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企業の社会貢献〜GE:凸版CSRコミュニケーションフェア2005より(2005....
エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年02月23日
企業の社会貢献〜GE:凸版CSRコミュニケーションフェア2005より(2005.08.12)
(続きです)
では続きまして、GE広報部マネージャー、社内広報・社会貢献担当の高澤知子さんからGEの社会貢献活動についてお話をいただきたいと思います。それでは高澤さん、よろしくお願いいたします。
●GEの社会貢献活動
良き企業市民となるために
高澤氏:
では最初に、弊社についてご紹介させていただきたいと思います。私どもGEは、発明家のトーマス・エジソンが創始した会社が源です。GEとして業務をはじめたのは1892年で、100年以上前からビジネスを続けています。日本での歴史は、GEになる前の1886年に、紙幣の印刷機のための発電機を日本政府に納入したことからはじまっています。
現在、ジェフ・イメルトが会長兼CEOを務め、世界100カ国以上でビジネスを展開し、世界中に30万人以上の社員がいます。その30万人のうちの約半数が米国以外の従業員という、グローバルな会社になっています。日本では約8,000人が働いています。
日本のビジネスはアジア・日本担当プレジデントの藤森義明がこれまで統括していました。その藤森も現在、アメリカのGEで上席副社長になっており、そういう意味ではグローバルな人材を積極的に活用しています。GEではアメリカ人だけではなく、いろいろな国籍の社員が活躍できるような体制づくりに努めています。
日本ではGEの知名度が低いですが、米国の『ファイナンシャル・タイムズ』が選ぶ「世界でもっとも尊敬される企業」に7年連続で選ばれています。日経さんで「時価総額世界一」という記事もありましたが、日経知名度調査の順位では、3桁台後半という残念な結果になっています。
GEは、大きく分けて現在11のビジネスを展開しています。まず発電設備、電球をはじめ冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、飛行機のエンジンなどが割合知られている分野ではないかと思います。ここ5年ぐらいでは、金融の分野に進出しており、日本では数年前に日本リースという会社を買収して、そちらが基盤となってコマーシャル・ファイナンス関連のビジネスを展開しています。
あとは不動産事業、それからGEコンシューマー・ファイナンスという会社でほのぼのレイクブランドのビジネスを展開しています。プラスチックスやシリコーンといった素材関連、病院にありますMR、CTスキャン、超音波などの医療機器などもつくっています。
新しいところですと、NBCユニバーサルという会社が2004年にでき、そちらで映画のビジネスを行っています。また最近では浄水処理設備や、セキュリティ、センサーなども扱っています。2004年、9.11テロ事件によって閉鎖されていた自由の女神の展望台の前にセキュリティ装置、爆発物探知機がついたというニュースが報道されていましたが、そこではGEのエントリースキャンという機械が使われています。
このように非常に多岐にわたるビジネスを行っていますが、残念ながら消費者の皆さまに直接触れる機会があまりないので、日本ではなかなかGEといってもわかっていただけないことが多いのが現状です。
では、GEが実際にどのような社会貢献をしているかというお話をさせていただきます。GEには、ジェフ・イメルト会長が繰り返し内外で発言している「To be a great company, we must continue to be a good company.」という言葉があります。この言葉は、「great company」となるためには「good company」にならなければならないという考え方を表しています。
彼が言う「great company」とは、ビジネスで利益を上げ、株主、お客さまに還元する企業を指し、さらに「good company」とは、事業がうまくいくだけではなく地域にとっても良い企業のことを指します。ここ数年、社内外に繰り返しているメッセージであり、これが今の私たちの根底にある考え方です。そして、私どもは社内でCSRという言葉ではなく、「Corporate Citizenship」という言葉を使っています。私たちが一市民として、その地域でどれだけ良い市民になれるかということを考えています。
