エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年03月13日
システム思考の紹介とワークショップ研修のご案内(2006.03.11)
フランクフルトにいます。今からポルトガルへ移動し、ローマクラブの若手グループを対象に、デニス・メドウズ氏らが開催する「システム思考とシステム・ダイナミクスの集中トレーニング・プログラム」に参加するためです。
参加者名簿を見ると、16ヶ国から25人ほどの参加者でのトレーニングになるようです。日本からは、チェンジ・エージェントの私と小田が参加します。ヨーロッパのバラトンメンバーも数人参加するようです。
まとめて勉強する時間がとれること、いま開発中のアドバンスコース(基本コースの修了者を対象に、より高度で実践的なツールを身につけるコース)にも役立つであろうこと、8日間にわたるプログラムが楽しみです〜!
システム思考については、日経エコロジーの3月号、4月号の「新環境学」のコーナーで紹介をさせてもらっています。
○日経エコロジーの3月号
「システム思考でわかる『渋滞を解消できる対策、渋滞を悪化させる対策』」
具体的な事例とシステム思考のツールであるループ図、そして世界の都市がこの問題にシステム思考的にどのように取り組んで成果を挙げているかを読んでいただけます。ぜひ日経エコロジー3月号をご覧ください。
誌面では詳しいループ図を掲載することができませんでしたので、チェンジ・エージェントのウェブサイトに補足資料を掲載してあります。
http://change-agent.jp/news/000012.html
システム思考の基本ツールのひとつ「ループ図」ってどういうもの?という方、ぜひのぞいてみてください。
○日経エコロジー4月号
システム思考の真髄ともいえる「レバレッジ・ポイント」についての解説と事例を掲載しています。http://emf.nikkeibp.co.jp/emf/eco/saishingo/
システム思考では、さまざまな要素のつながりをループ図に表し、問題や状況の構造を診断したあと、問題や問題となる行動パターンを引き起こす構造を変えるために、どこにどのような働きかけをすればよいのかを考えます。
働きかけのできるポイントはたくさんありますが、なかでもテコのように「小さな力で大きく動かせる」ポイントを「レバレッジ・ポイント」と呼びます。(レバレッジとはテコのことです)
このレバレッジ・ポイントをシステマチックに見つけられるようになれたら!というのが、システム思考家の夢なのですが、レバレッジ・ポイントは直感に反する意外なところに存在することも多く、見つけるための方程式のようなものはありません。それでもレバレッジ・ポイントを考えるための枠組みや事例はあって、
役に立ちますので、ぜひ参考になれば、と思っています。
誌面では詳しいループ図を掲載することができませんでしたので、チェンジ・エージェントのウェブサイトに補足資料を掲載しました。http://change-agent.jp/news/000018.html
日経エコロジー6月号では、システム思考を用いて現在のエネルギー状況とその余波について考えてみたいと思っています。こちらもお楽しみに!
システム思考を活用して、強い組織づくり、人づくりに役立てていただこう、短期的な視野で目の前の解決策に飛びつくのではなく、真の解決策を考える力を身につけるお手伝いをしたい、と昨年春に立ち上げたチェンジ・エージェントでは、これまで250人を超える方々に研修を実施し、5000人を超える方々に講演を通じてシステム思考を紹介してきました。2年目の今年は、初年度の実績をベースに、さらに研修やファシリテーションを広げるとともに、さらに実践的なプログラム開発を進めていきます。
システム思考のトレーニングは、組織での研修のほか、どなたでも参加できるオープン形式のワークショップ研修も実施しています。次回は5月11日に開催します。よろしかったらぜひ参加されませんか。
■2006年5月11日開催システム思考ワークショップのご案内
「システム思考トレーニング・ベーシックコース: 望ましい変化を創り出す力をつける」
組織やコミュニティのビジョンを創り、望ましい変化を創り出す上で、システム思考はとても重要な役割をします。コミュニケーションや問題解決のための発想を広げるだけでなく、メンバー全員の学習を促し、信頼を気づき上げることで組織やコミュニティの強い基盤を作り出すことができるからです。
