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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2005年10月07日

エネルギー関連:米国から、そしてフィンランドから(2005.10.01)

 
<アジアの交通ブーム:米国の危機と好機、グリーン・ネット・フィンランドから学ぶ森林バイオエネルギーの可能性と英語>  バラトングループのメンバーに、米国の非営利研究機関の「インフォーム」の会長ジョアンナ・D・アンダーウッドさんがいます。  インフォームでは、 1)持続可能な交通輸送への移行を進める 2)廃棄物を設計段階から減らす 3)有害化学物質と健康 という3つのテーマで主に活動をし、さまざまなレポートなどを出しています。研究結果を広く提示するとともに、政府など意思決定者に情報提供をし、その政策策定に影響を与えようという活動です。 http://www.informinc.org/ 彼女から今年初めに、バラトングループのメーリングリストに、「アジアの交通ブーム:米国の危機と好機」というレポートの序文が送られてきました。許可を得て、実践和訳チームに訳してもらいましたので、お届けします。 昨今のハリケーンなどによるガソリン高騰に対し、米国はこのような研究機関の声に耳を傾け、本質的な変化を考えているのでしょうか? それとも単に「目の前の(ガソリンユーザーの不満をそらす、抑えるという)解決策」に飛びつき、本質的な問題を後送りどころか悪化させてしまうのでしょうか? そして日本はどうなのでしょうか? 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 序文 世界の人口超大国である二つの国、中国とインドには、世界の人口の3分の1以上にあたる22億人を超える人々が住んでいる。両国の人口は、2000年から2010年までの間に2億4600万人増加すると見込まれているが、これは事実上、アメリカ合衆国がもう一つ生まれるのに等しい。 この二つの国が世界の先進工業国の仲間入りを果たそうとするなか、両国の石油消費量は急激に増大しており、この最も急速に枯渇しつつある化石燃料を巡って、世界の消費国の図式に変化がおきている。アジアの石油需要の急増によって最も大きな影響を受けるのは米国だろう。米国はここ1世紀近くの間、世界の石油資源を思うがままに搾取してきた。その結果、ほかのどの国よりも外国の石油に依存した経済体制となっている。 現在、人間の数では世界の5%に過ぎない米国が、石油消費量では世界全体の25%を消費しているのである。そしてその67%(米国内の総産油量を上回る)がこの国の2億2000万台にのぼる車両の燃料として使われている。しかし石油の時代は急速に終わりを迎えようとしているのだ。 『アジアの交通ブーム:米国の危機と好機(仮訳)』は、ポイントとなる4つの問題点を提示している。 -中国とインドにおける交通の発展と石油の消費は、正確には今後どのような方向に進むと考えられるか。そして石油に関する将来の見通しはどうなるか。 -米国はこれまでに、(特に大規模な交通システムにおける)石油依存体制によって、どのような影響を受けてきたか。アジアでの石油消費量の急増は米国にとってどのような意味を持つか。 ー中国、インド、米国はそれぞれ、持続可能な交通システムの開発に関しどのような長期目標をたてているか。 -世界の石油調達をめぐる切迫した危機に対処するために、このアジアの二大国は現在どのような取り組みを始めているか。そして米国はどうか。 インフォームがこの新しい報告書で明らかにした最も重要な事柄は、インドと中国で進行している二つの動向に関するものである。 一つは両国での石油消費量が急増していることであり、その消費量は共に国内の石油生産能力をはるかに上回っている。このため、両国は今後の需要を満たすための石油の供給源を、外国に求めざるを得なくなっている。 両国では新しい交通システムが拡大するにつれて、石油消費量がさらに増加すると考えられる。インドと中国が、大量輸送や土地利用計画に加え、自動車の燃料や効率に関してどのような選択を行うかが、今後の両国の交通や石油消費に大いに影響するだろう。 しかし、世界の石油の供給量が減少していること、その減少する石油を手に入れるための各国間の争いが拡大していること、ガソリンやディーゼル燃料の使用がすでに両国の都市部に住む人々の健康に深刻な被害を及ぼしていることから、両国は、石油を原料とする燃料に全面的に依存する交通システムの構築がどれほど愚かであるかを認識しており、そのことが二つ目の動向となってすでに目に見える形で現れている。 つまり、中国とインドは自国のとるべき道を検討し、天然ガス自動車(NGV)技術を積極的に活用する道を選んでいるのだ。インドはすでに、NGVの使用台数が米国を上回っている。中国も負けてはいない。中国とインドがNGVを使用することは、両国の使用燃料を多様化し、都市部の深刻な大気汚染問題を解決するだけでなく、新たなガス--水素--が、将来的には無公害交通のエネルギー源となる道も開いている。 インフォームは、米国における二つの動向についても報告している。しかし、これら二つの動向がもしこのまま続くなら、それは米国の経済や国家安全保障、そして環境が、間違いなく10年以内に破綻することを意味するだろう。 