会議ファシリテーター普及協会代表の釘山健一さんから、『NPOと行政の協働を進める会議ファシリテーション 30の法則』という小冊子をいただきました。この小冊子は有料ですが、入手できます。
http://m-facili.seesaa.net/article/27549033.html
会議ファシリテーター普及協会のウェブサイトには、いくつもの無料レポートも載っているのですが、そのうちの1つ、「NPOと行政の協働を進める会議ファシリテーション 最強のポイント5」をみなさんにご紹介したいのですが、とお願いしたところ、「一人でも多くの行政職員(やNPOのかたも)に読んでいただけるなら、ありがたいことです」とご快諾をいただきましたので、どうぞ!
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=行政職員向け無料レポート=
NPOと行政の協働を進める
会議ファシリテーション
最強のポイント5
1.協働とはまず「仲間」になること =今まで語られなかった視点=
NPOと行政の協働を考える時に、一般的にほとんど語られることがないのに、じつは非常に大切な視点があります。
それは、NPOの多くはとにかくすぐに「仲間」になりたがる特性をもっていることです。
もしかするとNPOは言いたいことをずけずけと言う怖い存在というイメージがあるかもしれません。たしかにそういった面もあります。しかし、本来のNPOはとてもフレンドリーなのです。皆と仲良くやっていこうというのが特性です。
例えば、NPO同士の会議やNPOが主催するイベントでは、とにかく参加者同士が仲良くなることを最大のポイントにしてプログラムを組みます。そして、その会議やイベントに参加した人も、それを機会に少しでも多くの人と知り合いになろうとします。「皆で仲良くなって力を合わせてやっていこう」というのがNPOなのです。
したがって、NPOは行政と協働するというときに、まず行政職員と「仲間」になろうとします。ここがポイントです。
「会議のメンバーあるいは議論の相手」ではなく「仲間」です。
行政職員の方は、NPOを「会議のメンバーあるいは議論の相手」と考えている場合が多いようです。協働するために、会議のメンバーとしてNPOと上手くやっていこうというのが、多くの行政職員の考え方だと思えます。
ところが、NPOはまず行政職員と仲間になりたいのです。そして、仲間と一緒に会議をやっていきたいと思うのです。
このギャップが実際の会議の設定にもあらわれてしまいます。
行政職員はNPOと協働を進めるために、精一杯落ちのないように会議を設定します。会場を用意し、資料を作り、名札を作り、お茶を準備して会議に挑みます。しかし、会議の前にまず皆でゲームをすることは考えていません。
ところが、極端に言うとNPOはまず行政職員と一緒にゲームがしたいのです。ゲームをすることにより、楽しい雰囲気を作り、仲間になり、それから会議に臨みたいと思っているのです。
このNPOの特性をまずしっかりと理解しておくことがポイントです。
したがって、自由にお互いの意見を言い合える雰囲気を作ることを考えることがNPOとの協働の会議の準備といえます。
*雰囲気の作り方については、冊子「NPOと行政の協働のツボ=会議ファシリテーション30の法則」に詳しく書いてあります。
また、仲間なのですから名札の準備や会場の準備は行政もNPOも一緒にやればいいですし、資料を配ったりお茶をだしたりも一緒にやればいいのです。そうやってこそ「一緒に会議を作る」ことになるわけです。
準備を一緒にやることを嫌がるNPOはいません。一緒にぺちゃくちゃ話をしながら準備をすることがNPOが望むNPOと行政の協働の会議の姿といえます。
2.お膳立てをし過ぎないように
通常よく行政がおこなう「審議会」のような会議は、行政職員が完璧に準備をして望みます。一つの落ちもないように準備することが腕の見せ所になっています。
私もいくつかの行政主催の会議に参加したことがありますが、当日、会場に着くとまず受付で名札をもらい、指定された席に着く。そこには資料とお茶が用紙されており、議長の進行にそって話し合いは進み、最後は多数決により決まり、終わるとともにさーと帰っていきます。つまり、完璧に準備され落ちがない会議となっているのです。参加者はただ椅子に座って意見を言って議決に参加すればいいのです。
ところが、NPOと協働でおこなう会議の場合、それではだめです。
なぜ、だめなのか? この点がとても大切な点です。
よくある「審議会」のようなお膳立てをされた会議にNPOが参加した場合、NPOからすると「何て固い苦しい会議なんだ」と感じてしまいます。せっかく行政職員が一所懸命に準備した会議なのに、逆に「だから行政との会議はつまらない」と思われてしまいます。
先ほどもいいましたように、お膳立てをすることよりも、いかに一緒に会議を作っていくかを考えるようにしてください。
一緒に会議を作りたいという思いは、会議に対して主体的に望みたいということです。お膳立てをしてもらうより、自分たちが主体的に会議を作っていきたいということです。
つまり、会議に主体的に関わるということは、「運営に関わる」ということです。よくある「審議会」のように、その場に出て意見を言って帰ってくるだけの「発言マン」になることをNPOは決して望んでいません。会議の初めにアイスブレイクをして楽しい雰囲気を作ったり、資料を作ったり、名札を作ったり、お茶の準備などを一緒にやる会議を作ってください。
