昨日は、私は何も予定がない(珍しい〜)日でした。東京-ワシントンの往復チケットを割引で買おうとすると、なぜか「現地3泊」が条件なのです。どうしてだろう?といつも思いますが、ともあれ、そのために1日フリーになりました。
午前中はホテルで原稿書きをして、お昼頃、ワールドウォッチ研究所に出かけていきました。この日は理事会が開かれていて、お昼はビュフェ・ランチよ、と聞いていたので、お昼を食べにのこのこと。ワールドウォッチ研究所の理事会をみたのははじめてでした(レスターは現在、所長ではなく、この理事会の理事長です)。メンバーリストを見ていたら、何とハーマン・デーリーと書いてある!
1ヶ月か2ヶ月前に、GDPなどの指標ではなく、幸せや本当の進歩を測る指標の話を書き、そのとき、ご紹介したのがハーマン・デーリー氏のISEW(Index of sustainable economic welfare)です。その方がワールドウォッチの理事だとは知りませんでした。
さっそくスタッフにお願いして、紹介してもらいました。優しそうな、でも凛としていて、研究では頑固だろうなぁ、と思わせるステキな老紳士でした。
「あなたのISEWについて紹介したことがあります。でも出典や参考文献がなかなかわからなかったので、教えてください」とお聞きしたら、もともとの本(日本語にはなっていないと思うよ、といっていました)が、For the Common Good(Beacon Press) であること、最新版は1996年頃に出ていること、International Society of Ecological Economics という学会誌にも参考文献がでていることを詳しく教えてくださいました。
「日本からきたの? 本をいっしょに書いたCobbさんは、若いとき日本に住んでいてね、日本語がいまでもできるんだよ」「そうなのですか。いま日本でも、GDPなどではなく、真の幸福や進歩を測る指標がほしい、という思いが出てきています。ぜひいつか、日本でお話を聞かせてください」と、嬉しい出会いでした。
午後は研究所の図書室で、さっそく教えてもらったInternational Society of Ecological Economics を調べてみました。Ecological Economics という分野がこんなにちゃんと確立されていることを私は知らなかったので、驚きました。
バックナンバーをめくっていたら、「排出権取引」「持続可能性指標」「エコロジカル・フットプリント」「生態系のサービスの価値評価」など、よく聞くテーマの研究が並んでいます。こういうところで研究者が研究して発表して、世の中に新しい考え方やコンセプトを出してくれているのね、と思いました。
「もっとたくさん、の経済を超えて」とか「使わない価値」「自然が人間の価値評価をしたらどうなるか?」など、面白そうな論文が並んでいます。「生態系のサービスの価値評価」特集では、「だれの価値なのか?」とか「寄生虫がその宿主を評価すべきか?」など、なかなか刺激的なものも混ざっています。
パラパラめくっていたら、この学会を立ち上げ、ジャーナルを創刊したひとりが、このハーマンさんだったということがわかりました。それ以来、ジャーナルの編集者のおひとりでいらっしゃるそうで、道理でよくご存知だったわけです。
雑誌のコピーをしたり、昨日の発表者に追加の質問したりブラブラしていたら、ブライアンという若手研究者から、「昨日のジュンコの発表で、グリーン調達の話があったでしょう? 自分でも少し調べてみようと思っているんだけど、よかったらもう少し詳しく教えてくれない?」と声がかかりました。
いつも取材させてもらう、情報をもらう側だけど、たまには、取材されて情報提供できるのは嬉しいことよ、と思いつつ、5つのポイントに整理して話しました。
-松下の例のように、大手企業はグリーン調達基準書を出すなど、自分たちでグリーン調達を進めている。イメージのためではなく、コストと環境リスクの低減がその背景だろうと思う。
-話したように、政府対象のグリーン購入法が施行されつつあるので、これも大きな原動力になるだろう
-ユニークな取り組みとして、96年にグリーン購入ネットワークが誕生し、拡大している。これは産官学民がいっしょに基準を作り、自主的に用いる仕組み。
-グリーンコンシューマーも増えている。それぞれの地元でのガイド発行のほか、ネットワークも進んでいる。
-その先行者というか、生協の果たしてきた役割が大きい。グループとしての購買力を活かして、メーカーに環境に優しい製品を要請したり、かなわないときは自分たちで作ったりしている。
どうでしょうか? 訂正や追加情報など、「これからも情報をほしい」というので、何かあったらどうぞ教えてください。
ブライアンに話したのは、「グリーン調達の環境に対する効果をどう測るか、そのへんが大切だと思うよ」ということです。この辺を研究してくれたら面白いかもしれないなぁ。
あちこちで油を売ってからバイバイして、前から行ってみたかったフィリップス・コレクションという美術館に行きました。ホテルもこの美術館も研究所もすべて歩ける距離にあって、アメリカじゃないぐらい(?)便利です。
お店が並んでいる通りを歩いていたら、絵本の専門店がありました。ディスプレイに並んでいるのは、見覚えのある五味太郎さんの「おなら」という本です。「この書名、どう訳しているのかな?」と近づいたら、The Gas We Pass, A Story of Fartと書いてあって、うまいこというなぁ〜、と感心。
それから、Things Japaneseという日本のものを売っているお店もあります。石塔や仏像などのディスプレイに並んで、いろいろな大きさの招き猫がみんなで手を挙げているのも可笑しかったですが、その中にチョコンと光(異彩?)を放っていたのは・・・ピカチューでありました。
フィリップス・コレクションは、とても落ちついた素敵な美術館でした。有名なルノワールの「舟遊びの昼食」の前で、ずっと椅子に座りこんで眺めていたら、フロアの係の人が来て、「気に入りましたか?」と声をかけてくれました。そして特別展についても教えてくれ、オーディオガイドまで取りに行ってくれました。何だかとてもあったかい気持ちで楽しめました。
たまたま夜遅くまで開館している曜日で、6時からの音楽まで楽しませてもらいました。この美術館は、フィリップス夫妻のおうちを美術館にしているので、とてもアットホームなのですが、その「音楽室」というグランドピアノが置いてある広間(壁には素敵な絵がたくさん飾ってある)で、ドリンクとサンドイッチが出て、昨日はボストン・ジャズの演奏でした。
本物の絵に囲まれて、本物の音楽を聴きながら、友達や恋人とお喋りしている人々をぼんやり眺めながら、つい長居をしてしまいました。
そして仕上げは、レスターに教えてもらったシーフード・レストランへ。牡蠣の美味しい季節ですが、ここでは北米6ヶ所の牡蠣が食べられるというので、「それぞれ1個ずつ」頼みました。牡蠣といっても、本当にそれぞれ味も感触も違うのですね。ウエイターに「チェサピークのがいちばん美味しかった」といったら(チェサピークは地元)嬉しそうに笑っていました。
ワシントンのこの辺は、来るたびにスターバックスが増えていて、携帯電話が日常生活に溶け込んだこと以外は、あまり変わりがないようです。
今度来るのはいつかな〜、と思いつつ、今から空港に向かいます。