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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年06月01日

グリーン購入法施行5年―取り組みの進展と今後の展望(2007.06.01)

日本のありもの探し
 

ちょっとCMです。“環境問題をぐっと身近に”という「日経エコロミー」 (エコノミー+エコロジー)のウェブサイトがスタートしました。

オープニングのインタビューでは、レスター・ブラウン氏に三橋規宏氏が聞く「米社会の環境問題」などが出ています。たくさんの方のコラムも読めるサイトです。私も「枝広がるエダヒロの視点」というコラムコーナーを担当しています(ときどき「エダヒロって環境活動にぴったりの名前ですね、芸名ですか?」と聞かれるのですが、本名です ^^;)。コラムは月に2本ずつ、アップしていきますので、よろしかったらときどきのぞいてみてください。


さて、よく「日本の環境の取り組みは世界に比べて、進んでいるのでしょうか? 遅れているのでしょうか?」と聞かれます。

答えは、「進んでいるものもあるし、遅れているものもあります」です。そして、遅れている(日本が得意でない)もののひとつとして、「行政などが社会を動かしていくためのしくみをつくること」を挙げます。

たとえば、太陽光発電の分野で、長らく世界一だった日本は、ドイツに抜かれてしまいましたが、それは日本人の環境意識が低いためではなく、ドイツには太陽光発電をしたくなるような「しくみ」(有利な価格での買い取り制度など)があるためです。

日本政府は、「技術開発」と「国民啓発」に頼りがちなのですが、「社会経済システム」を作っていかないと、技術の普及もエコ行動もぐっと大きく進まないと思うのです。

そういう日本でも、「これは世界のお手本になる!」というすばらしいしくみと取り組みがあります。グリーン購入の取り組みです。リサイクルした再生製品や環境にやさしい製品をいくら作ったとしても、最終的な「出口」、つまりそれを購入する市場をつくらないと、じょうずに回りません。

そのためにグリーン購入法ができ、グリーン購入ネットワークという日本独自の団体がとてもよい活動をしているおかげで、グリーン購入が日本では広がり、定着してきました。

グリーン購入ネットワーク(GPN)のウェブサイトは、こちらです。

このGPNのニュース第53号から、グリーン購入法施行から5年たっての振り返りを環境省の方が述べられている記事を、事務局のご快諾をえて、ご紹介します。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

グリーン購入法施行5年――取り組みの進展と今後の展望
〜環境省総合環境政策局環境経済課長 鎌形浩史氏に聞く〜

 2001年にグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が施行されてから、5年が経過しました。この間、国や地方自治体等による率先的な取り組みの推進、産業界におけるグリーン購入の広がりにより、環境に配慮した商品・サービスは着実に市場に浸透してきました。

その一方で、グリーン購入が十分に進展していない分野もあり、地域によって取り組み状況に違いも見られます。これまでの経過をふまえ、グリーン購入法に基づく実績や成果、今後の取り組みの充実に向けた展望について、環境省総合環境政策局環境経済課長の鎌形浩史氏にお話を伺いました。(以下、敬称略)=聞き手:GPN代表・中原秀樹 武蔵工業大学教授=

大半の品目で調達率95%以上を達成

――グリーン購入法施行から5年が経過したわけですが、まず、これまでの取り組みの状況や実績についてお聞かせください。

鎌形 グリーン購入法は、国等の公的機関が率先してグリーン購入を推進することにより、環境に配慮した物品やサービスに対する需要を生み出すとともに、市場全体において従来の商品から環境配慮型商品への転換を促していくことを目的としています。

 法において取り組みが義務づけられている国等の機関(国会、裁判所、府省、独立行政法人、特殊法人)では、重点的に調達を推進する特定調達品目を設定し、それぞれについて判断の基準を設けグリーン購入を進めてきました。法が施行された2001年度には100品目の特定調達品目を設定し、以降、毎年度新たな分野・品目を加えており、2006年度には214品目まで拡大しています。

