「夢を預かり 未来を育む」という素敵なスローガンをカタチにしている未来バンク事業組合。「未来バンク事業組合は、市民の皆様から出資金をお預かりし、環境に優しい商品を購入される方や、環境に優しい事業を営んでいる方に、低利(年利3%)で融資を行っている非政府・非営利の市民団体です」。
http://www.geocities.jp/mirai_bank/
> 「金融」という言葉を聞くと難しいと思われるかもしれませんが、実は単に、お
> 金を貯めたいと思っている人がお金の不足している人や企業などに資金を提供す
> ることなのです。私たちが銀行や郵便局に預けたお金は、何となく金庫に保管さ
> れているように錯覚しますが、それでは利子は生まれません。私たちのお金は必
> ずどこかへ貸し出されされて企業などの投資に使われ、利子を生んでいるのです。
> つまり、貯金をするということは、投資をすることと同じことなのです。
このつづきはぜひ、上記ウェブページの「あなたの預金はどこへ行く??」を読んで下さい。「知らず知らずのうちに、自分の反対している環境破壊を引き起こしている開発事業に手を貸してしまっている」……そんな事態を避けるために。
私は数年前から、この未来バンクの出資者のひとりとして「未来バンク事業組合ニュース」を受けとっています。まえにもその内容を紹介させてもらったことがありますが、今回新しく届いた号から、理事長の田中優さんの寄稿と、岡田さんの寄稿をご快諾をえて、紹介させていただきます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
終了ホイッスル間際、たった10年のロスタイム
未来バンク事業組合理事長 田中優
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第四次報告の示したもの
世界の科学者・専門家総勢1000人が国連機関に集い、地球温暖化に関する調査をする。それが「気候変動に関する政府間パネル」だ。その第四次報告が公表された。今回の報告書はそれまでのものと大きく違う。「気候システムの温暖化には疑う余地がない」と断言しているのだ。もともと断言しないことを常とする科学者たちが、なぜ今回だけは断言できたのだろう。おそらく広範囲の調査と、現実の測定データの集積が彼らを断言させたのだろう。今回の報告書の中には、随所にシュミレーション結果と現実データの対比が出されている。事実、それは怖いほど見事に一致している。その結果、報告書は「大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である」と断言したのだ。
しかしその一方で、不確定な要素が少なくなった代わり、可能性についての記述が弱くなったようだ。特に私たちの将来にとって最大の脅威である「ポジティブ・フィードバック」の影響が、この報告書ではあまりにも記述されていない。ポジティブ・フィードバック、坂を転げ落ちた雪がどんどん膨れ上がるような「雪だるま式の悪循環」のことだ。
「悪循環」の予測
たとえば日本地図を広げてみる。長さは1850キロ、分布する温度差は14℃、したがって1℃あたり130kmの長さになる。ところがIPCCの報告によれば、この50年の温度上昇は10年あたり0.13℃だという。すると木々は、毎年1.7キロの距離を移動しなければならない。ところが多くの樹木の移動距離はそれよりずっと少ない。しかも成長するまでの50年を考えると、成長する前に気候に合わなくなって立ち枯れしてしまう。今は二酸化炭素を吸ってくれてい木々が、逆に二酸化炭素を排出することになる。
氷河や海氷が溶け、太陽の光を反射してくれなくなるだけでなく、暗い海や土の色に変わったらどうなるだろう。暗い色は熱を吸収し、熱を貯め込んでさらに氷を溶かしてしまう。するとさらに温暖化は加速する。これが悪循環の現実だ。
イギリスのインデペンデント紙は、IPCC報告に基づいて、可能性ある悪循環を記事にした。「1960年から2005年、大気中の二酸化炭素濃度は毎年1.4ppm増加していたのに対し、1995年から2005年の間では毎年1.9ppm増加するようになった。恐怖するのは、この地球という惑星にフィードバック現象が始まったのかもしれないことだ」と。
もし悪循環が進んだとすると、2.4度上昇で珊瑚礁ほぼ絶滅し、北米に砂丘が現れ農業と牧畜をかき消し、海面上昇が南の島と低地を水没させ、地球上の生物の三分の一を絶滅させる。4.4度の上昇で南極大陸の氷床が裂け、地球の海面はさらに5メートル上昇する。ヒマラヤの氷河が消えて南アジアの社会は崩壊し、何百万人もの人たちがモンスーンの洪水に追い立てられ、世界の食糧供給は尽きる。さらに6.4度の上昇では、温暖化した海からメタン・ハイドレートが放出し、さらに温暖化を加速する。砂漠はほとんど北極圏にまで到達し、洪水は大地から土を剥ぎ取り、地球上のほとんどの生命は吹き消されることになる可能性があるという。
この10年が未来を決める?
