エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2006年10月08日
日本の環境首都コンテスト・九州地区交流会のレポート(2006.10.09)
環境ネットワークくまもとの二見さんが、あるMLに投稿されていた内容を、ご本人のご快諾を得て、ご紹介します。まるで自分も参加させてもらったかのようなレポートに感謝!ですー。
環境ネットワークくまもと
http://www.kankuma.jp/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
みなさん、こんにちは。
私たち、「環境首都コンテスト全国ネットワーク」が開催する「持続可能な地域社会をつくる日本の環境首都コンテスト」も今年で6回目を迎えました。先週末は九州地区の自治体交流会も開催しましたので、その報告も兼ねてのメールです。
日本の環境首都コンテスト
http://www.kankyoshimin.org/jp/mission/ecocity/ecocap/index.html
環境先進国といわれるドイツで、環境NGOである「ドイツ環境支援協会」が11 年間継続実施した「環境首都コンテスト」が、自治体の環境対策をより活性化し、ドイツ社会のエコロジー化に大きな影響を及ぼしたと言われています。
そこで、我が国でも、近年環境自治体をめざす市区町村の動きが顕著になってきたことを受け、環境NGOで組織する「環境首都コンテスト全国ネットワ-ク」が「日本の環境首都コンテスト」を実施しています。
昨年の第5回目の総合一位は熊本県水俣市でした!
水俣病という負の遺産を乗り越え、環境都市として再生を目指している水俣市と市民のパートナーシップが高い評価につながりました。ただし、残念ながら今年も環境首都の称号を与えられる自治体は出ませんでした。
今年の首都コンテストの応募を開始しております。皆さんがお住まいの自治体にもぜひコンテスト参加を持ちかけてみてください。どうぞよろしくお願い致します〜。
http://www.kankyoshimin.org/jp/mission/ecocity/ecocap/entry6.html
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週末の9月28・29日に、大分県日田市で「日本の環境首都コンテスト・九州地区交流会」を開催しました。30日の宮崎県諸塚村のオプションツアーも含めた報告を送ります。
今回の交流会は、大分県の環境活動グループ、プラス・エコの三浦逸朗さんが中心となっての企画で、とても楽しいものとなりました。
■9月28日(木) 日田市バイオマス施設の視察
環境首都コンテスト全国ネットワークに参加している各地のNGOメンバーと、九州地区のコンテスト参加自治体職員さんとで日田バイオマス発電所の視察を行いました。
1.木質バイオマスによる発電所(民間企業)
日田には民間企業(ファーストエスコ社)により、木質バイオマスを燃料に使用した発電所(日田ウッドパワー)が建設されています。プラントの発電出力は1万2千Kwで、燃料には木材チップを年間10万トン使用します。燃料の木材チップは北部九州一円から集め、建設廃材が3分の2、残りの3分の1が製材端材とのことでした。
発電効率は30%弱ということでしたが、廃熱利用があまりされておらずちょっともったいないかなという気がします。日田は木材の集積地でもあるので、森林組合で廃熱利用の木材乾燥施設を隣接して建設してはどうかなと思いました。
以外だったのは蒸気タービンの後の冷却装置が空冷式だったことですが、プラントが高台に立地するため、大量に水を使用する水冷式には出来なかったようです。17名の従業員もほとんどが現地採用ということで、地域の雇用にも役立っていることがうかがえました。
残念だったのは、最終的な売電先が九州電力ではなかったこと。
これは九州電力がRPS法に定められた調達義務(販売電力量の0.5%は新エネルギーであること)をすでにクリアしているために売電単価を引き下げてしまい、電気を売る側としては事業として成り立たないからなのですね。
現状では、国が定めた調達水準自体が低すぎて、実際の現場においては自然エネルギーでの売電単価が買い叩かれるという結果になってしまっています。風車発電での売電単価が低く、普及のネックになっているのもこれが原因です。このあたりは、ドイツのように自然エネルギーについては高額での売電単価保証をしないと普及は思ったように進まないように思います。
2.生ゴミ等のメタン発酵発電所(日田市施設)
日田市では「日田市バイオマス資源化センター」を稼動させています。
http://iris.hita.net/~city/sihook/pdf/h18/h180701/h180701p02.pdf
ここでは、家庭用生ゴミ、事業系生ゴミ、畜産糞尿を原料にして発酵させ、発生したメタンガスを燃やして発電しています。発電出力は340Kwで、一日に80トン(生ゴミ24トン、畜産糞尿50トン、汚泥6トン)を処理できます。総事業費は9億5千万円で、自治体が所有する設備では日本一の規模になります。メタン発酵させた後の残渣は液肥と堆肥として利用され、地域の農地へ還元されることになります。
日田市では生ゴミをビニール袋に入れたまま収集しており、ゴミ投入時に機械で袋を破って生ゴミとビニールに分別していました。コンビニなどから出る事業系生ゴミも賞味期限切れの弁当などがそのまま持ち込まれていますが、ビニール分別に悲鳴を上げているようです。
生ゴミ収集に関しては、福岡県大木町などで実施されている、生ゴミだけをバケツで収集する方法が優れていますね。
