すこし前のものですが、ワールドウォッチ研究所のニュースレターから、実戦和訳チームが訳してくれたものをご紹介します。
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鳥類の急激な減少が明らかに示す生物多様性の危機
ワシントンDC発:地球上の鳥類の個体数がかつてない勢いで激減している。ワシントンDCに本部をおワールドウォッチ研究所の最近の研究によると、この深刻な事態には、人口の増加、生息地の破壊、気候変動などの人的要因が重大な影響を与えていることが報告されている。『翼のある使者達(Winged Messengers):鳥類の減少(The Decline of Birds)』の中でハワード・ユース氏が語るところによると、このような人類が及ぼす要因は、最も絶滅に瀕している鳥類の種の99%を脅かし、6500万年前に恐竜が消滅して以来最大規模の種の絶滅を進行させている、という。
更にユース氏によると、「鳥類の減少は、貴重な種が消滅していることを示すだけでなく、自然界の微妙なバランスが崩れつつあることをも明らかにしている。鳥類は、その数の増減によって迫り来る危機を知らせてくれる貴重な環境のバロメーターなのだ」。
来世紀には、世界の鳥類の12%、ほぼ1,200種が絶滅の危機に直面することになる。『翼のある使者達』は、このような事態を加速させている一連の現象について、次のように説明している。
*生息地の消滅
年間5万〜17万平方キロメートルの割合で進む森林破壊が、全体的に唯一最大の脅威をもたらし、鳥類の中で最も絶滅が危惧される種の85%を更に危機的状況に追い込んでいる。植林運動によって、失われた木の本数を補うことはできても、多くの野生動植物にとり、単一栽培の植林地は、多種多様な木が生い茂る複雑な天然林に取って代わることはできない。
また、道路や送電線がしばしば森の中を横切り、生息地を分断する。その結果、動物達にとって致命的な車との衝突事故が増え、更に、捕食者、競争者、外来植物にとっては格好の通り路ができる。また、森の中に道路が通じると、往々にして過度な狩猟が行われる。
*外来種の襲来
20世紀の間に世界中で貿易と旅行が盛んになり、その結果、よその土地から外来種が次々と流入した。蛇、ねずみ、猫、植物、昆虫などを含むこれらの外来種は、今や、地球規模で絶滅を危惧される鳥類種の4分の1を脅かす存在となっている。
*化学物質の脅威
大量の油が流出し、海鳥の生息が脅かされている。だが、ほとんど表向きにされることのない、日常的に航行するタンカーから流れ出る油さえも、海鳥にとっては脅威なのだ。石油・天然ガスの探査や、パイプラインによる輸送などで、陸上の生息地も危機に直面している。さらに農薬が世界中の水辺や陸地で多数の鳥の命を奪っている。
*狩猟・捕獲・漁業
密猟と不十分な法規制が、世界中の何百万もの鳥を死に追いやっている。愛される余り死にゆく鳥たちもいる。世界のオウムのおよそ3分の1が、ペット貿易や長年にわたる生息地の喪失により、絶滅の危機に瀕している。また、延縄漁の釣り針に何十万もの海鳥があやまってひっかかり、溺れ死んでいる。現在23種が絶滅寸前である。
*気候変動
近年、何種かの鳥類が渡りや巣作りを早めているのは、地球温暖化がすでに影響しているせいではないかと考えられている。今後数年の気候変動が、ツンドラから亜熱帯の海岸線にいたる鳥類の重要生息地を変えることになれば、地域の固有種の絶滅もあるだろう、と研究者は懸念している。
政府や民間団体が鳥類を呼び戻そうとする動きは、特定の絶滅危惧種にとっては喜ばしいことだ。しかし野生動物を慎重に保護管理するという方法はうまくいかない可能性がある、とユース氏は主張する。樹木や潅木が消失し、土が固められ、地下水位が低下し、化学物質が一面を汚染していれば、生息地の復元はそう単純なものではない。おそらく、金をかけた保護事業は大した成果を生まないだろう。失われた野生生物の生息地を完全に修復することなどできないのだ。
生息地を復元する努力が必要な地域もあるが、生物多様性の保護にはまず、野生動物とその複雑な生息環境を絶滅の危機に直面させないことである、とユース氏は言う。「特定の地域には保護法は必要だ。しかし多くの場合、今ある国際法や国際協定を完全に施行することが、世界中に残された鳥類を保護するうえで大きな力となるだろう」。