大気中の二酸化炭素は、約100年間滞留する。すると今出した二酸化炭素は、4-5世代先まで残ることになる。だから今すぐ二酸化炭素の排出を止めても、地球温暖化は簡単には止まらないのだ。それを考えたら、これからの10年の選択が地球の未来を決めると言えるだろう。今まで通りの右肩上がりに化石エネルギーを使い続けていたらどうなるのか。この100年の急激な右肩上がりの消費を、コマ送りを逆にするように右肩下がりにしていかなければ、大きなツケを子孫に残すことになる。
もちろん簡単な話ではない。しかし実現不可能な話でもない。これまで連載してきたように省エネ・断熱し、自然エネルギーをそれぞれに細かく導入していくならば、少なくとも家庭は自給していくことができるだろう。「どうせその頃まで自分は生きていない」というような無責任な発言はやめて、小さな希望を育んでほしい。
モルジブの人たちは二酸化炭素をほとんど排出しなかったのに、今まさに海に沈もうとしている。津波の後も、しばらく海水が引かなかった。農地は海水をかぶり、作物が取れなくなった。世界各地の氷河は、今やどんどん消えている。雪解け水はやがて、農業を許さないほどに減ってしまう。今まさに被害に直面している人たちを前にして、ぼくらは何を議論しているのだろう。
この時代に生まれた者、今生きている者には大きな責任がある。それぞれの人には大切にしたい人がいて、大切にしたい場所がある。きっと誰でもそうだ。この10年はその大切な人を守るために残された、サッカーの試合のロスタイムのようなものだ。このロスタイムをどれだけ生かせるか、それが人類の未来を決めてしまうと思うのだ。
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責任者 出て来い!
4月20日のことですが、事故隠しなどのトラブルばかり起こしている全国の電力会社の社長さん全員が召集されて、甘利大臣に叱られていたニュースが流れていました。社長さんは全員神妙な面持ちで大臣に謝罪していたけど、コレってなんとなく変な構図だと思います。電力会社は株式会社なので経営陣がトラブル起こしたら、株主が怒らないといけないと思うのです。
というわけで四季報を買ってきました。1,750円。高い上に分厚いゾ。東電の株主って誰なんだろうと思って1885ページを開けると、筆頭株主が日本トラスティ信託口。4.4%の持分です。4.4%なんてちっぽけなと思わないでください。上場企業で4.4%ももつのは大変なことです。これでも筆頭です。
それにしても日本トラスティ信託口ってヘンな名前だし訳がわからないぞ。ということで今度はネットで検索。そうすると日本トラスティサービス信託銀行っていうのが引っかかりました。たぶんこれだな。それでこの銀行というのはなんだろう、そんな看板見たことないなーということでさらに調べると、巨額のマネーを動かす年金基金、生保、銀行といった機関投資家のための資産管理会社ということらしい。資産の運用というのはもちろんそれぞれの投資家でやり方は違うけど、資産の管理部分では複数の資産運用機関に分かれているよりもみんなで協力したほうが効率化できるね、という趣旨のようだ。
実際に日本トラスティサービス信託銀行のHPでは「弊社は、日本初の資産管理業務に特化した銀行です。りそな銀行、住友信託銀行、三井トラスト・ホールディングスの3つの銀行の出資によりできた会社で、2000年7月に営業を開始した、まったく新しいタイプの銀行です。」と説明しています。自社のことを「証券運用にかかわる事務処理を代行する専門集団」と考えてね、と言っています。
というわけで駆け足で日本トラスティ信託口を理解したところで本題に戻ると、どうやらこの人たちは管理事務の部分だけ運用会社から任されているわけだから、東電に「ダメじゃないか」とアクティビスト的なダメ出しする気配も気迫もなさそーだ。
