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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年08月22日

「緩和策と適応策」〜スウェーデンからの最新情報(2007.08.19)

温暖化
 

サンゴの白化について、ちょうど届いたWWFからのニュースレターにも大きく取り上げられていました。

> ■白保サンゴ礁でサンゴが大量白化
>
> 世界的に貴重なサンゴ群落が残る石垣島・白保のサンゴ礁で、大
> 規模なサンゴの白化現象が起こっていることが確認されました。
> 今回の白化現象によるダメージは、大規模な白化が起きた1998年
> の時の被害を上回る、甚大なものになることが懸念されています。
>
> ▼詳しくはこちら
> http://www.wwf.or.jp/activity/marine/news/2007/20070808.htm

高水温ストレスに強いとされている種類のサンゴも白化を起こしているのが確認されたそうです。。。

岐阜県多治見や埼玉県熊谷で、74年ぶりに更新した国内観測史上最高の40.9度という気温が報告されましたね。

熱中症にかかる方も増えているとのこと。自分で「自分は熱中症だ」と感じることはまずないということなので、それぞれ十分に注意しましょう。「熱中症予防8ヶ条」がこちらにあります。

温暖化が進んで気温が上がってくると、「国内観測史上最高記録を更新」というニュースが頻繁に出てきてしまいそうです。熱中症事故も起こりやすくなります。

温暖化をできるだけ進めないようにするための「緩和策」に加えて、止まるまではいやでも進んでしまう温暖化に対する「適応策」も、私たちは考えていかなくてはなりません。

前にもご紹介した『NHKスペシャル 気候大異変―地球シミュレータの警告』を読んで感心したのは、2004年に熱波に襲われたヨーロッパでは、多数の死者を出してしまった経験から、ふたたび熱波に襲われても被害が出ないよう、さまざまな連絡体制や特に老人へのケアなど、「社会のしくみ」を整備している、という記述でした。

『NHKスペシャル 気候大異変―地球シミュレータの警告』
江守 正多 (著), NHK「気候大異変」取材班 (著)

日本でもそういう事態の起こる可能性が高まっている現在、「大きな被害が出てから」ではなく、そういうときに混乱せずにきちんと対応できる態勢づくりを、国も自治体も各組織も、そして私たちひとりひとりも進めなくては、と思います。社会のしくみ作りでいえば、ヨーロッパの経験と仕組みに学ぶだけでも、大きく進むことでしょう。

ちなみに、上述した「緩和策と適応策」について、日経エコロジーで連載中のコラム「目からウロコの環境英語」第8回で取り上げたことがありますので、ご参考まで、引用します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日経エコロジー「目からウロコの環境英語」第8回

mitigation(緩和策)と adaptation(適応策)

地球温暖化が進行に伴い、さまざまな影響が日本・世界の各地から報告されています。地球温暖化による影響を軽減するために取り組まなくてはなりませんが、この取り組みは「mitigation」と「adaptation」という二つに分けられます。

mitigationとはmitigate(軽くする、和らげる)の名詞形で、「緩和策」と訳されます。地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出を減らし、大気中の温室効果ガス濃度をこれ以上増やさないことで温暖化の進行をとどめようとする取り組みです。

根本的な対策といえるでしょう。大気中に排出する温室効果ガスを減らさない限り、温暖化が進んでしまいますから。しかし、緩和策はその効果が表れるまで時間がかかることが多く、温室効果ガス排出量を大きく削減するためには、エネルギーをはじめ社会インフラなどを大きく変える必要があることから、費用も高くつくといわれます。

もう一つのadaptationは、adapt(適応する、順応する)の名詞形で、「適応策」と呼ばれます。これは、温暖化が進むという前提で、温暖化する気候に、人や社会・経済を調整・適応させて影響を軽減しようという取り組みです。

温暖化に伴う気温や海抜の上昇といった症状に対する対症療法的な取り組みとも考えられます。適応策をいくら進めても、温暖化そのものを止めることはできないからです。

数年前に温暖化の会議で「緩和策と適応策」という考え方の説明を通訳しながら、「適応策を考えることは温暖化すること自体を認めることになる。緩和策だけを考えるべきだ」と思ったことを覚えています。

しかし、地球温暖化のさまざまな兆候が観測されている現在、根治策に取り組みながらも、その効果が表れるまでの時間的遅れを考えると、その間にどうしても進んでしまう温暖化に対する適応策も必要だと思うようになってきました。

現在でも少しずつ取り入れられていますが、たとえば、今後の温暖化を考慮に入れた上で、建物のバルコニーや日よけ、自然換気などを設計し施工することは、実現可能性と効果の大きい適応策です。

また、温暖化によって渇水等、見ず資源の減少が予測されていますが、節水器具を導入したり漏水管理をすることで、温暖化による水不足対策を施すことができます。予測されるヒートアイランド現象の悪化に対し、風の道を確保するなど建物の配置等を考えて設計することも適応策です。