その考え方を実行する要素としては、社会的政策への取り組み、法令遵守&企業統治、環境への取り組み、製品自体、それから社員の評価と育成、そしてボランティア活動と社会貢献などが一体となって、GEが良き企業市民になるための要素となっていると考えています。これらの活動は、それぞれの担当部署で長年やってきていることで、会社全体として「Corporate Citizenship」を取りまとめるような組織があるわけではありません。担当役員がアメリカの本社に1名いますが、たとえば、リーガル部門、環境関連の部門、人事部といった個々の部署で、担当している者がそれぞれその分野できちんと活動していくという考え方です。
エジソンの会社ならではの活動
私が担当している社会貢献活動をご説明させていただきますと、GEでは主に3つの柱からなる社会貢献活動を行っています。まず1つ目が、「GEファウンデーション」といういわゆる慈善基金で、GEの利益の一部をGEファウンデーションの組織に還元して、それを世界中でマッチングギフト、奨学金などの形で使っています。
現在は、2004年後半にはじまったガーナ・プロジェクトという大きなプロジェクトを集中的に推進しています。これは5年間のプロジェクトで、アフリカのガーナで私どもの医療機器、発電設備、水処理の機械などを寄付すると同時に、社員も何名か送って機械の使用方法を病院の方にお教えしたりしています。また、社員からの募金を支援目的とマッチングして、ガーナの学校の建設費、教科書、ユニフォームの購入などに充てています。
もともとGEの社員の中にさまざまなマイノリティのネットワークがあるのですが、そのうちの1つに、アフリカ系アメリカ人が集まる「アフリカン・アメリカン・フォーラム」があります。彼らが「私たちの祖国をなんとかGEの力で助けてくれないか」とイメルト会長に提案したことが、ガーナ・プロジェクトの発端です。
このプロジェクトをはじめるまでは、世界100カ国以上の地域の中で、幅広く分散してサポートをしていましたが、今は最も支援を必要としている地域に集中して大きなプロジェクトを展開しようという考え方になっています。
2つ目の「スポンサーシップ」は、いわゆるイベントやNPOへの協賛を行うものです。今、日本で実施している主なものでは、NPOの"KIDS"と協力して、インターナショナル・プロジェクトという高校生のためのプロジェクトを4年間やっています。それから社団法人発明協会と、私たちの創始者であるエジソンにちなんで、子ども向けに発明に関する情報を提供しようということで、発明キッズというウェブサイトをやっています。
そして、社会貢献活動の中で私たちが最も重要視しているのが、3つ目の「社員のボランティア活動」です。私たちは社員が自ら仕事の時間を使って、外に出ていって社会に貢献することが非常に重要だと考えていて、それを社員にもメッセージとして積極的に発信しています。
我々の社会貢献活動は、「GEファウンデーション」「スポンサーシップ」「社員のボランティア活動」がばらばらに動いているのではなく、それぞれ資金やボランティアを交流させて、3つの柱で協力し合って動いています。
社員をボランティア活動に巻き込む新プロジェクト
アメリカでは、GEエルファン・ボランティアと呼ばれる社員のボランティア組織が1928年からあります。日本では1992年に東京支部が発足し、2004年に横浜・横須賀支部ができ、2005年の初めに関西支部ができる予定です。GEエルファン・ボランティアは、基本的に社員の組織で、「今度はこういう地域でこういう活動をしましょう」といったプランを自ら企画し、社内で仲間を募って一緒にボランティアを進めていくプロジェクトです。現在メンバーは日本に約1,000名、年間約40のプロジェクトを実施しています。
ここ2年ほどで社員のボランティア活動が非常に活発になってきましたが、それまでは企画・参加ともに一部の社員に限られていて、目立たないところで好きな人がなんとなく活動しているという印象がありました。しかし3年ほど前に、会社自体も社員のボランティア活動が非常に重要だと改めて考え直し、もっとエルファン・ボランティアを活用し、社員のボランティアを増やしていかなければならないと考えるようになりました。
そのためには、どうしたら今まで興味のなかった社員にもボランティアを体験してもらえるのか、私や人事のスタッフと一緒に考えました。会社ぐるみのボランティア活動を行い、とにかく1回でもいいから経験してもらうことが必要だと考えました。そこで、GEの創始者であるエジソンをキーワードにして、「地域に役立つ発明家になろう!」というプロジェクトを実施しました。
