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エダヒロ・ライブラリーレスター・R・ブラウン

情報更新日:2008年05月16日

エコラベル制度――財布でエコに一票を

 

                       レスター・R・ブラウン

経済を環境面から再構築するのに役立つものの一つに、「エコラベル」がある。環境に配慮した方法で作られた製品だということをエコラベルで表示すれば、消費者は、買い物を通して製品への支持票を投じることができる。

今やエコラベルのおかげで、消費者はエネルギー効率のよい家電製品や、持続可能な方法で管理されている林業や漁業の製品を見分けたり、再生可能なエネルギー源から作られた「環境に優しいグリーン電力」を選ぶことが可能だ。

そうしたエコラベルの一つが、水産物につけられる海洋管理協議会(MSC)のMSCマークだ。MSCは2000年3月に漁業認証制度を開始し、まずオーストラリア西部のロブスター漁業と英国テムズ川西部のニシン漁業が認証された。同年9月には、アラスカのサケ漁業が、米国で初となる認証を受けた。MSCの認証制度を支持する水産物加工・小売分野の主な業者には、欧州に拠点をおくユニリバー社、ヤング・ブルークレスト社、セインズベリー社がある。

認証を受けるには、その漁業が持続可能な管理方法に基づいていることを示さなければならない。具体的にはMSCは以下のように定めている。第一に、漁獲量を自然に回復可能なレベル以下に抑える漁法であり、弊害のある漁法で対象以外の生物を殺傷しないこと。第二に、その漁業が依存する海洋生態系の健全性と多様性を損なわない漁法であること。最後に、地域、国内、国際的な法や規制を遵守し、持続可能な責任ある漁業を行うこと。2007年10月現在、MSC認証漁業は世界中で23を数え、その水産物供給量は約250万トンにのぼっている。

林産物の場合、MSCに相当するのは、世界自然保護基金(WWF)をはじめとする諸団体が1993年に設立した森林管理協議会(FSC)である。FSCは、森林管理に関する情報を林産業界内に提供している。世界には、安定した収穫がずっと持続するように管理されている森林もあれば、皆伐され、目先の利益のために一夜にして破壊されてしまう森林もある。このうち、FSCが発行するラベルの対象となるのは、ホームセンターで売られている材木であれ、家具屋の家具であれ、文房具店の紙であれ、持続的に管理されている森林で生産された製品だけである。

FSCはメキシコのオアハカ州に本部を置く団体で、森林が持続的に管理されているかどうかを確認する機関を国ごとに認定する。認定された認証機関には、現場検査のほか、原産物がさまざまな加工段階を経て消費者の手に渡るまでの経路を明らかにする義務が課せられている。FSCは基準を設け、認証の印としてFSCラベルを供与するが、実際の審査は各国の認証機関が行っているのだ。

FSCは、FSCラベルの取得をめざす森林が満たすべき9つの原則を設定している。その核となる条件は、林産物の生産量を恒久的に維持できるような方法で森林が管理されていることである。つまり、慎重に択伐するということだ。実際には、自然の力による「森林管理」をまね、成長した樹齢の高い木々から順に、長期にわたって伐採していくことになる。

FSCラベルは、消費者が林産物の購入を通して信頼できる森林管理を支援するのに必要な情報を提供している。認証プログラムに参加している製材会社と小売業者が分かることで、社会の動向を重視する投資家も責任ある投資を行うために必要な情報を得ることができる。

認証を受けた最初の木材製品が英国に登場した1996年3月以来、認証プロセスは世界中に広がっている。2007年10月現在では、世界77カ国の約9,100万ヘクタールの森林がFSCの下で認証されている。

この認証プログラムを支援するため、WWFは世界の森林と貿易についてのネットワーク(the Global Forest and Trade Network)を設立している。このネットワークは、オーストリア、ブラジル、フランス、ドイツ、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国など30カ国以上のNGO、企業、起業家、地域共同体をつなぐもので、市場取引においてFSCの基準を遵守している企業を後押しする大きな支援団体の一部である。木材購入における世界3大企業のホームデポ、ローズ、イケアは、いずれもFSC認証木材を優先的に購入している。

