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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年08月07日

おいしいコーヒーをどうぞ!(2006.08.06)

システム思考を学ぶ
 
コーヒーはお好きですか? いつもどんなコーヒーをお飲みですか? ビジネス雑誌「エルネオス」の連載「枝廣淳子のプロジェクトe」から、私も大好きなコーヒーを届けて下さっているウインドファームのご紹介をします。 この連載では、毎号、本気で持続可能性に取り組んでいる企業や、環境や持続可能性をきっかけに大きく変化を遂げているビジネスや取り組みを紹介しています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 エルネオス「枝廣淳子のプロジェクトe」 ウインドファーム(第24回) ウインドファームは、福岡県にあるフェアトレード(公正な貿易)を謳って有機・無農薬のコーヒーを販売する、社員22人の会社です。規模は小さくても、思いと夢が大きければ大きな違いを生み出せるという実例をお伝えしましょう。 代表の中村隆市さんは、若いころは福岡・中洲でたむろする不良だったと笑いますが、1974年ころ、横浜へ出ていったときに観た水俣病の記録映画にショックを受け、有吉佐和子著『複合汚染』を読んで、有機農業の大切さを知りました。 さっそく有機農業の生産者を志しましたが、まだ有機農業という言葉も知られていない時代です。虫食いで不揃いの野菜に見向きもしてもらえなかった中村さんは、まず消費者の意識を変えることだと確信し、23歳から7年間、生協で有機農業を広める活動に従事しました。有機農業の生産者を増やそうと農家を回る一方、生産者と消費者を近づけるための勉強会や畑の見学会、消費者による援農へつなげる活動を広げました。 「旬がめちゃくちゃなレシピに合わせるのではなく、畑に合わせた料理をしよう」と呼びかけ、自然に沿った料理を学び合い、伝えていく活動もしました。こうして有機農業は生協に広がっていき、自然食品店やデパートなどにも有機農産物が置かれるようになってきたのです。 1986年のそんなある日、チェルノブイリで原発事故が起こりました。8,000キロも離れた所から風に乗ってやってきた放射能が、雨水や飲み水、有機農作物からも検出されました。「放射能に汚染されたものを子供に食べさせたくない」という消費者の声に、放射能基準が設けられ、多くの人がほっとしました。  ところが、中村さんはほっとできませんでした。基準ではねられた汚染食品の行方が気になったのです。調べてみると、汚染食品は途上国へ回されていることがわかりました。「途上国の子供たちが気になって」――。これが中村さんをフェアトレードに向かわせる大きなきっかけとなりました。 とにかく途上国とつながろう。その中で何かわかるかもしれない。途上国でできて、日本ではできない作物は何か? しかも素人でも扱える、日持ちのするものは何だろう? 中村さんは「コーヒー」に行き着き、ウインドファームの前身となる有機農業物産直センターを立ち上げました。有機コーヒーの自社焙煎・製造・販売を始めたものの、週に3袋しか売れないこともあったと言います。「傘張り浪人のように、ふすまの張り替えをして食いつなぎました」 そのうち、知人や生協の組合員が次々とお客さんを紹介してくれるようになり、5年後にようやく事業が軌道に乗りました。「お金も時間もかけて、生産者のことを丁寧に消費者に伝え、消費者の声を生産者に伝えるようにしています」と、中村さん。 当初、輸入していた「無農薬」と称するコーヒーは、正確な栽培方法や農薬使用情報が得られませんでした。そこで中村さんはブラジルへ行き、無農薬でコーヒー生産をしている農場を探して回りました。「農薬なしにコーヒーができるはずない」と笑われながら、100カ所も150カ所も農場を回りました。 消費者と本当の提携ができる生産者を探し続けた結果、「無農薬のコーヒーを探していることを聞きました。自分のコーヒーをぜひ飲んでください」という手紙をきっかけに、カルロスさんという生産者と出会います。93年からカルロスさんのジャカランダ農場のコーヒーを中心に販売を開始。97年にウインドファームを設立しました。 ジャカランダ農場の近くにある農業専門学校は、当時は「有機農業なんてできるはずがない」と言っていました。