*では、いったいどのような会議がNPOが運営に参加する会議なのかということは、冊子「NPOと行政の協働のツボ=会議ファシリテーション30の法則」をご覧ください。
また、会議の運営をNPOと一緒にやることは、会議に対する不満が減るという効果もあります。お膳立てをされてあたりまえという会議では、会議の準備の手落ちが少しでもあると、不平不満がでてしまいます。
完璧に準備しないと少しでも不備があるとそれだけで、事務局に対する不信感が生まれてしまうこともあります。じつは、お膳立てをされた会議は、不平不満が出やすい会議なのです。
そころが、運営を一緒にやっていく場合、不平不満はでません。自分たちも運営に関わっている当事者ですだから、でるわけないのです。このことがとても大切です。あくまでも、NPOと行政の協働の進める会議の基本は、運営まで一緒に担っていくということです。
ただし、現実的にはNPOは忙しくて事務的なことはとてもやれないという場合がほとんどです。したがって、実際は行政職員がいろいろと準備することになると思いますが、お膳立てをし過ぎないという視点を忘れないようにして、NPOとよく話し合ってお互いの会議の運営における役割分担を決めておくことが大切です。
3.硬さを壊す工夫 =一番大切な会議の準備とは?=
NPOとの会議で一番大切なことは、楽しい雰囲気づくりです。したがって、アイスブレイクという硬さを壊すテクニックを行政職員も研究したほうがいいと思います。
会議に慣れているNPOスタッフならアイスブレイクができる人もいますので、協働するNPOにその部分を任せるというのは、まさに協働の会議らしくなります。
冊子「NPOと行政の協働のツボ=会議ファシリテーション30の法則」に雰囲気作りのコツが書かれていますが、そこに書かれていない、協働を進める上で一番大切な影の準備をご紹介します。
それは、参加者名簿を見て、事前に参加者一人ひとりに話しかけるネタを準備しておくことです。
会議の準備とは資料を用意するだけではありません。仲間になるための準備も必要です。そのために一番いいのが、参加者名簿を見て事前に参加者一人ひとりに話しかけるネタを準備しておくことです。
そうして、会議が始まる前から、積極的にNPOの人に話しかけていきます。当日は受付の準備も忙しいと思いますが、それだけに専念することなく、どんどん会議の前に話しかけて、交流をはかってください。
この会議前の交流こそが、最高のアイスブレイクです。
緊張した固い雰囲気で会議を始めるのではなく、会議を始める前にお互いの緊張をほぐしてしまえば、会議が始まってからスムーズに話し合いが進みやすくなるのです。
4.選べるようにしておく
名札、席、マーカー、ポストイット、模造紙、これらはたんに会議のグッズではありません。
会議の雰囲気を作るとても大切なグッズなのです。そのことに気がついてください。
つまり、名札のひもの色、マーカーの色、ポストイットの大きさ、模造紙の大きさなど、それらを自由に選べるようにしておくことが会議に主体的な雰囲気をかもしだしてくれます。
「黒のマーカーで書いてください」と言われ黒のマーカーで書くことは、たんに指示に従っているだけのことです。しかし、「好きな色で書いてください」という指示には、選べるという主体性が担保されているわけです。
このような微妙な仕掛けの積み重ねが、会議参加者に主体性をもたせ、ひいては会議を楽しいものにしていくのです。
5.自分だけで悩まない
「一緒にやる」という意味は自分で悩まないでいいということです。
協働の会議を進めているといろいろ難しいことが起きます。そのときに、行政職員は精一杯考えて何とか答えていこうとします。
ところが、それも裏目にでる場合があります。
「一緒にやる」ということは、困ったことが起きてもそれも一緒に考えていくということです。
したがって、例えば会議のときに話が複雑になってきて行き詰ってきたとき、一人で悩まないで次のように言ってください。
「みなさん、どうしましょうか?」
この言葉を、私たちは会議ファシリテーター最強の言葉と呼んでいます。
なんだ、こんなことかと思われるかもしれませんね。
しかし、実際の協働の会議の現場では、あるNPOの人が行政職員へ少し困った質問を投げかけると、投げかけられた職員が一生懸命に答えようと一人で頑張るというシーンが見られます。
しかし、そういった場合でも、常に参加者皆で考えることが大切で、自分が答えようとするのではなく、まずは、「今の意見について、皆さんどう思われますか?」と場に問うことが大切なのです。
自分で答えるということは、自分の問題と思っているということです。そうではなく、常に皆の問題という視点で問題を考えるようにしてください。
ただし、これは、自分の責任を放棄せよといっているわけではありません。自分が責任をとるにしても、まずは参加者の意見を聴くことを忘れてはだめだということです。
自分の責任だと思って一所懸命すべてを自分でやっていると、あいつは自分勝手にやっている、と批判されることもあることになるのが世の常です。
まして、協働でものごとを進める場合、とにかく皆にはかりながら進めることが重要で、会議の場で難しい事態が起きても、自分で背負い込まないで、場に問うていくことが大切なことといえます。
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ほかにも、このような無料レポートがあるそうです。
http://m-facili.seesaa.net/article/24986239.html
