レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースです。実践和訳チームが訳してくれました。このあとに、関連情報や、レスターの講演を映像と音声で聞けるサイトの紹介もあります。
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白熱電球をやめよう
世界が小型蛍光灯へ切り替えれば、石炭火力発電所270カ所が閉鎖できる
レスター・R・ブラウン
2007年2月20日、オーストラリアは、2010年までに段階的に白熱電球の販売を中止し、消費電力がその1/4の電力で済む高効率の電球型小型蛍光灯に切り替えていくと発表した。他の国々もオーストラリアに倣って、炭素排出量を大幅に削減できるこの簡単な方法を採用することになれば、世界の電力使用量は減少し、270カ所以上の石炭火力発電所(500メガワット)を閉鎖することができる。米国の場合は、これで80カ所の火力発電所の閉鎖が可能になるだろう。
喜ばしいことに、世界は今、効率の良い電球への切り替えに向けて、社会的な転換期を迎えつつあるのかもしれない。オーストラリアの発表から2カ月後の2007年4月25日、カナダ政府は2012年までに白熱電球の販売を段階的に中止させると発表した。気候変動への懸念の高まりが、電球を切り替える動きに拍車をかけている。
3月半ばには、米国の環境団体連合がフィリップス・ライティング社と共同で、2016年までに全米の電球約40億万個すべてをより効率の良いものに切り替えていくという取り組みを始めた。同連合には、天然資源保護協議会(NRDC)、省エネルギー連盟(the Alliance to Save Energy)、エネルギー効率経済アメリカ連合(the American Coalition for an Energy-Efficient Economy)、アースデイ・ネットワーク(the Earth Day Network)等が名を連ねている。
米国最大の人口を有するカリフォルニア州では、ロイド・レビン州議員が、同州での白熱電球販売を、連合の目標より4年早い2012年までに段階的に中止する法案を提出している。レビン議員はこの法案を自ら「電球の取り替えに何人の議員が必要か法案」と名づけている。東海岸では、ニュージャージー州議会が、州政府の建物に取り付けられている白熱電球をすべて電球型小型蛍光灯に取り替えるよう、今まさに要求しようとしているところだ。これは、効率の良い電球への移行を促進する、州全体の幅広い取り組みの一環である。
現在27カ国が加盟する欧州連合は、2007年3月、2020年までに炭素排出量を20%削減する計画を発表した。この削減案には白熱電球を電球型小型蛍光灯に切り替えることも含まれている。
英国では、2006年の初めから、「白熱電球をやめよう」と名乗るNGOグループが白熱電球の廃止運動を強力に推し進めており、さらに東のモスクワでも、住民に電球型小型蛍光灯への切り替えを強く訴えている。ニュージーランドでは、デイビッド・パーカー気候変動担当大臣が、同国でもオーストラリアと同様の対策を講じることになるだろうと発表している。
4月、グリーンピースは炭素排出量の削減に向け、インド政府に白熱電球の禁止を求めた。急成長を続けるインドでは、年間6億5,000万個の電球が販売されているが、そのうち約6億4,000万個が白熱電球であることから、炭素排出量が削減され、大気汚染は軽減し、家計費も節約される可能性は極めて大きい。
照明業界では、世界最大の照明器具メーカーであるフィリップス社が、2016年までに欧州、米国で白熱電球の販売を取り止めると発表した。より幅広い動きとしては、電球製造業者の業界団体である欧州ランプ企業連盟(European Lamp Companies Federation)が、白熱電球の段階的禁止につながるEU内での照明効率基準の引き上げを支持していることが挙げられる。
小売業界では、2006年11月に世界最大の小売業者であるウォルマートが、2007年末までに電球型小型蛍光灯の年間販売個数を現在の2倍以上に伸ばし、1億個の販売を目標とする販売キャンペーンを発表した。英国では、同国最大の電化製品小売チェーンのカリーズ(Currys)が、白熱電球の販売を取り止めるとの声明を発表している。
エネルギー効率の大幅アップを実現するには、電球の切り替えが手っ取り早い。米国政府の依頼を受けて、24ワットの電球型小型蛍光灯1個で、製品寿命が尽きるまでにどの程度省エネが可能かを研究したところ、ガソリンに換算してプリウスでニューヨークからサンフランシスコまで十分走行可能な量になるという結果が出ている。
世界各国で効率の悪い白熱電球の段階的廃止が進めば、世界全体で電力消費量が3パーセント以上削減できるだろうし、よりエネルギー効率の高い街灯への転換を進め、古い蛍光灯を効率の良い新しいものに取り替えれば、電力消費の削減分をさらに倍増させることも可能かもしれない。
高効率の電球型小型蛍光灯は一昔前から店頭には並んでいたものの、ごく最近まではひっそりと目立たない存在だった。購入するのも環境への関心が高い消費者のみで、通常はスーパーではなく工具店で販売されていた。
消費者の関心が低かったのは、この新型電球の値段が、白熱電球の5倍もしていたせいもある。しかし、実際のところは、消費電力は1/4で済み、10倍も長持ちし、耐用年数まで使用すれば容易に50ドル節約できるわけで、このことを知っていたのは、より豊富な知識を持つ消費者だけだった。
電球型小型蛍光灯について一つ問題なのは、中に腕時計用乾電池に含まれる1/5程度の微量の水銀が含まれていることである。これは、白熱電球のために石炭火力発電所が余計に稼動した結果、大気中に放出される水銀の量と比べれば、ごくわずかでしかない。米国では50州のうち44州で、河川や湖沼のような淡水で捕獲される魚の消費を制限する「水銀摂取勧告」が出されているが、このような勧告が出されることになった最大の原因がこの石炭火力発電所から放出される水銀なのである。
