私は、21世紀のキーワードは、「つながり」ではないかなと思っています。
これからの時代に、そしてこれからの社会に必要な、私たち一人ひとりの能力は、「決まったことをいかに速くおこなうか」もしくは「決まったことをどれだけ正確におこなうか」という能力よりも、コミュニケーションの力や、新しいものをつくり出す創造力ではないかと思っています。
コミュニケーションも、「つながりをつくる」ことです。創造性やひらめきも、「つながり」がキーワードです。自分の中にいろいろとあるものが、何か新しい形でつながったときに、「ひらめき」となり「創造性」になるのだろうと思うからです。ですから、個人のレベルでも、「つながり」が大事なキーワードだと思っています。
同時に、今のいろいろな地球環境の問題、教育や社会のさまざまな問題を考えても、私は、「すべての問題の原因はひとつだ」と思っています。それは、「大事なものとのつながりが切れてしまっていること」です。
自分と、つまり自分の心とのつながりが切れたときに、精神的にとてもつらい状態に陥ってしまいます。自分と周りの人とのつながりが切れたとき、それは家庭の問題や教育の問題になって表れてくるでしょう。そして、自分と地球とのつながりが切れてしまったとき、環境問題が表われているのではないかと思っています。
これまで、高度経済成長時代もバブルの時代も、「もっと速く、もっとたくさん」がキーワードでした。たくさんつくって売って使って捨てることが経済の原動力となっていました。その時代に、「今、それどころじゃないから」と置いてきてしまった大切なもの--この大切なものとのつながりを、いま取り戻す時代に来ているのではないかと思っています。
私は、環境のテーマに主に取り組んでいますが、それは、これがいちばん切迫した問題のひとつであると思っていることと、つながりが切れていることがいちばん見えやすい問題であるからです。ですから、単に環境問題を解決するというだけではなくて、「大事なものとのつながりを取り戻し、見直し、つくり出す」お手伝いができればと思って活動しています。
日本を見ていても、世界を見ていても、「取り戻す時代」がほんとうに来ていると思います。私たちは、何を取り戻そうとしているのでしょうか?
ひとつは、「時間」です。私たちは時間を会社に差し出して、その対価としてお給料を受け取り、そのお給料で幸せを買えると思っていました。でも、自分の時間を差し出しても差し出しても、私たちは幸せになっているんだろうか……?
人生というのは時間の連続です。ですから、自分の人生を取り戻すために自分の時間を取り戻そうという動きが日本でも――100万人のキャンドルナイトもそのひとつですし、スローライフといわれる動きもそうです――、そして世界でも同じように、同時多発的に生まれ、広がっているのは、とても心強いことだとと思っています。
また、「人とのつながり」を取り戻す。そして、「自分の手綱」を取り戻す。環境問題もほかの問題も、私たち一人ひとりが、「自分の頭で考え、自分で選び、自分で決める」力を取り戻したときに、大きく解決に向かうのではないかと思っています。
「世間がこう思うから」とか、「あの人がこう言うから」とか、「みんながそうするから」ではなくて、「みのもんたさんはこれを勧めるけど、私はこう思う」「世間ではこうみたいだけど、私はこう選ぶ」とか、一人ひとりが自分で考えて、自分で選んで、自分で決める力を取り戻す。
これが、温暖化をはじめ環境問題、そしてそのほかのさまざまな社会の問題を解決する鍵になっていると思っています。いま、ますますその確信を強めているところです。
これは環境の分野だけではなくて、さまざまな分野でやはり「つながり」というのがキーワードになってきているなと思います。脳科学者の茂木健一郎さんの本を読んでも、脳科学の分野でも、やはり「つながり」が重視されていることがわかります。同じだなと思って読んでいます。
私も、新しい活動や自分がやりたいこと、そのための手段など、いろいろ考えているときに、ひらめく瞬間があります。私はひらめくとすぐ行動に移してしまうので、結果的にいろいろなことをやっているのですが(^^;)、「どういうときにひらめくのですか?」と人に聞かれて考えたことがあります。
ひらめきって、何かが天から降ってくるのではなくて、すでに自分の中にいろいろあるものが新しいつながりをつくった瞬間がひらめきなんだろうなと、思っています。
ですから、たくさんひらめきたいとしたら、本を読んだり人の話を聞いたりして、たくさんいろいろな要素(つながりの元)を、たくさん自分の中に吸収すること。そして、それらがごっちゃになっても、ひらめきにはならないので、そういう要素の間のつながりをつくる活動を意識的にすること。こういう努力が、創造力やひらめきにつながっているのではないかと。
「システム思考」は、「つながりをつくる」ということを、まさに前面に打ち出している考え方です。「つながりをつくってみましょう」と言われても、「どうやって?」と思うかもしれません。そのつながりをつくる考え方やツールを、システム思考は提供してくれています。
ですから、これまで「つながり」ということを考えないで問題解決をしようとして、うまくいかなかったけれども、システム思考を用いて、つながりを見たり、創り出すことで問題解決がうまくいくという事例もたくさんあります。自分のひらめき力や創造力を鍛えるという意味でも、システム思考はとても役に立つと実感しています。
さて、一般の方向け「システム思考」入門セミナーとワークショップ、7月開催分も好評のうち終了しました。「次回はいつ開催されるのですか?」とお問い合わせをいただいていますが、秋は海外・国内出張が多くてなかなか時間がとれず、少し間が空いてしまいますが、次回は12月16日東京での開催です。(ビジネス向けは10月にも開催します。下記参照ください)
◆12月16日「システム思考」入門セミナーとワークショップ開催のご案内
午前中のセミナーでは、3時間でシステム思考の基本的な考え方やツールを身につけます。午後のワークショップは少人数制で、じっくり自分の課題や変えたいことに取り組みます。
システム思考についてまずは学びたい、という方は、午前中のみご参加ください。丁寧な説明とふんだんな練習で、じっくり考え方とツールを身につけます。
