ホーム > 環境メールニュース > 日本は2050年までにCO2を70%削減できる!(2007.02.20)

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年02月21日

日本は2050年までにCO2を70%削減できる!(2007.02.20)

温暖化
 

前号でお届けした「気候の安定化に向けて直ちに行動を!- 科学者からの国民への緊急メッセージ」に対して、以下のようなメールをいただき、とてもうれしく思いました。

> 弊社及び従業員とその家族の意識と行動が更に変わることを祈って
> Enviro-News from Junko Edahiro No. 1292 (2007.02.16)  を、
> グループ全従業員(約3800名)に社内メールで転送しました。


ほかにも、メールでの転送以外のmixiやウェブサイトへの転載の依頼をたくさんいただいています。私のメールニュースは、ほかの方のコメントや執筆を引用させてもらっているもの以外、つまり私の考えたことや公の情報の部分は、確認していただかなくても、転載・転送はどしどしどうぞ。(ほかの方のコメントや執筆の引用がある場合は、確認しますので、ご相談ください)

また、メールニュースの最新20本は、つねにウェブ上に載せてあります。

温暖化に関しては、「環境メールニュースから」の「温暖化」コーナーに蓄積していきますので、いつでもごらんいただけます。

温暖化をめぐる最新情報をほぼ毎日お伝えしている温「断」化コーナーはこちらです。

ちなみに、今日アップされた記事の見出しは、以下のとおりです。

・ゴア氏ら、温暖化キャンペーン「SOS」を立ち上げ
・フィンランド議会でWWFがエネルギー政策を提言
・世界気象機関、アフリカ諸国の気候変動対策支援を強化
・カナダBC州首相「温室効果ガス排出量を2020年までに現行より33%削減」


さて、「我が国が、2050年までに主要な温室効果ガスであるCO2を70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」という、研究者たちによる力強い報告書が出ました。ご紹介します。希望を失う必要はない--前号と同じく、こちらもぜひ、あちこちで伝えたり、使ったりして下さい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト
「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ

〜2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討〜
(環境省記者クラブ、筑波研究学園都市記者会同時発表)


環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究プロジェクトとして、2004年にスタートした「脱温暖化2050プロジェクト」は今年度で前期研究期間を終了することから、これまでの研究成果を本日、別添の成果報告として公表します。

本成果報告は「我が国が、2050年までに主要な温室効果ガスであるCO2を70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」と結論づけています。

「脱温暖化2050プロジェクト」は、技術イノベーションと住みやすい街づくり等社会そのものを変革するような社会イノベーションを織り込んだ2050年の望ましい将来を想定し、それを実現するための道筋を考える、いわゆる「バックキャスティング」に基づいたシナリオアプローチを採用し、まず、2050年における我が国の削減ポテンシャルを推測しています。

本報告では、本研究プロジェクトの中核である「2050日本低炭素社会プロジェクトチーム」(国立環境研究所・京都大学・立命館大学・東京工業大学・みずほ情報総研(株))が中心となってとりまとめました。

1.プロジェクトの概要
(1)プロジェクト名:
「脱温暖化社会に向けた中長期的政策オプションの多面的かつ総合的な評価・予測・立案手法の確立に関する総合研究プロジェクト」
(脱温暖化2050プロジェクト)
(2)研究期間 前期:2004〜2006年度、後期:2007〜2008年度
(3)研究プロジェクトリーダー:国立環境研究所 理事 西岡秀三
(4)研究参加機関
国立環境研究所、京都大学、立命館大学、滋賀大学、文教大学、神戸大学、東京工業大学、青山学院大学、東京大学、(株)日建設計、成蹊大学、東京理科大学、日本電気(株)、富士通(株)、日本電信電話(株)、産業技術総合研究所、筑波大学、早稲田大学、名古屋大学から約60名の研究者が参画
(5)研究予算 2006年度:約2.2億円 (2004〜2006年度予算額累積:5.2億円)
(6)研究の概要
脱温暖化2050プロジェクトは、地球環境研究総合推進費により、国立環境研究所が中心となって2004年度から実施。日本における中長期脱温暖化対策シナリオを構築するために、技術・社会イノベーション統合研究を行い、2050年までを見越した日本の温室効果ガス削減のシナリオとそれに至る環境政策の方向性を提示するもの。

技術・制度・社会システム等を横断した整合性のある実現性の高い中長期脱温暖化政策策定に貢献。また、経済発展と両立した低炭素社会に到る道筋を提言することで研究者以外の人々の低炭素社会政策への関心を高め、社会システム・ライフスタイルの改善に役立つよう情報を発信する。(http://2050.nies.go.jp/index.html)

2.中間報告の要点
背景:
・ 気候の安定のためには、世界の温室効果ガス排出を2050年までに現在の50%以下にする必要がある。
・ 一人あたり排出量の大きい先進国は、大幅な削減が求められうる。日本は、2050年までに1990年に比べて60〜80%の削減が必要とみられる。
・ これを踏まえて、本研究では、日本での主要な温室効果ガスであるCO2を2050年の時点で、1990年比で70%削減する可能性とそのコストについて、エネルギーの需要・供給面から検討。

結論:
<削減可能性とそのコスト>
・ CO2排出量70%削減は、エネルギー需要の40〜45%削減とエネルギー供給の低炭素化によって、可能となる。需要側のエネルギー削減は、一部の部門でエネルギー需要増があるものの、人口減や合理的なエネルギー利用によるエネルギー需要減、需要側でのエネルギー効率改善で可能となる。
・ エネルギー供給側では、低炭素エネルギー源の適切な選択(炭素隔離貯留も一部考慮)とエネルギー効率の改善の組み合わせで、CO2排出量70%削減が図られる。
・ 2050年CO2排出量70%削減に関わる技術の直接費用は、年間約6兆7千億円〜9兆8千億円である。これは想定される2050年のGDPの約1%程度と見られる。なお、必ずしも温暖化対策が主目的ではない、国際競争力強化、将来の安全・安心で住みやすい街づくり、エネルギー安全保障等のために実施されるインフラ投資等の対策コストは含んでいない。

