エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2005年06月21日
ワールドウォッチ研究所訪問記(2) (2001.01.18)
昨日はワールドウォッチ研究所での「スポンサーのためのブリーフィング・ミーティング」、本当に楽しい幸せな1日を過ごしてきました。
『地球白書』の各章の執筆者が入れ替わり立ち代わり、その章のキーポイントを発表していきます。特に前半は、地下水汚染や各地でカエルが消えていること、世界中で氷が融けていること、自然な災害ではない災害が急増していることなど、どうもくら〜い気持ちになるような事実の連続でした。
それでも、会自体は、笑い声が絶えない楽しいものでした。日本だと「環境問題は深刻な問題なのだから、深刻に語らなくてはならない」というご意見(アンタは深刻さが足りない、とか。確かに) をいただくこともあります。そうじゃないんだけどな〜と思っている私は、このような「明るい真剣さ」が好きです。
余談ですが、レスターにしても、もちろんマジメな人ではありますが、けっこう冗談をいっています。日本での講演では、通訳者が大変だし、効果的にわかってもらえないことが多いので、冗談をいわないようにしているといっていました。
さて、皆様のインプットもいただいて用意した、私の個人的な State of Japan(最近の日本の環境への取り組み)の発表は、午後いちばんの時間でした。
配布した資料には、(1)日本について、(2)日本での取り組みの表(エネルギー、交通、循環型経済/政府、自治体、企業、NGOと市民)、(3)まとめを書きました。
(1)では、
-面積が小さく(しかも70%近くが山や森林)、人口が多い
-したがって、当面の緊急課題は、廃棄物の最終処分場の不足(産業廃棄物1.5年、一般廃棄物6〜8年)
-地球環境問題では、温暖化が重要課題
-食料自給率(40%)、エネルギー自給率(20%)の低さを考え合わせる必要がある
-強みは、技術力、TQCで培った現場の創意工夫やチームワーク、「もったいない」「知足」の精神
-横並び意識が強いので、全体で正しい方向へ向かえば、とても動きが早い
(3)で書いたのは、
-どの当事者も、環境問題を意識するようになってきた
-いろいろな枠組みや仕組みづくりの取り組みが盛んだが、実際の効果や変化はこれから
-方向が決まれば動きが早い日本なので、目を離さないように!
ということです。もちろん、「私の個人的な意見です」と断ってのうえです。
さて、発表のまえにレスターが紹介をしてくれました。自分の講演の通訳回数でいえば、世界チャンピオンであること(そういう誉め方もあるのですね)、本も翻訳していること。「私の本で、日本で唯一ベストセラーになったのは、彼女の訳した本なのです(『エコ経済革命』が2週間ほど八重洲BCのベストセラーに載りました)。『自分が訳したんだからね』と、私が忘れないように、時々言うんですよ」
会場の笑い声の中から、「本当にあなたの本か、どうしてわかるんです?」とまぜっかえす声。レスターも笑いながら、「確かにわからないね。もしかしたら、彼女が好きなことを書いていたのかもしれない」。「だから売れたんでしょう」と別の人からちゃちゃが入ります。
レスターは紹介の最後に、「でもね、皆さん気をつけてくださいよ。彼女はほとんど毎日のようにニュースを出しているんです。彼女に話したことはきっと翌日のニュースに載っちゃいますよ」
何とも温かい紹介と拍手の中、発表台に立ちました。
◇◇◇◇◇◇
レスター、紹介ありがとう。皆さん、こんにちは。ワールドウォッチ・ファミリーの一員に加えていただいて、本当に嬉しく光栄に思っています。
今回はこのような機会をいただき、嬉しいです。5分しかないので、細かなことはお手元の配布資料をあとでご覧下さい。レスターの講演でのポイントに倣って、エネルギー・交通・循環型経済の分野の日本の現状と、各セクターがどのような取り組みをしているか、まとめてみました。
この発表では、7つのポイントだけご報告します。2つは政府・自治体について、3つが企業について、最後はNGOについてです。
(1)政府や自治体が本腰を入れつつあること。
昨年は環境六法が成立し、まさに枠組みを整えた年でした。各法律にはまだまだ改善すべき点がありますが、大きな一歩です。
(2)政府の主眼は「リサイクル」
日本の土地事情がひとつの要因です。民間でも「日本は地下資源は乏しいけど、既に経済に存在している地上資源は恵まれている。それを再利用・リサイクルすべきだ」という意識が高まっています。
(3)環境マネジメントシステム(EMS)の普及と促進
ISO14001取得事業者数は、昨年の11月時点で、日本は4600を超え、米国は1130でした。「環境によいことは、お財布にもよい」という意識も出てきています。政府も中小企業向けのエコアクションプログラムや、家庭向けの環境家計簿を作成して、あらゆる分野でEMSを活用できるよう、支援しています。
(4)環境報告書の隆盛
日本では300社以上が環境報告書を出しています。自分たちの環境負荷を把握し、行動計画を立て、その結果を発表する、というアカウンタビリティを高めるツールとして、またコミュニケーションのツールとして取り組む企業が増えています。
(5)グリーン調達の広がり
3600社(2兆円規模)の供給業者に対してグリーン調達ガイドラインを設けている松下など、大企業はその購買力をテコに、下請けや関連業者のグリーン化を促進しています。
(6)環境は企業経営の優先事項
差別化や競争力の源泉として位置付ける大企業もふえており、一方中小企業でもサバイバルのためには必須(たとえばISOがないと取引中止になるなど)という意識が広がり、取り組みも進んでいます。
(7)これまでNGOの活動が盛んだった国ではありませんが、NPO法も成立し、NPO/NGOの数も活動も増えています。環境関連のNPOもたくさんできてきましたし、活発な活動を展開しているところもあります。
発表は以上です。レスターがいったように、メールニュースを出しています。いまは日本語だけですが、近日中に英語版も出します。このような日本での動きや情報を知りたいという方がいらしたら、メールをください。また今日の発表についての質問や追加情報の要請などもどうぞ。ありがとうございました。
◇◇◇◇◇◇
5分を過ぎてしまいましたが、思ったような発表ができ、嬉しく思いました。休憩時間に、何人もの参加者が「よかったよ」「日本でそんなにいろいろと進んでいるとは知らなかった」など声をかけてくれました。
「僕もMLを持っています。お互いに紹介し合いませんか?」といってくれた男性の顔を見て、何だか見覚えがあるなぁ、と思ったら、『奪われし未来』を書かれたピーター・マイヤース氏でした(通訳をさせてもらったことがあります)。
さて、宣言しちゃったから、昨年のこのミーティングで思いついた「英語で日本発の情報を届けるML」、早く始めないとね。当初の読者はこのミーティングで獲得したし、ワールドウォッチ研究所のMLにも紹介を流してくれるというから、世界中に"宣伝"できそうです。
ワシントンへ来る直前に、設定や英語の紹介文は作ってきたのでした。あとはコンテンツです。政府でも自治体でも企業でもNGOでも個人でも、英語での環境情報をどんどんお寄せ下さったら嬉しいです。
「我が社の英語版の環境報告書はこのURLで読めるよ」という英語情報の所在地でもけっこうです。日本でも英語になっている情報はけっこうあるけど、海外の人からすると、どこでゲットできるかわからないのですよね。所在地を教えてあげるだけでも、お互いにお役に立てると思います。情報を届けたい日本の方のお役にも、情報がほしい海外の方のお役にも、そしてひいては、地球環境のお役にも立てれば嬉しく思います。
少なくとも「日本が進んでいるとは知らなかった」なんてもういわせないゾ!