現在生息している野生動植物をリストアップし、さらなる種の絶滅を防ぐうえで関係機関相互の新たな協力が非常に効果がある、とユース氏は述べている。
保全生物学――生物学、環境保全学及び経済学に、保全主義者、地域共同体、企業の共同的な努力を織り込んだ、自然の生息環境の保護に関する新たな取り組み――は生物多様性保全の着眼点を変えた。この新たな取り組みは、保全対象となる保護区だけでなく、その周辺地域や水源、そしてその地域に住み、土地や水を活用する人間をも考慮に入れている。
生物多様性の保全は、営利を追求するベンチャー事業とも組み合わせることができるため、企業と環境保護主義の両立が可能になる。その先駆けが日陰栽培のコーヒーである。
熱帯雨林の樹冠の下で栽培するという伝統的なコーヒー農法ならば、自然生息地が守られ、留鳥や渡り鳥の住みかができる。また、大量の農薬に依存して直射日光の元で栽培されるコーヒーよりも、少ない農薬で済む。さらに、有機栽培や総合防除を行っている農園では、鳥類にとってより多様な食料源と安全な住みかを与えることができる。
さらに研究者らは、世界中で急速に人気の高まっているアウトドアレジャーのひとつ、バードウォッチングを、環境保全活動を強化する手段として利用しはじめている。鳥の個体数のモニタリングや、世界中に残された重要生息地の調査を行う科学者のために、その鋭敏な目と耳を使って協力するバードウォッチャーが増えている。
「鳥たちの安全な未来を守るために我々がとるべき行動は、まさに人類の持続可能な未来の実現にも必要とされているものだ」ユース氏は述べる。「世界中の貧しい者たちに希望を与える一方で、我々の住む都市や産業を、あらゆる生物にとってより安全なものとするためには、農村計画や郊外開発、都市計画に、野生生物の保全を組み込み、調和させなくてはならない」。
鳥類は我々に食糧を運び、ひらめきを与え、自然とのつながりを気付かせてくれる、そして、環境の悪化を知らせる警報システムでもあるのだ。しかし、今日では、この羽におおわれている資源は、人間の配慮を大いに必要としているのだ」。
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ご参考まで、ワールドウォッチ研究所のHPはこちらです。
http://www.worldwatch.org/
また、生物多様性保護に取り組んでいる国際NGOのIUCN(国際自然保護連合)のHPはこちらです。IUCNには、約140ヶ国から、政府組織やNGOなどが参加しています。 http://www.iucn.org/
日本で、この分野に取り組んでいる大きなNGOのひとつがWWFジャパン(世界自然保護基金)です。
http://www.wwf.or.jp/
私はWWFジャパンのメールマガジンPANDA 通信を受け取っているのですが(上記HPから申し込めます)、「絶滅の危機にある野生動物のコーナーを新設しました!」というお知らせをいただきました。
http://www.wwf.or.jp/wildlife/redlistanimals/index.htm
> 今、世界でどれくらいの野生動物が絶滅に瀕しているか、ご
> 存知でしょうか。トラ、アフリカゾウ、クロサイ、ジャイアン
> トパンダ、・・・世界中に分布する、多種多様な野生動物が、
> 現在危機的な状況に追い込まれています。
> 2002年度までにWWFの会報誌『WWF』のコーナー
> 「救おう!地球の仲間・レッドリストの動物たち」のコーナー
> や、ジュニア向け会報『パンダニュース』でご紹介したものを
> 再編集し、掲載しています。
他にもいろいろと興味深いテーマや情報がありますので、自然保護や野生動物に関心のある方、ぜひのぞいてみて下さい。
もうひとつ、「日本自然保護協会」をご紹介しましょう。
http://www.nacsj.or.jp/
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アドボカシー(政策提言型)NGOです。
日本の自然保護問題を具体的に解決するために半世紀近く活動してきた実績をもつNGOです。財団法人ですが、行政とは異なる立場をもつ自発的な民間団体です。いつでも誰に対しても自由に発言できるよう、主な財源を一般からの会費と寄付にすることで自主性・独立性を保ってきました。政府からの天下りは受け入れません。自発的な活動で自然保護政策にパートナーシップを組む、政策提言型NGOです。
