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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年05月17日

日本と世界の台所の実状は?(2004.8.20)

食と生活
 
*−世界と日本の胃袋を支える米国、「食料は武器である」−
「日本の食料自給率レポート」、「海外食料需給レポート2004」より 以前、環境メールニュース[No.1008] で、 「日本は多くの食べ物を輸入しています。「あの国でしか取れないけど、食べてみたい」という贅沢品の輸入でしたら、「お金がなくなったらやめる」ことができます。でも、日本はカロリーベースで60%を世界に頼っています。コメ以外の穀物を始め、「お金がなくなったら」「輸出国が輸出してくれなくなったら」輸入をやめればいい、とは言えない、基本的な部分を外国に頼っています。」 と書いたところ、このようなメールをもらいました。 >> [Enviro-News No.1008]の世界の食糧事情を興味深く読みました。 この中で穀物生産国が輸出禁止云々と書かれていますが、昔のことを知らないとピンとこないかも知れません。 むかしと言っても私が知っている範囲ですが米国は大豆の輸出を禁止し、日本の豆腐屋さんが困ったことがありました。 たしかニクソン大統領のころだったかと思いますが家畜飼料が不足し、大豆の輸出を禁止しました。 << 日本の食糧自給率は、カロリーベースで40%。日本が輸入している主要な農産物を生産するために、日本が海外に"借りている"農地は、日本の農地の2.5倍と言われます。 「借りている農地」から得ている食糧は、海外の動向によって左右されます。世界各地の人々の胃袋をもっとも左右する国は、米国です。なぜなら、世界中で輸出されている農作物のかなりの部分が米国からの輸出だからです。 FAO(国連食糧農業機関)の2002年のデータによると、米国の世界における輸出シェアは -穀物 33.8% -小麦 21.9% -米 12.4% -とうもろこし 63.6% -大豆 53.6% -牛肉 18.0% -豚肉 17.1% -鶏肉 37.5% -柑橘類 19.8% を占めているのです。 とうもろこしは、米国、中国、アルゼンチン、大豆は米国、ブラジル、アルゼンチンの上位3か国による輸出シェアが世界全体の9割を超える「寡占」状態となっています。小麦も、米国、オーストラリア、EU、カナダ、ロシア、アルゼンチンの6ヶ国で70%以上を占めています。この3つが主な穀物ですから、「世界の胃袋が、ごく少数の国のお世話になっている(=手に握られている)」ということです。 日本は、なかでも「大変お世話になっている(=強く握られている)」、しかも「特定の国に頼っている(=握られている)」状況にあります。(「握らせている」という言い方の方が適切かもしれません。日本の政策として、こういう状況にしてきたわけですし、状況を変えていないからです) 日本の人口は、世界の人口の何%でしょうか?  2%です。 その2%の人が、世界中で輸出されている農産物のうち、10.2%を輸入しています(金額ベース)。とうもろこしの日本の輸入シェアは、20.5%、肉類は24.8%で、それぞれ世界第1位です。(こういう金メダルはあんまり・・・) 小麦(6.8%)はEUに次ぎ第2位、大豆(10.4%)はEU、中国に次ぎ第3位の輸入国です。そして、日本から輸出している農産物は少ないですから、1984年以降、世界第1位の農産物純輸入国として不動の地位を占めています。(動いてほしい・・・) まえからこうだったわけではありません。日本の農産物輸入は、1960〜2000年の間に、金額ベースで約7倍、数量ベースで12.5倍と大幅に増加しているのです。 その中身も変わってきています。60年当時は、主要食料を確保するために、直接食用として消費する小麦の輸入額が第1位でした。その後、国民所得の増大に伴って食生活の多様化・高度化が進展し、畜産物や油脂類の国内需要が拡大したこと等から、80年代には、家畜の飼料のとうもろこしや、植物性油脂原料の大豆の輸入が拡大。 