 特定調達品目の判断基準に適合した物品等の調達率も着実に上昇しており、2004年度の実績ではほとんどの品目が95%以上の水準に達しています。また、環境配慮物品等への転換と同時に、調達にあたっての必要性の確認を徹底し、購入量自体を減らす努力をしてきました。

――グリーン購入の推進においては、実際にどれだけの環境負荷低減に結びついているかという点が重要となりますが、こうした側面ではどのような効果があがっているでしょうか。

鎌形 把握が可能な品目については、国等の機関による調達量全体の資源消費削減量やCO2排出削減量を試算し、取り組みによる効果を検証しています。

 たとえばコピー用紙について2000年度と2004年度を比較した場合、古紙を配合した用紙への切換えによるパルプ材の消費削減量は約35,000m3となります。これは、25,000t-CO2の二酸化炭素固定量に相当します。

 また、ボールペンやシャープペンシルなど4品目の筆記具に関し、再生プラスチックの採用によるプラスチック使用削減量(2004年度)を試算すると20.3トンになり、プラスチックを焼却した場合と比較したCO2排出削減量は54.4t-CO2にのぼります。

 今後、試算の対象範囲の拡大、購入量の削減による効果の集計方法などについても、検討していく考えです。

地方自治体における取り組みの重要性

――グリーン購入法では、地方自治体に関し努力義務という位置づけになっていますが、グリーン購入の普及という面で自治体は非常に重要な役割を担っています。

鎌形 地方自治体は、国等の機関の3倍以上の規模の経済活動を行っており、市場に対して大きな影響力をもっています。このため、地方自治体がグリーン購入に積極的に取り組むことにより、それぞれの地域、さらには国内市場全体における環境配慮型商品への需要転換が進むものと思われます。

 地方分権の時代において、各自治体が主体的にグリーン購入を進めていくことが基本であると考えていますが、環境省としても毎年、地方自治体におけるグリーン購入の実施状況に関する調査を実施するとともに、取り組みの強化に向けはたらきかけを行っています。

 2005年度の調査結果では、「全庁で組織的にグリーン購入に取り組んでいる」自治体は33.8%で、2002年度調査の26.3%から7.5ポイント増加しています。自治体の区分毎に見ると、都道府県・政令市が96.7%に達しているのに対し、市区では53.1%、町村は15.2%となっており、町村では担当者レベル等での取り組みにとどまっているところが多いのが現状です。

 こうしたことから現在、中小規模の自治体向けのマニュアルの作成を進めており、効率的・効果的な取り組み方法を示すとともに、グリーン購入によるコスト面のメリットについても認識してもらいたいと考えています。

国内市場全体にも大きなインパクト

――公的機関におけるグリーン購入の率先実行を通じた市場全体の需要転換という点では、どのような影響が表れているでしょうか。


鎌形 特定調達物品の市場形成の状況に関する各種の調査結果によると、各品目においてシェアが増加していることが示されています。

 たとえばコピー用紙について、判断基準を満たした商品が国内出荷量全体に占める割合を見ると、2000年度の11.6%から2004年度の33.5%へと約3倍に上昇しています。2004年度の国内出荷が、すべてバージンパルプ100%の用紙であった場合と比較すると、770,000m3のパルプ材の消費が削減されたことになります。

 このほか、特定調達品目の判断基準に適合するボールペンの割合は13.0%から43.4%、照明器具(Hfインバータ方式器具)は22.4%から54.2%、低公害車(新規登録台数)は0.9%(2000年度下期)から67.6%(2004年度下期)といったように、多くの品目で大幅にシェアが拡大していることがわかります。

 こうした変化は、公的機関によるグリーン購入だけでなく、事業者や一般消費者の方々による取り組み、メーカーにおける環境配慮型製品の開発に向けた努力などの結果だといえますが、コピー用紙のように国等の機関の調達量が国内出荷量全体の2割以上を占める品目などにおいては、公的機関による率先行動が市場形成に大きな影響を及ぼしているものと考えられます。