・科学的な調査に基づいて生態系と生物の多様性を守ります。
・自然の仕組みを生かした社会づくりを提案します。
・だれでも気軽に参加できる自然と親しむ会を開催しています。
・年5000円の会費や、寄付という貴重な志で運営されています。
・ボランティアの方たちに支えられ、力強いNGO活動を展開しています。
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[No.788] でも少しご紹介したことがあります。前にここのスタッフの方が、「日本自然保護協会50年誌」(平凡社)を貸して下さいました。その中の「自然保護NGO半世紀のあゆみ」から、興味深かったところをご紹介します。環境NGOのボランティア、NGOの運営やあり方について、いろいろと考えさせられます。
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○自然保護活動を支えるボランティア
資金面で協会の活動を支える多くの協力者に加え、事務局内外で日々活動するボランティアは心強い存在である。日本において、ボランティアは一九九五年の阪神・淡路大震災によって強く社会に認識されるようになったが、環境保全に関わる民間活動の分野では、さまざまな形態のボランティア活動が先駆的に行なわれてきた。
協会が自然保護活動のためのボランティアを、会報などを通じて広く募集しはじめたのは、七〇年代中ごろのカモシカ食害防除学生隊にまでさかのぼる。欧米の自然保護団体が多数のボランティアに支えられていることに触発され、日本にも定着させようと開始したものであった。
当時は学生サークルの延長のような形で、大勢の学生が集まった。その後も事務局には、学生、主婦、仕事を終えたサラリーマン、仕事をリタイアした人々など、職業も世代も多様な層のボランティアが多数参加し、その継続的な協力が、原生林保護基金の活動や「EARTH展」、ホームページの充実、「自然しらべ」の調査結果のとりまとめなどを支え、会員拡大のためのパンフレット発送などの、裏方の事務作業までをも支えている。
自然保護活動に少しでも関わりたいという熱意を持って参加したボランティアの中には、協会で得た経験を生かし、内外で活躍する人が続出している。また、現在の事務局職員にも、職員として採用される以前に協会でのボランティア経験のある者が少なくない。
規模の大小にかかわらず、NGOの活動が多くのボランティアによって支えられていることは、日本も海外も変わらない。「自然を守る活動に少しでも参加したい」という声に応えて、多様な参加形態を可能にする、ボランティアとNGOとの関係づくりは、社会のニーズとしても求められている。またそのことは、NGOにとってその活動をより意味のあるものにする鍵であろう。
第四節 行動するNGOとしての事務局の組織づくり
○魅力的なNGO運営を求めて
協会は財団法人としての利点を生かしつつ、「サポーターとしての会員に支えられるNGO」としての性格も維持したいと考えている。そのため定期的に一定額の寄付、つまり会費を納入する人を会員と定め、NGOとしての独自の活動費に会費を充当している。
財団法人のなかには、行政機関からの受託事業収入を主な財源にしているところが少なくない。協会でも、かつて会費や寄付収入が今ほど得られず、運営資金のほとんどすべてを受託事業収入に頼っていた時代があった。しかし、受託事業収入の比率が高いと、自主的な保護事業に割ける人手は減り、受託する事業の内容を選択する余地がなくなってしまう。そうした状況から抜け出すため、具体的な保護活動を示して応援を求め、徐々に会員数や寄付収入を増やしていくことで、自主財源を増やし、独自の活動を展開してきた。
独立した立場で意見を発信するための活動を可能にする財政基盤の整備は、協会にとって常に緊急の課題でありつづけてきた。受託事業収入に多くを頼らない組織体制が一九八〇年代後半に確立した後は、財政基盤の拡充にあたって、社会とどのような関係づくりを進めていけばNGOらしい運営ができるのか、海外の事例もふまえて、議論された。一九九四年ころには、理事および事務局の間で、次の四点を財政基盤整備の方針として、活動を進めていくことが申し合わされた。
