エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年05月26日
複雑な問題構造とそのツボを見抜く力を〜システム思考(2006.05.26)
昨年、「週刊ホテルレストラン」という雑誌のインタビューを受けたとき、システム思考の話をしました。記事の一部をご紹介します。
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コンサルした企業に「エコに取り組んで何が一番よかったですか」とアンケートしたところ、「経費節減」という声も多かったのですが、一位は「社員のモラルアップ」でした。共に一つの目標に取り組むことで連帯感が生まれ、利益よりも地球のために役立っているという思いがさらに心を高めたのだと思います。
―なるほど。その連帯感を育むには、共通の課題を共通に認識することが欠かせないと思いますが、実は簡単なことではありません。そこで、枝廣さんが提唱するシステム思考が役立つと思うのです。
システム思考とは、目の前の問題解決に終わらせず、広く問題や状況の全体をシステムとしてとらえ、根本から問題を解決しようとするものです。
この思考ができないと、たとえば、競合が宿泊費を下げたからうちも下げる、うちが下げたら相手はもっと下げる、と悪循環にはまってしまう。本当は解決策のはずなのに、解決策そのものが問題を生むわけです。
―その呪縛から逃れるために、システム思考が役立つ。
多くの企業が売上の低下や伸び悩みから売上を高めようと必死になりますが、たとえば、近視眼的な考えだと、新規開拓に力を入れ始めるケースがよくあります。すると新規は増えますが、新規ばかり見ていたためにサービスが悪化して既存客が減ってしまうという別の問題が生じることもあります。これでは元も子もありません。
―なぜ売上が落ちたのか、要因を探ることが先決ですね。
そうです。考えをクリアにするために私のセミナーではループ図(循環図)を用います。ループ図が書けるようになると本質的な解決を考えられるだけでなく、図という共通言語ができるので、チーム全員が同じ認識を持てる強みが生まれます。
―問題をノートに書き出すと頭の整理ができますが、それをループ図で表現する。
道路渋滞という問題をループ図で書いてみましょう。これは実例です。行政の担当者は、渋滞解消のために道路を広げた。→するとドライバーは走りやすくなる、→もっと車が増える、→結局さらに渋滞が増える。これでは問題の解決になりません。図に書くと共通の理解ができますよね。
―はい。流れもよく分かります。
共通の理解をしたら、では何がよくなかったのか考えてみます。走りやすくなったことが悪かったのでしょうか? いいえ違いますね。この例では、道路を広げれば解決するという考え方が間違いだったのです。他国の都市では、逆に道路を狭く走りにくくして渋滞を解消した例があるそうです。
―確かに図を書いてみると、ループ図のどこをどう変えればいいのか全員が同じように理解できそうです。
システム思考は、日本人に受け入れられやすいと思います。ごく普通の人も「風が吹けば桶屋が儲かる」といいますが、これも近い考え方ですから。あるいは、「ツボ」とも似ています。足の裏のあるツボを押すと目の疲れに効くように、案外、解決のポイントは問題から離れた場所にあるのです。
―なるほど面白い考えですね。
問題が生じたとき、誰かのせい、あの出来事のせいと、人や事象を非難してしまうと根本的な原因を見過ごします。問題を起こすのはシステムの構造であって、そこを変えないと、たとえ人が変わっても、事象が変わってもまた同じ問題が起こります。
システムには、ここを押せば大きく動くというような「てこ」の原理が効いた「レバレッジポイントが」あるといわれます。ニューヨークでは、地下鉄の落書きを消したことで犯罪が減りましたが、ここでは地下鉄の落書きがまさにレバレッジポイントでした。
―システム思考を習慣化し、レバレッジポイントを探すコツがつかめたら言うことありませんね。
システム思考はみんなの役に立つアプローチです。問題を全体的にとらえ、長期的な視点で効果的な問題解決が可能になります。そうした企業が少しでも多くなることを、ライフワークにしている環境問題とともに目指していきたいと思っています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ご参考まで、道路渋滞ループ図の例をこちらに載せてあります。(日経エコロジー3月号でシステム思考を紹介した記事の追加情報です) http://change-agent.jp/news/000012.html
5年ほどまえにシステム思考に出会って「これだ!」と思ってから、こうして、日本のあちこちに紹介できるようになり、うれしく思っています。
システム思考のトレーニングコースも、年に10回ほど開催できるようになってきましたし、企業でのクローズド研修や、JICA(国際協力機構)での派遣前研修にも組み込んでもらうようになりました。CSR報告書への第三者意見書を書く仕事でもほかのどんな仕事でも、「システム思考」という言葉は使わなくても、システム思考的な見方がベースになっています。
トレーニングコース受講者がよく、「システム思考」という言葉に誤解していました、とフィードバックシートに書いてくれます。なんだか難しそう、機械的な感じがする、などのイメージを与えてしまうのですね。
(そこで、専門的な文脈でないときには「つながり思考」という言葉を使ったりしています。このほうがわかりやすいですね!)