■無料レポ 「つまらない会議を有効に使う技」
*つまらない会議でも、アイディア一つで、こんなに有効に使えるのかとビックリする方法が書かれています。
■行政・NPO向け無料レポ 第2弾
「審議会とは違う会議を目指して〜資料命からホワイトボード命へ〜」
*協働を進める会議で誰でもできて、非常に効果が高いのがホワイトボードを活用することです。ホワイトボードこそ会議の命です。そこを感じてください。
■行政・NPO向け無料レポ 第3弾
必殺!お菓子の工夫もこんなにある〜会議変革のためのお菓子の活用方法〜
★どのレポートも、info@m-facili.net まで、希望の無料レポート名、氏名、職業、お住まいの都道府県を明記のうえ、メールをお願いします。お申し込みいただきますと、指定のアドレスに、無料レポートが送られます。
釘山さんはこのような本も出しておられます。
『もっとすごい! 非常識な会議 会議を楽しくする黄金のコツ26』
(ソフトバンククリエイティブ)
「会議」と呼ぶかどうかは別として、私も、人と人が話をする場にとても興味があります。コミュニケーションにはいくつかのレベルがあると思うのですが、一方的に伝えたり、説得したり、というのではなく、「共創型コミュニケーション」に関心があり、少しずつ勉強しています。それはどういうプロセスなのか、どういうふうに創り出せるのか--そのうち勉強の成果をお伝えできたら、と思っています。
さて、ここからは余談ですが、会議といえば、「動物会議」です!(ケストナー・ファンの人にはわかる!)
6年前に出した [No. 504] でのご紹介をもう一度。『動物会議』とは、私の大好きなケストナーが第二次世界大戦の直後に書いた作品です。
『動物会議』(エーリヒ・ケストナー、岩波書店)2500円
最初はこんなふうに始まっています。
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電報-・・-あて先 全世界 ロンドン会議おわる 話し合いは決裂
国際委員会を4つつくる つぎの会議をひらくことは決定
開催地については合意にいたらず-・・-
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読み進めるとますます「まるで今の様子みたい!」と思えてきますよ(^^;)
人間たちが会議ばかりやって、まったく平和な世界に向かって進んでいないことに我慢ができなくなった動物たちが世界中から一堂に会して、会議を開きます。開会の辞をお聞き下さい。
「ぼくたちがここにあつまったのは、人間の子どもたちの力になるためです。なぜか? 人間たちじしんが、このなによりもたいせつなつとめを、ほったらかしているからです! ぼくたち動物は、団結して、二度と戦争や貧困や革命がおきないことを要求します!」
当然ながら、人間たちは断固として動物たちの望みを拒絶します。動物たちがどのような作戦を練って、最後に永久平和の条約に署名させることができたか?
とっても楽しいストーリーはどうぞ本を読んで下さい!
最後に翻訳者のあとがきからご紹介しておしまいにします。
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この作品は、愚行をくりかえす人間社会を座視してはいられない思いにつらぬかれていますが、50年たった今も、事態はまったく変わっていないことに、ほんとうにいやになってしまいます。
戦争、難民、飢饉、それらに無力な国際政治。まるきり今と同じです。いえ、世界大戦からなにも学ばなかったのがこの50年だったのか、と思い知らされて、今のほうがより悪い、とすら思えてきます。
でも、絶望するのは簡単です。「いやになってあきらめてしまうのは、もっとよくないことでしょう?」とケストナーはしぶとく言い続ける人でした。しぶとさを支えるのは、目くじら立てる対決の姿勢ではなくて、ユーモアと想像力です。
この50年の間、私たちの世界は、動物たちとの約束を破って、よくないことをだらだら続けてしまった一方で、ジョン・レノンの歌にも耳を傾けました。「想像してごらん、国境なんかないのだと」(「イマジン」)-これこそは、ケストナーがこの作品で言っていることです。
これを書いている今日も、どこかの国のおえらいさんたちが、自分たちがおえらいさんをし続けるという、ただそれだけの理由で、自分たちの国が国際的な平和のための条約に調印することを拒否しました。
動物たちは、今日も業を煮やしていることでしょう。でも、いやにならずに踏みとどまる心の力が、私たちにはあることを、この絵本に出てくる動物たちといっしょに確かめたいと思います。
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夏休みの課題図書、というわけではありませんが(^^;)、大好きなケストナーの本を2冊ご紹介。
『ふたりのロッテ』ケストナー(著)高橋 健二 (訳)岩波書店
別々に育てられたふたごの姉妹ルイーゼとロッテがあるときばったり出会います。ふたりが別れた両親を仲直りさせるために立てた計画とは……? わくわく・どきどき。忘れていた何かを思い出させてくれるような、珠玉の一冊です。池田香代子さんの新訳も出ていますが、ここでご紹介しているのは、昔から大好きなこの雰囲気を醸し出してくれている高橋健二さんの訳です。
『飛ぶ教室』ケストナー(著)高橋 健二 (訳)岩波書店
小学生の頃から大好きで、100回ぐらい繰り返し読みましたー。
そういえば、最近読んでいないから、もう一度読んでみようかな〜。