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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年06月21日

環境モデル都市「水俣」の話 (1999.11.20)

日本のありもの探し
 
昨日・今日と「環境を考える経済人の会21シェルパ会議1999」に参加しています。 「環境を考える経済人の会21」は、日経新聞の論説委員である三橋さんが 1996年に立ち上げられた、環境問題に積極的に取り組む日本の代表的企業の経営者からなる「経済人の環境NGO」です。 世界にもあまり例を見ないユニークな組織だと思います。 立ち上げられたときに、三橋さんが定められた2つの条件は、 -環境NGOとの対話を大切にする -自ら環境のために汗をかく ということでした。 「汗をかく」ために、大学で寄付講座をおこなっています。もうひとつの柱である「環境NGOとの対話を重視する」ために、毎年今回のような合宿をおこなっており、テーマを変えながら、いろいろなNGOの方をお招きして、お話を聞き、議論をしています。 「地球益」がNGOの活動の原点である。これを企業経営に取りこんでいかないと21世紀には企業は存続できないだろう。したがって、環境NGOとの対話が企業のために必要だ、という意識からの活動です。 今回は、全体テーマ「地域からの循環型社会づくり」のもと、 -都市と農山村の共生と連携 -各主体の連携と仕組みづくり で話を進めています。とっても面白いです。NGOの方も企業の方も、非常に率直に意見を出し合い、質問しあい、アイディアを出し合い、協力を申し出たりしています。 企業の方々からは「これまでNGOというのは何かわからなかったが、参加してみて、やはりこのような視点をもたないと企業としても存続できないのではないかと痛感した」という感想も聞かれました。 傍聴させていただいている私も、ワクワクしながら発表や議論を聞いています。 「もう間に合わないかもしれない」と思いつつ、一生懸命活動されている方々がいます。ネットワークを組みながら、地域での政策形成のサポートをしている青森の団体、青年会議所の運動から発展して、本当に「石の上にも3年」という地道な活動をして、行政にも頼りにされ始めている十勝の組織、里山や棚田を守る運動をされている組織や個人など、少しずつでもご紹介していきたいと思います。 昨日最初の基調講演は、水俣市の吉井市長の講演でした。水俣の暗く悲しい半世紀にわたる「負の遺産」を、地域や市民の「内面の再構築」を経て、前向きに転換し、環境モデル都市に生まれ変わることで地域を癒し、地球を守ろうと努力されてきた非常に重いけれども、どこまでも前向きなお話に深く感動しました。 全部はご紹介できないのが残念です。もし講演内容がどこかにまとめられることがあれば、またお知らせします。あの重み、あの迫力をぜひ感じていただきたい。 水俣市では、ごみを21種類に分別収集しているのをご存知でしたか? プロパンガス混入が爆発を起こした事故がきっかけで始められたそうですが、現在、100世帯に1つの割合で分別ステーションが置かれているそうです。 とってもユニークなのは、このステーションでの分別はすべて住民が運営していることです。市は分別されたゴミを運ぶだけ、だそうです。 吉井市長は、「分別収集ゴミのブランド品です」とおっしゃっていましたが、21種類の分別とは本当にスゴイですよね。 各地から視察・見学が絶えず、「水俣市の観光資源は神社仏閣ではなく、ゴミです」とおっしゃっていました。 そして、副産物として地域のコミュニケーションが生まれた、といいます。ゴミ分別の日には、ステーションに住民が集まり、お喋りをしながら分別し、まわりで子供たちが遊んでいるそうです。「○○さんの顔が見えないわね、どうしたのかしら」と一人暮しの人や老人への地元のケアにもつながっているそうです。 吉井市長はこれを「井戸端会議ならぬ、ゴミ端会議ですわ」と。 我々にとても耳の痛いこともおっしゃっていました。市の担当者が、「環境モデル都市ですから、ゴミぽい捨て禁止条例を定めましょう」と提案した時の話。吉井市長は、「環境モデル都市だから、ゴミぽい捨て禁止条例は作らない」と反対、いまでもないそうです。 ゴミを捨てない、というのは、恥の意識、社会意識があってのこと。規制で縛るのではなく、その意識を高揚させることでゴミを捨てない市にしましょう、ということです。「ぽい捨て条例は、市民ひとりひとりの心の中に作ってください、ということです。」 吉井市長は、言葉を続けて、「渋谷駅前に『東京都はゴミぽい捨て条例を定めました』という大きな看板が立っていますが、その周りは吸殻やらゴミがたくさん散乱しています。」 もうひとつ、水俣市のユニークな取り組みは「家庭版ISO」です。水俣市自体もISO14001を取得していますが、この家庭版を地元の青年会議所が作成したそうです。節電とか各家庭でそれぞれ目標を定めて、実行し、その結果をチェックしてもらって、市長からの「認証」がもらえるそうです。 現在100家庭ぐらいの"審査"をおこなっているところで、そのうち続々「認証取得家庭」が出てきそうです。企業の皆さん、負けちゃいられませんよ! 私は水俣にお邪魔したことはありませんが、本当に美しい場所だそうです。「魚がおいしいです、いらっしゃい、案内します」と市長にいっていただき、ぜひ!と思いました。
 

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