今回はシステム思考のご報告とご案内です。(チェンジ・エージェントのシステム思考メルマガをお読みの方、重複ごめんなさい〜)
チェンジ・エージェント主催「システム思考ワークショップ」を開催しました10月19日、定員いっぱいの25人の受講者の方々をお迎えして、「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」を開催しました。
企業の人事部・環境部・CSR部などの担当者の方々や、中小企業の経営者の方々、自営業の方々など、広島や大阪からも参加いただきました。
午後1時に、「飛躍的な変化をもたらすには何が必要か?」を体感するゲームではじまったワークショップは、ところどころにシステム思考を身をもって理解するためのゲームをはさみながら、ふたりの講師による講義や練習問題、参加者の事例に基づくグループ演習、発表、講評と進みました。
ワークショップの目的である「システム思考の基礎を身につけること」「システム思考の基本的なツールを習得すること」を実践面でも応用していただけるよう、気を配りながら進め、午後5時半に終了しました。
受講された方々からは、
○「これほど簡単に複雑な問題の全体像を見ることができ、びっくりしました」
○「考える重要なツールをいただきました」
○「自社に当てはめて考えることができ、新しい気づきが得られました」
○「新しい切り口を知ることができました」
○「からまった糸をほぐすことができそうです」
○「システム思考の説明がとてもわかりやすかったです」
○「事業の陥りやすいワナに気づくことができました」
○「体感することができ、大変よかったです」
などのフィードバックをいただき、頭と身体で理解していただくことができたことをとてもうれしく思っています。
なお、受講者の半数近くの方々から、「この次の中級コースも受けたい」と言っていただきました。基本ツールを身につけたあと、効果的な介入ポイントをさぐるなど、システムを変えていくためのアプローチを身につけ、実践するコースも準備を進めております。こちらもご案内できる日を楽しみにしています。
「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」を開催します(2006年1月17日)
上記でご報告したワークショップを1月に開催します。ご興味のある方、社員研修の一環としてお考えの方、システム思考の基本ツールを現場で用いて本質的な問題解決を進めたい方、ぜひご参加下さい。
<コースの目的>
変化を引き起こす構造とプロセスを理解し、複雑なビジネス環境下において広い視野での状況診断と効果的な問題解決を可能にする実践的なツールを習得することで、望ましい変化を創り出す力を向上させる
<このような方々に最適です>
企業の経営幹部、次世代経営者候補、戦略・CSR担当マネジャー、管理職・リーダー
<日時>
2006年1月17日(火) 13:00 - 17:30
<場所>
東京都渋谷区「こどもの城」研修室906号室(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)
<コースの概要>
「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」
システム思考の基礎を身につける
1.なぜシステム思考が必要なのか
・なぜ解決策は失敗するか―昨日の解決策が今日の問題を作る
・「線形」思考と「とりあえず」主義
・システム思考とは
・システム思考のツール紹介
2.システム思考のツール(1)時系列パターングラフ
・今どこにいるのか、どこから来たのか、そしてどこへ向かうのか
・事象ではなくパターンを見る
3.システム思考のツール(2)ループ図
・システムの構造が行動パターンを決める
・フィードバックのない構造
・自己強化型ループ構造
・バランス型ループ構造
4.システム思考の演習
・自らの課題をループ図で書いてみる
5.システム思考の実践
・問題からつながりと全体像を見出す
・ループ図で広げるコミュニケーション
・システム思考のさらなる実践的活用法
<料金>
39,000円 (税込)
<定員>
25名程度
<このような効果が期待できます>
システム思考による新しい視点とすぐに応用できるツールを身につけることによって、
●一見離れたところにある要因とのつながりを見出せる
●事象や変化の奥にある相互作用の構造を理解できる
●関係者間の共通の理解やビジョンの共有を促進できる
●システムの抵抗を予期し、自律的で広がりある変化をデザインできる
●自ら変化の手綱を握ることができる
<お申し込み・お問い合わせ>
