エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年03月27日
【温暖化・脱温暖化に関する最新情報】交通輸送の分野から3つ
温暖化の問題で、現在も大きな問題でありながら、他に比べてまだ手が打たれていないこと、効果が上がっていないばかりか、手つかずのままになっている部分もあることから、今後ますます大きな焦点のひとつとなっていくのが「交通・輸送」の分野です。
交通・輸送の分野は、いくつかに分けて考えることができます。
主体によって分けると、
民生用(私たちがどこかへ行くために使う)/産業用(企業活動で使う)
交通手段によって分けると
自動車/航空/船舶/その他
などでしょうか。
日本でも、私たちが日常生活で使っている交通手段からの二酸化炭素排出量が増大しています。交通手段としては、世界的に、飛行機利用の増大が近年問題として大きくなってきています。
一方、多くの企業が輸送から排出される二酸化炭素の削減への取り組みを進めるようになってきました。国内企業でも、これまでは陸路をトラックで輸送していたものを、鉄道や船舶+トラックの組み合わせにシフトすることにより(モーダルシフトといいます)、二酸化炭素排出量を減らしています。
また、世界的には、国際線航空機の排出する二酸化炭素がどの国のものともカウントされておらず(したがって減らすインセンティブもなく)、野放し状態となっていることが、数年前から指摘されていましたが、しだいに大きな問題となってきています。
こういう観点から、今回は日本から1つ、海外から2つのニュースです。
まずは、日本から。
「今日は○○まで買い物へ行こう」「△△へ遊びに行こう」と思ったときに、い
くつかの交通経路がある場合が多く、わたしたちはそのときの都合や便利さ、か
かる費用などで、選んでいます。
その選ぶ基準の一つに、「二酸化炭素排出量」を加えませんか? グリーン購入
と同じ考え方ですね。"グリーン交通"です。
最寄り駅から○○駅や△△駅までの交通経路を検索すると、そのオプションごとに二酸化炭素排出量が出るサービスがあります。そして、そこまで自動車で行った場合とも比較することができます。
CO2駅すぱあと
http://team-6.jp/cgi-bin/exp/exp.cgi
ぜひ試してみてください〜。
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温暖化・脱温暖化に関する最新情報
(by 枝廣淳子+実践和訳チーム温暖化サブチーム)
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枝廣淳子の環境メールニュース
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温暖化・脱温暖化に関するバックナンバー
http://www.es-inc.jp/lib/archives/11.html
さて、次は、英国から。航空機の温暖化対策についての現状(政治的駆け引き)をかいま見ることができます。
インディペンダント紙の2月8日号から、以下のタイトルの記事の概要です。
「地球を救うにはあと7年しか残されていない」とブレア首相は語るが
ブレア首相はこれまで各国の首脳に対し、「地球を温暖化から救うために残された期間はもはや7年をきっている」と訴えてきた。しかし、温暖化に対処するために航空機の利用に課税すべきだと求める動きに対しては、イギリスは課税案をうけいれないと拒否の見解を表明。
ブレア首相は下院の委員会の席上で、京都議定書の期限が終了した後の国際的な取決めの必要性を訴え、ブッシュ大統領が一般教書演説で米国は石油依存症だと認めたことを評価、米国にさらなる前進を求め、国際的な合意が成立する可能性はあると発言していた。
航空機利用への課税案は、航空運賃が安くなったことで航空機の利用が急増し炭素排出量も増大の一途をたどっていることから、温暖化への影響が憂慮され要望されるようになったものである。しかし、ブレア首相は航空機の利用を制限するのは非現実的であると反論、有害な排出物を減らすための技術開発に力を注ぐべきだと述べ課税案を退けた。
保守党や自由民主党の環境担当からは、「気候変動への対策のなかで最大の難関は航空機の排ガス問題であり、これに手をつけなければ他の分野での努力も水の泡となる」と批判している。
(古谷)
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最後に、産業界の動きです。
フォード自動車は、2005年12月20日、自動車メーカーとしては初めて、気候変動や二酸化炭素排出、国際的なエネルギー問題などが自社に与える影響についてまとめた報告書を発行した。
http://media.ford.com/newsroom/release_display.cfm?release=22233
「当社は、気候変動問題を環境問題であると同時にビジネスの問題ともとらえており、解決策模索の努力に拍車をかけている。この問題への対応は分野・産業を問わず連携が必要であり、フォードもその一員として真剣に取り組んでいくつもりだ」とビル・フォード会長・CEOは話す。
報告書では、自動車ビジネスに影響を与える要素と温室効果ガス排出問題の関係、気候変動によって生じるリスクや機会への同社の対応、自動車産業の炭素排出量を大きく変えるために必要とされる市場、政策、技術の各方面における要素についてまとめている。
また、大気中の温室効果ガス密度を安定させるために早期に予防策に踏み切ることが重要であるとの認識を示すと同時に、燃料メーカー、自動車メーカー、消費者および政策立案者による統合的な取り組みの必要性も強調している。
フォードの戦略は、
(1) 温室効果ガス排出量および生産時のエネルギー消費量のさらなる削減
(2) 魅力的な低公害車販売における柔軟性および能力の強化
(3) 車両温室効果ガス排出量削減のための市場、政策および技術の枠組みづくり
の三本柱。
自動車業界による温室効果ガス排出に関する同社の主な具体策としては、
・2010年までに年間25万台のハイブリッド車生産および北米工場における温室効果ガス排出量6%削減の達成
・ガソリンにエタノールを85%混ぜた燃料「E85」を使用するフレキシブル燃料車(FFVs)生産の拡大およびE85供給施設の拡大支援
・ハイブリッド車生産にともなう二酸化炭素排出量を相殺する「オフセット事業」
などを挙げている。
また国内従業員の排ガスや燃費に対する意識を向上させるために2006年に実施予定の「エコドライビング事業」は、将来的には同社の海外従業員やサプライヤーにも拡大したいと考えている。
この報告書の発行は、同社の気候変動問題への対応に懸念を示し、株主決議を提出した環境団体に対して約束していたものであった。
報告書に関して株主決議を提出した環境団体の代表者らは、「フォードは、地球温暖化を現実のものとして自社の事業計画や政策づくりへの取り組みにおいて考慮したという点で、投資家や自動車業界、そして米国民に対し、他メーカーに先んじて重要な貢献をしている」「投資家は、フォードが自社の事業や競争力に対する気候変動の影響を分析した、ということ自体を重要な一歩として見ている。
さらに同社が、政府の意味ある気候変動政策づくりにリーダーシップを発揮すれば、米企業を全速力でクリーンエネルギー経済に向かわせることができる必勝策となる」と話している。
『フォード 気候変動の影響に関する報告書(英文のみ)』
www.ford.com/go/sustainability
(丹下)
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自動車会社として初めての動きなので、大きく注目されています。日本ではどの企業が最初に、同じように温暖化をきちんと社会的責任として受け止め、すべて解決策は出せないとしても、解決に向けての会社としての姿勢やスタンスを明らかにするでしょうか? ぜひ注目していきたいところです。
なお、フォード社がこうした動きをしたのは、上記にもあるように、環境団体が株主決議を提出するという圧力があったためです。米国では、株主決議を提出して、その企業の環境対策を迫る、という動きがここ数年盛んになってきています。
これもいつ「日本上陸」するでしょうか。