とは言え、使い古された電球型小型蛍光灯や時計の電池等の水銀含有製品は、きちんとリサイクルされなくてはならない。ただ、幸いにもこうしたことは実現可能である。対して、石炭火力発電所から吐き出される水銀は広く野山を覆い、水や食料の供給源に入り込む結果となる。
高効率の電球に切り替えれば、月々の電気代は大幅に節約され、炭素排出量の削減にもつながる。標準の電球型小型蛍光灯(13ワット)をその寿命が尽きるまで使用すれば、電球1個につき石炭使用量を210ポンド以上減少させることができるからだ。また、こうした切り替えによって大気汚染も大幅に緩和される。中国やインドのように、急成長を遂げて大気汚染に悩まされている国々にとって魅力的であることは間違いない。
米国ではwww.18seconds.orgという工夫に富んだウェブサイト(電球交換にかかる時間がその名の由来)があり、2007年1月以降全国で販売された電球型小型蛍光灯の集計情報をサイト上で逐次流している。
5月現在で交換された電球は合計3,700万個近くになるが、これによって削減された炭素排出量は自動車26万台を道路から除去したのに匹敵する。ヤフーやニールセンをスポンサーとしたこのサイトには、いくら節約できたか、どれだけの石炭使用量を削減したか等のデータも掲載されている。ウェブ上では州ごとのデータを見ることができ、地方レベルでの白熱電球交換の動きをモニターできる便利な方法が提供されている。
私たち一人ひとりがやるべきことは、当然ながら、家庭の電灯を電球型小型蛍光灯に切り替えることである。もしまだ切り替えを行っていないのであれば、だが。しかし、それよりはるかに重要なのは、市、省または州、そして国のレベルで、自分たちが選出した議員に対し、照明の効率基準を上げる法規制を導入して実質的に非効率な白熱電球を段階的に廃止するよう働きかけることだ。この簡単な方法以外に、炭素排出量をもっと手っ取り早く削減する道はほとんどない。
世界は日々、新たな温暖化の証拠を突きつけられ、またその影響に直撃されている。そうした状況の下では、炭素排出量の削減と気候安定化に向けた取り組みを進めていく上で即座に決定的勝利をあげることが必要だ。早急に白熱電球の段階的廃止を進めることは、まさにこのような勝利につながるだろうし、気候安定化の動きをさらに前進させる機運を高めることになるだろう。
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レスター・R・ブラウンはアースポリシー研究所所長で、『邦題:プランB2.0:エコ・エコノミーをめざして』の著者。
注:この電球型小型蛍光灯切り替えの動きは、2020年までに世界の二酸化炭素排出量を80%削減するための数ある対策のひとつであり、レスター・R・ブラウン著『仮邦題:プランB3.0:文明救済のための動員』の中でも紹介されている。
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研究関連:
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Web: www.earth-policy.org
(翻訳:古谷明世 小宗睦美 飯田夏代)
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イーズの「温断化サイト」にも、電球関係の情報が4件載っています。
レヴァイン法案「カリフォルニア州を全米初の白熱電球禁止州に」
オスラムの白熱電球切り替え事業、CDM事業として認定される
米下院で非効率電球販売禁止法案が提出される
カナダ:オンタリオ州、2012年までに白熱電球を禁止
詳しくは、それぞれの記事をご覧ください。
さて、レスターの講演が英語で聴けるサイトがあります。レスターに会いたい方、レスターの話を英語を聞きたい方、ぜひどうぞ〜!
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情報:農業と環境No.87(2007.7.1)より
第27回農業環境シンポジウム 「食料 vs エネルギー -穀物の争奪戦が始まった-」 (詳細報告)
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/087/mgzn08701.html
第27回農業環境シンポジウム 「食料 vs エネルギー -穀物の争奪戦が始まった-」 が、2007年5月23日、東京イイノホールで開催され、レスター・ブラウン氏の講演(逐次通訳あり)の後、日本国内の専門家が加わってバイオ燃料と食料を巡る国内外の動きと今後の対応について、パネル・ディスカッションが行われました。
農環研Webサイト 内の特設ページ 「第27回 農業環境シンポジウム:食料 vs エネルギー -穀物の争奪戦が始まった- (2007年5月23日、東京) 開催報告と映像」 で、当日の記録を公開していますので、ぜひご覧ください。
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/sympo/h19/0523/report_1.html
このページでは、農環研 佐藤理事長の 開会あいさつ、レスター・ブラウン氏の 基調講演(日本語訳)、レスター・ブラウン氏 ・ 嘉田良平氏 ・ 阮 蔚 (Ruan Wei) 氏 ・ 末松広行氏(以上パネリスト) ・ 秋山博子主任研究員(コーディネータ)による パネルディスカッション、農環研 上路理事の 閉会あいさつ の全文をお読みいただけます。また、シンポジウム全体の映像 (Windows Media Player用) をご覧いただけます。