昨日は、お知らせとはいえ、とびきり長いメールニュースを配信しましたので、今日は短く、ちょっと雑談風に。(^^;
数年前ですが、東京ガスの社内報にエッセイを寄稿させていただいたことがあります。了解をいただきましたので、ご紹介します。
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「東京ガスは、何屋さんになるの?」
枝廣淳子
東京ガスは、何屋さんになるのかなぁ?
シェルは「石油屋さん」をやめて、「エネルギー屋さん」になると宣言し、着々とビジネスを変えている。フォードはそのうち「自動車屋さん」をやめて、「モビリティ(機動性)屋さん」になる、といっている。東京ガスは、何屋さんになるのかなぁ?
「天然ガスは、石炭や石油に比べて、二酸化炭素(CO2) の発生量が少ないため地球温暖化の防止に役立つ」といまはアピールしているけど、「マシ」は「マシ」でしかない。真の解決策ではないのだから、まさかずっとガスを売り続けるわけじゃないよねぇ?
それに、私も含めて、お客さんがほしいのは、別に「ガス」じゃないんだよなぁ。東京ガスは、「今月はエダヒロさんにガスを○立法メートル売りました」と思っているかもしれないけど、私がお金を払っているのは、温かいお風呂に入れたり、おいしい料理を作れたりすることに対してであって、別に「ガス」を買いたいワケじゃないんだよなぁ。
東京ガスは何を売る会社なのかなぁ?
ガスでも電気でも水素でも、何でもいいんだけど、私がほしいのは、(1)安全に使えて、(2)使い方が簡単で、(3)地球環境に悪影響を与えなくて、 (4)照らす、温める、煮炊きするという、必要な機能を提供してくれるエネルギー。そして、使えば使うほど、地球環境を修復してくれるような、そんなエネルギーだったら、どんどん買っちゃう。
そこで、東京ガスのフロンティア研究所で進めている「雑草水素システム」に前から注目している。去年夏にこの研究を知って、自分の発行している環境メールニュースで紹介し、こう結んだのだった。
「暑い夏に汗をかきながら庭の草むしりをしていらっしゃる方もいるでしょう。5年か10年後には、「草むしり」なんて古語になっていて、『お庭で水素の原料摘みですか〜? 精が出ますなぁ』な〜んてね(^^;)。」
雑草や間伐材や下水汚泥や廃棄物など、いまは「お金を払って処分」しているものからエネルギーが取り出せる。金食い虫が金生み虫に変身する、大きなビジネスチャンスがある。東京ガスはちゃんと将来を見ているんだなぁ。(ホント?)
私の環境メールニュースは、いまでは5000人近くが読んでくれているのだけど、「情報は出せば出すほど、集まってくる!」ことを実感している。自分の情報や知識を広く役立てもらえば、という人がいてくれるのだ。
雑草水素システムについても、私の知りたかったバイオマスエネルギーについても、情報を整理して提供してくれたのは、東京ガスのある社員の方だ。この人の所属がたまたま東京ガスだった、というだけで、私の東京ガスへの評価は高いのである。
この夏に、日本の環境情報を英語で世界に発信するJapan forSustainability(JFS)というNGOをはじめた。持続可能に運営できるように、東京ガスも支援して下さるという。ちゃんと東京ガスの進んだ取り組み、世界に届けますからね! どんどん進めて下さいね!
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ちなみに、最後のパラグラフから、2002年に書いたことがわかりました。(^^;
私はよく、「その目的はなに?」と、自分にも、まわりの人にも、講演を聞いてくれる人にも、尋ねます。本にも書いたことがあります。とても大事なことだと思っているので、本から一部、ご紹介します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『7分後、7年後の幸せなあなたへ――エコから学ぶ「自分マネジメント術」』
<「目的」とはなに?>
わが家にもありますが、多くのトイレに暖房つき便座がついていますよね。一日に何回か座った時にヒヤッとしないために、一日中電気をつけているのです。何となくホンワカと温かいだけなので、それほど電気を使っていないような気がしますが、暖房つき便座を一日中つけていると、ドライヤーを強にして30分つけっぱなしにするのと同じだけの電気を使うそうです。「ドライヤーを強にして30分」なんて、もったいなくて置いておけないですよね。
そもそも、どうして私たちは暖房つき便座を使うのでしょう? 座った時にヒヤっとしないためですね。目的は「座ったときにヒヤッとしないこと」です。この目的を満たすひとつの方法が、電気を使って便座をいつも暖めておく暖房つき便座なのです。
ドライヤーの話にショックを受けた私は、「でもこの目的を満たす方法は、何もこれひとつじゃないよなぁ」と思いました。繰り返しになりますが、目的は電気を使うことではありません。「座ったときヒヤッとしないこと」なのです。
「そうだ! 便座カバーを使えばいいんだ!」そうしたら、座った時にヒヤッとしません。目的は満たせて、しかも電気は使わなくてすみます。洗濯の手間はかかりますけれど......。そこで、暖房つき便座の電源を切って、便座カバーに替えました。それから、いろいろなものについて「これを使っているのは何の目的のためだっけ?」と考えてみるようになりました。
何でもそうですが、「目的」に対して、「方法」はいろいろとあります。自分がいちばんいいと思う方法を選べばいいのです。ただ、自分で意識しないと、「目的=手段」になってしまいます。たとえば、大部分の人は「座ったときヒヤッとしないという目的を満たすひとつの方法としてつけているのだ」と意識することなく、暖房つき便座の電源を入れているでしょう。