これは、社員が主に平日に行うボランティア活動で、ボランティア有給休暇を利用して、各社のグループ会社の社長やリーダーたちはもちろん、社員も大勢参加しています。社員たちは小中学校に出向いて子どものグループに入り、一緒に学校の周りを歩き、その地域の問題を見つけます。次にエジソンになったつもりで、どんな製品や活動があったらその問題を解決できるのかを考え、クラスで発表するというプロジェクトを行っています。今、学校では総合学習に取り組まれているので、それに見合った形でボランティアをはじめました。
このようなプロジェクトをいきなり思いついたわけではありません。私たちには、社員を平日にボランティアへ出したいという考えと、グローバルレベルで子どもの教育に関わりたいというポリシーがありました。しかし、日本では何が求められているのか、どんなことが役に立つのか、全くアイデアがない状態でした。
そこへ、たまたまアメリカでエルファン・ボランティアを推進しているリーダーから、東京ボランティア・市民活動センターにいる河村暁子さんに相談してみなさいというお話がありました。私はそういう団体があることも知らず、ただ半信半疑で河村さんにご相談したところ、河村さんからどんどんアイデアをいただきました。
たとえば、私たちの会社ではほとんどの社員がプロセス改善の手法であるシックス・シグマというツールを学んでいたり、プレゼンテーションの研修を受けていましたので、そういった面をなんとか子どもの教育に活かす方法を河村さんと相談しながら、プロジェクトのベースをつくりあげていきました。
さらに、河村さんのご紹介でこうした活動に積極的な学校長、教育委員の教育長などにも加わっていただきました。どうしたら参加する社員側にも、子どもたちにもベネフィットがあるかを各方面と相談しながらつくりあげていくという、私たちにとっては新しいタイプのプロジェクトができあがったと思います。
「良き企業市民」とは何かを考える
1回目を2003年10月、2回目を2004年6月に実施して、1回目は6校、2回目は14校、生徒数も倍以上になり、参加した社員の数も、1回目は117名、2回目は312名と増えています。社員は1日参加するだけでボランティアができるため、社員をボランティア活動に巻き込みやすく、活発なプロジェクトとなりました。
このプロジェクトの成果として、生徒からは「とてもおもしろかった」「またやりたい」という声がありましたし、先生たちにも非常に好評で、「普段学校では教えないような考え方を教えていただいた」「1グループ少人数で実施できるので、普段できないような教育ができてとてもよかった」という声をいただきました。弊社の社員も、94%が「参加してよかった」、98%が「来年も参加したい」ということで、非常に好評でした。
私たちはこのプロジェクトをこれからも継続・拡大していくために、教育関係者の方々からも信用していただけなければいけませんし、社員にも広めたいという思いから、積極的にPR活動を展開しました。
その結果、1回目17メディア、2回目20メディアで採り上げていただきました。企業が教育現場に乗り出しためずらしいプロジェクトとして報道され、先日PR協会から、このプロジェクトのPR活動に関してアワードをいただくことができました。
決してPRのために社会貢献活動をしているわけではありませんが、こうした活動をメディアで報道されることは、GEの名前を地域の皆さまに知っていただき、学校の関係者からも信頼を得られて、プロジェクトが継続・拡大していくという効果もあります。メディアからの取材がくることで、参加者のモチベーションも上がり、非常によかったのではないかと思っています。
これからも私たちはこういった形で社員のボランティア活動を増やしていきたいと思っています。しかし、このプロジェクトもたとえば社長からメッセージを発信して呼びかけているのですが、社員の中には「なんでボランティア活動なのに、上司からいわれなければいけないんだ」という声が今もたくさんあります。
私たちがより多くの社員に参加してもらうために伝えているのは、もう今の時代は、社会貢献、ボランティアはやりたい人ができることをやるのではなくて、自分たちが何をすればGEが「良き企業市民」になれるのかを、一人ひとりが考えていかなければいけないということです。
GEに勤めていたからこうしたプロジェクトができるということで、「とにかく私たちのこのリソースを利用して、何かボランティアをやってみましょう」「とにかくボランティアは楽しいからやってみてください。意見をいうのは、やってみてからにしましょう」というメッセージを一生懸命発信しています。
また、2005年も同じプロジェクトを実施するつもりですが、2004年は100人が300人になり、2005年は何人になるのかなというところで、私たちも非常に楽しみにしております。これが今、私たちが一生懸命やっている社会貢献活動です。
枝廣:
高澤さん、どうもありがとうございました。