そのシステム思考の基礎となる考え方やツールを身につけるワークショップを下記のとおり開催いたします。長期にわたり社会から必要とされる強い企業を作る基盤となるのは、幅広い視野と長期的な視点で真の変化を創り出す人材の育成です。貴社の経営幹部の能力アップに、次世代を担う経営者候補の育成に、あるいは真のCSRを推進できる人材の育成のために、システム思考ワークショップにぜひご参加いただけますよう、ご案内申し上げます。
望ましい変化を作り出す力をつけるためのワークショップを5月に開催します。システム思考にご興味のある方、社員研修の一環としてお考え 方、システム思考の基本ツールを現場で用いて本質的な問題解決を進めたい方、ぜひご参加下さい。
=>詳細はこちら http://change-agent.jp/news/000015.html
<日時>br>2006年5月11日(木) 13:00 - 17:30
<場所>
東京都渋谷区「こどもの城」研修室906号室(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)
<コースの概要>
1.なぜシステム思考が必要なのか
・ なぜ解決策は失敗するか―昨日の解決策が今日の問題を作る
・ 「線形」思考と「とりあえず」主義
・ システム思考とは
・ システム思考のツール紹介
2.システム思考のツール(1)時系列パターングラフ
・ 今どこにいるのか、どこから来たのか、そしてどこへ向かうのか
・ 事象ではなくパターンを見る
3.システム思考のツール(2)ループ図
・ システムの構造が行動パターンを決める
・ フィードバックのない構造
・ 自己強化型ループ構造
・ バランス型ループ構造
4.システム思考の演習
・ 自らの課題をループ図で書いてみる
5.システム思考の実践
・ 問題からつながりと全体像を見出す
・ ループ図で広げるコミュニケーション
・ システム思考のさらなる実践的活用法
<料金>
39,000円 (税込)
<定員>
25名程度
<このような効果が期待できます>
システム思考による新しい視点とすぐに応用できるツールを身につけることによって、
● 一見離れたところにある要因とのつながりを見出せる
● 事象や変化の奥にある相互作用の構造を理解できる
● 関係者間の共通の理解やビジョンの共有を促進できる
● システムの抵抗を予期し、自律的で広がりある変化をデザインできる
● 自ら変化の手綱を握ることができる
<お申し込み・お問い合わせ>
(有)チェンジ・エージェント 担当 関・増田・小田
info@change-agent.jp
TEL: 044-930-0012 FAX: 044-930-0013
お申し込みは、下記申し込み票を電子メールでお送りください。
※受付確認後、振り込み口座をお知らせいたします。入金確認を持ちまして正式な受付となります。その後、受講証と詳しいご案内を電子メールでお送りいたします。
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申し込み票
2006年5月11日システム思考トレーニング・ベーシックコースに参加します。
ご氏名 [ ]
ご所属 [ ]
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]
※このワークショップのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名( )
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. システム思考メールマガジン
( ) d. チェンジ・エージェントのウェブサイト
( ) e. チェンジ・エージェントからのメールによるお誘い
( ) f. 他のメールマガジンによるご案内 ( )
( ) g. その他 ( )
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ループ図を書くことで、複雑に見える問題をシンプルにその構造からとらえ、自分や他人や外部を責めるのではなく、本質的に望ましい変化を作り出していけます。ぜひご一緒に!