90年以降は、食肉の需要が国内生産を上回って増加したことから、牛肉、豚肉等畜産物の輸入が拡大し、近年は、生鮮野菜、冷凍野菜の輸入が増加しています。 そして、特定の国への依存度が高いのが、日本の農産物輸入の特徴です。どこの国か? そうです、米国です。 2003年の日本の農産物輸入先国をみると、 -米国  36.3% -中国  11.7% -豪州  7.9% -カナダ 6.1% -タイ 5.6% となっていて、この上位5か国で農産物輸入額の7割を占めています。 近年、中国のシェアが増加傾向にあります。(1995年の8.3%→2003年の11.7%) 農産物別に米国からの輸入シェアを見てみると -とうもころし 89.5% -大豆     74.0% -小麦     54.2% -牛肉     51.9% です。ちなみに、これらの農作物の日本の自給率は、 -とうもころしなどの飼料自給率 24% -大豆      5% -小麦     13% -牛肉     39%(飼料の自給率を考えると実際はもっと低い) です。たとえば、日本で消費している大豆の70%強は米国産となります。となると、最初のメールに書いてあったような「米国が大豆の輸出を禁止」という状況になると、私たちはすぐに大豆及び大豆製品が食べられなくなってしまいますね。そういうことがあるのでしょうか? 実は、米国には「農作物の輸出の規制・禁止」を定める法律があります。この「輸出管理法」によると、 >> 輸出規制が認められる場合(輸出管理法第3条) +国家安全保障上の事由
米国の国家安全保障に不利益を及ぼすような国の軍事力に相当の貢献をする可能性のある産品及び技術の輸出制限 +外交政策上の事由
・米国の外交政策の推進上又は国際的義務の履行上必要とされる輸出制限
・外国の輸出制限が米国内の供給不足や価格高騰をもたらすかあるいはそのおそれがある場合、又は米国の対外政策に影響を与える目的で適用される場合、そのような外国の輸出制限を撤廃させるために必要とされる輸出制限(薬品又は医薬品の輸出は除く)
・国際テロリズム行為への支援を止めさせるために必要とされる輸出制限 +供給不足時の輸出規制
希少資源の過剰流出から国内経済を保護し、外国需要によるインフレへの重大な影響を緩和するために必要な輸出制限 << となっているそうです。実際に、1973年に米国は大豆・同製品の輸出を禁止・規制しました。原因は米国内の不作でした。日本の豆腐屋さんが困った、というのはこのときですね。 1974年に出された「米国CIAレポート」には、「食糧が米国にとって最終兵器である」と明確に謳われているそうです。そして、当時、ソ連の最大の小麦輸入先は米国でしたが、アフガニスタン侵攻の際、米国は対ソ連の食物輸出を全面禁止しました。1974年及び75年:旧ソ連、ポーランドに対する小麦の輸出規制、1980年:旧ソ連に対する穀物の部分的輸出禁止の例があります。 国連食糧農業機関(FAO)では、今後の食糧見通しとして、「必要な政策がとられるのであれば農業生産は需要に応じて増加し、世界全体で見れば食料不足は起きないと見込まれる。しかし、適切な努力がなされなければ国あるいは地域によって深刻な問題が継続し、かえって悪化する可能性がある」としています。 特定の国に食糧を頼るのは、不作などを考えてもアブナイ状況ですが、「食糧は武器」だと考えている国に特に大きく頼っているのは、もっとコワイ状況ではないかと思います。(なので、ことあるごとに「地産地消」「ゼロよりマシだから、たとえかすかでも、自給率を上げる取り組みをしよう」と訴えています・・・) 上にあげた統計の数字などは、この7月に出された農林水産省の 「海外食料需給レポート2004」
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jki/rep/2004kaigai-rep.pdf(pdf) 「我が国の食料自給率−平成14年度 食料自給率レポート−」
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/anpo/jikyu/jikyu01.htm などから持ってきました。後者の目次をご参考まで。 >> Ⅰ.食料自給率レポート
1.食料自給率の動向
 (1)我が国の食料自給率
 (2)基本計画策定後の食料自給率の動向
