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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年10月05日

「システム思考で効果的な危機対応を」〜東京・大阪・福岡でのシステム思考トレーニングコースご案内(2006.10.03)

システム思考を学ぶ
 
バラトン仲間には、システム思考を日本に広げたいという私の活動を知って、いろいろなアドバイスや情報をくれる人がたくさんいて、とても幸せです。デニスと並ぶシステム思考・システムダイナミクスの専門家の大学教授、ジョン・リチャードソンも、そのひとりです。「こんなのを書いたんだけど、読む?」と送ってくれたものを、快諾を得て、実践翻訳チームに翻訳してもらいました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「システム思考で効果的な危機対応を」 ジョン・リチャードソン、マーク・ハミルトン 素朴で美しかったアジアの海辺は、すさまじい津波に飲まれて夢も希望も砕け散った。人種で分断されたニューオーリンズはハリケーンの襲来でずたずたになり、国家で分断されたカシミールは地震でめちゃくちゃになった。フランス・パリのパティスリーからスーダン・ダルフールの砂漠の荒野まで、若者の暴動や衝突による流血の事態が広がっている。アフリカ・サハラ砂漠以南の広い地域で、エイズと大量飢餓の脅威が明らかになっており、その恐怖は一層拡大している。 これら最近のニュースになった天災と人災は、生活を破壊し、恐怖をあおり、そして政府の対応能力に対する人々の信頼を失わせるという、あまりにもよく似た結末をもたらしているが、そのほかにも何か共通点があるのではなかろうか? 国や社会や自然環境の違いを超えて、あまねく広がる不幸の数々。そこから私たちは何を学べるのだろうか? 今日の不幸を終結させ新たな不幸が起こるのを防ぐために、私たちから危機に対する新しい見方と関わり方を提案したい。「特効薬」というわけではないが、一助にはなるだろう。それには、数々の危機のシナリオを、例外的な現象としてではなく、社会、経済、環境、科学技術の各システムが複合して生じるある程度予測可能な出来事として考えるよう、考え方の再構築(あるいは再概念化)が必要だ。これらのシステムを用いれば、もっと思慮深くて統合的な政策分析を行いやすく、そこから先見の明に富む危機予測と効果の高い危機管理が生まれる。 具体的な方法として、システム思考の手法の1つ、「システム・ダイナミクス」と呼ばれる手法の考え方を紹介しよう。この手法の考え方は、ピーター・センゲの『最強組織の法則』とマルコム・グラッドウェルの『なぜあの商品は急に売れ出したのか―口コミ感染の法則』で広く知られるようになったもので、さらに厳密にはジョン・スターマンの『仮邦題:ビジネス・ダイナミクス』(Business Dynamics)に詳述されているが、災害管理、安全性の分析、および世界規模の開発政策にまたがる分野に非常に適している。 システム・ダイナミクスについては、数多くのシステムを研究対象に50年以上にわたる研究が行われている。その結果、研究対象のシステムのほぼすべてに、共通の特徴があることがわかった。中でも重要な特徴は次の通りである。 1)システムの行動パターンは、どれほど複雑なものであっても、システムの要素をつなぐ自己強化型およびバランス型のフィードバック・ループのネットワークによって、引き起こされている。 2)ジェイ・フォレスター、ジョン・スターマン、ピーター・センゲといったシステム思考の提唱者たちが熟知しているシステムの行動パターンとフィードバック・ループの関係を、ほとんどの政策決定者や一般の人々は理解していない。 3)システムの行動は、政策決定者を混乱させるばかりか、しばしば悪魔のように道を誤らせるものである。ジェイ・フォレスター博士は古典ともいえる論文で、「私たちは、社会システムの中で、介入しようとすれば失敗するようなポイントばかりに目を引かれる傾向がある」と述べている。 4)複雑なシステムは、たいていの介入や政策変更に抵抗するものである。それは、失敗に終わった多くの経営や政府の政策、開発政策を見れば明らかだ。 5)私たちが、複雑なシステムに惑わされたり抵抗されたりするのは、結果指向型のアプローチで問題解決をするよう教育されているからである。私たちは小さい頃から、結果には必ず原因があり、その原因もまた、さらに前の原因の結果であると教えられているのだ。よく使われている手法、特に統計などは、こうした欠陥のある、直線的な因果関係に基づく世界観を反映している。 システム・ダイナミクスから得られる洞察は、私たちが求めている、有望だがあまり開拓されていない政策提言への道を示してくれる。なぜ「あまり開拓されていない」のだろう? 安全性の分析や開発実務に携わる人々は多くの場合、経済学、社会学、政治科学といった分野に理論的指針を求めている。 