すなわち、①経済団体を通じた大企業への寄付依頼は、活動の自立性、独立性を維持する観点から行わない、②自然保護に関心のある企業には、普及・広報事業を中心とする特定のプロジェクトに協賛金としての寄付を求めていく、③賛助会員と新しい関係を持てるよう、賛助会員の位置づけを見直し、会員拡大の対象を新しい層に変更する、④個人会員を中心とするサポーターの拡大こそ協会の活動を支える財政基盤の柱となるよう進めていく、ことである。
一九九五年に会員向けて緊急寄付をつのったように、低金利が長く続く現在では基本財産の運用利子は毎年減収の一途とたどっている。また、そのときどきの経済状況に大きく左右される企業からの協賛金収入に多くを頼ることは望ましくない。そこで、長期に渡って会費(一定額の寄付)の支出を継続してくれる個人会員を中心とするサポーターを着実に増やしていくことが大切になってくる。
厚い会員層によって構成された支持と収入の構造が、専門性を備えた多数のスタッフによる長期的な活動を可能にする。企業や行政との望ましいパートナーシップを構築していくためにも、企業寄付や受託金だけに依存せず、経済的な自立性を確保したうえで、対等な関係で論議できることが重要である。これは、今後、NGOによる自然保護の主張がどれだけ世論形成に影響を与えられるか、日本おいて環境NGOがどれだけ根づくことができるか、ということに大きく関わっている。
○実行力を持つ組織になるために
一九八〇年代半ばを境に、協会が政策提言型NGOへの道を目指すにあたり、活動を効果的に進めるための組織とはどのようなものであるか、協会内部では継続して議論が行なわれた。問題解決型のNGO、そして政策提言型NGOとして、協会が組織の整備をするために重視した要素は次の四点であった。
一点目は、専従スタッフである事務局員が単なる事務員ではなく、自然保護活動のための情報を収集し、全国の自然保護活動家、NGO、企業、政府機関、議員のコーディネーター、エージェントとして活動できること。各関係機関からの情報を集約し、自然保護のための分析と検討ができる事務局員の要請と配置が急務とされた。
二点目は、それまで脆弱であった事務局内の体制づくり、各事務局員に課せられる役割、組織内のルール、理事会の的確な意思決定につなげていく方法や指揮命令系統を秩序立てて確立すること。
三点目は、事務局員の裁量の拡大。活動のなかで実際に現場にでる事務局員に、関係機関と交渉し、自然保護活動を進められる一定の裁量を与えていく。
四点目は専門委員会をはじめとする、アドバイザリースタッフの充実。多くの自然保護問題に対して、協会としての共通見解をつくり、限られた資源で最大の効果を狙う活動方法を検討するいろいろな委員会を、理事会と事務局との間に設けていく。
これらの組織の整備によって、保護活動の当事者は役員、事務局は事務作業という旧体制が、事務局が主体性を持つ体制に移り変わってきた。
○二一世紀、新しい社会の要求に応えるために
NGOの組織と活動資金の問題を考えるとき、いつも比較に出されるのはアメリカの自然保護団体である。一八九二年に設立されたシエラクラブ、一九〇一年設立の全米オーデュポン協会は、さしずめ前者が日本自然保護協会、後者が日本野鳥の会に相当する団体と考えていいのだが、その財政規模、人材、活動内容などどれをとっても日本に二桁ほどの違いがある。
アメリカのNGOを支えてきたのは、まさに一般市民と企業家のフィランソロピーの精神であり、どの団体も個人の寄付金と助成財団の大きな支援を受けて成立している。日本でNGO支援の重要性が意識されはじめ、国や企業による助成が行なわれるようになったのは一九九二年以降でその進展に協会も大きな期待をかけていたが、以後の一〇年を経て状況はまったく進まないばかりか、経済の停滞のため、その支援も心細いものになってきた。
それでも協会は、日本のNGOの中で、単に歴史が古いだけでなく、運営システムにおいても実績においても最も健全なモデルたという評価をかち得てきた。いま必要なことは状況を嘆くことではなく、もういちど創立時の初心に帰って自分の足で立ち上がり、困難に立ち向かうことでしかない。二一世紀を迎えて、協会が選択した第一の手段は会員、サポーターを増やすことである。それは、協会のポリシーに賛同する市民から十分な評価を得られるよう、協会が日々の活動とその成果をもって社会に示すことにほかならない。