 (3)地域の食料自給率
 (4)諸外国の食料自給率 2.「食」をめぐる動向
 (1)食料消費全体の動向
 (2)品目別の消費動向等
 (3)諸外国の食料消費の動向 3.「農」をめぐる動向
 (1)担い手・生産額の動向
 (2)農地の動向
 (3)生産の動向 4.地方公共団体における総合的取組
 (1)生産努力目標等の策定状況
 (2)食料自給率向上等に向けた取組 Ⅱ.参考資料
1.食料需給表
 (1)平成14年度食料需給表(概算値)
 (2)平成13年度食料需給表(確定値) 2.我が国の食料需給
 (1)食料自給率の推移
(2)国民1人・1年当たり供給純食料等
 (3)飼料需給表
 (4)主要品目の輸入量 3.地域別の食料需給
 (1)都道府県別食料自給率
 (2)地域別消費動向
 (3)都道府県別生産量等 4.諸外国の食料需給
 (1)主要先進国の品目別自給率と国民1人・1年当たり供給食料(試算)
 (2)主要先進国の食料自給率の推移(試算)
 (3)世界各国の穀物自給率(試算) 5.その他
 (1)新たな食品安全行政について
 (2)地域食料自給率の試算ソフトについて
 (3)食生活指針
 (4)食育の推進について
 (5)不測時の食料安全保障マニュアルについて
(6)食の生産から消費まで(イメージ)
 (7)農業構造の展望(平成22年)
 (8)代表的な献立の栄養バランスと食料自給率(試算) << となっています。都道府県別や外国の食料自給率など、興味深いですよ〜。 また、農林水産省が平成13年9月に「不測時における食料安全保障」という文書を出しています。
http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/manual/dai2kai/siryo3.pdf(pdf) 「過去の不測時における対応」として、 -国内生産の減少(例 平成5年の米の凶作→緊急輸入) -輸入の減少・途絶
−主要輸出国・生産国の不作
−輸出国の港湾ストライキ等の輸送障害 の3つが上がっています。これからは、「輸出国の外交政策」などが不測時を引き起こす可能性があります。これまでのような「緊急輸入」「備蓄の取り崩し」「輸入先多角化」「価格監視等の行政指導」などの対応策では、対応することができなくなるでしょう。政府はどう考えているのでしょうか? そして、私たちは、自治体として、企業として、NGOとして、ひとりひとりの市民として、どう考えるべきでしょうか? ・・・少なくとも「考えはじめる」ことが必要だ、と思います。 さきほどご紹介した「海外食料需給レポート2004」には、いろいろなグラフや表が載っていて、「一目瞭然」です。http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jki/rep/2004kaigai-rep.pdf(pdf) コラムも載っていて、たとえば、 >> <米国においてとうもろこしを主原料とするエタノール消費量が増加> 米国において、とうもろこし生産のうち1割程度がエタノール生産に向けられている。ブラジル、インド等他のエタノール主要生産国はさとうきびを主原料とする国が多く、とうもろこしを主原料とする国が少ない状況にある。このため、現在のところ、米国のエタノール生産が世界のとうもろこし需給に与える影響は限定的である。しかしながら、今後、米国におけるエタノール生産の拡大に伴い、影響力を高めていく可能性もあるため、その動向に注視する必要がある。 <遺伝子組換え作物の動向> 遺伝子組換え農作物(GM作物)については、2001年現在、米国、アルゼンチン、カナダ、中国等の18 か国が、大規模な商業栽培を実施しており、これら18か国での組換え作物の栽培面積は前年度比15.3%増の6,770 万haとなっている特に米国では、大豆栽培面積の8割、アルゼンチンでは同じく大豆栽培面積の9割が遺伝子組換え品種で占めている。 << ということもわかります。日本の消費している大豆の7割を生産している米国の、栽培面積の8割は遺伝子組み換え大豆が植え付けれているのですね・・・。
 

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