つの革命の規模、タイミング、起源にはそれぞれ違いがある。環境革命が最初の2つの革命と違うのは、数十年で勝負をつけなければならない点だ。また、他の革命を推し進めたのが新発見や技術の進歩であったのに対し、この革命は、新技術によって促進されるものの、自然との和解を迫られた私たちのニーズによって突き動かされている。

ここには、かつてないほどの投資環境が広がっている。現在世界では、主要なエネルギー源である石油のために年間1.7兆ドルが費やされているが、これは、エコ・エコノミーにおいてエネルギーに投入され得る資本の大きさを示唆している。化石燃料への投資と、風力・太陽電池・地熱エネルギーへの投資の違いの一つは、後者が枯渇しないという点だ。

輸入石油に依存している開発途上国では、こうした新たなエネルギー源によって、資本を国内エネルギー源への投資に振り向かせることができる。自国に油田を抱える国は多くないが、風力や太陽エネルギーはどの国にもあり、活用されるのを待ちわびている。経済成長や雇用創出の面からも、こうした新エネルギー技術は天の恵みといえよう。

エネルギー効率関連の投資は急速に伸びていくだろう。理由は簡単、儲かるからである。効率化によって浮いたエネルギーは、ほとんどすべての国において最も安価な新エネルギー源だ。

環境革命の影響は、世界経済のあらゆる分野に及ぶだろう。この新しい経済において、ある企業は勝者となり、またある企業は敗者となるだろう。新経済の構築に身を投じる者は勝ち残り、過去にしがみつく者は前時代に取り残されるというリスクを背負うのである。

(翻訳:山本 夕佳、佐野 真紀)

 

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