すでに世界で最も石油を貪っている米国は、ますます多くの石油を(主に交通に)消費し続けており、他国の石油への依存度は増す一方である。米国は、不安定で友好的かどうか疑わしいペルシャ湾沿岸諸国の管理下にある石油に、自国への供給を頼る度合いをますます強めているため、米国の国家安全保障に対する危険はより一層高まっている。 冷戦終結以来、米国は世界中の軍事基地を閉鎖し、軍隊と装備を米国本土に集結させてきた。紛争地に軍隊や物資を配備するのは、唯一石油が絡む場合だけである。サウジアラビアとイランがいてくれたからこそ、米国とその同盟諸国は、イラクをクウェートから追い出すための砂漠の嵐作戦に燃料を供給し、作戦を成功に導くことができたのである。 米国の経済面に目を向けると、外国産の石油に依存した結果、過去30年間に100万人以上の雇用が失われ、それに関連して何百万ドルもの税収を逃してしまった。石油輸出国機構(OPEC)に加盟するアラブ諸国による決定事項と供給の停止を受け、石油価格が1970年以降3度にわたって高騰し、混乱したことによって、米国経済は打ちのめされ、企業は不況や倒産に追い込まれ、インフレが進んだ。 このような広範にわたる経済的損失に加え、ペルシャ湾における米国の石油供給源を守るための軍事費も合わせると、この国の経済から流出した額は年間約3000億ドルにのぼる。また、米国内の大気環境基準を満たしていない地域に住む1億5800万人のために、莫大な医療費が支払われている。そして、地球の気候変動がもたらすコストも増加の一途をたどっており、その額は計り知れない。 米国における二つ目の動向を見ると、この国のリーダーたちは、皮肉なことに、10年以上も前に始まった先見性のある代替燃料計画に、背を向けてしまった。この計画は、天然ガス技術とハイブリッド電気技術が次世代の最有力技術であることを示し、世界で最も高度な天然ガス自動車やインフラ整備能力の進展につながるものだった。 ところが米国のリーダーたちは、交通部門のカギとなるこの天然ガス自動車技術を推進しようとはせず、現在よりわずかばかりクリーンな石油ベースの燃料を利用し続けようと、研究支援を拡大してきた。そして、この国の長期目標とされている水素燃料への移行に向けて17億ドル規模の5カ年研究計画に着手する一方で、まさにこの移行を促す上で真価を発揮する天然ガス自動車技術への支援を取り下げている。 アジアにおける石油消費の動向からは、米国が極めて近い将来直面するであろう危機が予見される。しかし、インドと中国が天然ガス自動車に力を入れていることは、米国にとって歴史的な好機である。 この報告書では、世界の石油に危機が差し迫っている今、天然ガス自動車への動きを再び活性化するために米国のリーダーシップがいかに重要であるかを明らかにしている。天然ガスを使えば、石油ベースの燃料より格段に汚染物質が減るし、米国内での燃料の調達能力が多様化するとともに、水素利用への道が開ける。 天然ガスもほかの化石燃料と同様に最終的には枯渇しうる資源だが、天然ガススタンドを改造すると、第一世代の燃料電池車に水素を供給できる。だから、天然ガス自動車を改良したり利用を広げたりしながら、いずれ再生可能エネルギーと水から生成された水素が天然ガスに取って代わる日が来るのを待つことができるのだ。 この最後の対策が持続可能な交通への移行には不可欠なのである。なぜなら、そのような手段をとって初めて、炭素や温室効果ガスを排出する燃料の使用を完全に廃止することができ、交通が地球の気候変動に及ぼす影響を食い止めることができるからである。 しかし、そうするためには、天然ガス自動車の導入だけでなく、ソーラーエネルギーなど再生可能エネルギーの開発に対しても、政策責任者による強い後押しが今、必要である。持続可能な交通へどのように移行したらよいか、その道筋ははっきりしているが、必要な天然ガスの総供給量、移行期間、移行に伴うコストなどを明らかにするには、(この報告書の範囲を超えた)さらに詳細な分析が必要である。 一方、もし米国で開発された天然ガス自動車の最新技術を(ただ衰退するがままにするのではなく)国内で強く推進すれば、米国の石油依存度はかなり下がると思われる。さらに、これらの技術の輸出も積極的に推進すれば、雇用が創出され、米国にとって生命線となる重要な国内産業も強化される。同時に、インドや中国などアジアの国々に対し、彼らが熱心に取り組んでいる目的の達成にも貢献できる。今米国が行動を起こさなければ、水素社会への道を切り開くのは、米国政府ではなく、中国やインドになるだろう。 この報告書『アジアの交通ブーム』では、米国を新しい道へと導く8つの政策を提示している。これらの政策をとれば、米国は、国民にとってより望ましく、健康的で、安定した未来へと向かい、また私たちの世界の持続可能な未来のために計り知れない貢献をしうるアジアの成長国と協調できるようになるだろう。 (翻訳:古谷明世、服部陽子、五頭美知、横内若香) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 もしご興味のある方がいらっしゃれば、ウェブサイトにコンタクト情報も載っていますので、エダヒロに聞いた、とどうぞ直接連絡を取ってみて下さい。 