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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年01月09日

IMS:Institute of Marketing for Sustainability の活動を始めます(2007.01.08)

コミュニケーション
反響BEST10
 
みなさま、あけましておめでとうございます〜。 今年もどうぞよろしくお願いします。 1999年11月に始めたこのメールニュース、いつのまにか7年も続いています。いつも(適度な?)おつきあいをありがとうございます。私はまえから「自分の人生のピークは70歳代にもっていくつもり」と言っていましたが、先日「80歳代」に修正しましたので、あと40年ほど、どうぞおつきあいのほどを。(^^; 年末から年初にかけて、たっぷり時間をかけ、心ゆくまで(?)、今後やっていきたいことをじっくり考えていました。その結果、新しい枠組みで活動を展開することにしました!(新しい会社や組織は作りません、念のため。^^;) 5年半前に出会ったシステム思考を広げるための会社を作ったのが2年まえでした。今回は、1年半前にバラトン合宿で思いつき、アランに「やっぱりそうきたね、がんばってね」といわれた「IMS」という思いつきを、いよいよ形にしていこうと思っています。(これまでも部分的に試行錯誤でやってきますが) まず、そこに至る問題意識をお話ししようと思います。 温暖化が顕著な例ですが、現在私たちが直面している地球環境問題は「時間との戦い」だと思っています。 もし時間が無限にあったら、ひとりひとりの意識を変えたり教育したりして、環境にやさしい暮らしや社会にゆっくりと変えていき、問題を解決することができるでしょう。 でも、残念ながら、残された時間は有限です。私たちや社会・経済が「このままではだめだ」と口ではいいながらも実質的には変わっていかないあいだに、残り時間はどんどんと少なくなっているのです。 たとえば、システム思考的に考えたときに、温暖化の問題の最も恐ろしいところは、自己強化型のフィードバック・ループがいくつも重なっていることです。たとえば、温暖化の進行に伴って、南極や北極、世界中の氷河などで、氷がどんどん解けているのは、日々のニュースでもご存じのとおりです。 氷が溶けるということは、地表の白い部分が減り、黒い表面が増えるということです。ご存じのように、白は光を反射するが、黒は光を吸収しますから、氷が溶けると、太陽の光が入ってきたときに、反射されずに吸収される熱が増えることになります(これを「アルベド効果」と呼びます)。 そうすると、熱を吸収すして温度が上がるので、さらに氷が解けていきます。すると、黒い地表がますます増えるので、ますます吸収される熱が増える......これは、氷がどんどん解けてゆく自己強化型フィードバック・ループの構造なのです。 また、温暖化が進むと、シベリアにあるメタンをたくさん抱え込んでいる永久凍土も解けます(すでに解け始めているといわれます)。永久凍土が解けると、それまで土中に埋まっていたメタンガスが大気中に放出されます。メタンガスは、二酸化炭素の23倍もの温室効果を有するガスなので、ますます温暖化が進み、ますます永久凍土が解けることになります。ここにも自己強化型ループがあるのです。 温暖化のシステムには、このほかにもたくさんの「ますます」という言葉で表される自己強化型フィードバック・ループが存在しています。この構造が、いったん望ましくない方向に向かって動き始めると、いわゆる「悪循環」がたくさん重なった状況となります。どれかひとつにスイッチが入ってしまうと、全部の悪循環が回り始め、互いに加速し合い、あっという間に大変な事態になってしまうのです。 温暖化というと、私たちは何となくなめらかに温度が上がっていくような線形のイメージを持っていますが、悪循環のスイッチがパタパタと入ってしまうと、実際には「非線形的」に変化していくでしょう。 もうひとつの問題は、システムの特徴である「時間的な遅れ」です。たとえば、今日、二酸化炭素を出すのをやめたとしても温暖化は止まりません。今日出している二酸化炭素は、30年後の温度を決めるといわれているほど、気候システムには時間的な遅れがあるのです。 また、温暖化を引き起こしているエネルギーシステムや産業システムにも時間的な遅れがあります。「このままではいけない」「何とかしなければいけない」とだれかが思って活動を始めても、たとえば、社内で話を通すまでには、時間がかかります。決定から投資、設備導入までにも、時間的な遅れが存在します。 つまり、システムのそこここに、このような時間的な遅れが存在しているため、「変えなくては」と思ってから、大きく舵を切るまで、そして、実際に船の進行方向が変わるまで、かなりの時間がかかってしまうのです(これはだれが悪い、というのではなく、システムの特性です)。 つまり、温暖化の問題は、フィードバック・ループと時間的遅れという、どのシステムにも見られる特徴ゆえに、このままでは非線形に悪化してしまうとおそれているのです。