ところがウインドファームがジャカランダ農場から有機コーヒーの輸入を始めて7年後、この学校で「国際有機コーヒー・フェアトレード会議」が開かれ、ブラジル各地から400人もの人が集まったそうです。中村さんもパネリストとして参加したこの会議は、「この会議の前後でブラジルは大きく変わった」と言われるほど重要なものとなりました。 そして、地元のマッシャード市は一昨年、農薬メーカーや農薬を使っている農場が多いにもかかわらす、「有機コーヒー首都宣言」を出しました。中村さんはこの市の名誉市民に選ばれました。日本の小さな会社のフェアトレードの取り組みが、ブラジルの農園や地域を大きく動かしたのです。 ウインドファームは、現在ではブラジル以外にもメキシコやエクアドルの有機コーヒーをフェアトレードで輸入しています。 エクアドルの鉱山開発が進んでいる地域には、コーヒーを作ることで森を守ろうとしている人たちがいます。ウインドファームでは、1998年に彼らのコーヒーも輸入し始めました。今では、当時の4倍もの人々が活動に賛同し、コーヒーを作っているそうです。 ほかの地域からも、「自分の有機コーヒーも買い上げてほしい」と多くの要望が寄せられています。現在、ウインドファームの商品は、生協や大地を守る会、通信販売、自然食品店、福祉作業所などで販売されていますが、中村さんは何とか受け皿を広げたいと考えています。有機認証工場で製造している有機インスタントコーヒーもその試みの一つです。 中村さんは自社の活動を、日本と南米での、有機農家と消費者の提携活動だと考えています。有機コーヒーだけが広がっても、世界の環境問題や社会問題が解決できるわけではありません。しかし、持続可能な社会を作っていくために「まず事実を知ってもらうこと」と言います。「現在の貿易にはアンフェア(不公正)な状況があるからこそ、フェアトレードをアピールしなくてはならないのです。現状をまず知ることです」。 若いころは経済やビジネスを毛嫌いしていた中村さんですが、今では「経済やビジネス抜きには本当の力にならない」との信念で、本業のかたわら、「スロービジネススクール」を立ち上げ、「金儲けに走らなくても、持続可能で環境にやさしいビジネスでもやっていける」モデルづくりに力を注いでいます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 このおいしいコーヒーをぜひ多くの方に知ってほしい、中村さんの「受け皿を広げたい」という思いを少しでもお手伝いしたいと思い、イーズのショップでも、ウインドファームのコーヒー・紅茶を売らせていただくことにしました。 ウェブページに書いた商品の紹介文、長すぎて全部載せられなかったのですが、メールニュースは文字数無制限?なので、フルバージョンでお届けします。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 仕事の手を休めて。友人や家族と。自宅で。オフィスで。お店で。アウトドアで――コーヒーは、豊かな香りとともに、ほっとする時間を提供してくれますね。私も大好きです。 そして、自分だけほっとするのではなくて、そのコーヒーを作ってくれている人たちも、その地域も、地球も、未来世代も、ほっとできるようなコーヒーをいただきたいなあ、と思います。だって、自分の幸せのために、だれかがどこかでいつか悲しむことになったらいやだもの。 そう思って、コーヒーをいろいろと探していたときに出会ったのが、ウインドファームのコーヒーです。とってもおいしいです。自分や事務所で楽しむほか、あちこちに贈り物としても贈って喜ばれています。 ここでお薦めしているコーヒーは、ただおいしいだけじゃなくて、「悪循環に陥らず、好循環を創り出す」素敵なコーヒーなんですよ。ウインドファームの中村さんの書かれたものから、「なぜ、無農薬なのか。なぜ、ジャカランダ農場なのか」をご紹介します。 === 1.なぜ、無農薬なのか。 農薬を使用した場合の問題点は、大きく分けて二つあります。 一つは、農薬による環境汚染、農薬を散布する人の農薬中毒、そして農薬を使用して作った作物の残留農薬の問題があります。つまり、ジャカランダ農場のカルロスさんが言っている「農薬を多用する農業は、生産者にとっても、消費者にとっても、環境にも良くない」と言うこと。 二つめは、農薬は長い目で見ると、農場のバランスを崩してしまい結果的にはよい作物がとれなくなる、ということがあります。