レポートの原題は、 Transportation Boom in Asia: Crisis and Opportunity for the US  です。 もうひとつ、JFSにフィンランドから寄せられたエネルギー関係の情報をご紹介します。(英語です) http://www.greennetfinland.fi/en/ Green Net Finland という環境関係の企業・公共セクターのネットワークで、フィンランドの環境技術やノウハウを輸出することで、新しいビジネス機会を創り出そう!というものです。 ・エネルギー. ・水 ・廃棄物 ・鉱業 ・環境モニタリング ・環境マネジメント の分野に分かれて活動をしています。 フィンランドの人たちは、私たちが日本語を話しているように、フィンランド語を話しているのですよねぇ。でもこうして、きちんと英語のウェブを作って、「私たちはこういうことをやっています。フィンランドの環境技術を買いませんか?」とPRしている。産業界や公共セクターが協力して、輸出産業として育てよう、としている。こういうビデオを作り、さらに「作ったから見てね」と私たちのような海外組織に声をかけるアウトリーチ活動もきちんとやっている。 JFSには、企業の環境技術や環境製品に関する情報について、「もっと知りたい」「つなげてほしい」という問い合わせが海外からよく来ます。できる範囲で対応していますが、あくまでもボランティア組織であり、産業振興がメインの目的ではないので、限度があります。 日本でも経産省や産業界が、「環境立国」「環境技術やノウハウを輸出する」というビジョンを持って、もっとちゃんと体制をつくってやってくれないかなあ、と思います。(日本では個別企業や業界団体レベルで英語ページは作っていますが、「ただある」状態のものがばらばらにあるだけで、統合・統一した形で積極的な働きかけをしているとはいえません) さて、今回の情報はフィンランドの再生可能エネルギー、特に森林エネルギー(木材チップなど)をPRするビデオです。トップページの右上の "GREEN ENERGY FROM FINLAND" NOW ON-LINE から行けます。 面白い題材なので、ご関心によって2通りの楽しみ方を伝授?しましょう。(^^; <その1 林業・森林産業に関心がある方々へ> 英語がわからなくても、ビデオの映像はきっと面白いと思います。フィンランドは大きな木材輸出国です。まえに「フィンランド林業セミナー」の通訳をやったときに、現場のビデオを見て、「こんな平地で、こんなすごい機械を使って、まるで稲刈りみたいに伐採しているんじゃ、日本の急峻な斜面を2時間も3時間も登っていって、一本一本伐ってはワイヤをかけて運搬しているやり方では、明らかにコストでは勝てないなー」と思ったことがありますが、そういった現場の様子をかいま見ることができます。間伐の話もあります。(early thinning と書いてあるところです) <その2 英語に関心のある方々へ> このビデオは、わかりやすくゆっくり英語を喋っているうえ、下にキャプションがついているので、英語の勉強にも使えます。 ○リスニングの練習に:キャプションを見ながら聞いてみましょう。 ○ディクテーションの練習に:キャプションを見ずに、聞こえてくる英語を英語で書き取ります。あとでキャプションとつきあわせてみましょう。 ○逐次通訳の練習に:キャプションは見ずに、メモを取りながら聞き、1画面ごとに音声を止めて(簡単に操作できます)逐次通訳をしてみましょう。 ○同時通訳の練習に:各セグメントは数分という短いものなので、音声のみ流して、同時通訳をつけてみましょう。  ところどころ、音声とキャプションが違う単語を使っている箇所があって、ご愛嬌です。何カ所あるか?という「英語間違い探しゲーム」も面白いかも。(^^; *********************************************************************** 掲載内容の印刷物・ウェブ上での無断複製・転載はご遠慮ください(ご相談下さ い)。お知り合いやMLへのメールでの転送は歓迎です。 このメールへの「返信」は私にだけ届きます。ご意見やコメントなどをいただけ るとうれしいです。(すべてにお返事差し上げられないことはご容赦下さい) 本メールリストへの登録/登録解消、バックナンバーの取り出しは http://www.es-inc.jp/lib/mailnews/index.html アドレス変更は、上記ページで「旧アドレスの脱退」+「新アドレスの登録」を お願いします。一定期間メールが戻ってくる場合には、こちらで登録削除する場 合があります。 ※アマゾンのアソシエートプログラムに参加しています。 「変える」メソッドを経営へ http://www.change-agent.jp/ 「システム思考」に関する情報を提供  http://groups.yahoo.co.jp/group/systems_thinking_byCA/ 日本から世界へ情報発信 ジャパン・フォー・サステナビリティ  http://www.japanfs.org/index_j.html 元気と背中の一押しを! イーズ・メール  http://www.es-inc.jp/ 枝廣淳子HP 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