これに対して、システムアナリストが目を向けているのは、生物学、情報科学、システム工学といった分野である。こうした分野の理論は、人体のような複雑な有機体や、宇宙ステーションのような複雑な技術、都市のような複雑な人間の組織について、説明するものである。政策介入とは、複数のフィードバック・ループを持ち、ループの優位性が色々なパターンで移り変わる複雑なシステムの長期的な行動を、効果的に動かそうとする試みなのだ。 このエッセイの冒頭で述べた天災や人災は、社会経済、環境、政治組織などの要素が絡み合って長年定着してきたシステムを揺るがすものととらえることができる。アナリストや関心の高い市民であれば、このような災害の後は、単純な対症療法的対策に陥るのではなく、過去の歴史やシステムを考察しつつバランスのとれた予防対策を練るのが良策だろう。 私たちは、20年間近くに及ぶ独自の研究で、南アジアの小国スリランカにおける紛争と発展とテロの間の重要なシステム上のつながりを詳しく検証している。それは、近著『仮邦題:汚された楽園』(Paradise Poisoned )の中にまとめられているが、この中には、アルカイダおよびアメリカの同時多発テロやイラク、アフガニスタン、カシミール、スーダンの各地で同時期に起こった危機の分析につながる教訓も豊富にある。 一例をあげると、この本は、若者の失業率の高さに関連する諸問題、さらに紛争防止と紛争後の安定化における治安維持の差し迫った重要性を強く訴えている。アメリカのイラク侵略後の政策は、どちらも無視したために悲劇的な結末をもたらし、状況はいまだに改善されていないのである。 災害と危機管理の分野でも、同様の研究を行うことは検討に値する。危機が発生する前および発生初期の短期的な対応が進んでいる間にシステムの構造を分析することは、政策決定者にとって得策といえるだろう。 問題を発生させているシステムの解決にとりかかる前に、先ずそのシステムを理解することだ。事態を悪化させるだけの非生産的な対応に走るのではなく、解決の鍵となる「レバレッジポイント」(訳注1)と「トリムタブ」(訳注2)を探し出すべきである。 21世紀に世界や地域社会が直面する複雑な問題に効果的に対処するため、私たちは、複雑な社会のシステムがどのように機能しているのか、もっと理解する必要がある。家庭や学校、会社、国家におけるリーダーとして、私たちは誰でも、「システム思考」の特訓コースを利用することができるのだ。 ~~~~~~~~~~~ ジョン・リチャードソンは、『仮邦題:汚された楽園』(Paradise Poisoned)の著者であり、35年以上にわたって、システム・モデリングとシステム開発について執筆と教育を続けている。現在は、ワシントンDCのアメリカン大学で国際開発とシステム・ダイナミクスを教授。マーク・ハミルトンは、同大学にて国際関係論の博士候補となっている。 (訳注1)レバレッジポイント:てこ(レバレッジ)のように、小さな力で大きなシステムを動かせる効果的な介入ポイント (訳注2)トリムタブ:巨大なタン. カーなどの大型船舶についている仕掛け(トリムタブ)のように、小さな力で大きなシステムの向きを変えることが出来る効果的な介入ポイント 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ジョンはとても温厚で優しい人で、いつもにこにこと我々若い?世代の活動を見守り、ともに考え学ぼうとし、アドバイスを惜しまずに提供してくれます。これからも、こういった執筆を送ってくれると言っていたので、楽しみにしています。 さて、「システム思考を多くの方々に使ってほしい」「企業でも行政でも、NGOでも教育機関でも、そして個人でも、変化に後手で対応するのではなく、変化を読み、変化を創り出す力を身につけてほしい」と活動しているチェンジ・エージェントでは、システム思考の基本的な考え方やツールを、事例を通じて実践的に身につけていくトレーニングコースを開催しています。 この秋〜冬にもコースを開催する予定です。これまでは東京のみでの開催でしたが、10月の東京に加え、11月には大阪、12月には福岡でも開催します。大阪と福岡では、これまでの速習型の半日コース(4時間)を6時間に拡大して、演習も増やしました。じっくり時間をかけて身につけていくことができます。 詳しくは下記の案内をご覧下さい。 http://change-agent.jp/news/000027.html (10月20日東京) http://change-agent.jp/news/000049.html (11月17日大阪) http://change-agent.jp/news/000050.html (12月8日福岡)  システム思考は、問題解決にもとどまらず、組織内外でのコミュニケーションにも大きな成果を発揮するのだなあ、と最近強く思います。「システム思考はコミュニケーション・ツールなのです」という紹介の仕方をすることもあるほどです。 