チェンジ・エージェントでは今月にひきつづき、6月、8月、10月に、システム思考トレーニングコースを開催します。ビジネス向けですが、個人的に関心のある方、組織づくりや活動の広がりに苦心しているNGOの方々にもご参加いただいており、役立てていただいていますので、企業人以外の方でもぜひどうぞ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チェンジ・エージェント主催
「システム思考トレーニングコース: 望ましい変化を創り出す力をつける」
(2006年6月13日、8月28日、10月20日開催)ご案内
「なぜ、何度手を打っても同じ問題が起こるのかがわからない」「本社でよかれと講じた策が、支社や工場では裏目にでてしまう」「多部門プロジェクトがスムーズに進まない」――このような悩みをよく聞きます。
ますます複雑性を増す世の中で、目の前の課題に対して各組織や部署が個別最適化を図ることが「昨日の解決策が今日の新たな問題を作り出す」状況を生み出しています。
つながりと相互作用に着目する「システム思考」を身につけることで、問題を切り分ける「分析」型思考の弱点を避け、本質的な問題解決と建設的なコミュニケーションを推進できます。
システム思考は、1950年代にアメリカのMITで開発され、デュポン、GMなど欧米企業では、「学習する組織」を創り出し、複雑な問題解決を実行して数百億円の付加価値を創出するなど、その大きな成果が注目されているアプローチです。
この欧米の企業に多数導入されているシステム思考の考え方やツールを、日本の企業やビジネスパーソンにも知っていただき、ますますスピードと複雑性を増す世界市場のなかで時代の先を見る力を身につけていただきたいと願っています。
変化の激しい時代に、本質的な方向性を見定めて、組織内メンバーの力をじょうずに結集していちはやく望ましい変化を創り出す力は、これまで以上に重要な要因として企業の存続を左右することでしょう。
今回のコースは、これまで500人以上の方々に受講いただいたシステム思考トレーニングコースをさらにパワーアップしたコースです。
参加者全員である「システム」を体感し、それを事例として、システム思考のツールを学び、演習を通じて、身につけていく構成となっています。戦略演習やラーニング・ゲームと呼ばれる「一瞬にしてその本質を感じることができる」演習がたくさん用意されており、「頭だけではなく、腑に落ちる」よう構成された内容となっています。
また今回から、複雑な問題構造を見抜き、本質的な対処を教えてくれる強力なツール「システム原型」についても採り入れています。
受講者からは、「物事を多角的・三次元的に見ることができるようになった」「ループの力はすごい!」「複雑な事情を明快に理解していく優れた方法だと思う」「視点を引いて大局を見よ、を忘れがちだが、見るだけでなくつながりを理解するという方向に持ってゆけることが良かった」などの感想をいただいていま
す。
真の解決策を創り出し、望ましい変化を加速するためのアプローチであるシステム思考の考え方とツールをお伝えできる機会を心待ちしております。
「システム思考トレーニングコース: 望ましい変化を創り出す力をつける」
(2006年6月13日、8月28日、10月20日開催)ご案内
システム思考の基本ツールを現場で用いて本質的な問題解決を進めたい方、社員研修の一環としてお考えの方、ぜひご参加下さい。
■日時
2006年6月13日(火) 13:00-17:30(12:45開場)中野会場
http://change-agent.jp/news/000022.html
2006年8月28日(月) 13:00-17:30(12:45開場)中野会場
http://change-agent.jp/news/000026.html
2006年10月20日(金) 13:15-17:45(13:00開場)表参道会場
http://change-agent.jp/news/000027.html
(各回とも内容は同じです)
■コース概要
●システム思考とは
●経営戦略演習
●時系列変化パターングラフ―できごとではなくパターンを見る
●ループ図―システムの構造を描き出す
●システム原型―ビジネスシーンによく見られる構造
●システムへの介入―効果的な変化を創り出す介入ポイント
■募集人員 約25名
■料金 39,000円/人
■お申し込み・お問い合わせ
(有)チェンジ・エージェント 担当 関・増田・小田
info@change-agent.jp
TEL: 044-930-0012 FAX: 044-930-0013
お申し込みは、下記申し込み票を電子メールでお送りください。
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申し込み票
2006年_月_日システム思考トレーニングコースに参加します。
(日付をご記入下さい)
ご氏名
ご所属
メールアドレス
連絡先電話番号
※この研修コースのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名( )
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. システム思考メールマガジン.
( ) d. チェンジ・エージェントのウェブサイト
( ) e. チェンジ・エージェントからのメールによるお誘い
( ) f. 他のメールマガジンによるご案内 ( )
( ) g. その他 ( )
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※受付確認後、振り込み口座をお知らせいたします。入金確認を持ちまして正式な受付となります。その後、受講票と詳しいご案内を電子メールでお送りいたします。請求書や領収書の必要な方はお申し付け下さい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ご案内ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
事後アンケートでは、満足度も5点満点で平均4.5点強と高く、「営業で顧客に説明するときにも役立つと思う」「営業、SE、品質管理などあらゆる部門で役立つ」「経営層の研修に採り入れたい」等のフィードバックをいただいています。
講師がいちばん楽しんでいるんじゃないか?と(我ながら ^^;)思ってしまうほど、毎回発見があり、勉強になる半日です。よろしかったらぜひごいっしょに!