(有)チェンジ・エージェント 担当 関・増田・小田
info@change-agent.jp TEL: 044-930-0012 FAX: 044-930-0013
お申し込みは、下記申し込み票を電子メールでお送りください。
※受付確認後、振り込み口座をお知らせいたします。入金確認を持ちまして正式な受付となります。その後、受講証と詳しいご案内を電子メールでお送りいたします。
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申し込み票
2006年1月17日のシステム思考ワークショップに参加します
ご氏名 [ ]
ご所属 [ ]
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]
※このセミナーのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名( )
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. システム思考メールマガジン
( ) d. チェンジ・エージェントのウェブサイト
( ) e. チェンジ・エージェントからのメールによるお誘い
( ) f. Enviro-News from Junko Edahiro によるご案内
( ) g. 他のメールマガジンによるご案内 ( )
( ) h. その他 ( )
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ビジネス向けのワークショップ開催と並行して、大学でのシステム思考の講義やシミュレーション・ゲームを用いてのセッションなども進めており、システム思考のアプローチを身につけてもらう重要性をつくづくと感じています。
変化の激しい時代に、変化に取り残されるのではなく、本質的な方向性を見定めて、組織内メンバーの力をじょうずに結集していちはやく望ましい変化を創り出す力は、これまで以上に重要になってきますし、企業の存続を左右する要因になってくることでしょう。
システム思考ワークショップは、目の前の問題が実はどのような要素のつながりで起こっているかを考えることができるだけではなく、部門内・部門間・社内外のコミュニケーションにも大変役に立ちます。海外ではマスターカードやデュポン、GMなども用いて大きな業務改善・利益向上をもたらしているこの有効なアプローチを、ぜひご活用いただければ、と願っています。
チェンジ・エージェントの発行している
メルマガでは、月2回ほどの頻度で「システム思考入門シリーズ」の連載をしています。
今号のメルマガでは、第4回をアップしましたので、ご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
システム思考入門シリーズ第4回
「システム思考はなぜ重要か?(1)システムの特徴」
なぜシステム思考は重要なのでしょうか? それは組織、経済、社会、生態系といった私たちを取り巻くシステムが、私たちの日常の思考や直感を超えた独特の複雑性を生み出しているからです。
システムの複雑性は、単にいろいろな種類の物事がたくさんあるという複雑性ではなく、物事がつながり、絡み合っているために生じる複雑性であることが特徴です。システムの複雑性は、要素が数えるほどしかなくても起こります。
たとえば、すこし前のホテルのシャワーを思い出して下さい。赤い印の付いた温水の蛇口と青い冷水の蛇口を調整しながら、自分の好きな温度のシャワーを浴びるしくみです。このシャワーというシステムには、お湯が出てくるシャワーヘッドのほかには、温水の蛇口と、冷水の蛇口、そしてそれぞれがつながっているパイプとタンクしかありませんから、シンプルなシステムと考えられます。
それでも、蛇口を回してから実際にシャワーヘッドに変更された水やお湯の量が届くまでの反応が鈍いと、快適にシャワーを浴びるのも一苦労になってしまいます。まだ冷たいからと温水の蛇口をひねりすぎ、そのうちシャワーが熱湯に変わって飛び上がったり、逆に、冷水を浴びてまた飛び上がったり、というような経験をしたことはないでしょうか。
私たちは、このようなシステムの複雑性を普段から経験しているにもかかわらず、システムに対してどのようにアプローチをすればよいかは意外と理解していません。そのために、組織や社会の中で、よかれと思ってやったことが思うような結果を生み出さなかったり、逆に失敗につながったりしているといっても過言ではないでしょう。(よかれと思って、赤い蛇口を思い切りひねったら、やけどをしそうになるように......)
