少し前になりますが、アースポリシー研究所から届いた『プランB 2.0』からの抜粋を、実践和訳チームが訳してくれましたので、お届けします。
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行き詰まる使い捨て経済
レスター・R・ブラウン
過去半世紀に見られる明らかに不健全な経済動向の一つに、使い捨て経済の出現が挙げられる。使い捨て経済は、消費者に商品を提供する手段として第二次世界大戦後に考案されたが、やがて雇用を創出し経済成長を持続させる手段と見なされるようにもなった。商品を次々と製造し、廃棄すればするほど雇用が増えるという理屈だ。
使い捨て商品が売れた理由は、その利便性だ。タオルやナプキンを例にとれば、布製を洗濯するよりも、紙製を使い捨てにする方が消費者に歓迎された。こうしてハンカチはティッシュペーパーに、ハンドタオルは使い捨てのペーパータオルに、布製のナプキンは使い捨てのテーブルナプキンに取って代わられた。そして、詰め替えできる飲料容器の代わりに使い捨ての容器が使われるようになった。今や使い捨て商品を家に持ち帰る買い物袋でさえ、すぐごみになる運命だ。
こうした一方通行の使い捨て経済は、安価なエネルギーに依存している。またそのような経済を助長しているのが、米国で言われているところの「自治体のごみ処理システム」だ。製品政策研究所のヘレン・スピーゲルマンとビル・シーハンは次のように記述している。「自治体のごみ処理システムは、使い捨て社会を支えてしまう補助金の役割を果たしている。
公費でごみ処理を改善し、処理量を増やすほど、ごみが際限なく増える環境を整えてしまうのだ。現在このシステムで回収される製品廃棄物(使い捨て商品など工業製品に由来するごみ)は、子どもを含む米国民一人当たり一日に1.5キロで、1960年の2倍、100年前の10倍に相当する。使い捨ての習慣を支えることがないよう、今こそシステムを改革するときだ」
このままでは使い捨て経済が地球の地質学的限界に突き当たるのは必至だ。都市近郊の埋め立て処分場が限界を迎えているだけでなく、使い捨て商品の製造や輸送に使われる安価な石油も世界全体で急速に枯渇しつつある。
もっと根本的な問題は、現在容易に採掘できる鉛、スズ、銅、鉄鉱石、ボーキサイトの量では、使い捨て経済はあと2、3世代ももたないということだ。米国地質調査所のデータによれば、採掘量が毎年2パーセント増加すると仮定した場合、現時点で経済的に回収可能な埋蔵量はそれぞれ、鉛で18年分、スズで20年分、銅で25年分、鉄鉱石で64年分、ボーキサイトで69年分しか残っていないという。
都市近郊の埋め立て地が満杯になり、石油価格が上昇するに従って、都市部からごみを輸送するコストも高くなっている。地元近辺のごみ埋め立て地を早々に使い切ってしまった大都市の一つにニューヨーク市がある。同市のごみを受け入れていた市内のフレッシュキルズごみ埋め立て処分場が2001年3月に恒久的に閉鎖されて以来、同市はニュージャージー州やペンシルバニア州、さらにはバージニア州の、遠いところでは500キロも離れた処分場にまでごみを輸送しなければならなくなった。
ニューヨーク市で排出されるごみの量は一日当たり1万2,000トン。それを積載量20トンの長距離トレーラーで運び出すとすると、ごみの輸送だけで毎日600台ものトレーラーが必要という計算になる。その車列の長さは15キロにも及ぶ。
そのせいで交通渋滞が発生し、大気は汚染され、炭素排出量も上昇してしまう。フレッシュキルズごみ埋め立て処分場閉鎖の責任者であったジョセフ・J・ロタ副市長は、連日できる長蛇の車列を見て、思わず「市内からのごみ輸送は、まるで毎日軍事演習をやっているようだな」と語ったという(。
財政難にあえぐ他州の自治体は、十分な額が支払われるのであればニューヨーク市のごみを引き受けるのにやぶさかではない。中には経済的に願ってもない話だとする自治体もある。
しかし引き受けた州の政府にとっては、道路整備コストの増加、交通渋滞、大気汚染の深刻化、騒音、ごみ埋め立て処分場からの汚染物質漏れによる水質汚染の可能性、さらには近隣の市町村からの苦情をも背負い込むことになるのだ。
バージニア州のジム・ギルモア知事は2001年に、ニューヨーク市のルディ・ジュリアーニ市長に文書を送り、バージニア州をごみ処理場として利用することに不満を表明している。「ニューヨーク市が抱えている問題は理解できます。しかし、ワシントン、ジェファーソン、マディソンと3人の大統領を輩出したわがバージニア州を、ニューヨーク市のごみ捨て場にするわけにはいきません」
ごみ処理に苦悩しているのはニューヨーク市だけではない。カナダ最大の都市であるトロント市は最後に残ったごみ埋め立て処分場を2002年12月31日に閉鎖し、現在、年間110万トンにもなるごみのすべてをミシガン州のウェイン郡に運んでいる。
皮肉なことに、ニューヨーク市のごみを一部引き受けているニュージャージー州もまた、1,000トンにも上る解体廃材を1,000キロも離れたミシガン州ウェイン郡に送り出しているのである。
私たちが取り組むべきは、「使い捨て経済」から「リデュース(ごみを減らし)・リユース(再使用し)・リサイクル(再資源化する)経済」への転換だ。ニューヨーク市のような都市に課せられているのは「ごみをどう処理するか」よりも「そもそもどうやってごみを出さないようにするか」なのだ。
(翻訳担当:山田はるみ、丹下陽子、古谷明世)
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『プランB 2.0』は
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