昨年2007年の最初のメールニュースに、「持続可能性のためのマーケティング研究所:Institute of Marketing for Sustainability の活動を始めます」と書きました。どうやって効果・効率的に伝えていくか、どうやって知識や情報を行動につなげていくかを考え、研究し、実践していくためです。具体的な内容として、以下のように書きました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)骨太の哲学:
持続可能性に関する自分なりの思想・枠組みを身につけ、ぶれない(しかし柔軟性のある)変化の方向性を考えられる力
(2)深い変化:
知識レベルではなく、行動・メンタルモデルのレベルでの変化を創り出すアート
①個人レベル
②組織・社会レベル
(3)広げるためのしくみやアート・スキル
効果的・効率的に伝えるためのスキルとともに、これから主流となってくるであろう「共に創り出すためのコミュニケーション」のアート・スキル
①どう伝えるか
②どう共創するか
そして、これらの実践のフィールドとして、温暖化や森林問題などに取り組む予定です。
まずは、研究(勉強)です。システム思考はもちろんですが、その組織への応用でもある「学習する組織」、心理学をはじめとする行動科学、イノベーション普及理論、戦略的コミュニケーション、創り出すためのダイアログ(対話)という新しい手法など、研究課題はいっぱいあります〜。
すでに開発を進めているものもあり、春から、実践編のワークショップやセミナーを開催していく予定です。どうぞお楽しみに!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昨年は、5〜9月に「骨太の枠組みをつくるための環境必読書を読む会」を開催し、60人ほどのメンバーと勉強したほか、海外の国際会議やセミナーに出て、日本にはまだあまり導入されていないコミュニケーションや、変化を創り出すための手法やアプローチについて、学びました。
今年も、自分で勉強を続けながら、ときどき、関心のある方々といっしょに勉強できる機会をつくっていきます。その第一弾として、上記の(3)にある「これから主流となってくるであろう「共に創り出すためのコミュニケーション」のアート・スキル」を実践的に学ぶ講座を3月に開催します。
コミュニケーションが重要であることはいつの時代でも変わりがありません。私たちは、会社でも、学校でも、コミュニケーションの基本の「ほう・れん・そう」(報告・連絡・相談)」や、プレゼンや営業トークなどの効果的な「説得」、議論で相手に打ち克つための「ディベート」を学んだりします。また、相手の要望と自らの要望で折り合いをつける「交渉」術や、自らの相手の立場になって聞き取る「傾聴」などを身に付ける人がいるでしょう。
日進月歩で進化しつづけるコミュニケーション手法の中で、今もっとも注目されるコミュニケーション手法が、「共創型コミュニケーション」です。一方または双方が、相手に自分の考えを主張するのではなく、コミュニケーションに参加する人たちで、新しいものを一緒に「創り出す」というのが大きな特徴です。
サステナビリティ活動、環境活動の中でも、「経済」対「環境」、「開発」対「保全」、「現在」対「将来」などさまざまなジレンマに陥ることがしばしばあります。このようなとき、つい自らの立場を守り、主張する結果、議論が二極化して平行線をたどってしまうことはないでしょうか。あるいは、どうやって手をつければいいか、その糸口も見出せないことすらないでしょうか。
このような複雑で難しい状況を打破して、解決策に導くには、今までのコミュニケーション手法では不十分です。「共創型コミュニケーション」は、まさに複雑な問題を乗り越えるためにつくられたコミュニケーション手法なのです。
今回の「骨太シリーズ」では、この最先端の「共創型コミュニケーション手法」の中でも注目されている4つの手法を紹介していきます。
(1)オープン・スペース・テクノロジー(Open Space Technology, OST)
OSTとは、ハリソン・オーウエン氏がネイティブ・インディアンの生活形式からヒントを得て開発したダイアログ手法です。OSTでは、参加者全員が輪になって、輪の中にオープン・スペースをつくっておこなう対話です。OSTの最大の特徴は、対話のテーマだけでなく、時間と場所の全ての選択が参加者に委ねられている点にあります。
(2)ダイアログ(Dialogue)
「対話(ダイアログ)」は、デイビッド・ボーム氏が実践を重ねて開発したグループでのコミュニケーション手法であり、しばしば「議論(ディスカッション)」と対比されます。ディスカッションは、1つの事象をそれぞれ異なった視点で分析・解体し、その違いを明確にしていく働きがありますが、一方ダイアログは、異なる視点や性質の中に、つながりを見出していく働きがあります。それにより、表面的には相反すると思われた性質の奥にある意味や想いが徐々に融合され、一つの全体性が現れてくるという特徴があります。
(3)アプリシアティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry, AI)