チェンジ・エージェントでは、「変えるメソッドを経営へ」として、「システム思考 メールマガジン」を発行しています。登録/登録解消は、http://www.change-agent.jp/news/index.html
このメールマガジンの最新号より、「システム思考でまちづくりを考える〜熊谷青年会議所でのワークショップ第1回報告」をお届けします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
■システム思考でまちづくりを考える
〜熊谷青年会議所でのワークショップ第1回報告
(社)熊谷青年会議所は、まもなく創立55周年を迎えます。また、市町村合併で大きくまちの未来が変わろうとしています。創立60周年をにらみ、まちづくり運動の方向性とアクションプランを定めよう!--そのために、海外でまちづくりや組織作りの基盤として実績のある「システム思考」のワークショップによるまちづくりを企画しました。
熊谷青年会議所では、メンバーがシステム思考を身につけ、システム思考の強みを活かしてまちづくりを進める全6回のワークショップをおこなうことにしました。ほぼ1カ月ごとに1回のペースで、メンバーが集まって全体でのワークショップを開催し、その間には各グループで宿題を進めます。そうして、6カ月間で熊谷青年会議所全体の行動計画を策定しよう、というものです。私たちチェンジ・エージェントが、そのプロセスをお手伝いしていきます。
今年最初の例会では、講師として呼ばれた枝廣が、150名を超える参加者に、システム思考の重要性とその考え方、システム思考で成功した事例などをお話し、その意義や基本を伝えました。
今回は、それから2週間後に開催された「明るく豊かな熊谷を創る行動計画づくり」ワークショップの第1回です。さまざまな事業に携わっているメンバー約25名が、仕事を終えてから集まりました。
システム思考のワークショップでは、「望ましい変化を創りだすプロセス」として、以下の流れを紹介します。
ビジョン策定 → 問題診断 → 解決策 → 戦略策定 → 実行
第1回のワークショップでは、このうちの「ビジョン策定」の部分に取り組みました。ここからの流れは小田が担当します。
このワークショップを始めるにあたり、メンバーは「自然環境」「人間環境」「地域環境」「教育環境」の4つのカテゴリーグループに分かれ、それぞれ熊谷市での現況について調査をおこないました。
ワークショップの冒頭は、この現況に関する情報共有に始まりました。各グループがそれぞれ、自分たちのカテゴリーに関する熊谷の現状をまとめて発表しました。詳細なデータをもとに30枚ものパワーポイント資料を作成して説明してくれたグループもあるなど、事前の準備にしっかりと時間をかけたようすが伝わり、真剣に今回のワークショップに取り組む姿勢がうかがえて嬉しかったです。
宿題発表の後、システム思考について話をしました。まず、恒例のゲームです。システム思考のワークショップでは、その論理を身体で実感するためにさまざまなゲームを行います。今回のゲームは「6本のつまようじ」です。(ゲームの内容は実際にやってみる機会のお楽しみに!
このゲームで皆さんに伝えたかったのは、「Out-of-Boxで考えよう」ということです。私たちが何かを行おうとするときには、前提をもって始めることが多いのですが、私たちが常識だと思っていることは実は常識ではない、ということも多いのです。Out-of-Boxで考える、つまり、そういう前提の箱から飛び出して考えるために、システム思考がたいへん役に立ちます。
今回のワークショップを通じて、箱の外に出て空間的・時間的広がりをもち、深く掘り下げた考え方ができるように、そして、そうした考え方をもとにしたまちづくりができるようにお手伝いしていきたいとお話しました。
それから、第1回のテーマである「ビジョンづくり」について説明しました。
「よいビジョン」とは、
・具体的な目的地を示す
・手段ではなくより高次の目的につながる
・否定や他との比較ではない
・刺激的で行動を誘発する
という条件を備えているものです。
たとえば、自動車王ヘンリー・フォードは、「すべての人が車を持てるようにする」というビジョンのもとに、T型フォード車と現代的な生産システムの基礎を作り出しましたし、ジョン・F・ケネディは「1960年代が終わるまでに、人を月に送り込み無事に地球に帰還させる」というビジョンを掲げ、アポロ計画を成功させました。計画そのものの是非は別にして、ビジョンとしては非常にすぐれたものだったわけで、これが目的達成につながったのです。
まちづくりのビジョンの例もいくつか紹介しながら、それらに共通する「まちの役割とシステム」のモデルについて説明しました。
まちには、社会のアセット、経済のアセット、自然のアセット、ガバナンスの仕組みといった「アセット」(つまり資産、宝物)があり、それを使って、社会的幸福ニーズ、経済のニーズ、自然のニーズ、エンパワメントなどの「ニーズを充足」するという役割があります。
