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【温暖化・脱温暖化に関する最新情報】ジェームズ・ラブロック「ガイアの復讐」(20...
エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年07月01日
【温暖化・脱温暖化に関する最新情報】ジェームズ・ラブロック「ガイアの復讐」(2006.07.01)
温暖化・脱温暖化に関する最新情報
(by 枝廣淳子+実践和訳チーム温暖化サブチーム)
※このメールニュースの目的は、温暖化・脱温暖化に関する世界の最新情報をいち早くお届けすることです。英語による最新情報を発信しているサイトなどをご存じの方は、ぜひ教えて下さい。
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枝廣淳子の環境メールニュース
http://www.es-inc.jp/lib/mailnews/index.html
温暖化・脱温暖化に関するバックナンバー
http://www.es-inc.jp/lib/archives/11.html
今年初めに出て、「温暖化手遅れ説だ」と世界中の環境研究者・活動家たちのあいだで大きな議論を呼んだジェームズ・ラブロックの「ガイアの復讐」について、[No.1175] でもご紹介しました。
http://www.es-inc.jp/lib/archives/060310_133941.html
本書について、インディペンデント紙にジョン・ウィットフィールド氏の書いた紹介文を簡単に紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1.「ガイアの復讐」が語ること
「自然界との戦争が迫っている。京都議定書で準備は万端だと思っているかもしれないが、この取り決めもチェンバレンがヒトラーと交わしたミュンヘン協定程度の効果しかないことが証明されるだろう。2,30年先には、戦争になる。我々は地球が支えきれる状態にまで、人口と消費を減らすことができるか、あるいは自然が人類を暗黒の時代へと落とし入れるのを待つかだ。」
2.ガイアの復讐が書かれた経緯とその結果
これが「ガイア理論」のジェームズ・ラブロックが「ガイアの復讐」で語っている内容だ。デボン州にある彼の家のそばにウインドファームが建設されるというのがこれを書いたきっかけだったという。この内容には議論すべき点もあれば、賛成できる部分もあるが、ラブロックの広範な知識と明快でエネルギッシュな書
き方、そして独創的な考えは、どんな反対意見も、気候変動についてさらにしっかりとした情報に基づいた、明瞭な考えを導き出すことにつながっている点で重要である。
3.ガイア理論とは
ラブロックのガイア理論は1960年代後半に形成され、「地球という生命体は、自身に最適の状態を保つため、気候調整機能をもっている」というものである。例えば海藻は硫黄化合物を空中に放出し、雲を形成するので、太陽が照っている暖かい日は、より多くの海藻がより多くの雲を形成することで日光が跳ね返され、地球の温度が下がる、というものだ。
4.ガイア理論の位置付け-生物学者の間で、学界で
このラブロックのガイア理論は、主流の生物学者からは受け入れられていないが、少なくとも学界ではかなり尊重されていて、学問的には「地球システム科学」という名前で扱われている。
ガイアが気候調整をする目的をもつ、というラブロックの意見には異議を唱えるが、彼の正しい点は、生命がただその物理的な環境に適合するだけではなく、環境を変化させもするということを強調したことだ。
5.ガイア理論を否定する、植物の隠された事実
一見元気が出そうなガイア理論だが、植物がたくさん育てばそれだけ二酸化炭素を吸収するので、気候変動も和らぐだろうという、その楽観的な考えはほとんど絶望的だということが証明されている。世界のメタンガス排出量の10-30パーセントが植物から排出されているという学術論文が、先月(2006年1月)ネイチャー誌から発表された(メタンガスは二酸化炭素よりも何倍も強力に温室効果を生み出す)。「ガイア理論」とは相容れない結果だ。
6.地球の気候変動の歴史、安定期と変動期
地球の気候の変化にはリズムがある。氷河期や現代のような間氷期、現在よりもずっと暑かった白亜紀などに代表される安定期がある。気候は谷底の巨大な石に似て、普段はじっと動こうとしないが、隆起している場所に持って行かれたら、隣りの谷に転がり落ち、また次の安定した場所にとどまる。
7.瀬戸際に来ている現代の気候
仮に、ラブロックが言うように温室効果ガスを現在と同じように排出し続けたら、気候という名の巨石を5500万年前の始新世に似た谷へと落とし込むことになる。それは現在よりも5℃以上気温が高く、「陸も海も...不毛」の世界だ。これがラブロックの言うところの、人間に「もう充分」とわからせる地球流のやり方
というわけだ。つまり、何十億人もが飢えにさらされるだろう。気温が現状からわずか2℃上がっただけで、恐らく熱帯雨林の消滅といった数多くの変化を引き起こすことになる。ラブロックが恐れているのはこのことだ。
8.悪夢を避けるためのラブロックの考え
このような悪夢を避けるには、化石燃料を燃やすのを止め、私たちを支える自然の生息環境を破壊するのを止めなくてはならない。短期的には、必要な電気を原子力で間に合わせ、長期的には、電力を生み出すのには核融合、食物は育てるよりもむしろ化学物質を合成、そしておそらくは、巨大な鏡を使用して太陽光を反射し、地球を冷やすといった奇妙な手段を模索するべきだとラブロックは言っている。大部分の環境保護主義の聖域--持続可能な発展、オーガニック農業、大嫌いなウインドファーム--などは社会の要求を満たしたり、自然を救うのにはふさわしくない、と彼は考えている。
9.石炭でもウランでもない選択?
ラブロックは何十年も原子力を支持してきたので、気候変動を解決するのに技術的な方法に引き寄せられるのも無理もない。しかし、石炭もウランも正しい選択ではない。政府が、環境を破壊するような道理に合わない補助金を廃止し、汚染者に汚染にかかる費用を負担させ、空気や水などをきれいにしてくれる野生の生態系機能の価値を認識させることも重要である。
10.ガイア理論とラブロックの矛盾
ラブロックは、1979年のガイア理論に関する著書で、工業的な農業が「人間と環境の関係がすばらしく調和の取れたものになる時代」を導き出すだろうと書きながら、「ガイアの復讐」の中では「低木や牧草地を破壊するブルドーザーから逃れるため、ウィルトシャー州からデボン州へと引っ越したのはこの頃だった」と述懐している。現代技術により、容赦なく彼の見解の価値が損なわれていることを思うと、技術に固執して環境の危機から脱出できると彼が信じつづけているのは奇妙に思える。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いま、山本良一先生が主宰される「箱根研究会」の「環境と両立する経済・社会をどう実現するか」に参加しています。数ヶ月前に、山本先生から「ラブロックのあの本だけど、今度の箱根の研究会で内容を報告してよ」と電話をいただき、1時間弱のプレゼンを昨夜終えたところです。
ラブロックは、システム思考家でもあります。本書を読んで、ある有名なシステム・ダイナミクスのモデルを作ってシミュレーションをしたのがラブロックだと知って驚くとともに、私自身にもシステム思考の知識が多少あってこそ、今回のお題にある程度は応えられたのではないかと思っています。
そこで、プレゼンでは、ラブロックの本の内容説明のまえに、「システム」の重要な性質や特性について説明することにしました。昨夜のプレゼンの内容についても、そのうち簡単にご紹介できれば、と思っています。