エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース
2007年04月23日
21世紀環境立国戦略特別部会、ご意見募集中(2007.04.34)
今日も午後から参加するのですが、いま中央環境審議会に「21世紀環境立国戦略特別部会」が設置され、「環境立国」に向けての戦略をつくるための議論をおこなっています。特別部会の委員は26名。うち女性は私を含め、6名ぐらいです。
私は中央環境審議会に出るのは初めてなので、「へぇー、こんなふうなんだ」とキョロキョロ。ちょっとようすを紹介しますと、部会はいくつかの場所(ホテルなどの大きな部屋)で順番におこなわれます。ロの字型の机にぐるりと委員の先生方が並び、環境省からは大臣以下、審議官や多くの方が参加しています。
経産省、国交省、外務省など、関連省庁からも代表の方々が参加します。審議は一般公開(事前申し込み制)なので、傍聴席にはマスコミの方のほか、関心のある方々が多数でいらしています。顔見知りのマスコミや環境NGOのメンバーの顔も見えます。
毎回、テーマごとに、省庁、自治体や企業、NGOなどからのゲストスピーカーをお呼びして、ヒヤリング(説明をしていただく)。そのあと、質疑応答や、戦略づくりに向けて、委員が意見を言います。
といっても、26人中毎回20人前後の委員が参加し、審議自体の時間はとても短いため、ほぼ「ひとり1回コメント」する時間しかありません。委員の先生方のコメントを事務局がとりまとめて、次回の議論につなげる、という流れです。
今日のほか、あと2回特別部会が開かれますので、ご興味のある方がいらしたら、傍聴をお申し込みになったら、どんなふうに会議が運営され、最終的に安部首相に出す「戦略」になっていくのか、というようすがわかると思います。
前回は、国立環境研究所の西岡参事が、メールニュース[No. 1293] でもご紹介した「脱温暖化2050プロジェクト」の報告をされました。そのあと、事務局がとりまとめた論点整理の資料をもとに、委員が意見表明をしました。
私も毎回必ず意見を言っていますが、なんだか毎回同じようなことを言っている気がしています。つまり、「環境立国」という戦略をつくるつもりなら、そういう作り方をしないと、国内も世界も、だれもそう思ってくれませんよ、何も変えられませんよ、ということなのですが、、、
もちろん、省庁間の綱引きや交渉がいろいろあるのだとは思いますが、国民も世界もそんな内輪のことは知りませんし、関係ないですから、「出されたもの」でしか勝負できないのです。
前回の私の発言をご紹介します。ちなみに、各委員の各回の発言内容は議事録として公開されています(前回のはまだアップされていないかもしれません)。
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いくつか述べたいと思います。
まずいちばん最初の、「基本的な認識」の温暖化のところで、たとえば「IPCCによると」という書き方をされていますが、そうではなくて、「日本は」とか「われわれは」という形で、基本的な認識を出すべきだと思います。IPCCが言っている、それを日本はどうとらえるのか、もしくは、われわれはどういうふうに認識したうえでこの戦略をつくるのかと、一人称で語りたいなと思います。
先ほどの西岡さんのご発表でも明らかなように、物理的な現実として3ギガトンしか地球が吸収できないのに、7ギガトン以上出ている。としたら、それを60%、70%減らすのは、可能かどうかではなくて、いかに可能にするかを考えるしかないわけで、それを「できない」と言うのは、温暖化を許容することになってしまう。
そうではなくて、フィージビリティをつくっていくためには、業界や自治体、NGO、市民は何をすべきかという形で戦略が出せればと思います。
ビジョンとか戦略というのは、いま、前のお二人の先生方がおっしゃったことと重なりますが、やはり人や組織を動かすものでなくてはならない。読み流すものでは、それは戦略とはいえないと思います。
書かれている「低炭素」「自然共生」「循環型」などは、とても聞こえもよいし、イメージはよく、何となくそうだなと思いますが、では、いざそれでどうなっていくのかと。
そのときにやはり絶対的な、たとえば二酸化炭素にしても、削減の目標を出すべきだと思います。「低炭素」といったときに、やはり温暖化はエネルギー問題ともいわれていますので、エネルギーの、たとえば新エネルギーをどのような形で増やしていくのか、その仕組みをどうするのか、そのあたりもきちんと、「エネルギー」という言葉も、その部分で入れるべきではないかと思っています。
いま、世界を見ていると、環境をめぐっての覇権争いが激化していると思っています。そのなかで日本は、残念ながら、このままだと置いていかれるだろうという危機感を、かなり私は強く持っています。
ひとつご参考までにですが、昨日、米国の下院議員のリック・バウチャー氏という方が、外務省他の主催で、「アメリカのこれからの温暖化対策」というご講演をされました。外務省の鶴岡審議官と私と、その講演に対してコメントさせていただくという立場だったのですが、その時に、「いま、削減義務を持った法案をつくっている」という話をされていました。