予測される温暖化の影響のすべてに適応策が可能なわけではありませんが、温暖化がすでに起こっている以上、温暖化した気候の中で社会・経済を維持するための適応策を進めつつ、しかし目の前の解決策だけに資源を投下するのではなく、根本的な緩和策である温室効果ガス削減を強力に進めるというバランスがいっそう必要となってきます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

さて、スウェーデンにお住まいの国際NGOナチュラル・ステップ・インターナショナル日本支部代表 高見幸子さんから、メールをいただきました。スウェーデンのようすや動きから、私たちが学べることがたくさんありそうなので、メールニュースへの転載をお願いしたところ、ご快諾いただけましたので、お届けします。

(この中にも「緩和策」「適応策」がいくつも出てきます。読みながら区別してみるとよいトレーニングになるかもしれません)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

暑中お見舞い申し上げます。
ヨーロッパの7月は、今年も、異常でした。
南欧と東欧の異常な酷暑と英国の気象庁測定を始めた1700年代以来の大洪水、スウェーデンでも西海岸、南部で洪水です。
スウェーデンの自治体は、今後、川の沿岸に民家を建設する際の許可の基準を、気候変動を考慮した上で、見直すと言っています。

●8月1日からストックホルムで渋滞税が導入されましたが7月の新車購入の20%がエコカーだったそうです。また、導入と同時に、街の中の車は、20%減りました。誘導政策の効果はてきめんです。日本にも、誘導政策があれば大きく変わると思います。

●先週、スウェーデンの北部に日本からの視察団を案内するための下見に行っていました。テイムロという2万人くらいの小さい町ですが、エココミューンです。

いろいろな対策の中に、脱石油の対策の一つとして乗馬学校の50頭の馬の糞をおが屑と混ぜてバイオマス燃料にして活用。その施設の暖房とお湯を供給していました。製材所や床のメーカーからのおがくずが主な燃料でしたので、結局木質バイオマスのボイラーです。

近い将来は、増設して、近くの住宅街30所帯への地域暖房の供給もする予定。また、この地方の山はスウェーデンとしては比較的急峻ですが、林業が盛んでした。林業高校もあり、林業を基盤産業として次世代の育成もしっかりしていました。小さい町なので、地方テレビが私たちの活動に関心を示してくれました。下記のウェブでニュースが見れます。
http://svt.se/svt/jsp/Crosslink.jsp?d=55868&a=876539&lid=puff_876562&lpos=rubrik(エダヒロ注:スウェーデン語ですが、高見さんがメインで映っています)

8月末に、日本から大学の教授が視察に来られます。

●6月28日に、スウェーデンの環境保護庁とエネルギー庁が共同で地球温暖化政策の「チエックポイント2008」という報告書を政府に提出しました。地球温暖化のロードマップが定期的にチエックされ政府が今までの誘導政策の修正、新しい政策の導入の検討する土台にしています。

その報告書によると、IPCCの報告書を取り上げ、スウェーデンを始め先進工業国は、気温上昇を2度に抑えるために、2050年にー60〜80%を、2020年に25〜30%削減することを目標にすべきと言っています。

また、2008年〜2012年の短期的な目標に今、フォーカスをすべきではないと言っています。理由は、エネルギーと交通の根本の問題を長期的に考えた大きな投資が必要で、いかにコストを少なくしてするかということを考えなければならないからだと言っています。

また、2020年のー25〜30%削減は、スウェーデンの経済へ大きな影響を与えることなく達成可能だという結論を出していました。

戦略には3つ柱があります。
1、スウェーデン国内での温暖化ガスの削減
2.EUの排出権取引のシステムに入っている企業に対して排出権の配布を減らすこと
3.発展途上国の排出を減らすプロジェクトへの政府の助成金を出す

では、どのような誘導政策が、それぞれのセクターで必要なのかという具体的な政策と対策も報告書にあります。英語版がありますのでぜひご参考に読んでください。
http://www.energimyndigheten.se/WEB/STEMEx01Eng.nsf/F_PreGen01?ReadForm&MenuSelect=68C791734D7868C9C125730800420752

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

このウェブサイトは、エネルギー庁のサイトなのですね。上で高見さんが書いてくれている部分がトップにありますが、

「Greenhouse gas emissions can be sharply reduced :
It is possible to reduce greenhouse gas emissions by both 25 and 30 per
cent by 2020, with limited effects on the Swedish economy. 」

「温室効果ガスの排出量は大きく減らすことができる:2020年までに温室効果ガスを25〜30%削減でき、スウェーデン経済への影響は限定的」

こういう文言が、経産省や資源エネルギー庁のウェブサイトに大きく掲載され、「そのために私たちはどうするか」と、経済的インセンティブを含む誘導策を説明するページが続く……

という日が、日本でも早く来るといいなぁ!

 

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