もう一つ考えなくてはならない重要な点は、環境保全を進める国家的な体制の変化である。環境基本法をはじめとする環境関連制度がほぼ国際水準に整備されたいま、施策は市民とのパートナーシップ事業へと急転換することになった。
公共事業や教育プログラムに、NGO,地域市民団体の積極的な関与が求められているのである。NGOの仕事量は圧倒的に増えるだろう。だがこの政策は、NGOの側における専門的能力、資質の向上がなければ決して成功しない。行政の側のみ情報を資金が集中するような状況を改めなければならないが、厳しい社会
情勢のなかで市民が対等の立場に立てるよう自らの力をつけていくのは至難の業といわなければならない。
協会が今後組織的に取り組むべき課題の中には、大学、研究所、企業などから優れた人材を導入することや、地域の市民団体との情報交換を強化できるようなシステムづくりがある。日本の自然保護を担うのは、まさに「人」であり、「人の輪」である。
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「受託事業収入に頼らない組織づくり」は、本当に大切だなぁ、でもそのためには、よほどの意識と戦略が必要だ、と思います。
いろいろなNGOやNPOのなかには、「熱い思いで、何かをやりたくて」組織を立ち上げたのに、いったん立ち上げると「どう組織を維持していくか」が焦眉の課題となるため(事務局を置けば、電話ひとつかけるにしてもお金がかかるのです)、「組織を維持する手段として」自治体などから事業を受託して、あるいは、助成事業を受けることで、そのお金を組織運営に回すことを考えるところがたくさんあります。組織運営にはお金が必要なので、当然の流れだと思います。
ところが、難しいのは、そうなると、受託事業や助成事業のための活動が増えてくることです。そのような事業が自分たちのやりたいことと重なっていれば問題ないのですが、「次の受託を受けるために、どうしようか」という「手段の目的化」が起こり、「やりたいこと」と「やらなくてはならないこと」のギャップが広がってくる場合があります。
受託事業や助成以外に収入を得る方法となると、やはり会員からの会費が頼りになるでしょう。主旨に賛同してくれる会員がたくさんいれば、一人分の会費の額は大きくなくとも、大きな活動を支えることができます。
スウェーデンの大きな環境NGOの自然保護協会には、16万7000人の人の会員がいると聞きました。スウェーデンの人口は約900万人です。約50人にひとりがこの環境NGOの会員という計算です。日本に同じ比率を当てはめれば、200万人以上の会員数です。ちなみに、日本で最大の環境NGOは「日本野鳥の会」と言われますが、会員数は約5万5000人とのこと。
前に紹介したように、「アメリカでは昨年1年間に環境NGOに寄付をした人の数は全国民の40%」という統計があるほど、NGOへの寄付は日常的なことです。私の知り合いのアメリカ人は、「自然を守るにしても福祉にしても、自分は時間がなくてできないけれども、自分の代わりにやってくれているのだから、せめてその資金を援助するのは当然のことだ」と言っていました。
日本でもだんだんそういう意識が広がっていけばいいな、と思っています。そうでないと、せっかく「社会を変えよう!」という運動をはじめたのに、その運動や組織を維持するための作業が増えたり、本当にやりたいことに時間やスタッフが割けなくなってしまう。へたをすると、そもそも変えたかった「既存の社会」
の手足として使われてしまう結果になってしまったりする。または、せっかくはじめた活動や組織が続かなくなって、やめざるを得なくなる(残念なことですが、そういう例も少なからずあるのです)。
歳末助け合いなどで寄付をするのもとても大事なことですが、それぐらいの気楽さで「ここの活動は自分の思いと重なるから応援したい」というNGOやNPOの会員になって、会費で支援するということもぜひ。
このニュースでもよく書いている「お金の流れを変えること」にも、ささやかかもしれませんが、つながります。そして「マイNGO」じゃないですが、その団体の活動や展開を見守っていくことで、愛着が出てきて、予想もしていなかったつながりや楽しさが出てくることでしょう!