部門横断のミーティングやステークホルダーダイアログなど、さまざまな意見を集約し、グループとしての視野を広げ、共通認識を図るにとても有効ですし、さらに、システム思考を基盤に、組織の共有ビジョンの達成に向けて、社員と組織が自律的に成長し、競争力を強化し続ける「学習する組織」の考え方は、組織戦略論上「20世紀最大のイノベーション」として位置づけられています。 ジョンも書いているように、組織にとっても個人にとっても、複雑なシステムを理解することは必須といえるでしょう。だからこそ、欧米の企業や組織では、システム思考」を必須科目としてカリキュラムに組み込んだり、役員やマネジャーたちを「システム思考」のトレーニングコースに派遣しています。 世界的に大変注目されている「システム思考」を、少しずつ日本にも伝え、広げられてうれしく思いますし、毎回の参加者のフィードバックからも手応えを感じています。スを開発、提供しました。この1年に600名を超える方々が受講されました。よろしかったらぜひごいっしょに! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ■次回トレーニングコース(東京)お申込み受付中 ◆日時 10月20日(金) 13:15-17:45(13:00開場) =>詳細はウェブページの案内をご覧ください。 http://change-agent.jp/news/000027.html ◆場所   東京都渋谷区「こどもの城」研修室906号室       (JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分) ◆コース概要 ・システム思考とは ・経営戦略演習 ・時系列変化パターングラフ―できごとではなくパターンを見る ・ループ図―システムの構造を描き出す ・システム原型―ビジネスシーンによく見られる構造 ・システムへの介入―効果的な変化を創り出す介入ポイント ◆募集人員 約25名 ◆料金 39,000円/人・回 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■大阪、福岡での「システム思考トレーニングコース」の開催が決まりました!  11月17日大阪 http://change-agent.jp/news/000049.html  12月 8日福岡 http://change-agent.jp/news/000050.html ◆日時 大阪: 2006年11月17日(金) 9:30-16:30 (9:15開場) 福岡: 2006年12月8日(金) 9:30-16:30 (9:15開場) ◆場所 大阪: 梅田スカイビル タワーウエスト22階 E1会議室     最寄り駅:JR大阪駅、阪急梅田駅など 福岡: アクロス福岡 607会議室     最寄り駅:JR博多駅、地下鉄天神駅など ◆コース概要 ・「システム思考」とは ・ツール(1)「時系列変化パターングラフ」―できごとではなくパターンを見る ・ツール(2)「ループ図」―システムの構造を描き出す ・ツール(3)「システム原型」―ビジネスシーンによく見られる構造 ・システムへの介入―効果的な変化を創り出す介入ポイント ◆募集人数 約25名 ◆料金 45,000円/人(税込) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■お申し込み・お問い合わせ (有)チェンジ・エージェント 担当 関・増田・小田 info@change-agent.jp TEL: 044-930-0012 FAX: 044-930-0013 お申し込みは、下記申し込み票を電子メールでお送りください。 =======================================================             申し込み票 2006年_月_日システム思考トレーニングコースに参加します。 ご氏名       ご所属         メールアドレス    連絡先電話番号  ※この研修コースのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。 ( ) a. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名(      ) ( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介 ( ) c. システム思考メールマガジン ( ) d. チェンジ・エージェントのウェブサイト ( ) e. チェンジ・エージェントからのメールによるお誘い ( ) f. 枝廣淳子の環境メールニュース ( ) g. 他のメールマガジンによるご案内 (          ). 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