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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年03月13日

「IPPC/WG1第4次評価報告書―温暖化の現実と予測に関する確実な先端知見―」〜温暖化について考えるべきことを考える会(2007.03.12)

温暖化
 
3月7日、「環境を考える経済人の会21」の2006年度第8回朝食会に参加してきました。独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターの近藤洋輝氏をお迎えし、「IPPC/WG1第4次評価報告書―温暖化の現実と予測に関する確実な先端知見―」のお話を聞きました。
http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/ 朝食会の議事録は、上記のウェブサイトに掲載されますが、近藤氏より朝食会でのお話を、メールニュースでお知らせすることにご快諾いただきましたので、私の聞き取りバージョンですが、お伝えします。IPCCにかかわっていらっしゃる研究者の立場からの報告です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2月初めに、IPCC第4次評価報告書が出ました。これは、3つある作業部会のうち、第1作業部会「自然科学的根拠」の報告書で、最終日は夜中の1時まで議論をしました。 このあと、4月初めに第2作業部会「影響・適応・脆弱性」の報告が、5月初めに第3作業部会「緩和策」の報告書が、統合報告書は11月中旬に出ることになっています。 IPCCは、世界気象機関と国連環境計画が設立したもので、総会の下に、いま言った3つの作業部会とインベントリー・タスクフォースが置かれています。それぞれ共同議長が2名ずつ、1名は先進国から、1名は発展途上国から選出されています。 第1作業部会の先進国側の共同議長は米国、第2作業部会は英国、第3作業部会はオランダ、インベントリー・タスクフォースの共同議長は日本が務めています。(組織図については、たとえばここにあります。 http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc_tar/spm.htm) IPCCの評価報告書は今回が第4次ですが、これまでの報告書で温暖化に関するメッセージがどのように変わってきたのかを見てみます。 1990年の第1次評価報告書では、「人為起源の温室効果ガスは、気候変化を生じさせる恐れがある」と述べていました。95年の第2次評価報告書では、「地球の気候システムに対する検出可能な人為的影響が示唆される」となっています。 2001年の第3次評価報告書では、「温暖化は温室効果ガス濃度の増加によるものであった可能性が高い」とされており、この時の「可能性が高い」という英語の原文は"likely"という単語で、66〜90%の確からしさとされています。 そして今回の2007年第4次評価報告書では、「人為起源の温室効果ガスの増加のほとんどが温暖化の原因であった可能性がかなり高い」。ここでは"very likely"という言葉で、90〜95%の確からしさとされています。 世界の平均地上気温、海面水位、北半球の積雪面積のグラフは、どれも明らかな気温上昇、水位上昇、積雪面積の減少を示しており、「気候システムの温暖化には疑う余地がない」と報告されています。 世界平均地上気温の変化を見ると、1906年〜2005年までの100年間の気温上昇は0.74℃でした。前回の報告時の1900年〜2000年の100年間の気温上昇は0.6℃。そして最近の50年間の気温上昇は、10年間に0.13℃ですから、100年間にすると1.3℃。つまり100年間の気温上昇は0.6℃、0.74℃、1.3℃と加速していることがわかります。 世界平均の海面水位も同様です。20世紀中の海面上昇は、年間1.7ミリと推定されていますが、1961年〜2003年は年間1.8ミリ、1993年〜2003年は年間3.1ミリと、やはり加速しています。この加速には、グリーンランドと南極の氷床の消失が寄与した可能性が高いとされています。 このように、海面水位が上昇していますが、かつては気温上昇による海水の熱膨張が主な原因であると考えられていました。今回の報告書では、さまざまな要因がどれくらい海面水位の上昇率に寄与しているかという見積もりが計算されています。これによると、氷河と氷帽、グリーンランド氷床、南極氷床の寄与率もかなり高いことがわかります。 