2005年06月10日
カエル2題(1999.12.08)
地球環境問題に関する我々人間の認識や対応はよく、「茹でガエル」に例えられます。
熱いお湯の中にカエルを放り込むと、カエルは「あちっ!」といって飛び出して逃げます。
でも鍋の水の中にカエルを入れておいて、弱火で温めてやると、徐々に水温が上がっていくのに気づかずに、「ハハ〜ンハハンハンハン(古い!)」なんていっているうちに、茹で上がって死んでしまうとか。
記録を取り始めた1866年以降、地球の平均温度は確かに上がっています。二酸化炭素をはじめとする温暖化ガスがその原因であると多くの科学者が考えています。ではどのくらい実際に上がっているのか?
1〜1.5℃程度です、たったの。1998年は平均気温の記録を塗り変えた年で、ワールドウォッチ研究所では「これまで使っていた気温のチャートでは、縦軸(気温)が足りなくなった!」と、ショッキングな発表をしました。でも、それだって前年比0.2℃の上昇です。
今のまま温暖化が続くと、2050年には地球の平均気温は2〜3℃上昇するだろうといわれています。「これほど大騒ぎして、たった3℃?」と思われるかもしれません。
でも、あの氷河期の地球の平均気温は、今よりどのくらい低かったと思いますか?
「たった」3〜6℃といわれています。ですから、2〜3℃の気温上昇ですら、地球の多くの生物にとって「命取り」となる環境激変をもたらす可能性があります。でもこのくらいの温度変化では、人間は「あちっ」と飛び出すことはないでしょう。
もうひとつ、「茹でガエル」的状況として、私がとても恐いと思っているのが、「環境ホルモン」です。内分泌撹乱物質がアメリカの五大湖周辺の子供の知能低下やその他の異常を引き起こしているなどの報告が数多く出ています。環境ホルモンの直接的な影響として、とても恐い話です。
皆さんも含めて、現代人の体内には、生まれたときには存在していなかった化学物質が250種類も入っているそうです。その多くが未知の物質で、物質同士の相互作用も、遺伝子レベルに与える影響も、何もわかっていないものです。これも少しずつ体内に蓄積してきたから、「あちっ」とならずに、実は危険な状態にも気づかずにいるのかもしれません。
そしてもうひとつ恐いのは、この環境ホルモンが、世界をあまねく汚染しているという事実です。環境ホルモンの原因となる物質など、見たことも聞いたこともないはずのエスキモー人や北極グマの体内組織にも、非常に高い濃度で発見されているのです。研究者は「もう地上に汚染されていない地などないので、汚染のない状態との比較研究はできない」といっています。
世界中の人々が、程度の差こそあれ例外なく影響を受けている、ということです。そうなると、世界の知能指数の分布が低い方にずれていく、ということではないか。それとは気づかぬうちに、「一億総白痴化」どころではない「全世界総白痴化」が進行しているのではないか。
人類史上つねに、知能に限らず人間の能力の分布の高い方の極端に位置する「天才」と呼ばれる人々が、さまざまな学問領域や芸術、社会で、その知能や深い洞察にもとづいて、人間の抱える問題を明らかにし、ビジョンを示し、その克服方法を見出し、世界をひっぱってきました。でも、分布が低い方にずれていったら、アインシュタインやガンジー、その他問題解決のビジョンを描ける人も減っていくということではないか。
「茹で人間」の行く末は、「ハハ〜ン」なんて呑気な安楽死ではなく、みんながますます考えなしになり、自分の情動を抑えられなくなり、社会性を失い、自己中心的になり、暴力的になり、戦争や殺戮を繰り広げても何とも思わなくなり、しかも、そのような暗黒の時代から救い出してくれる「ビジョンの人」も出てこない、という状況ではないか。
ここで、もう一つの「カエルの話」。
月夜の美しいある晩、2匹のカエルが散歩に出かけました。ところが、はしゃいでとび跳ねているうち、誤ってミルク壷に落ちてしまったのです。
2匹は必死に壷から出ようとピョンピョンもがきましたが、なにせ壷が深い上、壷の内側はツルツルで、足場にもなりません。
1匹のカエルは「どんなにやったって、どうせ無駄さ」とピョンピョンするのをやめてしまいました。そして、沈んでいきました。
もう1匹は「なにくそ。最後まであきらめないぞ」と何度も気が遠くなるなか、必死にもがきつづけていました。すると不思議なことに、気づくとカエルは固い地面の上に立っていたのでした。ミルクをあまりにかき回したので、ミルクが固まってバターになっていたのです。
そこでそのカエルは、難なくミルク壷から跳び出して、家に帰りましたとさ。
皆で、ひとりでも多くで「ピョンピョン」してミルクをバターに変えましょう!
気づかぬうちに、茹で上がってしまうまえに。