あいだが空いてしまいましたが、予告した「IPCCについて日経エコロジーに書いた連載からのご紹介」です。
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「枝廣淳子の目からウロコの環境英語」第19回 SPM
IPCCがIntergovernmental Panel on Climate Changeの頭文字で「気候変動に関する政府間パネル」であることはご存じの方も多いでしょう。最初のinterは「〜間」という意味で、たとえばinternational はnation(国)の間、つまり「国際的な」の意味。intercontinentalはcontinent(大陸)の間、つまり「大陸間」となります。
IPCCは、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立した国連の組織です。その任務は、「各国の政府から推薦された科学者の参加のもと、地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、得られた知見を、政策決定者をはじめ広く一般に利用してもらうこと」です。
IPCCが科学者の集まりだと知っていても、その重要な任務のひとつが、「得られた知見を、政策決定者をはじめ広く一般に利用してもらうこと」であることは初めて知った、という人も多いことでしょう。
今年に入って出されたIPCCの第4次評価報告書にも、この任務に基づいて、SPMという要約が付いています。SPMはSummery for Policy Makersの略語で、summeryは「要約」、policy makersは文字通り「政策を作る人々」、つまり政策決定者向け要約です。
IPCCには3つの作業部会があり、第1作業部会は「科学的根拠」、気候システムおよび気候変化についての評価を行います。第2作業部会は「影響、適応、脆弱性」で、生態系、社会・経済等の各分野における影響および適応策についての評価を、第3作業部会は気候変化に対する「緩和策」についての評価を行います。それぞれの作業部会の評価報告書にSPMがついています。
IPCCの文書を読むときのひとつの鍵は、可能性や確信度、不確実性の表現です。たとえば、科学的知見を扱う第一作業部会では、「ほぼ確実である」(virtually certain・確率>99%)、「可能性が極めて高い」(extremely likely・確率>95%)、「可能性が非常に高い」(very likely・確率>90%)、可能性が高い(likely・確率>66%)、どちらかといえば(more likely than not・確率>50%)と基準が定めて、ある結果が将来起こる、もしくは起きつつある場合に対する確率的な評価をおこなっています。
政策決定者に科学者の知見や議論を伝えるために書かれたSPMは、簡潔にまとめられており、私たちもぜひ読むべき文書です。
IPCCに参加している研究者は「「IPCCの本文にもぜひ目を通してほしい。少なくともTSだけでも読んでほしい」と言います。TSはTechnical Summery、テクニカル・サマリーです。SPMが政府の承認を受けなくてはならないのに対し、本文やテクニカル・サマリーには科学者の書いた言葉そのままが載っています。ぜひあわせて読みたいものです。
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3つの作業部会の報告をあわせた統合報告書は、11月17日頃公表予定です。
IPCCのサイトに報告書等載っています(英語)
http://www.ipcc.ch/
また、日本語で読むには、こちらが便利です。
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html
以下の日本語訳があります。
特に「政策決定者向け要約(SPM)」はぜひご覧ください。
第1作業部会(自然科学的根拠)
○気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について(環境省・経済産業省・気象庁・文部科学省:平成19年2月2日)
○政策決定者向け要約 気象庁訳はこちら(気象庁ウェブページ)
○第1作業部会報告書の概要をプレゼンテーション形式にまとめました。利用に当たっては、環境省資料であることを明示の上、改編することなくページ毎にご利用ください。第1作業部会報告書の概要 [PDF 2.98MB]
第2作業部会(影響・適応・脆弱性)
○気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)の公表について(環境省・経済産業省・気象庁・文部科学省:平成19年4月10日)
○政策決定者向け要約 環境省仮訳はこちら [PDF 274KB]
○第2作業部会報告書の概要をプレゼンテーション形式にまとめました。利用に当たっては、環境省資料であることを明示の上、改編することなくページ毎にご利用ください。第2作業部会報告書の概要 [PDF 4.41MB]
第3作業部会(気候変動の緩和策)
○気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)の公表について [PDF 56KB](環境省・経済産業省:平成19年5月4日)
○5月4日付公表「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)の公表について」の修正について [PDF10KB]
○財団法人地球産業文化研究所 仮訳はこちら
○第3作業部会報告書の概要をプレゼンテーション形式にまとめました。利用に当たっては、環境省資料であることを明示の上、改編することなくページ毎にご利用ください。第3作業部会報告書の概要 [PDF 1.87MB]
概要のプレゼンテーションファイルはとても便利です。これをパラパラみているだけでも状況がある程度わかると思いますが、前回もご紹介した「環境を考える経済人の会21」の朝食勉強会で話した講演録をあわせてお読みになると、それぞれのグラフの意味などの解説もあり、よりわかりやすいと思います。
2006年度第8回[3/7]
近藤洋輝氏
(独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター特任上席研究員)
「IPCC/WG1第4次評価報告書〜温暖化の現実と予報に関する確実な先端知見」
http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/MORNING/index06.html
2007年度第2回[5/11]
原沢英夫氏(独立行政法人国立環境研究所 社会環境システム研究領域 領域長)
「IPCC第4次報告〜WG2」
http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/MORNING/mng200702.pdf
第3回[5/29]
甲斐沼美紀子氏
(独立行政法人国立環境研究所 地球環境研究センター温暖化対策評価研究室長)
「IPCC第4次報告 第3作業部会(緩和)」
http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/MORNING/index07.html
温暖化をめぐって、心強い動きが伝わってくる一方、心配なニュースも飛び込んできます。このところ、ほぼ毎日温暖化に関わる講演をしているのですが、ほぼ毎回新しい情報を追加してお話ししています。それぐらい、動きや変化が増えています。。。私にできる範囲で、メールニュースでもお伝えしていきますね。