情報の検証、情報開示の充実

――グリーン購入法に基づき、さらなる取り組みの充実を図っていくことが必要だと思われますが、今後の施策の展開についてはどのようにお考えですか。

鎌形 広範な分野・品目においてグリーン購入が推進されるよう、今後も特定調達品目の拡充を進めていきます。同時に、より環境負荷の少ない物品等の選択が行われるよう、各品目の判断基準についても、製品開発の動向などをふまえ適宜見直しを行っていく予定です。

 また、グリーン購入による環境負荷低減の実効性を高めていく上では、商品やサービスに関するデータの信頼性を高めていくことが必要です。このため、物品等の環境情報の検証という点に関しても、どのような仕組みが望ましいのか様々な角度から検討を行っていく必要があると考えています。

――グリーン購入法では、国等の各機関に対し調達実績の公表を義務づけていますが、必ずしも十分な対応がなされていないケースも見受けられます。

鎌形 国等の機関によるグリーン購入実績については、これまでも各機関から公表されていますが、書面による公表にとどまるなど、一般の目に触れやすい形での情報開示が行われていないケースもあります。

 グリーン購入の取り組み内容や実績に関する情報を開示することは、消費者、供給者双方に対する啓発効果や取り組み促進効果があり、ホームページへの掲載などアクセスしやすい形での情報開示が行われるようはたらきかけていきたいと考えています。また、地方自治体においても、グリーン購入への認識向上や取り組み促進に向け、情報提供の充実に努めていただきたいと思います。

グリーン購入の広がり、定着に向けて

――GPNは今年の2月に設立10周年を迎え、より一層の活動の充実が求められています。今後の取り組みに対する期待やご要望をお聞かせください。

鎌形 グリーン購入を実践する上で、環境に配慮した商品・サービスに関する情報が、必ずしも使いやすい形で提供されていないように思われます。一般の消費者にも分かりやすく、アクセスしやすい情報システム、多くの事業者にとってデータ等を提供しやすい仕組みのあり方について、検討を行っていきたいと考えており、GPNにもぜひ協力していただきたいと思います。

 また、各地域におけるグリーン購入の定着に向け、いくつかの地域ネットワークが発足し、活動が進められており、九州においてもネットワーク発足に向けた動きがあると聞いています。今後もこのようなネットワークづくりを促進し、それぞれの地域で事業者、市民、行政の連携による取り組みを進めていくことが重要だと思います。環境省としても、各地でのセミナーやフェアの開催などを通じて、グリーン購入の機運を高めていきたいと考えています。

――グリーン購入の普及に向け、まだまだやるべきことが山積していると認識しており、今後ともご支援をお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

GPNの佐藤事務局長に、「世界にもグリーン購入法のような法律やGPNのような団体はあるのですか?」とおうかがいしました。

日本と同様の義務的な法律を持っているのは、韓国と台湾だそうです。そのほかにも、アメリカのように大統領令で定めていたり、EUレベルでは公共調達指令の中での規定であったり、ヨーロッパ諸国ではアクションプランという形であったりします。

また、GPNという団体ががあるのは、韓国、中国、マレーシア、インド、タイなど。日本のGPNが先導し、サポートして、活動しているといえます。欧米では類似の組織は見つけにくいとのこと。これは面白いですね。また、ICLEI(イクレイ)さんがかなり自治体のグリーン購入を牽引しています、とのこと。

日本も、きっとグリーン購入法という法律だけではここまで広がり、効果を上げなかったのではないかと思います。実際の取り組みを強力にサポートし、プッシュするGPNの役割が大きかったのだと思います。そして、日本発の取り組みのしくみとして、アジアにも広げていっているのは、ODAやCDMのように形として目には見えにくいでしょうけど、世界に対するとても大きな貢献です。

ひとつの日本型モデルとして、世界はもとより、国内でももっともっと多くの分野や課題に対して採り入れられたらいいなあ!と思います。

 

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