線形の変化なら間に合ったはずの「残り時間」も、非線形の変化にはとうてい間に合わなくなってしまいます。 では、そういう状況に対して何が必要か? 「非線形の行動変化のうねり」が必要だと考えています。 意識だけではなく、口だけではなく、目標だけではなく、「行動」の変化です。なぜなら、地球への負荷を与えるのは、だれがどう思うか、考えるかではなく、だえがどう行動するか(または行動しないか)だからです。 そして、この行動の変化の広がりも、線形では間に合いません。相手である問題は非線形でやってきますから、こちらも「非線形」でうねりと広がりを作っていかなくては、負けてしまいます。 昨年11月にスイスで開催されたIUCN(国際自然保護連合)主催の"Exploring Deep Change Processes: Learning From Around the World"Meetingという国際会議でのプレゼンテーションで、私は以下の2つが必要である、として、自分の経験と考えていることを話しました。 Two challenges
In order to create waves of changes toward sustainability, we need
- Art of creating deep changes
- Art of diffusing change mechanisms 2つの課題
持続可能性への変化のうねりを創り出すために、
・深い変化を創り出すアート
・変化を創り出すしくみを普及するアート
が必要である 欧米の参加者は(アジアからは私だけでした)、「art というのがいいねえ、自分たちなら skill とかtechnologies といいそうだけど、art だよねぇ」と。 そう、やっぱりそうなんだよねぇ、と思っている中で、前からいろいろと考えていた「やりたいこと」「やらなくてはならないと思っていたこと」がつながり、まとまってきました。2005年9月のバラトン合宿で、アランに「やってみようかと思っているんだけど」と話した、IMSをいまこそ立ち上げよう!  IMS とは、Institute of Marketing for Sustainability です。
(私が勝手に作った名前です、念のため。^^;) 環境や持続可能性に役立つ情報も知見も、製品もサービスも、考え方も活動も、いまはたくさん存在しています。あちこちで、「こうしたほうがいい」「これを使った方がいい」「この取り組みが必要だ」と、新しいエコ製品やサービス、環境活動や思想が誕生しています。 このような「考えつく人」は、イノベーターと呼ばれます。イノベーション(新しい考えや製品、サービス、取り組みなど)をたくさんの人に買ってもらい、参加してもらい、わかってもらうには、「考えつく人」だけでは足りません。受け取り手に受け取れる説得力のある形で「伝える人」が必要なのですよね。しかも、先述したように「情報を伝える」だけではなく、それによって行動変容が起きるかどうかが肝要です。(「知っていてもやらない」ではだめなのです) というわけで、
・深い変化を創り出すアート
・変化を創り出すしくみを普及するアート
を研究開発し、実証実践していく場として、IMSをつくることにしました。 どうやったら環境や持続可能性について、もっと広くもっと強く、人々の行動変容につなげられるようコミュニケーションできるか、非線形の悪化に負けない、非線形の行動変化のうねりを創り出せるかを、変化研究・実践していきます。 具体的には、いまのところ、以下の3本柱での活動を考えています。 (1)骨太の哲学:
持続可能性に関する自分なりの思想・枠組みを身につけ、ぶれない(しかし柔軟性のある)変化の方向性を考えられる力 (2)深い変化:
知識レベルではなく、行動・メンタルモデルのレベルでの変化を創り出すアート
①個人レベル
②組織・社会レベル (3)広げるためのしくみやアート・スキル
効果的・効率的に伝えるためのスキルとともに、これから主流となってくるであろう「共に創り出すためのコミュニケーション」のアート・スキル
①どう伝えるか
②どう共創するか そして、これらの実践のフィールドとして、温暖化や森林問題などに取り組む予定です。 まずは、研究(勉強)です。システム思考はもちろんですが、その組織への応用でもある「学習する組織」、心理学をはじめとする行動科学、イノベーション普及理論、戦略的コミュニケーション、創り出すためのダイアログ(対話)という新しい手法など、研究課題はいっぱいあります〜。 すでに開発を進めているものもあり、春から、実践編のワークショップやセミナーを開催していく予定です。どうぞお楽しみに! さて、99年に始めたこのメールニュース、2000年には1年間に311本、01年は257本、02年180本、03年146本、04年114本、05年は104本、去年は106本でした。ほぼ安定してきたかな?(^^; 今年もどんなわくわくやドキドキをお届けできるか、楽しみにしています。
ゆるゆるとどうぞよろしくお願いします〜。
 

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