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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年04月27日

環境コミュニケーションについて(2006.04.27)

コミュニケーション
 
多くの企業が、自社の環境問題に対する考え方や方針、目標、活動内容、成果、実際の状況などを、だいたい年次でとりまとめ、「環境報告書」「CSR報告書」「サステナビリティ報告書」などとして公表しています。 ウェブから読める場合も多く、たとえば、ジャパン・フォーサステナビリティのサイトでは、海外向けに英語版のリンクとともに、日本語版のリンクも設けています。業種別に見ることができます。 http://www.japanfs.org/ja/business/reports.html 環境パートナーシッププラザのサイトの「資料検索」ページでは、2003年からの企業の環境報告書が1000以上そろっています。 http://www.geic.or.jp/geic/service/search/scripts/search_kankyou_houkokusho.php また、経済産業省にも、閲覧ウェブサイト「環境報告書プラザ」があります。こサイトは、企業名などによる報告書検索のほか、企業の環境改善事例も検索できます。 http://ecoreport.jemai.or.jp/ 私は毎年、何社かの環境/CSR/サステナビリティ報告書に、「第三者意見書」を書かせていただいています。これは、文字どおり、第三者が報告書を読んで、意見を出すのですが、その目的は、この意見も参考にして、よりよい環境コミュニケーションをはかってください、ということです。 私はいつも、環境への取り組みといった内容面と、その内容を伝えるというコミュニケーション面について、世界の動向やシステム思考的な視点も踏まえて、意見を提出しています。(字数が限られているので、凝縮版という感じですが) 今年3月に発行された三国コカ・コーラボトリング社の「CSR REPORT2006」にも、第三者意見書を出させていただきました。三国コカ・コーラボトリング社の快諾を得て、意見書の内容をご紹介します。 ちなみに、同社の報告書はこちらにあります。ご興味のある方、ご覧ください! http://www.mikuni-ccbc.co.jp/social/eco/kankyo/index.htm 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 三国コカ・コーラボトリング社「CSR REPORT2006」への第三者意見書                                枝廣淳子 わかりやすい会社紹介やトップメッセージ、親しみやすいトーンなど、好感が持てます。自動販売機レポートは、技術進歩を地域貢献と自社メリットにいち早く結び付けた取り組みとして、今後の展開を期待させます。 既存の理念や基本方針、制度などを伝えるものを「静的報告」とするならば、それらが実際にどう活動につながり、どういう結果を生み、その結果方針や制度、取り組みがどう改善・進化しているかを伝える「動的報告」も重要です。 自動販売機レポートではイキイキとした動的報告によって会社の思いや方向性が伝わってきますが、全体的には制度や取り組み紹介などの静的報告にとどまっています。 お客様相談室の活動では、対応の仕組みだけでなく、指摘の件数や内容、会社の対応など、「実際の状況とそれによる変化」を伝えてください。「社員満足を考えた人事施策」によって、社員の満足がどう変わり、会社は今後をどう考えているかという「進化のプロセス」を伝えてください。社員の顔や地域の声が見えてくる双方向コミュニケーションを期待します。 今後とくに、「水」「海外サプライチェーン」「女性の雇用」についての取り組みを期待します。 1)大量に水を用いる企業として、世界的な環境問題である水の重要性の認識と取り組みを深めてください。UNEP(国連環境計画)の飲料製造時の水使用量ベンチマークなどを参考に、目標を明らかにしてください。 2)輸入原料も多いはずですが、フェアトレードを含め、海外サプライチェーンへの姿勢や考え方がわかりません。 3)女性の雇用や登用に関する記載がないこと自体が大きな情報となってしまいます。 従来の誠実で真摯な取り組みをさらに進化させ、「達成事項」だけでなく、「未達事項」「今後の取り組み」も自らの言葉で語る報告書を期待します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 今回の報告書は同社にとって初めての「CSR報告書」となります。先日、社長とお会いした際に、「ぴしっと言ってくれてよかった」と。来年の報告書が楽しみです!(ちなみに、報告書も"成長"するのです。しない場合もありますが......) さて、少しまえですが、恒例の「環境goo大賞」の結果発表がありました。各受賞者への審査員のコメントも読めます。http://eco.goo.ne.jp/business/event/taisyou/taisyou_2005/index.html 環境goo大賞とは、「見て知って実践するエコ情報」を提供するウェブサイト「環境goo」が主催して、企業や自治体、NGOの環境ウェブサイトを表彰するものです。 