たとえば、公聴会に呼ばれたアル・ゴア氏は、「2050年に90%減らす」という目標を出した。「それを目指せ」という話をされていたそうで、いま、電力業界でそれがどの程度可能なのか、議会で調べさせているという話をしていました。
またその法案は、中国、インドと、主な排出国を入れなくては通らないということで、それを入れるための仕組みも、かなり具体的に考えられていました。
「アメリカは、絶対的な削減目標をどのように掲げるのか」と、私は質問したんですが、それには明確な答えはいただけませんでした。しかし、アメリカもそのような形で動きだしている。ヨーロッパはもちろん進んでいるわけですが、日本も何となく感じのいい戦略をつくるのではなくて、やはりぴしっと出さないと、世界のなかで注目されるような戦略は出せないのではないかと思っております。以上です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ひとり数分の時間しかないので、ポイントをしぼった形でしかいえないのですが、「立国(国づくり)」というからには、「どういう国にするのか」というビジョンがあるべきだし、それは誰が見てもわかるように絶対的な目標(二酸化炭素を○%減らす、など)を持つべきだし、そのビジョンに対して、バックキャスティングで具体的な戦略を立てていくべきではないかと思うのです。
ヨーロッパではそのような形で進んでいます。英国は3月に、「二酸化炭素の60%削減」を義務付ける気候変動法案を発表しました。二酸化炭素を2050年までに60%削減、またその前段階として2020年までに26〜32%削減するという目標です。温室効果ガス削減を義務付ける法律の制定は世界でも初めてです。
また、つい先日は日ノルウェーのストルテンベルグ首相が「温暖化ガスゼロ国家」になると発表していました。「温室効果ガスの排出を2050年までにゼロにする」という目標と、そのために何を進めていくのか、というものです。
そして、米国も企業が「どうせやることになるなら、早いほうがよい。そのほうが自社の対応もしやすい」という流れになってきたので、きっと遠からず「これがあの京都議定書から脱退した温暖化懐疑派の米国?」とびっくりするほどの動きが出てくるでしょう。
そういう世界の中で、日本は? このままでは、うーん......。
さて、今日のヒヤリングは、WWFの鮎川さんがNGOの立場から気候変動について説明をしてくださるはずです。自分に与えられた数分間で、「べき論」だといわれても、できるだけ思うところを伝えてこようと思っています。
さて、この21世紀環境立国戦略への意見を募集中だそうです。以下にある「論点整理」をお読みになって、何かご意見をお持ちの方、個人でも組織でも、よろしければぜひご意見を寄せてくださいな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
http://www.env.go.jp/guide/info/21c_ens/index.html
安倍内閣総理大臣施政方針演説において、「国内外挙げて取り組むべき環境政策の方向を明示し、今後の世界の枠組み作りへ我が国として貢献する上での指針として『21世紀環境立国戦略』を6月までに策定します。」と盛り込まれました。
これを受けて、同戦略に関し総合的な検討を行うため、鈴木基之中央環境審議会会長を部会長とする「21世紀環境立国戦略特別部会」が、中央環境審議会に設置されました。
本特別部会では、3月までに4回の審議を行いました。今後は、6月までに「21世紀環境立国戦略の策定に向けた提言」をとりまとめるべく精力的に審議を行う予定です。
21世紀環境立国戦略へのご意見を募集します
中央環境審議会21世紀環境立国戦略特別部会では、21世紀環境立国戦略について、国民のみなさまからのご意見を募集しております。
なお、本部会では、3月29日の第4回会合で「論点整理(案)[PDF 393KB]」を審議したところですので、こちらをご参考のうえ下記要領に沿って、ご意見をお送りください。
募集期間:〜平成19年4月30日【必着】
提出方法:電子メール(21CPT@env.go.jp)(※件名は、【21世紀戦略に対する意見送付】としてください)
記載事項:個人の場合は住所、氏名、性別、年齢及び職業を、法人の場合は法人名及び所在地を明記
注意事項: ご意見の提出は『1000文字以内』でお願いします。
ご意見は『日本語に限ります』。また、電話でのご意見の御提出はお受けしないほか、ご意見に対する個別の回答はいたしませんのでご了承願います。 ご提出いただいた個人情報については、ご意見等の内容に応じ、環境省内の関係部局、関係府省に転送することがあります。
http://www.env.go.jp/guide/info/21c_ens/index.html
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
上記のウェブサイトには、特別部会で使われた資料のほか、議事録もアップされています。
さて、では出かけていきます〜!