ご自分の課題についてシステム思考を用いてじっくり考えたい方は、午前・午後の両方にご参加下さい。午後に4時間かけて、午前中に学んだツールを用いて、自分の課題をじっくり掘り下げ、「解決のための働きかけ」まで考えていきます。午後は講師がおひとりおひとりに詳しくアドバイスしながら進めていきます。
○日程:2007年12月16日(日)
○場所:
NHK青山荘 2階 銀杏全室
〒107-0062 東京都港区南青山5-2-20(表参道より徒歩1分)
TEL:03-3400-3111
○講師:枝廣淳子・小田理一郎
○スケジュール:
☆「システム思考入門セミナー」
9:15 開場(受付開始)
9:30 システム思考入門
1.システム思考の基本的な考え方
2.システム思考のツール(1)時系列パターングラフ
3.システム思考のツール(2)ループ図
4.応用と展開について
12:30 終了
★「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」
13:30 開場
13:45 システム思考を自分の成長に役立てる
1.自分の目標をシステム思考のツールで表す
2.自分の問題や課題の構造をシステム思考で掘り下げる
3.問題解決のために構造を変える働きかけを考える
4.発表、講評
17:45 終了
○定員:
☆「システム思考入門セミナー」:約35名
★「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」:12名程度
○参加費:(いずれも税込)
☆「システム思考入門セミナー」(午前のみ):12,000円
★「システム思考入門セミナー」と「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」の両方(全日参加):52,000円
★「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」(午後のみ):40,000円
※これまで午前の入門セミナーに参加された方は、午後のワークショップのみの受講も可能です。
これまでのシステム思考コースに参加された方のフォローアップやスキルアップにも最適です。さらに考えてみたい、別の課題を取り上げてみたい、復習してしっかり身につけたいという方も、ぜひどうぞ。
○お申し込み・お問い合わせ:
メールで以下の申込書をお送りください。参加費の振込についてご案内します。参加費の振込をもって正式受付とし、受講票をメールでお送りいたします。定員に達した時点で締め切り、あとはキャンセル待ちとなります(キャンセル待ちの方には、次回のご案内を先行してお送りします)。
申込書送付先: info@es-inc.jp
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申 込 書
2007年12月16日 (いづれかに印をおつけください)
( )「システム思考入門セミナー」(午前のみ)
( )「システム思考入門セミナー」と「システム思考を自分の成長に役立てる
ワークショップ」の両方(全日参加)
( )「システム思考を自分の成長に役立てるワークショップ」(午後のみ)
※以前、午前の入門セミナーを受講された方
ご氏名 [ ]
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]
※この講座をどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名( )
( ) c. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) d. イーズのウェブサイト
( ) e. イーズメール
( ) f. 他のメールマガジンによるご案内 ( )
( ) g. その他 ( )
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システム思考に興味のある方、ご自分の課題にいつもと違うアプローチで取り組んでみたい方、お待ちしています。特に、繰り返し起こる問題や、何とかしようと試みてもなかなか改善しない状況に効きます。
みなさんといっしょにループ図を考えられることを楽しみにしています〜。
ビジネス向けはこちらです。
○10月16日東京 「システム思考トレーニング」ベーシックコース開催
http://change-agent.jp/news/000093.html
※定期的に開催している「システム思考トレーニングコース」は、この度「システム思考トレーニングベーシックコース」に名称を改めました。コース内容は同じです。
○10〜12月「システム思考トレーニング」アドバンスコース開催
http://change-agent.jp/news/000097.html
これまでに「システム思考トレーニング」ベーシックコース(旧「システム思考トレーニングコース」)を受講された方々を対象に、システム思考を「使いこなす」力をつけるためのアドバンスコースを開催いたします。1ヶ月に1回ずつ、3ヶ月のコースとなっています。
参加者ご自身が、現在直面している問題に対し、システム思考に基づいた解決方法を考え、実践していきます。システム思考トレーニングコースで得たシステム思考の基本的な考え方や、時系列変化パターングラフ、ループ図などの基本ツールの使い方をおさらいしながら、さらに上級のシステム思考の手法を紹介します。
【第1回】システム思考のプロセス〜本質的な問いを立てる
【第2回】システムの複雑な構造〜システム原型を使いこなす
【第3回】問題構造のツボ〜レバレッジ・ポイントを探す
講師:小田理一郎
○新コース「学習する組織リーダーシップ研修」開催(9月1〜2日)
http://change-agent.jp/news/000090.html
いよいよアドバンスコースも始まり、システム思考をベースとした「学習する組織」のコースも始まります。楽しみです。
まったくの雑談ですが、上記【第3回】にもある「レバレッジ・ポイント」(レバレッジ=テコ。小さな力で大きく動かせる、テコの作用点のような介入ポイントのこと)を講演などで紹介すると、「ビバレッジ・ポイント」と覚えちゃう方がいらして。(^^;
まあ、暑い日には、レバレッジより、ビバレッジですけど。(^^;