山岳氷河と積雪は、北半球と南半球の両方で減少しています。特に、潜水艦による観測データによると、1987年〜97年にかけて、北極中央部の海氷の厚さは、最大1メートル減少した可能性が高いとされています。北極海は海氷で閉ざされていますが、このままでは夏には北極海の海氷は姿を消すと予測されています。 また、気温や氷だけではなく、降雨パターンも変わりつつあります。多くの陸域で温暖化や大気中の水蒸気の増加とともに、大雨の頻度が増加しています。一方で、1970年代以降、特に熱帯と亜熱帯でより厳しい、長期にわたる干ばつが観測された地域が拡大しています。 つまり、前よりも大雨が降る地域と、前よりも降らなくて乾燥してしまう地域が出てきているのです。 今後の予測として、ほとんどの陸域で継続的な高温と熱波の頻度が増加する可能性は、かなり高いとされています。また、ほとんどの地域で大雨の頻度が増加する可能性もかなり高いと評価されています。 2000年に出された第3次評価報告書に比較して、気候変動予測モデルが格段に進歩しています。多くのモデルシミュレーションが入手可能となり、観測結果によって得られた追加的な知見をモデルに取り入れるなどしているのです。 特に、自然起源の温暖化の影響だけがあった場合と、人為起源プラス自然起源の温暖化の影響があった場合のシミュレーションを比較したことから、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇は、人為起源の温室効果ガスの増加による可能性がかなり高いと判断されています。 2000年に出された排出シナリオに関するIPCC特別報告書では、4つの社会シナリオに基づき、今後の排出および気温の変化をシミュレーションしています。 1つは高成長型社会シナリオ。その中でも化石エネルギー源を重視するタイプと、各エネルギー源のバランスを重視するタイプ、そして新エネルギーの大幅な技術革新による非化石エネルギー源を重視するタイプの3つのシナリオがあります。 2つ目は多次元化社会のシナリオ。これは、地域の独自性を重視するもので、経済成長や技術変化はばらつき、ゆるやかな技術革新が進むというシナリオです。 3つ目は持続的発展型社会シナリオ。これは経済・社会および環境問題で世界的な対策を重視し、クリーン技術を導入していくなどのシナリオです。 4つ目が、地域共存型社会シナリオ。経済・社会および環境問題では、地域的対策を重視し、ゆるやかだが広範囲な技術革新が進むというシナリオです。 この排出シナリオに基づいた二酸化炭素の変化を予測すると、2020年まではどのシナリオを取っても増え続けます。この二酸化炭素濃度の上昇は、10年に0.2℃の気温上昇を引き起こす量だといいます。どのシナリオをいまから取り始めるかによって、2020年以降の二酸化炭素濃度は大きく異なってきます。 最も温暖化を進めてしまう、化石エネルギー源を重視する高成長型社会シナリオでは、21世紀末までに、最良の見積もりとして4℃の気温上昇が考えられ、その確率的な幅(可能性の高い予測幅)を考えると、最高6.4℃という数字が出ています。 今回の評価報告書では、初めて、炭素循環のフィードバックをモデルのなかに組み込んだものがあります。従来の気候モデルでは、二酸化炭素の排出により海洋および陸域が吸収するものの、吸収しきれない分が大気中に残り、温暖化を引き起こすというモデルです。 今回の新しい統合化された地球システムの気候モデルでは、そのように起こった温暖化が、海洋や陸域の二酸化炭素吸収にも影響を与えるというフィードバック・ループを元にしています。温暖化が進むと、陸域の植生による吸収量が低下してしまうことを勘案しているのです。 たとえば、多元化社会シナリオで炭素循環フィードバックを予測の中に入れ込むと、世界平均気温は、フィードバックがなかった場合よりも1℃以上高くなる、と予測されています。 気温の上昇は世界均一ではなく、地域によって異なります。陸域、特に北半球、特に北極での気温上昇が最大となります。これは排出シナリオが異なっていても、傾向としては共通して見られます。 日本を含む東アジアは、1980年〜99年の20年間と、100年後の20年間を比較すると、平均3.3℃上昇するという予測です。それに対し、北極は4.9℃という気温上昇が予測されています。 今回のIPCC第4次評価報告書には、日本の大きな貢献がありました。日本では平成9年に「地球フロンティア」を発足し、プロセス研究、モデル研究を進めました。そして平成11年には、「地球観測フロンティア」として観測システムを始め、平成14年には地球シミュレータを用いてシミュレーションをする、という流れで進めてきたのです。