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■9月29日(金) 自治体交流会(先進事例発表会)
環境首都コンテストでは、コンテスト参自治体の施策で、優れているものを「先進事例集」としてまとめています。二日目は会場を日田市市役所に移し、今回の九州地区交流会へ参加された自治体から、先進事例を発表して頂きました。
開催に先立ち、大石昭忠・日田市長が挨拶され、「このままでは日本は世界中から非難される」との危機感を表明されました。これは、日本においては京都議定書で約束したCO2の排出抑制が全く進んでいない現状を憂いてのものでした。
1.日本の首都コンテストの意義について
環境首都コンテストの主管団体である、京都のNGO「環境市民」代表理事のすぎ本育生氏により、環境首都コンテストの意義やドイツでの事例紹介などを行いました。
「持続可能な社会を作るためには、実際に人々が生活を営む基盤となる地方自治体の政策が決定的に重要である。」という言葉の裏側には、国の無策に付き合っていても現状は改善しないという意味も込められているのではないかと勝手に解釈しています。
ドイツでの事例を聞くにつれ、「なぜこれが日本で実現できていないのだろう?」と思いますが、そんな事例を日本に育てていくのもこのコンテストの大きな目的のひとつになっています。
今年の10月末から11月中旬にかけて、首都コン担当メンバーがドイツへ環境行政調査へ向かいます。当初は私もドイツ調査へ参加する予定だったのですが、最終的に仕事の都合がつかずに参加を断念しました。とても残念です。帰国後は報告会の開催なども検討したいと思います。皆さんご期待くださいね。
2.各自治体からの先進事例発表
参加自治体から先進事例を発表して頂きました。
2-1.水俣市「地産地消の給食畑」
環境マイスター称号を付与した地元農家から学校給食用の食材を調達。各課の横断連携により学校給食における自給率が上がり、環境教育などへリンクした総合的な取り組みとなった事例を紹介していただきました。
2-2.長崎市「環境負荷の少ない斜面交通システム」
坂の町長崎でのユニークな斜面交通システム(斜面エスカレーター)と、バス路線の空白地域をなくすためのコミュニティーバス運行についての交通政策を紹介していただきました。
2-3.大木町「みどりゆたかでおしゃれな農村づくり基本計画とその実行」
もうすぐ稼動する生ゴミの処理施設(メタン発酵による発電所)「くるるん」の紹介をしていただきました。発表後に生ゴミの集め方に質問が集中していましたが、10世帯に1個の割合で街角に生ゴミ回収用のバケツを設置し、週2回収集するそうです。
収集業務は民間に委託しシルバー人材センターなどの方が収集業務にあたっているそうですが、バケツは発電施設内の廃熱利用の温水で洗浄されるなど、面白い工夫がありました。
2-4.諸塚村「日本初の村ぐるみのFSC認証」
森林が基幹産業の小さな村が日本で始めて村ぐるみでFSC認証を受けました。世界水準の森林管理の認証に取り組んだ経緯や独自の住民自治組織(公民館活動)についても紹介していただきました。
2-5.日田市「自然エネルギーが揃うまち」
日田市では、風力発電、水力発電、バイオマス発電などの自然エネルギー施設があり、その紹介をして頂きました。
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■9月30日(土) 宮崎県諸塚村の視察
宮崎県諸塚村(人口2100人)では、全村森林公園 「百彩の森つくり」をすすめています。諸塚村は、日本で初めて村ぐるみでFSC森林認証を取得しました。http://www.vill.morotsuka.miyazaki.jp/
1.古民家宿泊施
村外からの観光客の宿泊施設として、集落にある古民家を改修して整備してあります。
古民家のため、囲炉裏などもあり、とても雰囲気が良かったです。九州山地の山奥のため、夜は天の川まではっきりと見える満天の星空でした。露天風呂も絶景で、コンビニもなく携帯電話も通じないという不便さが逆にとても新鮮でした。
2.FSC認証・諸塚木材加工センター
FSC森林認証を受けてからは市場からの引き合いがとても多くなったとのことで、今後市場価格が上がることが期待されます。また、九州地区内の大規模集成材工場が稼動したことによる木材価格の値動きの話など、不気味?な話を伺うことが出来ました。
産直住宅事業もすすめており、建築士や住宅施主自らが実際に諸塚村を訪れて山や木材を見て家を建てるという形が出来あがっていました。
諸塚村では「定住人口の増加よりも、交流人口の増加を」というスローガンがありましたが、環境にやさしく、安心・安全な木材の供給を通じて、人が交流するという良い循環が生まれつつあるのではないかと思います。
3.モザイク林相
村の95%は森林で、針葉樹・広葉樹・照葉樹が混交したモザイク林相が見事でした。 70%は針葉樹で、年間3万立方メートルを生産します。
シイタケ栽培が非常に盛んで、出産前の牛を山林に放牧した畜産も行われています。このような複合的な産業はモザイク林ならでは。杉・ヒノキ一辺倒の単相林では不可能だったでしょう。
4.大豆応援倶楽部
今回はヨモギだんご作りを体験。地域のおばちゃんたちが手作りした味噌や柚子胡椒は添加物など使っておらず、味も絶品でした。
番外:
山は良かったのですが、残念ながら川はとてもひどい状態でした。耳川はダムを5つも抱えており、川の色は濁った乳青色。地元の人に伺いましたが、一年中あの色だそうです。球磨川・川辺川もあんな川になって欲しくないなと思ってしまいました。
以上、簡単な参加報告でした。