<分野別対策>
各部門でのエネルギー需要量削減率(2000年比)は以下のように見積もられる。
・ 産業部門:構造転換と省エネルギー技術導入等で20〜40%。
・ 運輸旅客部門:適切な国土利用、エネルギー効率、炭素強度改善等で80%。
・ 運輸貨物部門:輸送システムの効率化、輸送機器のエネルギー効率改善等で60〜70%。
・ 家庭部門:利便性の高い居住空間と省エネルギー性能が両立した住宅への誘導で50%。
・ 業務部門:快適なサービス空間/働きやすいオフィスと省エネ機器の効率改善で40%。
<長期政策の必要性>
・ 今のままの高炭素排出インフラへの投資を継続しないために、早期に低炭素社会のイメージを共有し、転換に時間のかかる国土設計、都市構造、建築物、産業構造、技術開発等に関する長期戦略を立て、計画的に技術・社会イノベーションを実現させる必要がある。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この報告書は、国立環境研究所のホームページまたは脱温暖化2050研究プロジェクトのホームページでご覧いただけます。

この報告書の背景説明を、プロジェクトリーダーの西岡秀三氏(国立環境研究所理事)がなさっているものも、とても大事なポイントが入っていますので、ご紹介しますね。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【国としての腹づもりを持つ】:
2007年2月2日のIPCC第一作業部会報告書で伝えられたように、地球温暖化の進行は明白で早急な対策が必要です。UNFCCCでは、京都議定書以降の取り組みに関した話し合いが進みつつあります。欧州諸国は、工業化以前から2℃の上昇を危機ラインとした削減計画を目標として各国の削減計画を作成しつつあり、交渉ではそれぞれの削減可能性を腹に持って臨むことになります。

また、低炭素社会突入を前提とした技術競争や炭素市場の構築で世界をリードする腹づもりで、排ガス規制や市場形成で世界に働きかけています。アメリカや途上国が入らないから何もしないという姿勢では、日本の産業技術は世界に後れをとりますし、いまや米国や中国・インドも大きく低炭素社会に向けて変わろうとしています。

京都議定書の約束交渉において、日本は十分な腹づもり不足で交渉に臨み、満足しないままの結果に終わっています。京都では京都メカニズムや森林吸収のような融通策が提案されましたが、2050年にはもう中国・インドも自国の削減に精一杯でしょう。日本は今ここで、いったい自分たちはどれだけの削減ポテンシャルが自国であるのかの見極めをしておく必要があるのです。

この研究は、こうした時代背景をふまえ「いったい日本は国際社会から要請されるであろう大幅削減が可能なのだろうか、どのようにすればそれが達成できるのだろうか」の問いに答えようとするもので、今後国を挙げてなすべき低炭素社会構築に参考になることと考えております。早めに向かうべき社会像を共有し、国民各層がそれぞれに取り組むことが今必要です。

【60人の研究者による分野横断的総合研究】:
2004年から始まったこの研究は、国立環境研究所と京都大学が中核となって、日本の大学・企業関連研究者60人の参加で行っています。研究の中核は「温暖化とエネルギーを統合した一連の統合評価モデル」を用いたシナリオ研究であり、削減必要量の検討、削減のための技術選択、エネルギー選択、そしてその経済性検討さらには投資の道筋の検討を行います。

都市計画、国土利用、交通システムなどの専門家が、物理的な配置や個別技術の選択に参加しており、環境面のみならず、エネルギー、産業、国土計画のような幅広い分野を視野に入れた総合的研究です。

今回はまだ、2050年時点での可能性検討の段階ですが、今後はさらに投資の手順や経済評価、誘導するための政策評価へと進む予定です。

「低炭素社会」は、「低炭素排出で安定した気候のもとでの豊かで持続可能な社会」を意味します。英国では「低炭素経済」といっておりましたが、われわれはより広く社会全体のイノベーションを必要とするとの観点から、「低炭素社会」といっております。最近ではStern Reviewにも、Low Carbon Societyという表現が出てきました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


昨日、札幌で開催された「システム思考で考える温暖化セミナー」にも、定員80名のところ、120名近い方々が参加され、関心の高まりと広がりを感じました。そのセミナーでも、「最新の情報です」とこの報告書の要点をご紹介しました。

バックキャスティングで、「向かうべき社会像」を描き、共有し、そしてそれぞれがそれぞれの立場で取り組んでいくこと--そうしたら、望ましい変化の勢いも加速してくることでしょう。

そうして、地球のあちこちで起こりはじめている「悪循環」に負けない勢いで、「好循環」を広げ、強めていければ、と願ってます。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

今後の講演・セミナー等の予定
(※お問い合わせをよくいただくので、開催日順にまとめました)

★3月21日
「システム思考でエコな商品・アイディアを広げるマーケティング講座」
★4月14〜15日
「一年の計を立て、自分マネジメントのしくみをつくる」ワークショップ
※キャンセル待ちでの受付になります
★4月18日
ビジネス向け「システム思考トレーニングコース」
★4月〜9月(4月28日開講)
「ビジョンを描き、自分マネジメントシステムを身につける」6ヶ月コース

\ ぜひご登録ください! /

枝廣淳子の環境メールニュース(不定期・無料) 登録/解除はこちら

25年以上にわたり国内外の環境情報や知見を
提供し続けている『枝廣淳子の環境メールニュース』

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