そのうちの世界最高級の性能を有する地球シミュレータが大きな役割を果たしました。 これは旧科学技術庁の平成8年7月に出した「地球変動予測の実現に向けて」に基づいた、三位一体の研究開発推進体制が、大きな貢献をもたらしたのです。 (第1作業部会の会合での様子についての質問に対して) この政策決定者向け要約(SPM)は、政策決定者にいかに性格に正しくわかりやすく伝えるか、というためのものです。かつては、サウジアラビアなどの産油国が、科学者ではなくネゴシエーターを送り込んできて、信頼性の表現にこだわるなどの動きがありましたが、今回は中国がそのような動きを見せていました。「温暖化に関する表現で『かなり高い』というのは、モデルや観測を見ても行きすぎではないか」というのです。 しかし、ほかのメンバーはすべて、「この『かなり高い』という評価は科学者が出したもので、われわれがそれを評価すべきではない」とし、中国は、脚注で不確実性が残っていることを明記することで引き下がりました。 今回の共同議長は、先進国側は米国でしたが、米国のブッシュ政権の意を受けて干渉するなどということはなく、科学の知見をまとめるということで、もめることは一切ありませんでした。 政府間パネルなので、どのような人を出してほしいかという希望は出しても、実際に国を代表して出る人を決めるのは各国政府です。米国の共同議長は、科学者としてバランスの取れたリーダーシップを発揮し、最後は拍手で閉会しました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 朝食会に参加させていただいた私は、気候システムにおける時間的遅れ(delay)について質問をしました。つまり、「いまの温暖化を引き起こしているのは、30年前までに出された二酸化炭素である」とか、「いまみんなで二酸化炭素の排出をやめても、温暖化はまだ続いてしまう」ということがいわれます。これは、時間的遅れがシステムの中にあるためですが、今回のシミュレーションではどのように、この時間的遅れを考えているか、という質問でした。 近藤氏のお答えは、「温暖化に関するdelayは、2つの側面から主に考えることができます。1つは大気中の二酸化炭素のライフタイムです。もう1つは、大気や陸域に比べ、海洋は4000メートルの深さを持つこともあり、熱しにくく冷めにくいという性質を持ちます。つまり、暖まるまで時間はかかりますが、いったん暖まるとなかなか元に戻らないように、時間軸が違うのが海洋なのです。そして、海洋も含めての気候システムなので、この海洋の部分の遅れが温暖化の時間的な遅れを生じさせることにもなります」との説明でした。 さて、「不都合な真実」「IPCC第4次報告」そして、日本は2050年までにCO2を70%削減できる!という「脱温暖化2050プロジェクト」の報告、とたてつづけに、温暖化に関する重要な動きや情報が出てきました。 一度、このあたりで、じっくりと「どういうことなのだろうか?」「ほんとうに考えるべきことは何だろうか?」ということを考えてみることが役に立つのではないかと思い、そのような機会をつくることにしました。 「脱温暖化2050プロジェクト」のリーダーやメンバーの方にもお話をうかがいつつ、じっくりと考える時間をとります。今回はよくある「講演→質疑応答」ではない、新しい形で進めます。 会場の関係上、人数を限っての開催となりますので、ご参加ご希望の方は、3月18日までに、お申し込みください。定員を超えてお申し込みをいただいた場合は、抽選をさせていただき、いずれの場合も、3月19日に結果をお知らせいたします。 ●日時 2007年4月7日(土) 13:30-16:30(予定) ●場所 こどもの城研修室
(渋谷駅より徒歩10分、表参道駅より徒歩8分) ●参加費 2000円
※当日現金にてお支払ください ●ファシリテータ 枝廣淳子・小田理一郎 ●お申し込み・お問い合わせ
(有)イーズ 担当 飯田
info@es-inc.jp
TEL: 044-922-6130 FAX: 044-930-0013 お申し込みは、3月18日までに下記申し込み票を電子メールでお送りください。 =============================================================        2007年4月7日 参加 申し込み票 ご氏名 [                    ]
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