http://eco.goo.ne.jp/ 環境goo大賞2005は、結果発表だけではなく、「効果的な環境・社会コミュニケーション方法に関する議論を深めたい」という声に応えるために、講評や今後の期待などといった「環境goo大賞2005」の審査模様もフィードバックしています http://eco.goo.ne.jp/business/event/taisyou/taisyou_2005/feedback/ 企業部門      「中小企業の可能性」「企業のコミュニケーションのあり方とは」 行政機関部門   「網羅性と個性」 NPO/NGO部門  「統一したメッセージの重要性」 個人部門      「ぬくもり感のある里山同好会」 などについて、4人の審査員のやりとりなどが載っています。ちなみに、私は今回初めて、審査員をつとめました。部門別に審査員がコメントをしたのですが、私は自分でも(このように!)おこなっています「個人部門」のコメントを書かせていただきました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 個人部門 --  個人の情報発信の強みは、「フットワークの軽さ」と「その人らしさを前面に出せること」でしょう。大賞に輝いた里山同好会は、その両方を温かいタッチとトーンでアピールしている好サイトです。  個人の情報発信には、「自分が集めた情報や信じるところを発信するもの」もあれば、「さまざまな人々の情報や意見を載せるポータル型」もあります。今後社会における個人メディアとしての重要性を増していくうえで、特にポータル型は、発信情報の整理や「だれに何を伝えるため」という目的の明確化が鍵を握っています。  さまざまな立場や意見の人々がどんどん情報や意見を発信していくことで社会に変化を生み出す可能性を最大限に活かし、実現していきましょう! ジャパン・フォー・サステナビリティ共同代表 枝廣淳子 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 環境に限りませんが、コミュニケーションとは面白く、また難しいものですよね。「どうやったらもっと多くの人に伝わるか」「どうやったら、わかった、だけじゃなくて、行動を変えてもらえるか」と、日々考えたり工夫したりの連続です。 私が主宰する環境英語(和訳)のオンライン自主勉強会では、レスター・ブラウン氏の書いたものなどを題材に和訳力を鍛えていますが、訳すだけではなく、「200字に要約」することで、伝える力をアップしよう、というトレーニングも希望者でときどきやっています。なかなか面白いです。 同じ英文を読んで訳したあと、「要約にはまってしまった」という、ふたりが要約したものをご紹介させていただきましょう。 【Kさん】 現在地球上には1万種近い鳥類が生息しているが、8種に1種が絶滅危惧種とされている。鳥たちにとっては、農業の拡大により、生息地が農場に変えられたり、生息環境が悪化していることが最大の脅威となっている。食用やペット取引のため直接の捕獲、外来の捕食動物や病気、近年では薬物汚染や産業発展、さらに気候変動も要因となっている。人類に役立っている鳥類を、これ以上減らさないためには、気候と人口の安定が鍵となるだろう。 【Yさん】(4年生に伝えるために) 地球にはおよそ1万種類の鳥が生きている。でもそのうちの87%がいなくなってしまうかもしれない。えっ、どうして?一番の原因は、人間が増えて鳥のすみかをどんどん農地に変えてしまったから。それに、食用やペット用にむやみに捕まえたり、薬による汚染、漁業や工業の影響があったり・・・さらに気候変動も鳥には大きな痛手なんだ。だからこれ以上鳥を減らさないためには、○○と○○を安定させることが大事!君はこの○○に何が入ると思う? もうひとつ、別のテーマで。同じおふたりです。 【Kさん】 気候を安定させるためには、京都議定書のCO2削減目標では不適当と見なす向きが多くなり、昨今では各方面から大幅な削減案が提示されている。すでに、EU、日本、北米などでは再生可能なエネルギーへの転換やエネルギー効率の向上について、具体的な数値や期限の目標を設定し動き始めている。CO2削減に必要な基本的な技術は、人類の手中にあるので、2015年までに世界のCO2排出量を半分に削減することも実現可能なのである。 【Yさん】(4年生に伝えるために) 気候を安定させるためにはCO2を減らさなければならない。でも減らすって、いつまでにどれくらい?そんな目標を初めて決めたのが1997年の京都議定書。みんながまだ小さかった頃だ。今では、その目標をもっと高くしようという動き、つまり、これからのエネルギーのことをもっと考えた動きが世界の各地で起こっているんだ。(具体的な取り組みは本文を読んでみて。びっくりするくらいたくさんの例があるよ。)こうしたCO2を減らすための技術があるんだから、みんなが二十歳になる時には、半分に減らすことだってできるはずだ。 いかがでしょう? コミュニケーションの基本原則のひとつは、「まずだれに伝えたいかを明確にすること。その相手に伝わる言葉で伝えること」だと思っていますが、このことがよくわかりますよね? 企業の環境/CSR/サステナビリティ報告書も、環境ウェブサイトも、この原則をもうちょっと大事に考えてもらえたら、もっと「あ、自分に伝えようとしているんだ」という"届く"感じが出るのになぁ、、、と思うことがよくあります。 「成長と進化」に期待しつつ。
 

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