アセットをもとに行動を起こし、ニーズを充足して、その結果がまた新たにアセットを積み上げていく。いわゆる好循環です。こういう好循環を生み出すことがまちづくりにはとても重要なことなのです。システム思考ワークショップでは「望ましい変化を起こすために、どこにどのような好循環をつくりだせばよいか」を考えていきます。
いよいよグループワークに入りました。さきほどの4つのグループに分かれ、模造紙やマジックペン、付箋紙などの置かれたテーブルを囲んで座ります。
まず1つめの課題です。各自が、自分たちのグループの担当するカテゴリーに関して、「理想の姿になると、○○○○が〜〜〜になる」という文の○○○○に当てはまるものを考えてください、とお願いしました。
できるだけたくさん考えて、1つずつ付箋紙に書いてもらいました。5分間という時間制限を設けましたが、多いところではこの短い時間に20ぐらいの○○○○が出ました。理想の姿が具体的にたくさん浮かぶというのは、大切なことですね。
次に2つめの課題です。今度はその中から、大事に思うもの、ワクワクするものを選んでください、と言いました。各グループ3つずつを選んでもらいました。また、なぜそれを選んだのか、理由も説明できるように、とお願いしました。
どのグループも、この3つを選ぶのにかなり時間がかかったようです。3つを選ぶにあたって、ほとんどすべてのグループが、まず○○○○を書いた付箋紙を3つぐらいのテーマに分け、その中から重要なものを1つ選ぶ、という形を自然にとっていたのが興味深かったです。
次に、今選んだ3つの要素のうち1つについて、時系列変化を表したグラフを模造紙に描いてもらいました。縦軸に選んだ要素、横軸に時間をとり、時間の変化とともにその要素がどのように変化するかを描くもので、システム思考の基本ツールのひとつです。
過去から現在までの動きは実際にわかっていますから、現在地点までは、過去を表すグラフが描けます。現在から未来へは、2本の線を描きます。1本は、「このまま何もしなかった場合、将来どのような道をたどるか」を表した線です。もう1本は、「これまでの流れを変えようと努力した結果として、こうなってほしい」という動きを表す線です。このグラフを、システム思考では「時系列変化パターングラフ」と呼んでいます。
どのグループでも、どの指標のグラフを描くか、そしてどんな変化を望むのかについて、活発な話し合いが行われていました。もともとメンバーの皆さんは、このカテゴリーグループの中で精力的に活動してきているので、一人ひとりがこの理想の姿にはひとかたならぬ思い入れがあり、それが自然と活発な意見交換を生んでいるのでしょう。正しいビジョンを描くためには、この段階での活発な議論は不可欠です。各グループに自由に進めてもらいました。
その後、各グループのグラフの発表を行いました。自然環境グループの指標は、熊谷市の「ダイオキシンの量」です。教育環境グループは「つながり度」、地域環境グループは「人口」、人間環境グループは「コミュニケーション」を指標に選び、それぞれ、「このままいくとどうなるか」と「それをどう変えたいか」を描いたグラフを発表してくれました。
各グループの発表の後に、指標の選び方や、指標を選ぶ際やグラフを描く際のグループ内の認識や合意過程などについて確認をし、講評をしました。
最後に、来月のワークショップまでの宿題を出して、今回のワークショップは終了となりました。宿題は、次の3つです。
・残りの指標から3〜5つを選んで、時系列変化パターングラフを描く。
・指標を理想のパターにするには、何が変わる必要があるかを考える (できるだけたくさん)。
・指標が理想のパターンになると、どんなことが起こるかを考えてくる (できるだけたくさん)。
次回のワークショップは、この宿題の発表から始めます。どんな発表が聞けるか、そのあとに、どのように展開して「まちづくり」につながっていくか、とても楽しみです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この1年、いろいろな場面や参加者の方々を対象に、システム思考のワークショップ研修やファシリテーションをおこなってきて、「システム思考って、個人にも組織にも、ほんとうに役に立つなあ!」という思いを強くしています。業界団体や地域、国にもシステム思考をぜひ広げていきたいと思っています。
個人のレベルでいえば、システム思考を勉強し始めてから特に、何か問題やうまくいかないことがあっても、自分や人を責めることが減り、「どういう構造だからうまくいかないのかな? その構造をどうやって変えたらいいかな?」と考えることができるようになりました。とってもラクです。
グループや組織でも、みんながそういうスタンスで問題解決にあたれば、犯人捜しや非難応酬ではなく、建設的な話し合いができますよね。そんな力をつけるために、ぜひシステム思考をどうぞ。