レスター・R・ブラウン、ジャネット・ラーセン、ジョナサン・G・ドーン、フランシス・C・ムーア
地球温暖化の抑制に必要な二酸化炭素(CO2)排出量の削減を検討するとき、政界のリーダーたちは「政治的に可能な削減量はどのくらいか」と考える。一方、アースポリシー研究所では、「気候変化による最悪の影響を回避するにはどのくらい削減する必要があるか」と考える。
化石燃料の燃焼と森林破壊によって、私たちは温室効果ガスを大気中に放出させている。中でも重要なのがCO2である。地球は温室効果ガスによって温められ、いろいろな変化が起こりつつある。それらの変化によって、人類は文明が発展した範囲を超える気候条件の下におかれようとしている。
地球がますます熱くなっていくのをそのままにしておくわけにはいかない。既に上昇している今日の気温のもと、グリーンランドの氷床と南極大陸の西南極氷床は融解速度を増しており、これら2つの巨大な氷床がすべて融けると、海面が12メートルは上昇する。また、世界中の氷河が縮小しており、消滅の危機にある。アジア山岳地帯の氷河の融解水は、乾季にアジア大陸の主要河川を潤しているが、これらの氷河も例外ではない。
行動が遅れれば、被害が大きくなるだけだ。今こそ、プランBを実行する時だ。
プランBは、これまでのやり方に代わる計画で、2020年までに正味のCO2排出量を80%削減するよう求めている。それにより、既に384ppm(1ppmは体積比で100万分の1を表す)に達している大気中のCO2濃度が400ppmを超えるのを防ぎ、将来の地球の気温上昇を最小限に抑えることができる。
2020年までにCO2排出量を80%削減するためには、世界中が総力を挙げて戦時スピードで削減に取り組まなければならないだろう。まずやるべきことはエネルギー効率化への投資だ。それによって世界全体のエネルギー需要増に歯止めをかけることができるだろう。
次に、発電と熱生産に使われる化石燃料を再生可能エネルギーへと転換する。そうすれば炭素排出量の1/3が削減できる。さらに、交通システムを再構築し、産業界での石炭と石油の使用を減らせば、CO2排出量の14%が削減される。
そして世界中から実質的森林破壊をなくすことで、もう16%の削減が可能だ。最後に、植林や土壌管理によって炭素の固定を図れば、現在の排出量の17%が吸収できる。
これらの取り組みのうち、新しい技術を必要とするものは1つもない。2020年までにCO2排出量を80%削減するためには何をしなくてはならないか、私たちには分かっている。今必要とされているのは、まさにリーダーシップなのだ。
グラフがこちらに載っています。
http://www.earthpolicy.org/Books/PB3/80by2020.htm
プランB―2020年の二酸化炭素排出量削減目標
二酸化炭素(単位:100万トン)
【グラフ項目説明:円グラフ上に示された数字を、右上から時計回りに】
発電および熱生産に要する化石燃料を再生エネルギーに転換
交通システムの再構築
産業界での石炭および石油使用の削減
実質的森林破壊の終結
植林による炭素の固定
土壌管理による炭素の固定
正味残存排出量
2006年の炭素排出量(91億8,000万トン)を基準とする
資料:EPI(アースポリシー研究所)による
全文のダウンロードはこちらから:
http://www.earth-policy.org/Books/PB3/80by2020.htm
2020年までに炭素排出量を80%削減する方法のほか、人口の安定化、貧困の撲滅、破壊された地球生態系の修復について、詳しくはアースポリシー研究所長レスター・R・ブラウン著『プランB3.0:人類文明を救うために』(Plan B3.0:Mobilizing to Save Civilization)
(http://www.earth-policy.org/Books/PB3/index.htm にてダウンロード可能)を参照。