私たちは、組織や社会の中で、戦略や政策を立て、その実行を通じて変化を起こし、「望ましい結果」が生まれることを期待します。たとえば、売上の増加を目指して販売促進を行う、渋滞緩和のために道路を拡張するなどです。
しかし、現実にはなかなか思い通りにはいきません。しばしば、「予期せぬ結果」が生じます。販売促進策では、長期的な売上が下がったり、道路拡張では、かえって渋滞がかえってひどくなってしまうなどです。このような例は枚挙にいとまがありません。
システム思考の最初のステップは、ダイナミックで複雑な変化を生み出すシステムそのものの特徴を認識することです。システムにはどんな特徴があるのでしょうか。
もっとも基本的なシステムの特徴は、ひとつの要素はほかの要素とつながり、相互作用を生み出していることです。ある企業の行動は、ほぼまちがいなく他社の行動とつながっており、互いに相互作用を生み出します。
たとえば、航空業界では、利用距離に応じて無料航空券などが得られるマイレージ・プログラムを導入することでマーケットシェアの向上を目指した企業がありましたが、競合企業も同様のプログラムを始めたため、長期的にはシェア向上につながらないばかりではなく、業界全体の利益性を大きく損ねる結果となりました。
全体像のなかで要素のつながりとして考えないと、変化の方向を見誤ります。渋滞解消のために道路を拡張して走りやすくするという施策が採られます。ところが、道路の走りやすさは、どの道を走るか、どの街に住むかを選ぶ際の基準になっているので、道路が走りやすくなると、より多くの人や車が集まってきて、結局渋滞を引き起こします。
目の前の「渋滞」という問題解決に当たろうとするとき、このようなつながりをしばしば看過しがちですが、現実のシステムではつながっているのです。私たちはよく「予期せぬ結果」「副作用」が生じたと言いますが、私たちの思考にこのつながりの全体像が含まれていなかった、というだけのことなのです。
要素間の相互作用は、ときとして「システムの抵抗」として現れます。壁を押したときの反作用のように、押せば押すほど大きな抵抗が生じます。たとえば、健康のために低ニコチンタバコが開発されました。ところが、喫煙者は、低ニコチンを補うため、より多くのタバコを、肺の中に長く、深く吸いこむ吸い方になっ
たため、かえって健康への害がひどくなりました。喫煙というシステムの中では、ニコチンなどの物質を欲する喫煙者の欲求がシステム全体の目的になっています。
このシステムの目的が変わらないとき、どんなに強くシステムに働きかけても、システムの抵抗がその効果を打ち消してしまうのです。システムは、それぞれの目的や安定を求める特徴があるからです。
総じて、組織や社会といったシステムは、私たちの直感に反する反応を示します。たとえば、経済の成長こそ貧困の解消につながると、先進国も発展途上国も高い経済成長率を目指していますが、貧富の差は縮まるどころか拡大し続けています。私たちはものごとを解決するために、直感的に「もっと早く、もっとたくさん」という方向に押そうとしますが、その動きが、システムの中ではかえって進捗の足をひっぱることがよくあります。むしろ進む速度を落とすほうがより早く問題解決につながることもよくあるのです。
渋滞解決を例にとると、世界の先進的都市は道路を走りやすくするのではなく、逆に道幅を狭くしたり、段差を設けて走りにくくすることで、渋滞の解消に成功しています。
このように、システムは私たちの目に見える範囲を超え、複雑に絡み合っているため、私たちの直感や日常的な思考ではつかみきれないダイナミックで複雑な反応を示します。次回は、これらのシステムの特徴をふまえてのシステム思考の特徴とメリットを紹介します。
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「システム思考入門シリーズ」はこれまで、以下を配信しています。
第1回 システム思考とは何か、システムとは何か
第2回 システム・ダイナミクスとは何か、システム思考との違い
第3回 システム思考とシステム・ダイナミクスの歴史
システム思考入門シリーズのアーカイブは
こちらにあります。
読んでいただいて「ふむふむ、なるほど」とシステム思考について知ってくださる方が増えますように!
そして、読むだけより、練習問題をやったり、ゲームを通じて体感したり、自分のケースに当てはめたりして、「なるほど!」と思っていただければ、もっと役に立つと思います。よろしければ、ワークショップでぜひごいっしょに!