でも「目的」と「方法」を分けて意識できるようになると、「これしかない」という思いから解放されて、自由になれます。「その目的をかなえるには、いろいろな方法があるんだ。自分でいちばんいい方法を選べばいいんだ。思ったようにいかなければ、方法を変えればいいんだ」と思えるようになるからです。
心を軽くしてくれた「気づき」がもうひとつありました。私は冬になると食器洗いする時によくお湯を使います。同じ食器を洗っていても、夏は使わないのに冬はお湯を使う。別に冬に油物が増えるわけじゃないのに、どうしてかな?と考えてみました。「あ、そうか、手が冷たいことがイヤだから、冬はすぐお湯を出しちゃうんだな」とわかりました。
お湯を使う目的は「手が冷たくならないこと」だったのですね。じゃあ、お湯を使わないで手を冷たくしない方法はないかな?と考えてみる。同じ目的をかなえる別の方法はないかな?ということです。
「そうだ、ゴムの手袋をはめればいい!」裏起毛の手袋なら、冬でも水の冷たさは全く感じません。こうして、油物のお皿で本当にお湯が必要な時以外は、冬も水で洗えるようになりました。
この代わりの方法のことを「乗り換える舟」と言うことがあります。二酸化炭素を出して地球温暖化が進むから、瞬間湯沸器を使ってはいけませんと言われると、みんな困ってしまいますが、「瞬間湯沸器を使わなくても、ゴム手袋をすれば冷たくないですよ」と言えば舟を乗り換えられますよね。
語学や資格の勉強でも、仕事のやり方でも何でもそうですが、「いまやっている方法」が目的をかなえる唯一無二の方法だと思わないこと。自分をしばらないこと。「これでいいのかな?」と思うようなことがあったら、
ステップ1:それをやっている目的は何かな?と考える。
ステップ2:その目的をかなえる方法をできるだけたくさん考えてみる。
ステップ3:そのなかで、今の自分にいちばんフィットしそうなものをやってみる。
ステップ4:うまくいかなかったら、方法を変えてみる。
「この方法しかない」と無理にしがみついて苦労したりつらい思いをしたり、たまたまその方法がうまくいかないからといって、「どうせ自分にはできないんだ」と目的そのものまであきらめたりする必要はないのです。目的は目的。手段はあくまで手段です。かなえたいのは手段ではなく、目的であることをお忘れなきよう!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「目的と手段」を意識しながら、フットプリントも心も軽く生きたいですね。
「自分のビジョンを描き、自分マネジメントシステムを身につける」という個人向けのコースをこの3年ほど実施しています。
「目的と手段」を明確に区別するということは、環境に対する負荷も、自分に対する負荷もラクにしてくれる点では、同じなんだよなあ、、、とよく思います。
「目的と手段」にかぎらず、環境負荷軽減+ストレス退治に役立つ考え方や気づきはたくさんあります。そのような「環境+自分マネジメント」のどちらにも使える考え方や知恵をまとめた本が、この
『7分後、7年後の幸せなあなたへ――エコから学ぶ「自分マネジメント術」』
(朝日新聞社)
です。
> 7分後、7年後の自分が見えますか? 目標を達成したいけれど、「時間がない!」
> 「近道が見つからない!」「一人でがんばっても中途半端で終わってしまう......」
> とあきらめていませんか? 毎日の小さな選択の積み重ねで、人生も環境問題も、
> ぐんぐん前進、解決できる! 自分とじょうずにつきあいながら、もっと幸せな
> 自分になる=「自分マネジメント」のヒントや刺激をご紹介します。
ほんとうは、『人生に必要な知恵はすべてエコから学んだ』という書名にしようかと思っていました。(^^;
最近「この本がいちばん好きです」と言って下さる方がいらしたので、うれしくなって自分でも引っ張り出したところです。
ご参考まで、本の目次です。
はじめに
Ⅰ 人生は選択の連続である
ちりつも大作戦
タダより高いものはない?
わが家の自給率アップ作戦
人生は選択の連続である
「知っている」より「行動する」こと
エコライフのキーワード
お金の流れを変えよう!
三位一体でぐんぐん進める!
Ⅱ 心軽やかに生きるコツ
シェアリングで軽やかな生活を手に入れる
「松」「竹」「梅」方式でメリハリのある時間を過ごす
あの人に「ウン」と言わせる技術
「いのち」に規格はいらない
まとめて評価しないこと
モトから絶たなきゃダメなものもある
キーワードは「デカップル」
いったん決めたら!ではなく
ベター・ザン・ナッシングで行こう!
英語にならない「もったいない」
Ⅲ 「スローライフ」ってなあに?
スローライフってなあに?
あなたの幸せの商品依存率は?
時間がかかることはイケナイこと?
成長しつづけることがいいワケじゃない
キャンドル・モーニングとろうそくの流れ買い
いち抜〜けた!
山菜取りのルール
自然に学ぶ
Ⅳ すぐに役立つエダヒロの知恵
おひさまパワーは偉大なり
わが家の台所事情
小さいものは小さいなりに
新幹線のなかで開くマイ弁当箱
「目的」はなに?
整理整頓の鍵は「手元分別」
おせち料理のトリを飾る
限定版の個人通貨を作ってみました
エダヒロ流ゴミ削減術
Ⅴ 視点を変えると解決策が見えてくる
バックキャスティングで進もう
どのびんでもいいじゃない?
目に見えないところも考えに入れて評価する
ほしいのは、モノではない
むやみにばらまくな〜!
しくみ作りの効果
あとのことを考えてからはじめる
だれかが払っている
ビジョンもしくみもない!
あたりまえの世界から一歩踏み出そう
つながりを取り戻すことこそが解決策
Ⅵ 目に見えないつながりを想像してみよう
いま・ここ
目に見えるもの、見えないもの
自分の心とつながること
未来は現在からは見えない
もう一度、地球とつながってみよう
ハチドリになろう!
あとがき