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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年08月30日

システム思考入門シリーズ第1回「システム思考とは何か、システムとは何か」

システム思考を学ぶ
 
システム思考入門シリーズ第1回「システム思考とは何か、システムとは何か」 システム思考とは何でしょうか? そもそもシステムとは? ぐるっと身の回りを見渡してみて下さい。あちらを見てもこちらを見ても「変化」にあふれていると思いませんか?  刻一刻と変わる市場の価格の動きから職場でのできごと・人間関係、流行の商品や顧客の嗜好、競合や取引先の動向、あるいはもっと長いスパンで変わる人や組織の成長、身近な地域や自然から国際関係、地球環境まで、常に変化が私たちの生活や仕事を取り巻いています。そして、私たちは家庭や職場、地域社会、ひいては国際社会の中でさまざまな変化を予測したり、対応したり、あるいは創り出そうとしています。 しかし、こういった変化がどのように起こるのか、そしてより重要なこととして、どのようにしたら変化を引き起せるか、について、私たちはどのくらい正確に理解しているでしょうか? 実は十分に理解できていない場合がほとんどなのではないでしょうか。 問題が目の前にあるとき、私たちはその問題を解決し、望ましい状態にしようと、物事や状況を変えよう、変化を起こそうとします。ところが、みなさんもご存じのとおり、そう考えて実行する問題解決方法がうまくいくとは限らないのです。 売上を上げようと販売促進キャンペーンをしても、終わったとたんに売上が元に戻ってしまったり、ひどいときには逆に落ち込んでしまう。従業員の動機付けに取り組んでも、思ったような効果が出なかったり、効果が長続きしない。道路の渋滞を解決しようと道路の車線数を増やしたら、かえって渋滞が増えてしまった......。 みなさんの身の回りにも思い当たることがあるのではないでしょうか? よかれと思って変化を起こしても、問題を解決するどころか、問題を悪化させてしまうことすらあるのです。 とりわけ分業が進み、多くの要素が複雑に絡み合っている現代社会では、思ってもいなかったことや予想や予測からは考えられないことが起こります。それは、いま目の前で起きている問題の原因は、私たちの目の前にあるとは限らないからです。しかも皮肉なことに、今日の問題の多くは、昨日の解決策から生じているのです。 では、どのようにすれば変化を理解し、適切に対応することができるのでしょうか。そして、望ましい変化を自ら引き起こすことができるのでしょうか。 一口で「変化」と言っても、さまざまな分野で、多種多様な変化が、いろいろなレベルで起こります。しかし、ごく身の回りの変化でも、国際社会の変化であっても、「変化を引き起こす構造」や「変化のプロセス」には共通するパターンを見出すことができます。 この変化の構造とプロセスに着目し、変化のダイナミクスを理解することによって、本質的な解決策を見出そうとするとき、重要な役割を果たすのが「システム思考」なのです。物事を見えている部分だけではなく、システムとして全体的にとらえて、要素間の相互作用に着目するアプローチです。 さて、ここでいう「システム」とは、何を指しているのでしょうか。「システム」は頻繁に、しかもさまざまな意味で使われる言葉ですので、システム思考で使う場合の定義をしましょう。 システム思考におけるシステムとは、「多くの要素がモノ、エネルギー、情報の流れでつながり、相互に作用しあい、全体として特性を有する集合体」のことです。単に構成要素が存在するだけではシステムとはいいません。システムの構成要素は互いにつながっている必要があります。河原の石のように、たくさんあるけれども、ひとつ取り除いても何も変わらない場合は「システム」とはいわないのです。 では、どのようなものが「システム」なのでしょうか。 例えば自動車がそうです。自動車は、エンジンやハンドル、タイヤ、車体など多くの構成要素から成り立っています。そして、エンジンで生じた動力はトランスミッションを経由してタイヤへと伝わり、自動車を動かします。ハンドルの動きは前輪に伝達されて、進む方向を決めます。このように「構成要素がつながっている」ことがシステムの重要な特徴なのです。 また、自動車が動いている間、窓やダッシュボードのメーターなどを通じて、さまざまな情報が得られます。そして、これらの情報をもとに、ハンドルやアクセル、ブレーキを制御します。制御した結果がふたたび情報として戻ってきます。このように「構成要素の間に相互作用がある」ことがシステムの特徴です。 そして、もう一つの特徴は「システムには全体としての特性や目標がある」ことです。自動車の目的は、現在地から行きたい地点まで移動することです。自動車とは、この目的をさまざまな機能を有する構成要素の相互作用を通じて達成しようとするシステムなのです。 システムは、小さいものでは、生物の細胞レベルから、心臓やエンジンなどの器官レベル、ヒトや自動車などの個体レベルやその集合体としてのレベル、そしてより大きくは地球環境のレベルまで、実にさまざまな規模で存在します。 また、システムは物理的なものばかりではありません。家族や会社、コミュニティ、市場、国家など、社会をなしている組織や機関、そしてその社会そのものもシステムです。経済のしくみもシステムです。いずれも、多くの構成要素が互いに相互に影響を与えながら、全体としての目的を達成する営みをおこなっているからです。 システム思考は、このようにさまざまなシステムを対象に、変化の構造やプロセスに着目し、効果的な変化を起こすための考え方、アプローチやツールを提供してくれます。この連載シリーズでは、その考え方やツールを紹介していきます。 次回はシステム思考とシステム・ダイナミクスについてご紹介します。
 

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