AIは、デイビッド・クーパーライダー教授が提唱した、新しいコミュニティ開発の手法です。Appreciativeとは、「価値を見出す、感謝する」ことである、Inquiryとは、「問いかける、探求する」ことを意味します。
AIは、価値を見出す問いかけを通じて、個人やコミュニティの「強み」に注目し、本来の可能性を引き出す対話をおこなうアプローチです。問題点、欠点などを探すこれまでの『問題解決型の組織変革手法』とは対極的な手法です。個人やコミュニティの「強み」に注目し、本来の可能性や活力を、 対話によって引き出すことに特徴があります。
(4)ワールド・カフェ(World Cafe)
ワールド・カフェは、人々がカフェにある空間のようなオープンで創造性に富んだ会話ができる場とプロセスを用意することで、組織やコミュニティの文化や状況の共通理解を促し、新しい知識の創造を行うコミュニケーション手法です。アニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏によって開発され、数十人から1500人まで、さまざまな規模でおこなわれています。
昨年4月に、数十人の参加者を得ておこなった Climate Cafe は、このワールド・カフェの手法を実践したものです。私にとっても初めての試みでしたが、とても大きな成果が得られ、その後、たびたび活用しています。おかげで、講演者やファシリテーターとしての自分のあり方の幅も広がったと効果を実感しています。
今回の4回シリーズ講座では、以上の4つのテーマについて、毎回、実際に手法を活用しているゲスト講師を招き、手法の紹介を受けて、簡単な体験セッションをおこないながら、4つの手法を学ぶことで、サステナビリティなどの複雑な難しい問題の解決に向けてどのようなコミュニケーションが効果的であるかを考えていきます。
温暖化をはじめ、環境問題やサステナビリティの問題は、一方的な情報提供の段階は終わり、いかにともに創りだしていくか、いかに巻き込んでいくか、いかに行動につなげていくか、が鍵を握る段階に入っています。知識だけではなく、物事を動かしていく手法としてのコミュニケーションを学び、実践する貴重な機会です。
今回は、日本でのこの分野の第一人者の実践家たちが、「持続可能性のために取り組んでいる人々のためになるなら」と特別に講師を引き受けてくれました。そのため、環境や持続可能性に何らか取り組んでいる方々のみを受け付けます。このチャンスをどうぞお見逃しなく!
以下、講座のご案内です。私がいまいちばん深めたい分野と実践なので、みなさんといっしょに学べることを楽しみにしています!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここからご案内〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「共創型コミュニケーションの手法を学ぶ4回シリーズ講座」
○日時:(全4回)
3月4日(火)/3月11日(火)/3月18日(火)/3月25日(火)
いずれも18:15-20:45
○場所: 子どもの城
(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)
○講師:渋谷聡子、中土井僚、松瀬理保
○ファシリテーター: 枝廣淳子・小田理一郎
○定員:50〜60人ほど
○料金:30,000円(全4回分)
※4回一括のみの受付となります。ご都合のつかない回は、代わりの方に出席いただけます。
○お申込み
以下の申込書をinfo@es-inc.jp までお送り下さい。受講費のお支払方法についてご案内します。受講費のお支払をもって正式受付とし、受講票を電子メールでお送りいたします。
○お問合せ
(有)イーズ 担当 星野 info@es-inc.jp /電話:03-5426-1128
=============================================================
「共創型コミュニケーションの手法を学ぶ4回シリーズ講座」
参加申込書
ご氏名 [ ]
ご所属 [ ]
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]
環境や持続可能性にどのような立場で取り組んでいますか
[ ]
※この講座をどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。
( ) a. 枝廣淳子のメールニュース(enviro-news)
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. イーズのウェブサイト
( ) d. その他 ( )
=============================================================
※お申込み後数日たちましても受付票が届かない場合は、メール送受信のトラブルの可能性がございますので、その際はinfo@es-inc.jp もしくは電話03-5426-1128までお問い合わせください
※有限会社イーズは、2017年12月25日に移転いたしました。
この記事に関するお問い合わせ