農薬には、除草剤(殺草剤)、殺虫剤、殺菌剤などがありますが、これらはクモやミミズをはじめとする様々な益虫やバクテリアまで殺してしまうため自然界のバランスが崩れ、害虫や病気が発生したときに、それを抑える益虫やバクテリアが少ないため被害が大きくなります。 それを抑えるためにさらに多量の農薬、あるいは強力な農薬が使用されるようになります。また、除草剤や化学肥料の使いすぎによって、日夜、土を耕しているミミズやバクテリアが減って土が硬くなり元気な作物が育たなくなると、ますます害虫が増えたり病気が出やすくなります。その為農薬の使用量が増えたり、強力な農薬を使用するという悪循環に陥ることが多くなっています。 農薬は、「短期的な利益を上げるので、ついそちらを選びたくなるが、実際には本質的な力を弱めるので長期的な利益を損なってしまう」という、システム思考でいう「うまくいかない解決策」というシステム原型(あちこちによく見られる共通するパターン)の典型例です。 この「うまくいかない解決策」のシステム原型に対する最大の解決策は......「しっかりと長期的に考えて、本質的な力を強める選択をする」ことです。つまり、悪循環に入らないこと。無農薬のコーヒーは、「悪循環に入らずに」おいしいコーヒータイムをエンジョイできる選択肢なのです。 2.なぜ、ジャカランダ農場なのか。 (1)コーヒーの味が良い (2)農場のオーナーであるカルロス・フランコさんが農場のスタッフをとても大切にしている (中略) 有機農産物の産直(提携)をやってゆく上で最も重要で、しかも時間がかかることは"いかに生産者との信頼関係を作り上げてゆくか"ということなのですが、カルロスさんの場合、個人的な利益や目先の利益で動く人ではなく"長い目で見て、みんなが幸せになるにはどうすればよいか"と考える人なので、私たちも安心して産直を育ててゆくことが出来ます。 産直で有機農産物の価格を決める場合、生産者の立場だけで考える人は「高いほどいい」、逆に消費者の立場だけで考える人は「安いほどいい」といった感じになりがちですが、カルロスさんの場合、消費者側の立場も考え、長い目で見てお互いのためになる価格、両者が永く産直を続けてゆける価格をともに考えてくれます。 カルロスさんは産直でつながる人々を単なる「消費者」ではなく「仲間」と考えています。目先の利益で動く生産者の場合、その時々で一番高く買う相手を選びます。その為時間をかけて信頼関係を作り上げる産直には向いていません。 こうして、「つながり」を大事に育てるカルロスさんに、中村さんも消費者にジャカランダ農場のことを詳しく伝えたいと考え、毎年消費者も連れて日本から農場に出かけています。そして、もっと消費者にジャカランダ農場の情報を伝えたいと、ブラジルのサンパウロ市に事務所を置き、コーヒーの生育状況や農場での出来事などの取材レポートと農作業風景の写真、ビデオなどを日本に送っています。 === 日本の消費者のビデオメッセージなどを生産者に見てもらったところ、どんな人たちが自分たちの珈琲を飲んでいるのかがわかり、その人たちがコーヒーの感想を聞かせてくれたり、メッセージを寄せてくれることに大喜びとのこと――信頼の好循環が見えるようですね! こうして「信頼の好循環」に乗って、おいしいコーヒーが日本に届きます。 さあ、あなたもぜひごいっしょに「好循環」の環のなかへ! あなたの好循環もいっしょに回り始めることでしょう。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 中村さんのおっしゃる > 農薬は長い目で見ると、農場のバランスを崩してしまい結果的にはよい作物がと > れなくなる、ということがあります。農薬には、除草剤(殺草剤)、殺虫剤、殺 > 菌剤などがありますが、これらはクモやミミズをはじめとする様々な益虫やバク > テリアまで殺してしまうため自然界のバランスが崩れ、害虫や病気が発生したと > きに、それを抑える益虫やバクテリアが少ないため被害が大きくなります。それ > を抑えるためにさらに多量の農薬、あるいは強力な農薬が使用されるようになり > ます。 という状況を、システム思考のループ図でシンプルに描いてみると、たとえば、こんなふうになります。  「悪循環」ですよね。このような悪循環に陥らず、好循環を創り出すコーヒー・紅茶をぜひどうぞ!  ええ、このループ図ももちろん、カルロスさんのコーヒーをいただきながら描いたんですよ。(^^;
 

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