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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年06月21日

幾何級数的成長

システム思考を学ぶ
 
大部分の人々は、成長を「線形過程」として考える傾向があります。ある量が、一定期間に、一定量だけ増加している場合、「算術級数的に成長している」といいますが、ある量が、一定期間に、その総量に対し、一定の割合で増加する場合、「幾何級数的成長を示す」といいます。 たとえば、ある子どもがクマさんの貯金箱に、毎年100円ずつお小遣いから貯めていく場合。これが最初の「線形的」、または「算術級数的」成長です。グラフに書くと、直線で右肩上がりになりますね。毎年の増加の量は、「貯金箱にすでにいくらあるか」に無関係で、一定です。 では、その子どもが、お小遣いの100円を7%の年利で銀行に預けたら? この場合、毎年口座に増える量は一定ではありません。「全体の累積量=口座に預けてある総額」が増加するにつれ、毎年増える量もどんどん増えていきます。 これが2番目の「幾何級数的成長」です。グラフにすると、「ノ」という感じで、グラフの傾きがググッと、Y軸と並行になりそうな勢いで急に立ち上がってきます(図示できないのでもどかしいのですが・・・)。 『成長の限界』には、「このような幾何級数的成長は、生物、金融、および世界の他の多くのシステムにおける共通の過程である」と書いてあります。 そして、幾何級数的成長が生み出す驚くべき結果について、古いペルシャの伝説からおもしろい例を挙げています。 >> ある賢明な廷臣が王様に美しいチェス盤を献呈した。そしてその返礼として王様が、その盤の第1の碁盤目に1粒の米を、第2の碁盤目に2粒の米を、第3の碁盤目に4粒の米を、というぐあいあに米を下賜されることを望んだ。 王様は即座に望みを聞き入れ、倉庫から米を持ってくることを命じた。チェス盤の第4の碁盤目は8粒の米を必要とし、10番目は512粒、15番目は、16,384粒を必要とした。 そして21番目の碁盤目は100万粒以上の米を廷臣に与えた。40番目の碁盤目までに、1億粒以上の米が倉庫から運び出されなければならなかった。王様のすべての米のたくわえは、彼が64番目の碁盤目に達するはるか以前に、尽き果ててしまっていた。 幾何級数的増加は、非常に急速に莫大な数を生み出すので、人を欺くのである。 << この「算術級数的増加 と 幾何級数的増加」のギャップを200年以上まえに指摘したのが、マルサスです。「人口は幾何級数的に増えるが、食糧は算術級数的にしか増えない」と。マルサスは、「したがって、食糧生産は人口増加に追いつけない」と警鐘を鳴らしたのでした。しかし、200年以上たった今も、レスター・ブラウンたちが同じ警鐘を鳴らし続けています。 「人々は線形(算術級数的)成長であると考えがちだが、世界人口や工業生産など、世界の多くのシステムは、実は幾何級数的成長を遂げるものであり、人々はその莫大な影響を認識できていない」というメッセージが『成長の限界』に込められています。
 

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