ロシア政府の天然資源省は、2001年6月、国が木材認証制度の導入を進めていることを発表した。ロシアの木材生産量のうち、すでに認証されているのはほんのわずかで、認証されていない他の木材とは、買い手が差別しているため、ロシアの木材輸出収益に10億ドルもの損失を与えている。天然資源省の見積もりによると、認証されていない国産木材は、競合国で生産された認証木材よりも2~3割低い価格で販売されているという。

エコラベルが普及しつつあるもう一つの商品が「電力」である。米国では多くの州で、公益事業部門が電力会社に、消費者がグリーン電力を選択できるようにするよう求めている。グリーン電力とは水力発電以外の、再生可能な資源から生み出された電力のことで、風力発電、太陽電池、そして、太陽熱エネルギー、地熱エネルギー、バイオマス利用の電力などだ。

電力会社は毎月の電力料金請求書と一緒に返信用のグリーン電力申し込み書を送付し、グリーン電力を使いたい顧客は、申し込み欄にチェックするだけで契約を結ぶことができる。申込書にはグリーン電力の料金が明記されており、通常、従来の電力料金の3~15%増しとなっている。

グリーン電力の申込者の多さに電力会社側が驚くことは珍しくない。将来の世代を考えて、気候安定化の一翼を担うことができるのなら、電気料金が上がっても構わないという人が大勢いるのだ。例えば、カリフォルニア州のサンタモニカ、オークランド、サンタバーバラ市といった地方自治体ではすでに、すべてをグリーン電力で賄うという契約を結んでいる。これには、街灯や交通信号灯といった自治体の行うサービスに必要な電力だけでなく、自治体施設内で使用する電力も含まれている。また、シカゴ市やポートランド、ニュージャージー、ニューヨーク州などのように、使用する電力の一部をグリーン電力で賄う契約にしている自治体もある。

また、グリーン電力の使用契約を結ぶ企業も増えてきている。政府と企業その他が協定を結びグリーン電力の購入推進を図る環境保護局のプログラム「グリーン電力パートナーシップ」が出しているランキングによると、ペプシ、ホール・フーズ・マーケット、ステイプルズ社は3社ともに、全米のグリーン電力購入者の上位25の中に入っている。また、カリフォルニア州やテキサス州の企業のうち、実に多くの企業が購入契約を結んでいるのである。

グリーン電力の賛同者数のこのような増加は結果として大きな需要のうねりを生み、そのため多くの電力会社がグリーン電力の十分な供給に向けて奔走せざるを得なくなっている。これほど多くの州に風力発電所がどんどん建設されているのは、風力発電が、新たにグリーン電力の供給を軌道に乗せる最も手っ取り早い手段の一つだからでもあるのだ。

グリーン電力市場は、現在米国でかなりの成長を見せているが、日本においてもいまや揺るぎない存在となっている。日本では、急速に伸びるグリーン電力の使用量が供給量を上回る恐れがあり、電力会社はより多くの風力発電機を設置するため、早急な投資を迫られている。

エコラベルにはこの他に、電気効率が一定の基準を満たした家電製品につけられる省エネマークなどがある。この省エネマークは、1970年代後半のエネルギー危機以来、多くの国が取り入れるようになった。また、環境団体あるいは行政団体がそれぞれの国で認証するエコラベルがある。

こうしたエコラベル認証制度としてよく知られているものとしては、ドイツの「ブルー・エンジェル」、カナダの「環境チョイス」(Environmental Choice)、米国環境保護局の「エネルギー・スター」がある。こういったプログラムやラベル・システムのおかげで、消費者は物を購入するにあたり、購入するかどうか自分自身の価値観により近い決定を下すことができるのである。

 

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