というかそもそも日本トラスティ信託口の管理しているおカネの出所を考えると、それは年金基金や銀行、生保から来ていて、じゃあ年金基金や銀行、生保のおカネはどこから来ているのかというと・・・・・。普通のサラリーマンの月給から天引きされている年金積立だったり、我々が銀行に預けている預金だったり、死んだらタイヘンということで加入している生命保険の保険料だったりするわけです。
あらら我々一般市民の小口マネーが回りまわって東電をファイナンスしているなんて。というくやしさをなんとかしたいのでNPOバンクなんてものをやっているわけです。
が、それはさておき、東電の株主構成を見てゆくと、他の大株主は第一生命、日本マスター信託口(トラスティ信託の仲間だね)、日本生命、東京都、三井住友銀行、みずほコーポ銀といったところです。要は巨額のマネーを動かす機関投資家たちです。
でも再びよく考えてみるとこの投資家たちの集めたおカネはわれわれのサイフから出ています。
なので電力会社に事故隠しはダメじゃないか、と口では反対していても、我々のお財布はそんな電力会社を支えていることになるのでいつまでたっても電力会社の体質は変わらないということになります。今後も事故や事故隠しは続くと思います。
東電の話ばかりでなく、この際北陸電力の株主も見てみよう。そうすると・・・・。なんと筆頭株主は富山県!持分割合は5.1%。2位は北陸銀行で4.7%。石川県ってたしか志賀原発の事故隠しに怒っていたけど、お隣の県が株主じゃん。ぼくが石川県知事なら富山県知事に「このヤロー」って言いたいです。それと大株主第2位の北陸銀行は本店富山市で店舗数と場所を見ても富山県内が営業基盤です。ってことはやはり富山マネーを吸い上げておカネを運用しているわけです。
石川県のみなさんは、やっぱり今回の事故隠しで北陸電力の無責任体制に怒ったと思う。誰が責任者なんだ、出て来いといいたいのですが、責任者は富山県人といえなくもないです。なぜなら富山県人のおカネの預け先である北陸銀行が北陸電力をファイナンスしていた。その北陸電力が石川県のみなさんを不安と不信の渦に巻き込んだ。という構図があるからです。うーむ。新潟にはNPOバンクできたんだけどな。富山にはできていないな。できないかな。
それと北陸電力の本社も富山市なんですね。こういうときに富山市内で街角インタビューして「あなたの預けたおカネが回りまわって、お隣の県で志賀原発というカタチで運用され、石川県民に脅威を与えていますが、どう思いますか?」って道行く人に聞いてみたら100%ブン殴られるからやらないんだけど、マネーをめぐる想像力をめぐらせないと原子力からは離れられないと思う今日この頃です
(岡田純)。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お金は経済の血液」といいます。お金の流れるところは元気になり、お金がこなくなると活動が停まり、死滅します。つまり、自分たちのお金を意識して使ったり、投資・出資することで、お金の流れを変え、社会を変えることができるのです。
グリーンコンシューマーとして、「買い物は投票だ」と意識して買い物をすることも毎日の生活のなかでできる、とても大事な選択です。そして、どこにお金を預けるか、どこに投資をするのかも、とても大事です。
自分が手にしている「選択する力」を賢く使って、「目先の利益で釣って未来を壊す」のではなく、「夢を預かって、未来を育む」ところへのお金の流れを大きくしていきたいですね!
そして岡田さんのように、「これはどこから来ているのだろう?」「その先はどこにつながっているのだろう?」と、つながりを見る力と辛抱強さは、複雑さを増す世界と社会の中で、ほんとうの問題を知り、ほんとうの解決策を考えるために、ますます必要となっています(システム思考もそのためのアプローチです)